「「第一回! 嫁度対決ー!!」」
……なんか唐突に始まったんだが。
事の発端は、平塚先生が奉仕部に持ち込んだ依頼。内容は『結婚についてのコラムを書いて欲しい』というものだった。由比ヶ浜の発案でアンケートを取ってみたものの、正直使えそうな意見があまりなかったという結果に終わる。雪ノ下が擬似的に経験してそうな人の意見を取り入れようと呼んできたのが……何故か我が妹こと小町だった。
そんな小町は、事情をある程度把握した後で俺たちにこう宣言したのだ。
「まずみなさんには圧倒的に嫁度がたりません!! これは早急に嫁度を上げなければいけません……そこで小町にお任せあれ! あ、明久さんもちょっとお手伝いしてくださいね」
そんなわけで小町と吉井の手によって、部室が謎のクイズ大会部屋みたいに早変わりしたというわけだ。というか一緒に仲良くタイトルコールまでしやがった吉井は絶対に許せない。小町に手を出そうなんざ百年早い。
「あの、ハチ? これは一体……?」
ちなみに、何故かちゃっかり島田や姫路も参加している。何人か女性陣を交えている辺り、一応のこと心得てはいるのな……だが何故戸塚がいない!?
「あの、嫁度対決というのはどういう……?」
「あー……えっとだな」
とりあえず、細かい事情を何も聞かされていないだろう二人に今回の趣旨を説明する。そうしてある程度説明を終えたところで、
「なるほどね。そういうことだったらちょっと面白そうだし、ウチもやってみるわ」
「クイズ形式ってことならばある程度知識が試されるわけですし、後学の為にもつけておく必要がありそうです」
何故か姫路がやる気満々だが、後学に使えるとは思えないぞ、この企画。
「本当ならば料理対決とかもやりたかったんですけど、今からですとなかなか時間なかったのと、何故か明久さんが頑なにやりたがらなかったのでクイズだけにしました!」
ナイス吉井。お前の判断は正解だ。
「これから皆さんには嫁度検定問題を出していきます。皆さんは嫁の立場に立ってお答えを書いてください……って、あれ? お兄ちゃんもやるの?」
何故か解答席に座っている俺を見て目を丸くする小町。
「俺も一応専業主夫を目指す身だからな。こちら側にいる方が正しいだろ」
「ハチ……今時たぶん結婚しても共働きとかの家の方が多いわよ……」
それ以上現実を突きつけようとしないでくれ、島田。
「とりあえず第一問行ってみましょう!」
そして小町は構わず進行続けるのな。
「お姑さんに掃除の仕方で文句を言われた。こんなときどうする?」
問題を読むのは吉井なのね。色々役割分担していて地味に用意周到なのが腹立つ。
そして話題が出た途端に、周りにいる奴らはフリップに書き始めている。ていうか平塚先生も参加してるんかい。
「それじゃあ回答オープン!」
小町の掛け声に合わせて、俺たちは自分の回答をオープンした。
結果は次の通り。
『ごめんなさいしてやり直す』
『自分の掃除の仕方の合理性を一から説明する』
『何処が悪いのか聞く』
『とにかく徹底して認めてもらう』
『拳で語り合う』
『どうしようもない』
上から順番に、由比ヶ浜、雪ノ下、姫路、島田、平塚先生、俺の順番。
「とりあえず平塚先生。論外です」
「吉井貴様ぁ!」
いや……至極真っ当な意見だと思います……姑と拳で語り合わないでください。余計なイザコザ生んでどうするんですか。
「姫路さんもなかなかいい回答ですね……何処が悪いのか聞いてそれ「取り入れるってことですか?」
「掃除の仕方で文句を言われるってことは、つまり何か悪い点があるのかもしれませんから……なければそれでいいですし、あれば改善しなきゃいけませんからね」
「雪ノ下さんとは真反対な意見だけど、なんかいいなぁ……」
「あら、吉井君。私の答えに不満でもあるのかしら?」
「いやそうじゃないんだけども……」
各々言いそうな内容書いてきているから困る。
「ちなみに、小町的模範解答は、『実母に愚痴ってまた明日から頑張る』です♪」
「地味にリアルな解答だ!?」
思わず由比ヶ浜がツッコミを入れていた。
確かに地味にリアルすぎて嫌すぎる……。
「どんどんいきますよー!」
「今日は結婚記念日! でも旦那は完全に忘れてて、記念日終了。さぁあなたならどうする? あ、八幡の場合は奥さんね」
なるほどな……確かにそういうこともあり得るのかもしれない。
これは一体どんな回答になるのか?
