やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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【第二十四問】文化祭アンケート
文化祭についてのアンケートにご協力ください。

「貴方の考える文化祭のキャッチフレーズは何ですか」

葉山隼人の答え
「絆 ~みんな仲良く一丸に~」

教師のコメント
全員で取り組もうとする姿勢が見えるいいフレーズですね。

土屋康太の答え
「美」

教師のコメント
何故鼻血で少し汚れているのですか。

吉井明久の答え
「祭りじゃああああああああああああ!!」

教師のコメント
勝手に叫ばないでください。


第二十四問 バカと騒ぎとミスターコンテスト (1)

 昨日は散々な目に遭った気がする。

 雪ノ下さんに何としても勝って欲しいという雄二の言葉より始まったスーパーボール作戦。結果的にこれは成功したと思っているけど、そのせいで僕は雪ノ下さんに一年が終わるまでの間補習地獄を通達させられたのだった。ちなみに補習の始まりは文化祭が終わった後から。学校の授業が始まる前に部室に来て補習をするというもの。つまり、僕の朝ゆっくり起きて優雅な朝食と優雅なオカズを楽しむ時間がなくなり、代わりに美少女(冷酷な人)と一緒に二人きりで(監視されながら)勉強するという天国(地獄)のような時間を味わうこととなったのだった。何故だ、何故僕だけがこんな目に――!

 ちなみに、その後ちゃっかり陽乃さんには思いっきり笑われた。『まさか雪乃ちゃんにあんなことするなんて予想外だよ~! だけど次やったら……分かってるよね?』というお言葉まで添えられていた。

 怖いよ!! この姉妹やっぱり怖いよ!!

 と、布団の中でぶるぶる震えた翌日。今日は文化祭二日目だ。

 つまり今日はミスターコンテスト開催日。午前中はクラスの仕事があるので、そっちもしっかり頑張らないと! 何よりミスターコンテストはそのままの衣装で行くことも可能。雄二からは『お前はネタ枠だ』と言われてセーラー服を渡されているけれど、こんな服着てたまるか!

 とか思いながら学校までの道のりを歩いていると、

 

「あれ……?」

 

 校門の所で誰かが囲まれていた。

 囲んでいるのは、後ろ姿でも分かる常夏コンビ。モヒカンと坊主の二人組だから、嫌でも分かってしまうというものだ。正直認識していたいとは思わないんだけどなぁ。

 そして囲まれているのは女の子……それも凄く見覚えのある女の子だった。

 ピンク色で長い髪の毛、そして兎の髪飾りをつけている女の子は。

 

「姫路さん?」

 

 正直、姫路さんが常夏コンビに絡まれているのはまったくの予想外だった。関わりがあるとはまったく思えないし、何より常夏コンビは姫路さんよりもバカ(だと思う)。僕も大概だけど、それ以上に二人揃った時の常夏コンビは果てしなくバカ街道まっしぐらな気持ちすら感じさせる。そんな二人が、何故姫路さんに?

 そして二人は姫路さんに何かを告げると、そのまま校門を通り抜けていく。残された姫路さんの表情は、心なしか暗く見えた。

 

「姫路さん!」

「吉井、くん……?」

 

 姫路さんが驚いたような顔を見せていた。

 いや、それ以上に僕は、見てしまった。

 

 ――姫路さんの目から、涙がこぼれている瞬間を。

 

「どうしたの姫路さん!? あの二人に何か言われたの!?」

 

 両手で姫路さんの肩を掴み、勢いよく僕は尋ねる。

 今姫路さんが泣いているのだとすれば、間違いなくあの二人のせいだ。もし何かをしたのだとすれば、絶対に許せない。

 

「なんでもないです……何でもありませんので……」

「何でもない訳ないだろ!? だって姫路さん、泣いてるよ!?」

「これはその、目にゴミが入っただけですから……っ」

 

 姫路さんは頑なに理由を言ってくれない。

 僕がバカだから、頼りないのだろうか……?

