やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第二十問 バカと文化祭の出し物決めと生徒会長 (2)

「というわけで、今日はお前らに文化祭の出し物を決めてもらう」

 

 HRが始まってすぐ、鉄人から発せられたのはそんな一言だった。そういえばあの先輩ももうすぐ文化祭みたいなこと言ってたもんなぁ……。というか、文化祭云々の前に須川くんからの殺気が怖い。むっちゃくる。視線だけで人殺せそうな勢いだよ。僕の精神ゴリゴリ持っていかれそうだよ! 

 

「知っての通り、総武高校ももうすぐ文化祭が始まる。一応常識の範疇で収まるならば、基本的にはあまり問題はない。ただし、吉井は気を付けろよ」

「ちょっと!? どうして僕だけ名指しで注意なんですか!? 雄二とかムッツリーニだって要注意人物でしょう!?」

 

 やっぱ鉄人って僕だけを目の敵にしてるよね!? ていうか下手すれば八幡だって何するか分からないんだよ!? そんな中なんで僕だけ!? 

 

「お前が一番何するかわからんからだ……間違っても校舎に打ち上げ花火ぶつけたりとかするんじゃないぞ」

「やけに具体的な例出してますけどやりませんからね!?」

 

 本当鉄人は僕のことなんだと思ってるんだ!? 失礼にも程があるよ!? 

 

「一応説明しておくが、クラス毎の出し物としては、教室での店の他にはステージ発表などもある。ただし、どちらか一方しか出来ないような感じになっているから、その辺りも含めてしっかり話し合うように」

「あれ? 僕スルーされてません?」

 

 なんかものすごいナチュラルに、かつ強引に話が進められた気がするけど、これって気のせいなのかな? いや、なんとなくもう何言っても無駄だって諦められているような目を向けられている気がするんだけど。

 

「とりあえず、今日は授業はないからじっくり決められる。可能ならば今日のうちに決めてしまってくれ」

 

 くっ……鉄人め……文化祭の出し物決めで授業時間を潰さないよう、余計なことをしてくれちゃって……! おかげで僕の勉強しなきゃいけない時間が増えちゃうじゃないか! 

 

「お前授業真面目に受けてねぇんだから変わらないだろ?」

「確かに」

 

 雄二のいう通りだった。そうだったね。それじゃあいいや。

 

「とりあえず俺はこの後時間を設けるから、その間に出し物の候補を幾つか出しておくように。俺は一度職員室に戻る。三十分したら戻るから、それまでにある程度目処付けておけよ」

 

 そう言うと、鉄人は教室から出ていく。代わりに、雄二と葉山君が前に出る。こういう時、葉山君はもちろんのこと、意外と雄二もリーダーシップを発揮する。流石はかつて神童と呼ばれていただけのことはある……といっても、その諸々についても霧島さんに教えてもらったものばかりだから、実際の所はどうなのかあまりよく分かっていないんだけどね。

 

「つーわけで、文化祭で何やりたいか決めていこうと思う」

「各自、何か案がある人はどんどん言って欲しい。挙手制で!」

 

 んー、文化祭かぁ……一体どんな出し物やればいいんだろう。

 

「明久。書記頼めるか?」

「へ? うん、いいけど」

 

 何故か雄二に依頼されて、僕が書記をすることになった。ぶっちゃけ、今二人出たのならどちらかが書記をやればいいんじゃないかな……?

 とかそんなこと考えていた僕だったけど。

 

「……写真館」

 

 そうこうしている内に、ムッツリーニが手を挙げて自分の意見を言っていた。

 

「それってどんな写真館?」

 

 当然、気になる葉山君はそのあたりを追求する。

 対してムッツリーニは。

 

「……美しいもの」

 

 ムッツリーニ。君の言う『美しい物』って一体どんなものなんだい?

 

「明久。一応書いておけ」

「う、うん」

 

 えーと、写真館……美しい物。ムッツリーニの言う美しい物だから、覗き……秘密……。

 

「はい!」

 

 僕が黒板に意見を書いている内に、今度は海老名さんが手を挙げる。

 

「ズバリ! 演劇をやろう!」

「演劇かぁ……どんな演劇を?」

「星の王子さまをやるんだよ! 男の子たちが描く果てしなき愛の物語……!」

 

 星の王子さまってそんな話だったっけ……?

 

「明久。書いてくれ」

「了解」

 

 演劇……星の王子さま……男の子の愛……。

 

「他、あるか?」

「中華喫茶とかどうかしら?」

 

 今度は美波だ。

 

「教室を使って中華喫茶をやるの。出店とかだとやっぱりヨーロッパのような洋式が思い浮かぶけど、ゴマ団子とか飲茶とか、そういったのを出すのも悪くないんじゃないかしら?」

「なるほどな。明久、頼んだ」

「あいよ」

 

 中華喫茶……ヨーロッパ……。

 

「……明久。お前今自分で書いた物をよく読んでみろ」

「へ?」

 

 雄二が溜め息をつきながら僕に言って来る。

 言われた通り、僕は今出された三つを見てみる。

 

 写真館『秘密の覗き部屋』

 演劇『星の王子さま~漢達の愛~』

 中華喫茶『ヨーロピアン』

 

「なんじゃこりゃ!?」

「あはは……吉井君。なかなか個性的なまとめ方をするね」

「個性的っつか、頭の中に残った印象深い言葉を無理くりまとめただけのやっつけ仕事だろ。コイツのバカさ加減が残っちまったってわけだな。まぁこうなることは予想出来たけどな」

「予想出来たなら僕を最初から書記にしないでよ!!」

 

 もしかしなくても単純に遊んでいただけなんじゃないか雄二の奴!?

 くそぉ……なんだか妙に弄ばれた気分になったよ。

 

「とりあえず、この三択の中から選ぶことになるが……なんか、この黒板に書かれている奴を見ると、正直どれがまともそうなのか目に見えて分かるな……」

「当然、二番目だよね?」

「ちげぇよ」

 

 海老名さんが謎の自信を持っていた発言を、雄二がひねりつぶしていた。

 

「何故!?」

「いや、なんとなく理由は分かる気がするし……」

 

 三浦さんが助け船というか、もっともな意見を言ってきた。

 うん、なんだろう……海老名さんがプロデュースするとなると、細部までこだわりそうなんだけど……その拘りの方向性がとんでもないところにいきそうで怖い。具体的に言うと被害者が続出しそうな気がする。

 

「とりあえず多数決とるから、どれかしらに票入れてくれよ。一人一票な」

 

 雄二がそう言うと、多数決を取る。

 結果的に票が一番多かった中華喫茶を今年はやることになった。

 演劇とは僅差だったけど……写真館が一票しか入っていなかったのは、間違いなく提案したムッツリーニしか票を入れていなかったということだよね……ドンマイ、ムッツリーニ。

 

 




今回の文化祭はバカテス色が強い文化祭です。
二年生では演劇やったり文化祭実行委員の話が出たりと、俺ガイル色が強くなります。
というか、一年生はバカテス色がつよくて、二年生は俺ガイル色が強いって印象の方が早いかもしれませんね……。

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