僕の出番は終わり、続いてムッツリーニの番となった。
『では、自己紹介をどうぞ!』
「……土屋香美」
『今日はお友達と海水浴に来たんですか?』
「……はい」
『浴衣の着付けは大変でしたでしょう?』
「……いいえ」
『えっと、この会場に友達は……』
「……いません」
なんだろう。
司会の人が困っているように見えるのは気のせいかな?
「なるほどな……土屋、考えたな」
「へ? どういうこと?」
隅の方で見ていた八幡と彩加が、そんな会話をしていた。ムッツリーニが何か作戦を立てたのかな?
「土屋はさっきからYesかNoでしか答えていない。ああいった返し方をされると、話は盛り上がらないから続けづらいんだ。そうして場の空気をしらけさせて、自分の手番をさっさと終わらせようとしているんだ。それを助長する様に、土屋のテンションは低くなっている。会場も吉井によって作り出された熱気が一気に引いているから、作戦勝ちって所だな」
「なるほど……土屋君考えたね」
くっ、ムッツリーニめ……そこまでするとは……このままでは僕だけ予選進出なんてことになりかねないじゃないか! 何か決定打を踏んでくれ……っ!
『浴衣の他にどのような服がお好きですか?』
司会者から次の質問が投げられて、ムッツリーニはそれに対して――。
「チャイナドレスにレースクイーンにチアガール看護師にキャビンアテンダント更にはファミレス店員に女性警官制服やレオタードとOLスーツにセーラー服やブレザーや巫女服に加えてメイド服やテニスウェアなども素晴らしいとなんでもありません」
ムッツリィイイイイイイイイイニ!!
君ならやらかすと信じていたよ!!
多分今のはムッツリーニの趣味全開の答えなんだろうけど、今は自分が女装して参加していることを忘れていたみたいだね!!
「やっちまったなムッツリーニ……今の答え、自分が着ているってことをアピールすることにしかならねぇってのに、忘れて自分の本音を答えちまったってわけだな。ナイスオウンゴールだぜ」
雄二が物凄いいい笑顔を浮かべている。
うん、今の君は悪魔そのものだよ。
『おおっとこれはぁ! 香美さんはコスプレの趣味がおありのようだ!!』
「こ・う・み! こ・う・み!! こ・う・み!!!」
『これはいい手応えです! 決勝進出は間違えないでしょう!!』
「……こ、困る!」
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
会場は一気に盛り上がった。
さっきまでのダダ下がりムードは何処へいったのやら。しかし、これでムッツリーニに対する注目度は一気に上がったね! さっきの僕のやらかしが帳消しどころかすべて消された気分だよ!
「……無念」
ステージ裏に戻ってきたムッツリーニは、悔しそうにそう呟く。
そんな彼に対して、八幡が一言。
「……ドンマイ」
ある意味今一番かけられたくない言葉だった。
ムッツリーニもそれを聞いて膝から崩れ落ちている。うん、一番ふさわしいけれど、一番聞きたくなかった言葉をかけられて悔しさが一気に込み上げてくる気持ち、分かるよ。僕もさっきまで同じ気持ちだったからね。けど……ざまぁ!!
※
さて、次は八幡の番だ。今度は一体どんなやらかしが待ち受けているのか期待して待ってしまう僕がいる。そうすれば僕の印象はどんどん薄れていくから……こうしてみると、最初の方にステージに出られたのは正解だったのかもしれない。
「がんばれー、はちまーん!」
彩加が隅の方で応援しているけど、その応援って一体何に対する応援なんだい? 可愛いから許しちゃうけどね!
『さて、自己紹介をどうぞ!』
「……比企谷八恵。よろしく」
『今度はインテリ系クール美人さんだ! これは株が急上昇ですね!』
「「「「「ひゅーひゅー!」」」」」
何故か前に出ただけで大盛り上がりだった。
いや、一体何が起きているの?
『では早速質問の方に参りましょう……趣味はなんでしょう?』
「強いて言えば人間観察……相手をしっかり見て対応するのは得意です」
『なるほど! つまり男の人のツボを抑えられているということですね!』
「い、いや、そういうわけでは……」
『おおっと! インテリ系から出たまさかの遠慮だ! これはギャップ萌えという奴でしょうか!!』
これ、実は司会者が盛り上げ上手なだけの説ない?
「……厄介な司会者だな。解説のおやじも曲者だが、あの司会者のせいでこっちの答えが基本的に好意的に受け取られちまう」
雄二が悔しそうに呟く。
僕の時も、思い返してみればあの司会者が色々と勝手に盛っていったからこそ変な評価に繋がった気がする。今の八幡が如実に物語っている。
というか八幡、明らかに不機嫌になってきているよね。目つきがどんどん悪くなってるし。
「あの、いい加減にしてもらえないっすかね。勝手に盛り上がっても困るんですけど」
そしてとうとう、八幡は不機嫌オーラ全開で会場にマイクを通じて言ってしまった。女装だとばれない程度にドスを効かせた声に、会場も――。
『もっと私を罵ってください。これほどまでに完璧なSは見たことがない』
「は?」
こ こ で ま さ か の 解 説 者 。
『先程のギャップだけならば、オジさんも何も感じなかったのだが、今こうして貴女の罵倒を聞いて目覚めてしまったみたいだ。さぁ、もっと罵って欲しい!!』
『スポンサーでなければ首根っこ掴んで放り投げていた所ですが、ここにきてまさかのドエス属性追加とは驚きました! ギャップ萌えを二転三転繰り返して、男心をくすぐって飽きさせない!! それが人間観察から生まれる賜物だと思うと、献身的だと思いませんかみなさん!!』
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
「え、あの、ちょ、え?」
珍しく八幡が動揺している!
いや、もうこれ解釈の幅広すぎるでしょ!?
絶対八幡そんなつもりでやってないの分かるでしょ!?
恋は盲目とかそういうレベルじゃないよ!?
「……ドンマイ」
あ、それさっき八幡にムッツリーニが言われた言葉だよね。
今それを返すって、凄い皮肉だなぁ。
『予想以上の盛り上がりを見せた八恵さん! これは決勝進出間違いなしでしょう!! いやぁ今日はレベルの高い参加者が勢ぞろいで本当いいですよね!!』
『私のお嫁さんになる人も出てくるかもしれぬな』
『かつてない程に潔すぎるセクハラ発言ですが、スポンサーなので追い出せないのが本当に残念です!』
残念なのはこの人達の頭なんじゃないかなぁ……。
コメント欄に公式の戸塚浴衣衣装(しかもはだけている)のURLを載せて頂きまして、そのテンションのまま好き勝手書いた結果、八幡が大変なことになってしまいましたが後悔しておりません!! 反省はしています。
いろはすの浴衣姿も見られて正直私としては感無量です……可愛いは正義、まさにその通りですね。
ちなみに、予定ではありますが……番外編として書くエピソードはいくつかあります。その内容についてなのですが、
・ゆきのん宅で行われた勉強合宿での女子会
・リクエストにあった肝試し
・八幡誕生日
・ヒロイン目線でのエピソード(誰になるかは未定)
こんなところです。
八幡の誕生日って、何故か原作でもアニメでも補完されてないので、バカガイル風に話を作る感じになります(とは言っても、八月七日時点で彼らは海に居るので、その流れでの話となりますが)。
そろそろ、ルミルミとかも出したいと思っております……原作通りの流れで出番を待たせるとなると、少なくとも一年以上は八幡達と会えないことになりますからね()
ちなみに、まだまだ登場していない俺ガイル登場人物やバカテス登場人物もいますが、これから登場するキャラクターもおりますのでご安心(?)を!