やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第二十一問 文化祭は始まり、彼は意外な人気を得る。 (5)

 結局あの後生きた心地のしないまま、教室でのシフトを終えた。一色は友人と共にそのまま残るのだそうだ。何せ葉山がシフトに入るらしいからな。やっぱり葉山目当てだったか……だから島田さんに由比ヶ浜さん。その微妙にジト目になるのやめてもらえませんかね。地味に癖になりそうで怖い。

 

「そういえばミスターコンテストとミスコンってどっちが先なんだっけ?」

 

 吉井が校内を歩きながらそんな質問をしてくる。

 ちなみに、俺達はシフトを終えてはいるものの、ミスターコンテストとミスコンが控えているせいで衣装等はそのままで歩いている。だから目立つのなんの……特に、島田や由比ヶ浜への視線が飛んできて、色んな意味で痛い。主に嫉妬的な意味で。

 そしてやっぱり感じる、女性からの視線。ごめんなさいね、こんな奴がこんな格好していて。

 

「……ねぇ、ミナミナ。絶対ヒッキー分かってないよね? この視線の正体」

「……そうね。本当こういう時ばかり無自覚で鈍感なんだから」

「え、何。何の話してんの二人で」

 

 思わず聞いてしまった。

 目の前で俺に関する内緒話しないでもらえますかね……思いの外心にくるんですよ。

 

「「……はぁ」」

 

 そして何故二人で顔を見合わせた後に溜め息つくんだ。てかいつの間にかそこまで仲良くなってるのかよ。

 

「ちなみに、ミスターコンテストの方が後よ、アキ。何でも、ミスコンはしっかり審査したいらしくて、ミスターコンテストはノリと勢いに任せてやっちゃいましょー……って感じらしいわ」

「まぁ、確かにミスターコンテストは優勝がほぼ決まったようなものだしなぁ……悲しいけど」

 

 葉山が出場することになるのだとすれば、間違いなく葉山が一位を取ることだろう。俺としては気に喰わないが、スクールカーストのトップを我が物とし、一年生ながら学校の中でも上位の人気を保っている。何故か俺はそんな中で張り合わなくてはいけないらしい。なんでこんなことになっているのだろうか。

 

「あれ? 吉井君達ですか?」

「また随分と不思議な格好してるね~」

 

 ちょうどその時、制服姿で回っている姫路と工藤に遭遇した。なる程、コイツらは普通に歩いているわけね。そう言えば二人のクラスが何しているのか聞いていなかったな。

 

「姫路さん! そういえば姫路さんのクラスって何しているの?」

 

 早速吉井が切りこんできた。

 

「私達のクラスはお化け屋敷をやることになっているんですけど……私怖い物とか苦手でして……」

「そうそう。瑞希ちゃんってば自分がお化け役やるのも難しいーってことで、ボクと一緒に受付係やる感じになってるんだー。ボクとしては、和服の瑞希ちゃんの姿も見たかったんだけどねー」

「確かに姫路さんの和服姿とか見てみたいよね。似合いそうだもの。そしてかつ大きく強調されそうなところが……」

「ちょっとアキ。それセクハラだからね?」

 

 溜め息交じりに島田がすかさずツッコミを入れる。

 そして吉井よ。万乳引力のすばらしさをお前もマスターしてしまったというのか……いや俺よりマスターしてそうだわコイツ。

 

「ところで、後ろの眼鏡かけた方はどちら様でしょうか……?」

 

 え、まじ?

 割とガチでこれ分からない感じなの?

 あと工藤、お前なんかニヤニヤしてるよな。絶対お前は分かってんだろ。

 

「えっと、ヒッキーだよ?」

「ヒッキーって……比企谷君、ですか?」

 

 何故か由比ヶ浜の言うことをいまいち信用し切れていない様子の姫路。

 待て。お前は普段俺のことを何で判断してんだよ。

 

「でも、目が腐ってないですし……」

「何、俺判断基準になる程目が腐ってるの? というかそこでしか判断されない位には目が腐ってるの?」

「あ、比企谷君ですね」

 

 今度は何で評価されたのん?

 いい加減俺だという判断をする基準表みたいのが欲しくなってきたよ?

 

「木下が本気出してメイクした結果よ。見違える程になっちゃって、さっきも喫茶店で客からの視線を集めていたりしてたのよ」

「確かに、今の比企谷君は注目されそうですし……」

 

 そんなに目立つ格好だろうか。

 もしそうなのだとしたら、木下はどんだけ本気で俺のことを魔改造してくれやがったのだろうか。そこまで似合わないとなると段々泣きたくなってきたよ?

 

「おやおや? 比企谷君なかなかかっこいいじゃない~」

「嘘つけ。変に目立つだけだろ」

「そんなことないよ~? 実際さっきから女の子の目線独占しちゃってるじゃん?」

「そうじゃない。ゾンビがチャイナ服着て歩いてるわけだから、どこのキョンシーだって疑ってんだろ」

「君って本当皮肉ネタ上手いよね……そんなに悲しいのなら、ボクが比企谷君にいいことして慰めてあげてもいいんだけどなぁ~」

 

 耳元で変なこと言うのやめてもらってもいいですかね……なんというか、近い。近いし良い匂いするしなんかドキドキするから! やめて! 俺のライフもたない!

 

「ちょ、ちょっと工藤さん! ハチに随分と近いってば!」

 

 そんな俺と工藤の間に割って入り、あろうことか俺の腕を掴んでぐいっと引っ張る島田。

 え、ちょ、マジ? それもそれでやばい。

 

「おやおや? これは申し訳ないことをしちゃったかな~? もう島田さんが慰めてくれちゃう感じかな? ボクとしては残念だなぁ……それじゃあ吉井君、ボクといいこと……」

「だ、駄目ですっ!」

 

 ん?

 標的が吉井に変わったと思ったら、今度は姫路が間に入ったぞ?

 

「吉井君には、その……まだそういうのは早いと思います!」

「えぇ!? 僕もしかして子供扱いされてる!?」

 

 ある意味知能レベルは子供以下だけどな。

 下手すればルミルミや葉月の方が上まである。

 

「ところで、みんなはひょっとしてミスコンとミスターコンテストに出場するのかな?」

 

 話題を変える意味で工藤がそんなことを尋ねてくる。

 

「えぇ。せっかくだし出てみようって話になったから、出場することになったのよ」

「そうなんですね! 私も皆さんのこと応援しますね!」

 

 姫路達はどうやら観客側に回るらしい。

 

「ありがとう、姫路さん! 優勝目指して頑張るね! ……と言っても、葉山君には負けそうな気するけどね」

 

 そうなんだよなぁ……というかもう決まったようなものだからやらなくてよくない? そうすれば俺ステージに上がらなくて済むし、ほかの人もゾンビ見なくて済むじゃん?

 

「バカなこと考えてないで、行くわよハチ……」

 

 待ってくれ。俺をバカ扱いするな。

 

「それじゃあ、後で姫路さん達のクラスも遊びに行くね!」

「はい! 待ってますね、吉井君!」

「たくさん驚いちゃってね~」

 

 そう言うと、姫路と工藤は別の所へと向かっていく。

 俺達も、コンテスト受付の前に、とある場所へと向かうのだった。

 




気付けば更新夜になってしまっていました!!
ごめんなさい!!

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