番外編かつギャグ回故、そこそこ端折っている部分もありますが、ネタ度はだいぶあると思います!
「結婚についてのコラムを書いてほしい、ですか?」
雪ノ下さんの言葉が奉仕部の部屋中に響き渡る。
「うむ。入稿は来週……仕上げとか含めるとその翌週ってことになるな」
「平塚先生。えらく急なのはどうしてですか?」
自信満々に答えた平塚先生に対して、八幡が尋ねる。
「……仕事というのは、溜め込んでしまうものだろう? 特にやる気が起きないものとかは猶更だ」
「あ、その気持ちわかります!」
「勉強とかもそうですよね!」
由比ヶ浜さんの後に続いて、僕も同じ意見であることを主張する。
確かに、やりたくないこととかって後回しになりがちだよね!
「貴方達はもう少し目先の苦労もするべきだと思うのだけれど……」
何故か雪ノ下さんがこめかみを抑えていたけれど、気にしない方向で。
「上から頼まれたのだが、私だけではなかなか考えるのが難しくてな……そこで、君たちの力を借りたいと思ったのだ」
「あー……こういう調査って、結婚している人じゃないとなかなか……」
「…………吉井。合宿での話、私はまだ忘れていないからな?」
やべ、地雷踏んだ。
「それなら、アンケートとってみるっていうのはどうかな? ほら、私たち四人だけで意見出し合ってもまとまらないなら、ほかの人の意見も参考にしてみようよ!」
なるほど!
さすがは由比ヶ浜さんだ。こういう時にしっかりと意見出してくれる……。
「なるほどな。由比ヶ浜の普通さが生きた瞬間だな」
「なんかヒッキーの言い方うれしくないし……」
うん、その言い方は確かにあまり良くないと思う……。
「そしたら、僕と由比ヶ浜さんで、学校に残っていそうな人を探してアンケートを取ってみるよ。八幡や雪ノ下さんだと……なんというか、こういうの向いてなさそうな気がするし……」
「よくわかってるじゃないか」
「そうね。比企谷君が行くと、宗教勧誘か何かだとおもわれがちだわ」
「比企谷がすると本当に教祖になりそうで怖いな……」
平塚先生まで同意する始末。
いや、それに対して自信ありげに答える八幡もどうなの?
「とりあえず、まとまったら一回ここで見てみようよ。どんなアンケート結果になるかわからないわけだし」
僕がそう提案すると、みんな軒並み賛成のようだ。
そんなわけで、僕と由比ヶ浜さんの二人でアンケートを取りに行ったのだった。
※
というわけで、集めてきたアンケートを基にして、どんな結果が出てきたのかをアトランダムで見ていくことになった。
机の上にズラリと並べられたアンケート用紙は、なかなかにシュールな光景に思える。
「というわけで、見ていくわけだが……」
八幡がそう言いながら、アンケートをチェックしていく。
その結果、以下のような感じになった。
Q1、結婚相手の職業としていいと思うのは?
『声優さんと結婚したい』
『……看護師』
『専業主夫にならなければなんでもいいわ』
『坂本雄二』
『島田美波お姉様』
「ってちょっと待て。明らかに職業じゃないの書いている奴いるぞ。これ固有名詞だろ。てか坂本や島田じゃねえか」
「誰が書いたか一目瞭然ね……」
雪ノ下さんがこめかみを抑えていた。
うん、間違いなく雄二の名前を出したのは霧島さんだよね……。
そして、美波のことを出したのは清水さんだと思う。
Q2、結婚について不安って何かある?
『料理とかマジ無理。あと掃除も無理』
『嫁姑問題とか同居別居とか遺産相続とか。兄弟多いから』
『ハヤ×ハチの行末とか不安!』
『ワシは本当に女性と結婚出来るかどうか分からぬのじゃ』
『お料理を食べてくれるかどうか不安です。そもそもなかなか料理をさせてくれないんです。危ないとか言われてしまって……』
『浮気は許さない』
……うん、それぞれ大体誰が書いているのかどうか想像つく。
というか最後は間違いなくやっぱり霧島さんだよね。
「料理とか掃除については避けて通れない道なのだけれど……」
「でも実際かなり細かいところまでやろうとすると難しいよねぇ……私も料理とか苦手だし……」
「由比ヶ浜の場合はあれだ。一度炭を作るところから卒業するべきだな」
「それはさすがにちょっと……うん……そう、だね……」
自分の料理を思い出したのか、由比ヶ浜さんは少し落ち込んでしまっていた。
まぁ……姫路さんの料理も大概だから……。
というか、料理作るの危ないって言われてるのって姫路さんなのでは?
Q3、結婚相手に求めることって何?
『顔。爽やかさ』
『声の可愛さ。というか声優さんと結婚したい』
『……美しさ』
『ボクの会話についてこれる人かな♪』
『趣味を理解してくれる人。同性同士というのはマイノリティではあるけれど、それだけ奥が深いということを理解して欲しい』
『お姉様さえいれば他には何もいりませんわ!』
『雄二』
「結婚相手に求めることっていうか、指名してるじゃねえか」
「……あの人は本当にぶれないわね」
「清水さんもちゃっかりぶれてないよね……」
なんというか、こういうのだけで誰なのかわかっちゃうのが僕たちの周りの人らしい。
ちなみに、顔と爽やかさで思い浮かべたのは、葉山君のことが気になっている人のこと。
もしかしたら三浦さんとかかもしれない。
だけど、同性同士について謎に語っているのは一体誰なのだろうか……なんだか少しだけ寒気がするのは気のせいだろうか。
Q4、結婚相手にして欲しくないことは?
『浮気は許さない』
『専業主夫になること』
『……写真を撮らせてくれないこと』
『ハヤ×ハチを邪魔すること』
「最後絶対結婚相手にして欲しくないことじゃないよね? というか何あの人は頑なに意見曲げようとしないの?」
ハヤ×ハチって言い続けているのはきっと海老名さんだろうなぁ……。
ともかく、この意識調査はなかなかに難航している模様。
「このまま記事にするのもどうかと思うわね……」
雪ノ下さんのいう通り、このまま載せるとただの大喜利大会で終わってしまいそうだ。
だからなるべくならもう少しきっちりとした感じになった方がいいと思うんだけど……。
「結婚に対する不安とかって、経験してみないとわからないことも多いからねぇ~」
由比ヶ浜さんが、机に伏しながら言う。
あ、胸が強調されていいですね(キリッ)。
「そういうことならば、疑似的に経験していそうな人に聞いてみるのが一番いいかもしれないわね。身近にいる、ろくでなしの面倒を見ていて苦労しているであろうという点では、彼女が一番理解があるのではないかしら?」
すごくいい笑顔を浮かべて、八幡のことを見つめながら雪ノ下さんは言った。
あ、それもしかして……ていうか八幡気づいてないね? 完全に『そんな人いるなら俺の人生ゴールイン間違いなしだね』って顔してるよ。
ともかく、雪ノ下さんの言葉通り、とある人物が召喚されることとなった。
――それがまさか、あんな展開になるなんて誰が予想しただろうか。