「それじゃあ、オープン!」
『次の日に祝う!』
『本人が思い出すまで家事をしない、会話しない』
『相手が思い出してくれるまで待つ』
『記念日だったことを伝えて、どうするのか反応を窺う』
『謝るまでメールを送る』
『諦める』
「平塚先生、重いです」
「重いってなんでだ!? だって記念日なんだぞ!?」
言いたい気持ちは分かりますけど、それわりときついです。だから嫁の貰い手が……。
「何か言いたげだな、比企谷」
そう言うところですからね?
「由比ヶ浜さんはなかなかいいよね! 忘れててもしっかりと祝おうとする辺りがいいと思う!」
「小町もそう思います! というわけで小町的模範解答は、『素直にどこか行こうと誘う』です!」
確かに、小町の意見は参考になるな……なんというか、よく分かっている、というべきか。他の奴らよりその点『嫁度』というやつが高いのだろう。
「この調子で第三問!」
「旦那が家事の手伝いをしてくれない。こんなときどうしますか?」
俺の場合は奥さんに当てはまればいいわけね。
『それじゃあオープン!」
『お願いする』
『罰を与える』
『オハナシをする』
『手伝えることがないのか話し合う』
『目で訴える』
『押してダメなら諦める』
「八幡のそれって座右の銘的なあれだよね!?」
「ばれた?」
けど実際、言ってダメなら自分でやった方が早いし、何より効率良い気がする。
「ゆきのんのそれも、なんか怖いよ……」
「罰って何を与えるつもり……?」
由比ヶ浜と島田が目を丸くしている。
雪ノ下はしれっとしてる……こいつらしいといえばこいつらしい。
あと平塚先生。それ目で訴えるじゃなくて、正しくは威圧するでは?
「小町的模範解答は、『お小遣いを減らす』でした〜」
「確かにそれお嫁さんがやりそうなことだよね……」
吉井が感心していた。
リアルな嫁ならばそういう感覚なのだろうか。
「それでは最終問題!」
「最近主人の帰りが遅い……もしや、浮気? こんな時どうする?」
各々が回答を書いている。
「それじゃあいきましょう! オープン!」
『困る』
『追い詰める』
『O☆HA☆NA☆SHIする』
『浮気ではないことを信じる』
『鉄拳制裁』
『寝る』
「ちょっと八幡!? 寝てどうするの!?」
「やましいことがあれば勝手に自滅するだろ。だが、そうでなければ忙しくて帰れないだけだろうからな。こちらからアクション起こすよりも、相手からアクション起こさせた方が手っ取り早い」
特に『浮気』とかそういったものの場合、着信履歴とか物的証拠とか、そういったもので油断してぽろっと出してしまうこともあるだろう。
「うわぁ……お兄ちゃんそれは妙にリアルだよ……」
小町にまで引かれた。
解せぬ。
「ちなみに、小町的模範解答は、『信じる』でした! これと同じなのは美波さんだけでした!」
「へ? ウチ?」
確かに、島田だけは『信じる』って答えてたからな……ていうか、姫路のそれはさっきから何なんだ。話し合いとは別の意味を感じる。
あと、平塚先生は論外です。
「ところで雪ノ下さん……それって、問い詰めるのことじゃないの?」
「追い詰めるも問い詰めると、そこまで変わらないじゃない?」
…………全員が無言になった瞬間だった。
結局、この嫁度対決は勝敗が決まらないままお流れとなったが、収穫はあったようで……依頼のコラムは難なく書き上げることが出来たという。