ビョオオオッ ビュンッ シュバッ
ああ、まったく。
こんな勝負。負けても良いはずなのに、いつの間にか本気になってこの月詠さんに斬りかかっている。
この月詠さん、かなりの殺気を放つので、長年のBETAとの戦いで培われた防衛本能でこうなってしまっているのだ。
BETAとの戦いは手数の勝負。囲まれたら終わり。だからこそ必死に前に出る。
ビュンッ ビュビュンッ シュバッ ズオオオオッ
「すごい……何て攻めだ」
「あの真那さまが、まったく防戦一方だ!」
「まさに修羅。これが世界最強の戦術機を駆る者の戦いか!」
この月詠さん。技術がオレよりはるかに高いから、受けにまわったら勝ち目がないんだよ。
だからこうやって怒涛に攻めて、相手を封じて戦うしかない。
ビュンッ ビュオオッ ギュンッ シュババアッ
「くっ、すさまじい。だがこの月詠真那、このまま終われん!」
「うッく!」
バキャアアアアッ
月詠さんは渾身の一刀を放つ。それを踏みとどまり、自分も渾身の一刀で受ける。
結果、双方の模擬刀は折れて砕け、勝負は終わりとなった。
「すまなかったな山城少尉。だが存分に楽しませてもらった。では、我々はこれで」
月詠さんはそういうと、部下三人を引き連れ去っていった。
何なんだまったく。あー疲れた。
パチパチパチパチパチ
拍手の音が聞こえたので振り向くと、いつの間にかそこにあどけない顔の二人の訓練兵の娘いた。
一人はショートカットで男の子かと思ったくらい胸がない。
もう一人も胸はあまりないが、長い髪をツインテールにしててかなり女の子らしい娘だ。どちらも、かなり背が低い。
「すごいすごい! こんなすごい剣術試合、はじめて見ました!」
「あれを見ただけで、山城少尉がどんなすごい戦いをしてきたかが分かるよ。さすが英雄さん!」
見かけ通りかなり子供っぽい娘たちだ。御剣さんがたしなめている所から、どうやら例のB分隊の仲間のようだ。
「紹介します。私と同じ二〇七B分隊に所属する仲間で、鎧衣美琴訓練生と珠瀬任姫訓練生です」
紹介された二人は共に敬礼で挨拶をする。
見た感じ、二〇七B分隊の隊員は素直で良い娘たちばかりだ。
こんな娘たちの部隊が、何があって分裂なんてことになったんだろう?
無酸素運動で試合をしたせいで動けなくなってしまった。なので、しばらく休憩だ。
鎧衣さんが水を持ってきてくれたのでありがたく頂く。
「ふうっ。BETA相手の剣を生身でやるとキツいですわね。元の型なんて跡形もありませんし。こんな
「私には山城少尉の方がまぶしく見えます。その剣は御国を護り戦ってきた証。国に何一つ献身できず、ただ剣を振るしか能のない自分が恥ずかしく思えます」
「そうだね……ボクたち、もう衛士にはなれないんだよね」
「お父さんに何て言おう。任姫、ぜったい衛士になってくるって言ったのに」
うつむいた彼女らの中で、オレは御剣さんの目に注目した。
そして慰めるより、思ったことを口にした。
「御剣さん。あなたは言うほど迷ってはいませんね?」
「は? いえ迷いだらけです。己のなす事も生きる先も何も見えず、ただ惑ってばかりの日々を送っております」
「ふふっ。そんな人間は、そんな目をしてませんよ」
「目……ですか?」
「あなたの目。迷いも不安もない、まっすぐな綺麗な目です。何も見えずとも、未来を見据えている者の目です」
「そのような……過分な……」
「きっと今は刀を振る時期なのでしょう。たかが若い頃の一時のつまづき。その目があれば、またやり直せますよ」
「ありがとうございます。そなたに感謝を」
「ところで皆さんの帰省はいつに? 訓練生の決まりとして、すぐに
「いえ。それが二〇七B分隊にはいまだ解隊の命令が出ていないのです。それ故、皆も帰ることも出来ず基地にとどまっております」
は? 衛士訓練生が衛士に失格したなら、上はすぐさま帰らすのが普通のはずだろ?
山城上総の訓練生時代の記憶にも、不適格で帰らされた訓練生の光景が色濃く残っている。
「うん、そう。訓練もないし、ボクは任姫さんと基地の見学ばかりしてるよ」
「榊さんは、あれから自室に閉じこもってばかりで心配です。彩峰さんは……多分屋上かな?」
この措置はちょっと気になるな。
けどこれを利用して、この娘らをひどく気にしている白銀のために、希望でも入れてみるか。
「もしかしたら、あなた方の部隊は、まだ何か役割を与えられるのかもしれませんね。その時に備え、心身はきたえておくべきでしょう」
「む……そう思われますか。鎧衣、珠瀬。自らを責め気落ちするのはもう十分であろう。二〇七B分隊は、これより有事に備え自主訓練といこう」
「はい! 任姫もそう思います」
「榊さんと彩峰さんも呼んでこようよ。また、みんなでやり直そう!」
よしよし、元気になったな。
元気に訓練にはげむこの娘らを見て、白銀も元気になればいいな。
「がんばってください。それじゃ、わたくしはもう行きますね。香月博士への報告がだいぶ遅れてしまいました」
「山城少尉も任務がんばってください! 衛士になれなくても、ご活躍を応援してます!」
本当にあどけない良い娘たちだな。
白銀は前の時間軸で、この娘たちと共に訓練や任務をしてきたのか。ちょっとうらやましい。
少しだけ白銀の気持ちが分かったような気がした。