ゼータと上総   作:空也真朋

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89話 ギミック満載戦術機

 ジェリド・メサSide

 

 バララララララ

 

 「うおおおおおっ⁉ 何だアレは!!」」

 

 どのような腕であれ、たった一機では限界がある。

 であるからこそ、奴の誘いにのり高速機動戦をしかけた。

 だが待ち受けていたのは、まるで小隊の一斉射撃のような弾幕であった。

 

 だがレーダーに映るマーカーは、やはり奴のたった一機。

 しかして、その弾幕の正体を見て驚愕した。

 

 奴の機体の背中から四本の隠し腕が伸びており、それらが四丁の予備銃器を操って弾幕を張っていたのだ。

 しかも本来の両腕に持つ長距離砲を撃ちながら!

 

 『なんだアレは⁉ いったいどうやって⁉』

 

 「仕組みなんか考えるなインフィニティ2! 回避に専念しろ!」

 

 

 

♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 山城上総Side

 

 

 「今のはよく避けましたね。衛士(パイロット)をほめるべきでしょう」

 

 アレが動いたなら、勝負は決まるかと思っていた。

 だが、初見にも関わらずよくかわした。

 

 あれはニュータイプでもなければ難しい回避にだろうに。

 実際、僚機の方は撃墜判定は免れたものの、けっこうなダメージ判定をもらって動きが鈍い。(ブルーフラッグにおいては、機体のダメージ判定によって、負傷した部分は動きが制限される)

 アメリカのジェリドもやるな。

 

 「い、いやそれより、アレは何なのです⁉ いったいどういう仕組みで!」

 

 「まさか、背中の四つの銃器は、同時に撃つためのものであったとは。しかし……」

 

 二人はさっきのラプターの回避より、現在のシロッコ機に驚いている。オレも予想はしていたが、やはり実際見ると衝撃的だ。

 シロッコのF-15は背部から四本の隠し腕が伸びてそれぞれに銃を持ち、接近する二機のラプター目がけて射撃を開始したのだ。

 

 「【隠し腕】という奴ですよ。シロッコは、ああいうギミックを作るのが得意なんです」

 

 隠し腕はジ・Oにもついていたしね。

 メッサーラの変形機構なんかも変形時間一秒というスゴいものだし。

 

 「しかし……信じられん。四本すべてがそれぞれ自在に動き、あまつさえ全てがラプターより速く射撃し、ラプター二機を追い詰めている」

 

 シロッコなら自在に動く隠し腕なんて簡単に作れちゃうだろう。

 そしてそれをサイコフレームで動かしているのなら、ラプターであろうと撃ち遅れて当然。

 トリガーすら引く必要のないサイココントロールシステムで動かしているのだから。

 

 そう、これはまさに【ファンネル】だ!

 ハマーンとの戦いで、シロッコはファンネルを見た。

 そして機動力で劣る機体で格上の機体と戦うにはこれしかないと踏んで、現代の技術で可能な範囲で再現したのだろう。

 

 「ラプターはほぼ死に体。だが、よく耐えているな」

 

 至近から銃撃にさらされあちこち損傷判定をくらいながらも、ラプターは機動力を生かして重要部分に被弾させない。

 

 「なぜ逃げないのでしょう? こんな状態なら一時離脱し、態勢を立てなおすのがセオリーでは?」

 

 「それをしたら、また長距離砲の狙撃がきます。そしてラプターとはいえ、あそこまで損傷したら逃げきることは不可能です。ですが、あのファンネル……いえギミックには弱点があります。ジェリド中尉はそれを狙っているのでしょう」

 

 ジェリド、かませ犬なんて言ってゴメン。

 たしかに君はゼータの彼とは別人だ。

 シロッコを確実に追い詰めているよ。

 

 ♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 ジェリド・メサSide

 

 「くそっ、先読みがヤバすぎる! ラプター二機を相手に、どうしてここまで先手をとれる!?」

 

 噴射地表面滑走(サーフェイシング)全開で砲弾をかい潜り移動する。

 それを追うように爆発と轟音はあたりを破壊し、黒煙を大量に発生させる。

 

 あの複数の銃器を扱うシステムは、自動追尾の発展だろうとは思う。

 だが、それにしてはこちらの行動の先読みがすぎるのだ。

 

 まるでこちらの行動を呼んでいるかのように的確に弾幕を張りこちらの行動を抑え、さらには追い詰めていく。

 しかもサブアームのそれぞれがまるで意思を持っているかのように別々に動くのだ!

 

 「だが、まさか弾まで無限というわけではあるまい。おれの読みでは、あと少し……」

 

 奴には弾倉交換が出来ないという弱点がある。

 あれだけの数の交換にはひどく手間がかかるうえ、弾倉を入れ替えている間に直援をしてくれる僚機もいない。

 だからこそ、この鬼ごっこから逃げずに付き合っているという訳だ。

 

 『イ、インフィニティ1! ダ、ダメですッ……』

 

 その通信を最期にレオン機の動きが止まった。

 とうとう損傷が致命的と判定されたか。

 

 だが、ギリギリ間に合った。

 奴の36㎜砲弾は止まった。弾切れだ!

 

 おれはすぐさま機体を反転。

 彼我の差は約千二百メートル。

 

 「その鈍重な機体じゃコレは避けられねぇぜ。ダイエットでもするんだな」

 

 AMWS-21(チェーンガン)を奴に向けロックオン。

 サークルのド真ん中に映る奴のザマは、なす術なく立ち尽くしているようにしか見えなかった。

 

 ”勝った”と思った。

 

 そんなクズな慢心が、本来0,3秒で弾くトリガーを一秒まで延ばしちまった。

 

 そのただ”一秒”の間だった。

 

 奴が全ての銃器、背中のサブアーム、全身の装甲を着脱(パージ)したのは。

 

 「な、なにィっ⁉ くっそおおお!!」

 

 本当にダイエットする奴があるか!

 戦術機にクセに、しかも一秒で!!

 

 バラララララッ バララララララッ

 

 あまりの着脱の早業に、またしてもトリガーを弾くのに一秒。

 その一秒の間に奴は予測位置をはるかに超えた場所に水平噴射跳躍(ホライゾナルブースト)

 

 フルオートが何もない空間に空しく鳴り響く。

 奴は弾道を大きく迂回し、こちらに迫る!

 

 くそォ! 銃口の修正より、旋回しながら迫る奴の方が早い?

 もっと早く動いてくれ!!

  

 

 バラララララララララララッ……

 

 

 フルオートのライフル音が虚しく響きわたった、その後……

 

 「くそ……」

 

 コクピット内の照明が赤く染まり、主機駆動音が遠ざかる。

 薄暗い中、網膜投影に映し出されているのは、おれのライフルバレルのすぐ横にアーミーナイフを突きつけている奴の姿だった。

 コクピットへの致命損傷判定を受け、すべての機能は強制停止。

 

 「これが負けか……十何年ぶりかな」

 

 脱力して背中のバックレストにもたれかかった。

 演習終了のアナウンスが終わったあと、奴から通信が入った。

 

 『米陸軍教導隊インフィニティーズ指揮官ジェリド・メサ中尉。貴官の戦いぶりに敬意を表す。たしかに君は、私の知る彼より優秀だった』

 

 この優男のクセにやけに尊大な男の(ツラ)も違って見える。

 いったいどんな魔法使いなんだ、機体も奴自信も。

 おれは力なく敬礼をして返した。

 

 「パプティマス・シロッコ。アンタの名前は覚えておくよ。多分一生な」

 

 

 

 

 

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