元京都駅指揮所付近。
千年の古き都にして帝都。その絢爛たる歴史を刻んだ寺院、仏閣、武家屋敷等が数多く見られたその都市も、一面瓦礫と焼け跡とBETAの屍肉と朽ちた戦車、戦術機、高射砲の残骸が所狭しとあふれる壮大な墓場となってしまった。
生きた人間の姿はほとんどまったくと見られない、もの悲しい廃墟となった帝都。
その片隅にオレとハロはいた。ここは駅駐留部隊指揮所が合った場所なので、その残骸をあさってバルカン等の補給、及び情報収集をしているところだ。
「♪
「………上総、なにそれ? 魔法少女の呪文?」
「
ピピーピポポー ピポポー ポピーポピー
「カズサ、カズサ。ハロ、メカダカラ、ワカンナイ。ワカンナイ」
「なんですの、このポンコツ。いきなり本物の真似なんかして。それとも、そのまん丸ボディに魂が完全に喰われておしまい?」
「それはこっちのセリフだよ! なにそのモノホンのお嬢様みたいな高尚なご趣味? 君、ほんとうに中身は和也!?」
「あら…………」
本当だ! 知らんうちにお嬢様の才能なんかひけらかしてしまったよ!
山城上総。魂はないはずなのに、どこまでオレをお嬢様にする!?
「まぁ、とにかくあちこち通信を傍受した結果だけどね。やっぱりハデにやりすぎたみたいだね。あらゆる機関が、みんな
「どれかの機関に接触してその保護下にはいる、という選択肢もありますわよ。お金やら情報やらの問題は解決できるのではなくて?」
「そしたら
ピョンピョンピョンピョン
ハロのボールのような丸い体がピョコピョコ跳ね回る。
このさまは、女の感性でどうしようもなく『可愛い』と感じてしまう。ラブリー。
「わかりましたわ。この案は却下といたしましょう。わたくし自身、日本にいることは危ういかもしれませんしね。この『山城上総』という少女自体が厄介なようです」
「そういや、ボクはその
「この体に残ったつたない記憶によると、帝国斯衛軍という武家の身分やらしきたりやらがついて回る、それはそれは厄介な軍部付属の学徒だったらしいですわ。悪いことにもう任官もしてしまったよう。わたくしを知る者に見られたら、脱走という不名誉極まりない烙印を押され、どなたかの監視の下自由は完全になくなるでしょうね」
「そりゃ大変だ! すぐ日本を出よう! しばらく待ってて。Zガンダムをを再構成するから」
ハロが片隅で何やら謎システムを機動させていると、何もない空間からZガンダムの影のようなものが現れた。ぼやけた影のようなそれは、だんだんと存在が鮮明になっていく。
これは『亜空間に格納してあるZガンダムを再構成している』という作業らしい。一応説明してもらったが、何が何やらさっぱりだが。
「ハロ。今すぐ日本を出ることには異論ありません。ただ、その”亜空間へ格納”とか”再構成”とかがイマイチよく分かりませんの。もう一度説明してくださる?」
「だからね。機体の原子を隣の次元の亜空間に透過させ移動してしまっておくんだ。これは上総を搭乗させている時はできない。うっかり前の君の和也を乗せた状態でやったら、分解させちゃったよ」
「まったく余計な機能を。それがなければ、こんなお嬢様にならなくてすんだのに!」
「いやいや、すごく便利だよ。Zガンダムの隠し場所に苦労しなくていいし、亜空間にはデータにあるゼータを構成している物質しか入ることは出来ず、その他は分解される。つまり、機体についたBETAの肉片や泥や煤の掃除もしなくていいんだ」
そういうのって、機械の故障の原因になるからこまめに取り除かなきゃなんないんだけど、それをやらないでいいのは確かに大きいな。
やはり悪いのはハロのポカだということにしておこう。
「それにしてもエネルギー吸収といい、その亜空間への格納といい、本来モビルスーツにはない機能もかなりありますわね。これってあの邪神のサービスですかしら?」
「モビルスーツをバックアップなしで整備するためについた機能みたいだよ。亜空間から再構成する時に修復も行えるんだ。ボクがゼータのシステムになったのもそうみたい。常時機体の状態をチェックして、自力で整備できるからね」
確かに便利だが、『人間を乗せて亜空間格納をやってはいけない』という注意事項がハロの知識から抜けていたというから泣けてくる。神とはいえ、やることは完璧ではないということか。
「やっぱりよくわかりませんけど、『そういうことができる』ということと、『わたくしが乗った状態でやってはいけない』ということがわかっていれば十分ですわね。それで、それはどのくらいかかりますの?」
「二時間くらいかな。けっこう計算が面倒だから集中させて」
「では、そのまま続けてください。終わったらすぐ出発しましょう。その間にわたくしはこの体の本来の持ち主、山城 上総の魂へお別れでもしてきますわ」
そう言い残し、オレは山城 上総の死んだという京都駅地下鉄跡へと向かった。
気まぐれに思いついた他愛ない感傷だった。
若くして死なねばならなかった少女へ、この体を使いBETA打倒の誓いでもするつもりだった。
だが、オレはそこで運命と出会ってしまう。
山城 上総へ死の引き金をひいた少女。
篁 唯依と出会ってしまったのだ。
次回、ついに運命の刻来たる!
上総と唯依、京都地下鉄跡にて再会する!