ゼータと上総   作:空也真朋

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 『帝都燃ゆ』を見返すと、山城はそこまでひどいお嬢様言葉を使ってないことに気が付きました。今まで俺は誰を書いてきたのだろう。
 今まで書いてきたもので、あまりにヒドいお嬢様言葉は直していきますね。


80話 白銀武は語りたい

 ヒィヒィ。そんなわけで帰国早々に懲罰の基礎訓練。

 こうして走っていると懐かしい感じがするのは、山城上総の体に染み付いた訓練生時代の記憶の残滓か。

 しかし問題は、こんなクソッタレなことをやっているのがオレ一人ではない事だ。

 

 「ハァハァ、なん……で、白銀まで……ゼイゼイ走って……いるのです?」

 

 隣で涼しい顔で並走している白銀に問うた。

 

 「俺とお前はエレメントだ。つまり連帯責任。懲罰全部につき合ってやるよ」

 

 「ペースが……上がって……ゼイゼイより厳しく……なったのですが」

 

 「しっかりしろ上総。後輩に負けているぞ」

 

 そう。問題なのは白銀より、むしろ周囲で嬉々としていっしょに走っている二〇七B分隊の五人の娘達の方だ。

 さっきまで自主訓練してたはずなのに、よくついてこられる。

 こんなにしっかり鍛えてある娘達が、何で総戦技演習に通らなかったのか本当に不思議だ。

 

 「なん……で、みんなして……わたくし達と走って……いるのです?」

 

 「月詠のせいで山城少尉がこの懲罰を受けたと聞きます。であるなら私の責も同様。せめて同じ試練をうけねば、とても顔向けできません」

 

 いや、君に責任なんて求めないって。

 同じ試練受けてくれても、ちっともオレは楽にならないし。

 

 「そうよ。世界のかつてない危機を救った英雄殿に、こんな迷惑をかけたんだもの。これは二〇七B分隊全員の問題よ」

 

 榊首相の娘さん、君がそんな大袈裟にしないで。

 マジ国連軍の在り方についての問題にまで発展しそうでコワイよ。

 

 「ま、暇だから。もっとペース上げてもいいよ、英雄さん」

 

 暇でこんなキツイ運動するのか、彩峰とやら!

 涼しい顔で地獄のあおりを入れるんじゃあない!

 

 「ボクたち、話題の英雄さんと訓練してるんだね。感激だなぁ」

 

 この鎧衣って娘も体力のオバケだな。オレと同じペースなのに、流して走っているよ。

 こんな小さい体のどこに、こんな体力があるのやら。

 それにしても『鎧衣』って、どこかで聞いたような?

 

 「ハァヒィ任姫も……がんばります。ぜったいみんなと……」

 

 この珠瀬って娘を見ると安心するな。下を見て安心するなんてクズい趣味だけど。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 「終わりましたわーー!」

 

 みんなでランニング二十キロ腕立て腹筋五百回を見事やり遂げた。

 夕暮れの中、少女達が地面に伏しながら楽しそうに語り合っている姿もまさに青春。

 まるで軍隊青春の一ページみたいなシーンだ。

 しかし今のオレに、それに感動する余裕はない。もう今夜は宿舎に入って寝ちゃおう。

 と、思ったのだが……

 

 ――「全員集合! 白銀、山城両少尉もこちらにお立ちください」

 

 見るといつの間にか神宮寺軍曹がいて、地獄のような追加の試練。

 ああ、そういや衛士訓練校ってこういう所だったっけ。

 オレは受けていないけど、記憶だけはこの体にしっかり残ってる。

 オレと白銀が神宮寺軍曹の両脇に立ち、二〇七B分隊の娘達が姿勢正しく目前に整列すると話ははじまった。

 

 「たった今、貴様ら第二〇七訓練兵B分隊に通達があった。心して聞くように」

 

 いよいよ解隊かと、彼女らの顔に緊張が走る。

 

 「貴様らは五日後、北米アラスカ州のユーコン基地へ視察見学に行くことが決まった」

 

 ザワッ……

 意外な通達に、整列中であるにも関わらず驚きの息がもれる。

 

 「静粛に! これは、香月副司令の賓客代理として赴かれるこの山城少尉に付随して行くこととなる。すでに知っている者も多いと思うが、この山城少尉はソ連北東部に出現した最大脅威のBETAを討ち取った英雄。その山城少尉の名を辱めぬよう、おのおの気を引き締めて事にあたれ」

 

