やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第二十一問 文化祭は始まり、彼は意外な人気を得る。 (4)

 小町と葉月が二人で次の場所まで向かった後、ちょいちょい客が訪れるようになった。時間帯は昼前。確かにそろそろ外に居た人達も一旦中を見に行こうと動くような時間帯だ。それでもまだ回せない程ではない。意外にも今いるメンバーはしっかりと自分の役割を果たすので、効率よく回っている。

 

「よく来たな……ここは選ばれし者が訪れる中華喫茶!」

「材木座。お前キッチン入れ」

 

 一部例外は居るが。

 

「しっかし、結構人が来るようになったわね……」

「大盛況ー、とまではいかないけど、そこそこ人気店っぽくない?」

 

 島田と由比ヶ浜が二人でそんな話をしている。

 ちなみに、客層は男性が多い。やっぱりこれ、チャイナドレス目当てじゃねえか? 後、戸塚のことをそんなじろじろ見るな!!

 ただ、そんな中に混じっている女性客が何人かいるのだが、その視線が何故か俺に向けられている。え、なに、そんなに俺居るのダメ? ゾンビはお呼びじゃないって? はいそうですね。大人しく引っ込んでいたいんですけど、吉井が一向に俺を下げてくれないので、文句ならソイツに言ってくれませんかね。

 

「案外この中華喫茶って正解だったかもしれないね」

「名前は中華喫茶『ヨーロピアン』で、中華喫茶なのか洋風喫茶なのか全然分からねぇけどな」

 

 名前を決めるのが面倒だったというのと、坂本が面白がって、吉井が黒板に書いた名前をそのまま採用していた。結果、文化祭での一年F組の出し物は、『中華喫茶「ヨーロピアン」』という何とも意味不明なものと化していた。せめて店の名前位もう少しまともな物にして欲しかった。何だこれ。

 

「そのおかげで、面白半分で入ってくる人も居て結果的には正解だったわけだな」

「あれ? 坂本?」

 

 何故か坂本が入ってきた。

 シフトの時間まではまだ少し時間あった筈だが。

 

「校舎回ってたはいいものの、ちっとばっかし暇になったからな。厨房の方手伝おうかと思ってな」

「……粗方撮影を終えた」

 

 そして土屋は何故かカメラを片手にやり遂げたような表情を浮かべている。コイツは一体何を撮っていたというのだろうか。

 

「あれ? 秀吉は?」

 

 明久が尋ねる。

 確かに、この二人が居ると大抵木下もセットになっている印象があるからな。

 

「アイツはまだ演劇部の方に顔出しているそうだ。時間ぎりぎりになるんじゃねえか?」

「くっ……秀吉のチャイナドレス姿を拝めないなんて……っ!」

「いや、アイツの場合はチャイナ服だろ。ドレスじゃねえからな?」

「なんでさ八幡!? 秀吉だよ!?」

 

 その理屈は分からねぇよ。

 

「ま、そういうことだから各自持ち場に戻るぞー。どの道忙しくなるのは葉山が戻ってきたらになりそうだからな。今の内に暇な時間を満喫してるさ」

 

 坂本の言う通り、恐らくこの喫茶店のピークは葉山がシフトを担当する時間だろう。葉山目当てで来る客と、チャイナドレス目当てで来る客が合わさるに違いない。ただし、その時間帯にチャイナドレス着るメンバーの中にはオカンも混ざっているんだけどね。ちょっとでも変な目線向けたら、視線だけで人を殺せそうな勢いありそうだからね。うわこわ。近寄らんとこ。

 

「そら、そうこうしている内に客も来てるぞ。任せたぞー」

 

 そう言うと、坂本は厨房の方へと姿を消す。その後を追うように土屋も入っていった。今のシフトは俺達だから、あくまで俺達で接客してくれってわけね。

 

「いらっしゃいませ~」

 

 真っ先にいったのは吉井だった。

 吉井は笑顔で客の所まで行き、

 

