ゼータと上総   作:空也真朋

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86話 シロッコ、ジェリドと出会う

 『シロッコ対ジェリド』

 こんな対決カード、結果が見えすぎて草も生えない……と、つい思ってしまったけど。

 しかし考えてみれば、使用する戦術機には天地の差があるはずだ。

 

 片や世界唯一の超覇権大国が莫大な開発費を費やし世界最高の技術者を揃えて作った機体。

 片や貧乏傭兵団の型落ち機体に町工場レベルの改修を施しただけの機体。

 

 いや、たしかにシロッコはモビルスーツ開発の天才でもあるよ?

 でも、シロッコがエゥーゴの代表になってまだ二週間程度。

 そこから大東亜連合の開発衛士チームを出し抜いて代表になった手腕は大したものだけどさ。

 けど、こんな短期間な上に貧乏傭兵団のエゥーゴじゃ、米軍機に対抗できる機体なんて作れるはずはないよね。将来的にはどうなるか知らんけど。

 

 ま、それはともかくオレのリアクションがあまりに面白かったせいか、ジェリドもハルトウィック大佐もシロッコに興味を持った。 

 そして奴はオレ達が未だ居る中、本部へ通されたのだった。

 

 「君は……まさか、生きていたのか!?」

 

 シロッコはアメリカのジェリドを見ると、目を剝いて驚いた。

 

 「あん? 何の話だ、シロッコさんよ。誰かと間違えてんのか?」

 

 「……失礼、亡くなった友人にあまりに似ていたものでね。このカズサと、こんなにも早く再開した以上に驚いたよ」

 

 そりゃ驚くだろうね。前の世界で『いっしょにクーデター起こそう』とかそそのかして、利用した男なんだから。

 

 「フン。もしかしてカズサも、その誰かさんと同一視して、おれを”かませ犬”だのクソなことを抜かしたのか? いいか、二人ともよーく聞け。おれの名は米陸軍教導隊のジェリド・メサ中尉! 戦術機にかけては負け知らずの男。お前らの知っているマヌケなかませ犬野郎とは別人だ!」

 

 「……ジェリド……メサ? それが君の名なのか? そして私の知っている彼とは別人だと?」

 

 「そういうことだ。わかったかシロッコさんよ」

 

 わっかんねーよ!

 余計に混乱してきたわ!!

 ほら、シロッコもレアなビックリ顔でかたまっている。

 

 「……なるほど、よく覚えておこうジェリド・メサ中尉。たしかによく見れば、その彼とは別人。彼は君ほどの器量は持ち合わせていなかったよ」

 

 「フフン、そうだろう。おれは”かませ犬”なんて言葉にはまるで縁のない男。それを、このブルーフラッグで教えてやるぜ!」

 

 いかん。奴がしゃべればしゃべるほど、あの男にしか見えなくなってきた。

 なのにシロッコはもう適応してるみたいなのはさすがだな。

 それによく見たら、もう翻訳機を使わずに普通にこの世界の人と会話してるし。

 やっぱり天才なんだな、この男。

 

 「さて、ハルトウィック大佐殿を前に他の人物と長話とは失礼いたしました。改めて名乗りましょう。自分はパプティマス・シロッコ。エゥーゴ傭兵団の長を務めておりますが、此度ガルーダスに代わり大東亜連合の出場代表となりました」

 

 と、ようやく本題。本来の相手に着任の報告をはじめる。

 

 「よろしくシロッコ氏。まずは君に関してはわからない事が多すぎるので、いくつか質問させていただこう。どうして傭兵団が正規兵にかわり代表になったのかね?」

 

 「こちらの実力を示した上のことです。またエゥーゴ前責任者のこのカズサから正式に引き継いだというのも大きかった。彼女の存在は、あちらではかなりのものですからな」

 

 「なるほど、それで山城中尉は君のことを知っていたのだね。彼女は君の実力を高く買っているようだ。あとで彼女にも君のことを聞かせてもらうとして……」

 

 聞かないでくれえ! 別の世界線の未来人とか、どう説明すりゃいいの?

 その世界の戦争が何故か、そのまた別の世界でアニメになっていて、それを見ていたとか。

 うわああああっ、説明難易度HiーMAX!!!