 「「「「「ハイッ」」」」」

 

 「視察先のユーコン基地は戦術機開発の最先端。そして当時期、そこで【相互評価プログラム】通称【ブルーフラッグ】が開催される。これは全世界の代表的な戦術機がそこに集まり、その性能を競いデータを蓄積し合い戦術機技術を高めあう一大イベントだ。衛士に落ちこぼれた貴様らが、将来の糧となるようにと、このイベントへの訪問を企画していただいた司令部の恩情に感謝するように!」

 

 「「「「「ハイッ」」」」」

 

 「では山城少尉。一言何かお願いいたします」

 

 あーやっぱり。英雄だなんてさんざん持ち上げられたけど、そんな大したモンじゃないんだよ。

 

 「あ、あなた方とともにユーコン基地へ向かう山城上総少尉ですわ。向こうにいる開発衛士は、腕は良くてもクセのある人間が多いので注意してください。とくに背のちっこい山ザルみたいなのとか、いつも女同士でベッタリくっついているソ連のツンドラ衛士とかはたいへん危険ですので、好んで近づかないように」

 

 しどろもどろになりながら思いつくままにしゃべり、そして終える。

 すると白銀が挙手。

 

 「神宮寺軍曹。自分にも彼女らに言わせてください」

 

 「これは白銀少尉殿、どうぞよろしく。香月副司令に期待されている衛士として、こいつらに喝を入れてください」

 

 あれ? なんだろう、白銀のあの表情(かお)

 

 「諸君、始めましてだ。自分は白銀武少尉――」

 

 

 

 ♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 白銀武Side

 

 「――以上だ。諸君らの視察訪問が、実りあるものになる事を心から願う」

 

 うん、終わったな。これで俺がみんなにしてやれる、たった一つが終わっちまった。

 

 「白銀、山城両少尉に感謝をこめ、敬礼!」

 

 お前らが俺に敬礼する姿がつらい。

 できるなら、この世界でもお前らと並びたかったよ。

 万感をこめ、俺は敬礼を返す。

 

 「明日よりユーコン基地についての座学を行う。それと並行して、おのおの準備にかかれ。では解散!」

 

 

 俺がこの横浜基地に来たとき、すでに総戦技演習は終わっていて、二〇七B分隊がそれに落ちたことを聞いた。

 それを聞いたときの俺の落ち込み様はかなりヒドかったらしい。

 そして00ユニットである純夏もすでに完成していて、例の如く精神異常をおこしてBETA絶対殺すロボになっていた。

 それを調律する役をおったのも例の如くだが、俺の精神状態を心配された。

 そこでまたユーコンへ行く上総に付随する形で彼女らにも行ってもらい、俺から離れてもらうことになったのだ。

 

 

 「お待ちください白銀少尉! いえ、巨大光線級を山城少尉とともに討ち取った功により、中尉になられると聞きました。早くともあえて白銀中尉とお呼びさせてください」

 

 ふいに冥夜に呼び止められた。

 

 「……ああ。何か用かな、御剣訓練兵」

 

 「白銀中尉の激励、身が引き締まる思いです。格別のお言葉にこたえ、この視察見学を必ずや実のあるものとしてみせます!」

 

 もう”タケル”とは呼んでくれないんだな。

 

 「白銀中尉? どうなされました」

 

 「いや、中尉呼びに少し慣れなくてな。御剣訓練兵、しっかりやれ」

 

 「はッ」

 

 ふと見ると、他のみんなもチラチラ俺を見ている。

 

 「ふふん、御剣みたいにもっと近くで白銀少尉を見たいのに、男が恐くて近寄れないチキン。これだからお嬢様育ちは」

 

 「うるさいわね、アンタもでしょ! わ、私は分隊長としてお礼の言葉を述べようとしてるだけで、別に他意は……!」

 

 「あははっ、ボクは行ってくるね」

 

 「ああっ、み、任姫も!」

 

 ああ、それでも変わらないな。俺がいなくても。

 忘れないよ、たった一度だけでもお前らと走れたことを。

 

 冥夜、委員長、美琴、彩峰、たま。

 この世界じゃ、どこまでも縁の無かった俺達だけど。

 

 それでも、俺の心はお前らと繋がっている。

 お前らといっしょに戦っているんだ。

 

 強く生きろ。己を養え。

 そして成長したお前らを見せてくれ。

 

 いつかまた、この横浜基地で会おう。

 じゃあな。




 白銀ってヒロインだったっけ?
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