ゼータと上総   作:空也真朋

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75話 傭兵団エゥーゴの未来

 その翌日。

 オレはラトロワ中佐とシロッコを連れて大東亜連合の巨魁ウォン・リーさんの邸宅を訪ねた。

 彼は名前の通り華僑系。東南アジア財界の大物で、戦術機はじめ軍需物資の生産供給を担う財団企業の前会長であり、傭兵団【エウーゴ】のスポンサーでもある。

 【Zガンダム】の同姓同名のあの人は財団幹部だが、この人は財団そのもの。年もかなりいっている老人だ。

 

 応接室に通され数年ぶりに会うこの人は、やはりかつてのようなスルドイ目つきの老人だ。

 

 「よく生きて帰ったものだな。いや、それどころか新種の巨大BETAを倒したともいう。いったいどのようにして広範囲レーザーをくぐり抜けた? それに攻撃できるほど接近できたとしても、相手は20㎞もの巨大生物。ミサイルでも通常弾頭では100発すら足りんだろうに、いかにして仕留めた?」

 

 「ウォンさん、ずいぶん詳細に知っていますわね。アレが出たのは2日前のソ連北東部アヴァチャ山付近。いくら何でも情報が早すぎませんかしら?」

 

 「ソ連がめずらしく親切に情報を流してくれたのよ。アレの進行方向によっては、ここ東南アジアにもレーザーが飛んでくるとな」

 

 「……ソ連がですか。アレを仕留めた経緯については、データとしてまとめております。それを提供する代わりに、わたくしの友人たちを頼まれていただきたいのです。ソ連からの亡命衛士達なのですが。こちらのラトロワ中佐が代表となります」

 

 「ふうむソ連からの亡命者とな。ちと厄介だが良かろう。送る先はやはり戦線となるが、使い捨てのような扱いにならぬよう手はうってやろう」

 

 良かった。話は案外簡単にまとまった。

 あとはもう一つの気にかかる事。傭兵団エゥーゴのその後だけど。

 

 「ありがとうございますウォンさん。ではもう一つ聞きたいのですけれど。わたくし達がいなくなった後のエゥーゴはどうなりました?」

 

 途端にウォンさんは嫌そうな顔をした。

 

 「エゥーゴか。あれは今月中に潰す。戦闘後のBETA焼却処理すらまともにやれんクズの集団だ。穀潰しのスポンサーなどいつまでもやっておれんよ」

 

 まぁそうだろうな。元々ゼータの戦闘力と、ブレックスの政治力及び人脈でできていた組織だ。

 しかし………

 

 「あの、そこで働いていた人達は…………戦災孤児とかもかなりいたはずですが?」

 

 「知らんな。そこまで責任はもてんよ。外聞もあるので、子供達に関しては孤児院の世話くらいはしてやる。いずれは銃をとって戦線に行くことになるだろうがの」

 

 そうだろうな。わかってはいたが、やはり現実を聞かされるのは辛い。

 けど、オレにはやることがある。あの子供達を救うためにエゥーゴに戻るわけにはいかない。

 だけど……………だけど…………!

 

 「お待ち下さいご老公」

 

 ふいに横合いから電子音の声がかかった。

 翻訳機越しに話すシロッコだ。

 

 「私達の身の振り方についてですが。私とラトロワ中佐。およびその部下の者達をそのエゥーゴの指導者として送っていただきたいのです」

 

 私達って何? ウォンさんに預ける亡命者の中に、あなたは入っていないんだけど?

 

 「聞いていなかったのかね? アレは潰す。こちらも利の出ない組織など、いつまでも抱えてはおれんのだよ」

 

 「聞いた上で言っております。その組織の堕落は優れた指導者の不在によるものです。故に私とラトロワ中佐らで立て直しましょう。ウォン・リーさんにとっても、その組織が再び利を生むようになるなら、それが最善でしょう」

 

 「フム………いいのかね? あれは今やならず者の集団だぞ。自信があるというなら、まだ少しマシな場所の地位を用意してやることもできるが?」

 

 「いいえ是非そのエゥーゴを。でなければ意味はありません。これはこのカズサへの恩返しなのですから」

 

 話の展開についていけずマヌケ面をさらしていたオレは、『恩返し』という謎ワードでさらに分からなくなった。

 シロッコはいかにもな好青年のような顔をして弁舌を奮う。

 

 「どうやらカズサはその組織にかなりの思い入れがある様子。であるなら、彼女に命の救われた私のできる恩の返し方は、その組織の立て直しでしょう」

 

 い、いや、アンタにそんな気を使っていただかなくても。

 ……ハッ! しまった、これがこの男の狙い?

 この男、最初からおとなしく香月博士の元へ行く気など無かったのだ。

 そしてこっちの世界の自分の拠点となるような場所を探すためにオレについて来て、まんまとそれに当たる場所を見つけた。

 それがエゥーゴ!

 

 「ラトロワ中佐、君はいいのかね? 彼に勝手に決められているが」

 

 「まぁ、それについては少し引っかかる所はありますがね。しかし『山城少尉への恩返し』というなら、やらないわけにはいかないでしょう」

 

 「え? あ、いや別にわたくしは恩なんて着せるつもりはありませんが」

 

 その男のキレイ事には真っ黒な裏があるんだって!

 ジャミトフさんとかまんまと乗せられてヒドイ目にあってるんだよ!!

 

 「ま、私らはどこへ行くにしても苦労はするでしょうからね。であるなら大きな借りのある彼女のためにする苦労の方がまだ良さそうだ。私ら元ジャール大隊もそこへお願いいたします」

 

 「『恩』……か。それもまた人脈。そういった人の繋がりは嫌いではない。良かろう。エゥーゴには今しばらく猶予をやろう」

 

 あ、ああっ! 

 結局、シロッコさんとラトロワ中佐と元部下の行き先はオレの古巣エゥーゴに決まった。決まってしまった。

 何てことだ。野心深き男を野に解き放ってしまった!

 それにしても【パプティマス・シロッコ】がエゥーゴの指導者になるとか、何の冗談だ。

 最後にウォン・リーさんはシロッコさんに聞いた。

 

 「ところで君は何語で話しているのかね? 私は主要国家はじめ地方国家の言語等もそれなりに精通しているが、君が使っている言語ははじめて聞く。系統もわからん」

 

 「フッ。どこにも存在しない世界の言語ですよ。それを明かすのはしばらくお待ちください」

 

 

 

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