とりあえず、めぼしい奴らは全員出たと思われる。そのほかにも何人か登場したものの、島田や雪ノ下達のような盛り上がりを見せることはなかった。そもそもアイツらがとりわけチートなだけだからな……色んな意味でズルいんだよ。何気に工藤も工藤でさり気ないアピールをしてみせるし。よくよく考えれば周りの女性陣レベル高すぎじゃね? 勘違いして告白してキモイって言われて完膚なきまでに振られるまであるよ。フラれた上にダメージまで残るのかよ。やっぱぼっち最強じゃん。
『さてさて、これにて全員出終わったけど、まだまだ終わりじゃないっしょー!』
え? まだ何かあんの?
出場者はこれで全員出揃ったんじゃないのん?
『ここからは、本日の為に来てくださったゲストの方々に御登場いただくコーナーっしょー! っべーわ!』
あ、忘れてた。
そういえば総武高校に通っている奴ら以外にも、このコンテストに参加出来るパートがあったんだっけか。投票結果には反映されないものの、思い出に残ることは間違いないだろう。学校見学気分で文化祭を覗きに来た奴だっているだろうし。そういった意味では、今回の企画も間違いではなかったのかもしれない。
『まずはこの方! 妹系として申し分ない女の子! 島田葉月ちゃんっしょー!』
「なに!?」
思わず変な声が出てしまった。
まさか、このコンテストって小学生まで参加して大丈夫なのかよ!?
確かに葉月は小町に連れられてきていたけど、まさかコンテストにまで参加しているとは……。
「あっ! おにいちゃーん! バカなおにいちゃーん!」
そして、俺達を見つけた葉月ちゃんは、にっこにこと笑顔を振りまきつつ、手を大きくブンブン振っている。
あ、俺これしぬかも。
「よかったな、明久。公衆の面前でバカって呼んでもらえて」
「バカなお兄ちゃんだよ!? 悪意ある略し方やめてよ雄二!」
「……『バカ』なお兄ちゃん」
「悪意ある強調も止めて!!」
「バカなお兄ちゃんとは、本当に明久のことをそのまま表しておるのぅ」
「秀吉まで追い打ちかけないでよ!! それに呼ばれているのは僕だけじゃないでしょ!!」
発言一つで流れるようにここまで繰り広げられるとは、流石だと思う。コイツらの吉井いじりは半端じゃない。すべてに納得がいくが。
それよりも今は葉月だ。控えめに言って、今の葉月は妹力があまりにも強すぎる。このままだと俺のお兄ちゃんスキルが発動して、今にも壇上にのぼってしまいそうだ。それよりも先に島田セコムが働きそうだが。アイツもアイツでなかなかのシスコンだし。
『そして二人目ー! 本日はこの子の付き添いできたそうです。比企谷小町ちゃーん!』
「よろしくで~す!」
にぱにぱと笑顔を振りまく小町。
チッ、小町に悪い虫がつきそうで不味いな。ここはとりあえず害虫駆除をしなければならないな。手はじめに吉井を……。
「って、ちょっと八幡! なんで僕の方をジッと睨みつけているのさ!?」
「五月蠅い。自分の胸に手を当ててよく考えろ」
「明らかなる理不尽!?」
何やら変なことを言っているが、関係ない。
何故か分からないが、吉井は不用意に小町に近づけてはいけないような気がしている。お兄ちゃんは絶対に許しませんからね小町。
『どんどんいくっしょー! 今日は学校見学がてら文化祭に遊びに来ちゃいましたとのこと! 一色いろは~! いろはす~!』
本当知り合いばかり登場するなこれ。
そしてステージに上がった一色は、あざとスマイルで観客たちにアピールしている。
「一色いろはですぅ。総武高校を受験するので、学校見学の為に今日は遊びに来ましたぁ! 来年もし私が受かったら、その時はよろしくで~す! ね? せ・ん・ぱ・い♪」
ウインクまで決めて完璧なる小悪魔系女子を演じ切った一色。
ていうか一色よ。最後確実に俺の方見てたよな。
「モテモテだな、比企谷」
「うるせぇ坂本。いい加減さっさと正妻とイチャコラしたらどうだ」
「お前までそれ言うか比企谷……てか意外だな。そういったことにはそこまで興味がないと思ってた」
「俺だって男だぞ? 人並みには色恋沙汰に興味あるつもりだ。結ばれてから破局するまでの流れなんて、見ていて愉悦だと思うぞ」
「それ本心で言ってるのだとすればなかなかに性格悪いな」
坂本だけには絶対に言われたくない。
『どんどん参りましょうー! 実は総武高校のOGとしてここにやってまいりました~!』
……んん?
総武高校のOGだと……?
何故だろう。物凄く嫌な予感が頭の中を支配しているのは。
「どうしたの? 八幡。今日一番に気分悪そうだけど」
吉井が真っ先に気付いて俺に尋ねてくる。
今の俺、そこまで酷い表情してる?
いや確かに思い至った事実が本当だとしたら、俺の心労はとてつもなく増えるわけだけどさ……つか、コイツもそうだし、とある人物もそうだと思う。
「吉井。俺は万が一の為に逃走の準備をしておく。お前も逃げる準備をするなら今の内だからな」
「何の話!?」
「何をしておるのじゃコヤツらは……」
「……意味不明」
だろうな。
そういえば木下と土屋の二人は会ったことない人物だからな。
もし出会ってしまったら、木下はいいように遊ばれて、土屋は……うん。鼻血のイメージしか思いつかん。大体合ってるだろ。
『現生徒会長の城廻先輩の知り合いでもあります~!』
あ、もうこれ黒確定だわ。
『雪ノ下陽乃さんっしょー!』
「ひゃっはろ~!!」
出てきてしまった。最恐の魔王が……恐れていた事態が現実になってしまったような気分を味わっている。出来ることなら逃げだしたい。
現在、ステージの上では笑顔を振りまいている雪ノ下さんだが、その仮面の下で何考えているのか分からないし、第一遭遇したら絶対に絡まれるに決まっている。
「というわけで吉井。後は任せた。俺は教室にもど……いや、どっかでサボる」
「堂々とサボる宣言したね!?」
そう言って、俺はその場を後にする。
出来ることなら、今の内に何処かへ逃げておかなくては……。