 

 「傭兵団であれ大東亜連合が正式に認めならば、こちらはそれを問わない。だが、そちらの要求には大きな問題点があるな。演習配備機体は四機が規定だが、大東亜連合は君の一機のみで出場だと? 正気かね」

 

 「無論、正気であり本気ですとも。もし規定の問題があるなら、整備士を作業機械にでも乗せて頭数はそろえますが」

 

 無茶苦茶言ってるな、この男。

 

 「あまりにここユーコン基地の開発衛士(テストパイロット)たちを舐めてやしないかね。彼らは各々現地で腕前を認められて開発衛士(テストパイロット)となっているのだよ。君がいかほどの腕前でどのような戦術機を擁しているか知らんが、まともな演習になるとは思えんがね」

 

 「では、演習にて私が一度でも撃墜判定をもらったならば、残りの対戦はすべて棄権いたしましょう。それでいかが?」

 

 「しかしだ。このブルーフラッグの目的は勝敗などではない。さまざまな機体を競わせ、そのデータを蓄積し共有し合うことにより戦術機開発の進歩向上をはかる。それが趣旨だ。各代表の四機が君の一機のみと戦ったところで、有用なデータが得られるとは思えないのだがね」

 

 「そうですかな? 少なくともそこのカズサはそのデータを欲しがると思いますが」

 

 はぁ? いきなりオレを話題に入れてくるとか何?

 

 「何故わたくしがその戦闘データを欲しがりますの? いえ、たしかにシロッコさんの戦闘は見てみたいと思います。でもあなたの反応速度についてこれる機体なんて、今のエゥーゴにあるとは思えませんが?」

 

 「私の使う戦術機には、君からもらったアレを組み込んでいる。感謝するよ。それがなければ、さすがにこんな無茶はできなかった」

 

 「アレ? アレってなに……あ! まさかサイコフレーム⁉ もう戦術機に使用してるんですの⁉ まさか!」

 

 「たしかに戦術機とのマッチングにはだいぶ苦労させられたがね。さほどの事はないよ。して話を戻すが。どうだね、その機体の戦闘データを欲しいとは思わんかね?」

 

 「そ、それは欲しいですわ! バイオセンサーがサイコフレームで強化しすぎですから、発動したら出力が上がりすぎて制御が大変で……ムググッ⁉」

 

 まりもちゃんが後ろからオレの口をふさいだ。

 

 (中尉、あまり技術関連の話は迂闊に口にしないよう)

 

 ああ。そういや、こういう話は出さないのが開発衛士(テストパイロット)の守秘義務ってやつだっけ。

 その様子を黙って見ていたジェリド。面白そうにニヤリと嗤った。

 

 「フッ、ハルトウィック大佐殿。どうやら、そいつの機体にはZ技術の一端があるようですな。とりあえず出場をさせてみては?」

 

 「ウム……このような特例は各国の利害調整機関としては好ましくないが、Z技術の一端を知る機会とあらば、やむを得ないだろう。シロッコ氏、君の一機のみの出場を認めよう。ただし先ほどの言葉通り、君の機体が撃墜判定をとられた場合、その時点で残りすべてを棄権するという条件でだが」

 

 「ありがとうございます。この演習、微力を尽くしましょう」

 

 なんかオレ、上手く使われちゃったみたい?

 まぁいいか。元々シロッコに研究させるために、サイコフレームを渡したんだし。

 

 「では、その最初で最後の相手はわが米軍教導隊インフィニティズが務めよう。Z技術の片鱗くらいは見せてくれよ、シロッコさんよ」

 

 「フッ、君が相手とは光栄だ。まるで古い友人のように思えるのでね」

 

 ライバル同士っぽく二人は不敵に嗤いあう。

 でも、どうしてもジェリドがシロッコに勝つイメージがわかないんだよね。常識的に考えればアメリカの方が圧倒的に有利なのにさ。

 ジェリドのこの自信満々な顔も、威勢よく出撃するもコテンパンにやられて帰って来て『ちっくしょおおおお』と遠吠えするフラグにしか見えないんだよなぁ。

 

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