以下の問いに答えなさい。
「『何故なら』という言葉を使って例文を作りなさい」
雪ノ下雪乃の答え
「私は勉強をします。何故なら試験で好成績を収めるためです」
教師のコメント
雪ノ下さんらしい、実にいい例文です。皆さんにもその精神を見習って欲しいです。
比企谷八幡の答え
「私は学校の授業を受けたくありません。何故ならそれは意味のないことだからです」
教師のコメント
どれだけ勉強したくないんですか。
吉井明久の答え
「何故ならへ行かないのか」
教師のコメント
奈良のことではありません。
夏休みも終わって二学期がスタートした。残暑がまだまだ厳しいところだけど、こうして学校が始まって再びクラスメイトと会えるのはいいことだなって思えるから案外悪いことだらけってわけでもなさそうだよね。何より、制服姿の秀吉に会えるんだからこれ以上に幸せなことなんてないよね!!
そんなわけで夢と希望に満ち溢れた新学期。そんな初日に僕は。
「何処見て歩いてやがるんだ一年坊主ぅ!」
「こちとら勉強しなきゃならねぇってのに、バカの相手なんざしてる暇ないっつー話だよ!!」
ソフトモヒカンと坊主頭の先輩に迫られていた。
「いや、その、僕は普通に歩いていただけで、ぶつかってきたのはお二人じゃ……」
「なんだ? この期に及んで言い訳して誤魔化そうってか?」
「先輩の言うことは正しいんだよ! 先輩が『後輩が悪い』って言ったら後輩が悪くなることなんざ、ちっと考えればすぐわかる話じゃねえか!」
すいません。そんな話さっぱり分かりません。
というか何処のジャイアニズムですかそれ。少なからず僕の辞書には収録されていません。そもそも僕の辞書とか単語数少なそうだけどね。
「こちとら度重なる勉強ストレスでイライラしてるってのに、なんでそんなヘラヘラバカ面引っ提げて歩いていられんだよ! 正直見ていて腹が立つ!!」
「えぇ!? とんでもなくとばっちりで八つ当たりにも程がありますよね?!」
これは酷過ぎるよ!?
正直僕に悪い所があったのか探してみたいところだけど、さっぱり検討つかないよ!?
「つーかなんでぶつかってきたのがテメェみてぇなバカなんだよ! どうせ道端でぶつかるなら可愛い女の子とかにしてくれよな!?」
「いや知りませんよ!?」
なんで自分の欲望ダダ漏れなんですかねこの坊主頭の先輩は!!
「俺は常村勇作」
「俺は夏川俊平だ!」
えーと、ソフトモヒカンが常村先輩で、坊主頭が夏川先輩……というか……。
「常夏?」
「「何常夏日和満喫してんだテメェの頭は!!」」
「いや、常夏みたいな頭してるのは貴方達では?」
「「誰が爽やか夏休みだコノヤロウ!!」」
「そんなこと一言も言ってません」
総武高校にもこんな変な先輩がいるものなのだなぁ……。
というか、もしかして先輩にはまともな人が一人もいないのでは?
なんてそんなことを考えていた、その時だった。
「どうしたの? なんだかもめているように見えるけど……」
今度は女の先輩がやってきた。
その人のことを見た瞬間。
「あ……し、城廻さん!」
「これはその……あのですね?」
突然、常夏コンビが顔を赤くして直立不動になった。
え、なに、一体何が起きているの?
ていうかこの先輩すっごい美人さんだよね!?
「後輩との親睦を深めていたわけよ!」
「そうそう! 俺達これから仲良くなろうぜってね!!」
ガシッ! ← 常夏コンビが僕の肩を掴んだ音。
ミシミシ ← 僕の肩が悲鳴を上げる音。
ギュウウウウウウ ← 常夏コンビが力を入れる音。
「そうなの?」
全然違います!!
この常夏コンビはジャイアニズムによって後輩を制圧しようとしているんです!!