「あれ? いろはちゃん!」

「こんにちわですー、吉井先輩♪遊びに来ちゃいましたー」

 

 よりによってその客が一色であることが発覚した。

 隣には恐らく一色の友人らしき女子生徒が居る。くそっ、こんな姿で一色に会ったら何言われるか分からねぇ。とりあえずステルスヒッキー発動しておくか。

 

「あれ? あの子もしかして……」

 

 島田の目が鋭くなる。

 待ってくれ。そういえば島田は海で一色に会っていたな……嫌な予感する。

 

「いらっしゃい、いろはちゃん。葉山君ならもうすぐ来るだろうから、ここで待ってたらいいんじゃないかな?」

「おーっ、ベストタイミングでしたね! よかったね、中井ちゃん♪」

「う、うん……」

 

 中井ちゃん、と呼ばれた女の子は、眼鏡をかけた大人し目な子だった。ほぅ、一色はああいうタイプの女子と友達になるスキルを持っていたのか。てっきり友達ゼロ人付き人多数生活でも送っているのかと思ったぞ。意外な一面を見た気がする。

 

「ところで吉井先輩。せんぱいはいないんですか?」

 

 な ん で お れ を な ざ し す る ?

 

「え? 八幡のこと? それなら……」

 

 おいコラ。

 周りをきょろきょろするんじゃない。何も言わずにきょろきょろするってことは、少なくともこの場には居るってことが分かっちまうだろ。ちっとは言い訳してくれ。

 

「……島田。俺は厨房に行くから、あとは任せた」

「ふぇ? ヒッキー?」

 

 島田に後を任せようとして、すぐ近くに居た由比ヶ浜が疑問符を浮かべる。

 説明している時間はないんだ。一刻も早くこの場から立ち去らなければ……!

 

「あ、せんぱーい! こんなところに居たんですね!」

 

 悲報:逃げる間もなく後輩に捕まる。

 

「なんで隠れたりしようとするんですかー。それにこっち向いてくださいよー。恥ずかしいんですかー?」

 

 ぐいぐい引っ張るな。

 服が伸びちまうだろ。

 

「こうなったら回り込んで……えいっ!」

 

 俺を振り向かせることを諦めたのか、一色は自分から俺の顔を覗き込んでくる。

 そして、しばらく言葉を失った後に、一言。

 

「……ごめんなさい人違いでした」

「いや合ってるからね?」

 

 しまった。

 条件反射で否定してしまった。

 一色が勘違いしていてくれれば何とかその場を切り抜けられたかもしれないというのに。

 

「え……えぇ!? せんぱいの腐った目がなくなっちゃって、アホ毛しか残ってないじゃないですか!!」

「俺のこと目だけで判断するのやめようね? ちょっとクラスの奴が本気出しただけだ」

「……はっ!」

 

 じろじろと俺の顔を見ていた一色だったが、しばらくすると何かに気付いたように。

 

「まさかこれって普段とは違うちょっとした一面を見せることで私の気を引こうという高度な作戦だったんですかごめんなさい結構グッときたといいますか思わぬギャップを感じてしまいましたがやっぱり私にはまだ無理ですごめんなさい」

「もうなんて言ってるかわからねぇけど、なんで俺二回もごめんなさいされたの?」

 

 ちゃんと聞き取れたのは『ごめんなさい』のみだったけど、それだけでも何故か二回言われた気がするぞ。何でそんなにフラれるの?

 

「……ヒッキー、この子ってもしかして……」

「……ハチってば、まったくもぅ」

 

 由比ヶ浜が困惑し、島田が珍しく拗ねている。

 そして、一色の隣に居る中井さんと呼ばれていた女の子もオロオロしている。

 

 ……うん、これどうしようね?

 




体調が戻りません……。
喉の痛みはなくなりましたが、咳が止まらず、身体が若干怠いです。
皆さまも風邪には十分お気をつけて……。
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