「そんなわけなので、俺達はそろそろ教室行くぜ!」
「文化祭の出し物について考えておかなきゃだからな!!」
そう言うと、嵐のように走り去っていく常夏コンビ。危なかった……あのまま握り潰されていたら、僕の両肩がお亡くなりになってしまう所だった……。
「えと……大丈夫だった?」
「へ?」
先輩は、なんだか心配そうな表情で僕のことを見ている。
「あの二人ってば、最近色んな人にとっても意地悪なことをしてるみたいだったから……もしかしたら君もそういう目にあってるんじゃないかなぁって心配になっちゃって」
「だ、大丈夫ですよ! ちょっと絡まれてただけなので……ご心配なさらず!」
「そっかぁ……それならよかった」
あぁ、何だろう。
この人と話していると、心がこう……ぽやぽやする。マイナスイオンが物凄い勢いで分泌されているんじゃないかなーって思う程、癒し力抜群というか、包容力抜群というか。とにかくこのままこの人のやさしさに包まれていたい。
「私は城廻めぐり。多分知っているとは思うけど、ここの生徒会長を務めてるんだよ」
「えぇ!? そうだったんですか!?」
「あれ……? 何度か全校集会でお話とかもしてるんだけど……」
正直、集会とか寝る時間としか思ってなかったので、話全然聞いてなかったです。というか生徒会長のお話の時間だけ妙に癒されるから眠りについてしまうと思ったら、原因この人だったのか……。
「ところで、君のお名前は?」
「えっと……吉井明久です」
「吉井君、だね。これからもよろしくね?」
「は、はい!」
はぁ……本当この先輩、いい人だぁ。
城廻先輩かぁ……こんな美人さんとお近づきになれるなんて、新学期早々僕はなんて運がいいんだろう……これだけ運がいい出来事が起きたら、次は嫌なことが起きる予感がするけど気のせいだよね?
「それじゃあ私も、教室に行くね? 吉井君も遅れないように気を付けてね?」
「は、はひぃ!」
そう言うと、城廻先輩は笑顔を見せた後に教室へと向かっていった。
「…………なぁ、吉井」
「へ?」
突如、僕の背後から聞こえてくるドスの効いた男子の声。
その声の主を確かめる為に後ろを振り向くと。
「今のは一体、どういうことだ?」
覆面を被った須川君の姿があった。
――やべ、見られてた。
「いや、今のは、生徒会長と偶然会ったから、話していただけで」
「随分と親し気だったなぁ……お前、奉仕部で女の子と楽し気に話しているだけじゃ飽き足らず、生徒会長にまで手を出すというのか……FFF団団長として、貴様を処刑する!!」
「待ってぇえええええええ! ここ学校ぅうううううううううう! ていうか新学期早々死亡フラグなんて立てた覚えないんだけどぉおおおおおおおおお!?」
「貴様には、『ドキドキ♡屋上から紐なしバンジージャンプ♪』の刑を処する」
「それただの飛び降りだよね!? ワンチャンダイブだよね!?」
つーか最早ワンチャンすら存在しないからねそれ!?
「とりあえず、貴様を……」
「……何してんの、お前ら」
「はちまぁあああああああああん! 僕を助けてぇえええええええ!」
「うわ、なに。え、ちょ、近づくなって」
こんな状況下で来てくれた八幡は本当に救世主だよ!!
「吉井が生徒会長と会話していた。正直羨ましい。だから処刑する」
「随分短絡的な結論に至ってんぞ……それでいいのか須川」
「リア充は許さん!!」
「それには同意するが、コイツはバカだぞ?」
「……それもそうか」
何か凄いこう、助かったのに全然助かった気がしない。
釈然としない状況だけど、僕は教室へと向かったのだった。
というわけで、本編は第二十問へと突入し、ついに舞台は二学期へ!
本編通算96話目にして、やっっっっっと二学期です!
この調子で進めていたら、一体いつになったら二年生篇に突入出来ることやら……修学旅行とか、文化祭実行委員とか、やりたいことはたくさんあるのに……。
というわけで、生徒会長初登場です!!
さり気なく常夏コンビも初登場となります。
ぶっちゃけ原作以上にやべぇやつになっている気がしなくもないですけど……()。