 

「……とりあえず吉井。姫路を離してやれ。それじゃあ何にも出来ねぇだろ」

 

 ちょうどその時、八幡が僕達の所にやってきた。

 

「比企谷君……」

「何かあったのは分かる。けど、言いたくねぇなら無理に言う必要もねぇだろ。吉井も、無理に聞こうとすんな。そんなんじゃ言いたくても何も言えなくなっちまう。ソースは俺」

 

 八幡の言葉を聞いて、今僕がやっているのは脅迫とほとんど変わらないことに気付き、ゆっくりと姫路さんの肩から手を離した。

 姫路さんは泣きながら、『ごめんなさい』と小さく口にすると、そのまま逃げるように教室へと向かっていった。

 残されたのは、僕と八幡の二人だけ。

 

「……別に全部を見ていたわけでもねぇし、まして話を聞いたわけでもねぇが、なんとなく状況から予想することは出来る。それでもよければ、聞くか?」

 

 八幡は僕にそう言ってくれた。

 なんでも構わない。

 今の僕は、あの二人に対する怒りの気持ちでいっぱいだ。だからそれに関連する話ならば少しでも聞きたい。

 

「もちろん」

 

 だから僕は二つ返事で了承する。

 

「あの二人は姫路に何かを言った。そして姫路はお前に対しては何も言おうとしなかった。つまり、お前のことをかばった可能性がある」

「僕のことを……?」

「アイツら、確かミスターコンテストに参加するなとか言っていたろ? しかもお前一人に対してのみ。それはつまり、お前が目立つことそのものが目障りだということになる。なら、それを根本から断ち切るにはどうすればいいか? 周りの奴らの評判を下げてしまえばいい。ということになる。人間関係というのは、周りからの評価を下げてしまえばすぐに転がり落ちてしまうものだ。噂というのは伝染する。あの時もう少し止めるのが遅ければ、人がより多く集まってきて、『姫路を泣かせたのは吉井明久だ』という訳の分からない噂まで流れている所だったぞ」

「そんな……?!」

 

 どうしてそうなるのさ!?

 

「他人にとって、真実なんざどうだっていいんだよ。言ってしまえば、『関係ないことに対してはより面白い物を追求する』ようになる。この場合の『面白い』は、潜在的意識の中にある物だから余計質が悪い。この際、『吉井の前で姫路が泣いていた』という事実があれば、それだけで勝手に伝染する。それこそアイツらの思うつぼだ。ああ見えてアイツらは姑息な奴らだったみたいだな」

「……なんだか、凄い腹が立つ」

「……だが、安心しろ。姫路が泣いたのは、何もアイツらに酷いことを言われたわけじゃねえ。姫路はきっと、吉井がバカにされたから泣いたんだと思う」

「え……?」

 

 それはつまり、姫路さんは僕の為に泣いてくれたということ……?

 

「あくまで仮説にすぎない。これらすべてが当たっている保証なんざ何処にもない。だが、少なくとも俺は現状からそう推察した。他人の悪意に対して敏感なのは事実だが、流石にあの姫路から悪意とかそういった類の物は見えなかった……百%善意……それこそ、間違いなく『本物』の涙だ」

 

 少し羨ましそうな表情を浮かべつつ、八幡はそう言った。

 何に対する羨ましさなのかは僕にも分からない。

 だけど、もし八幡の言うことが本当ならば……なお一層僕は許せる気がしなかった。

 僕の為に泣いてくれた姫路さん。少しでも彼女の涙に対して報いることが出来れば――。

 

 




明けましておめでとうございます。
そしてお久しぶりです。
風並将吾です。生きてます。
本編の更新の方もやっと行うことが出来ました……本当は6日に更新しようと思ったのですが、頭痛に悩まされた結果何も出来ずに寝てしまいました……本当に申し訳ありません。
これからは、更新できる時に投稿していこうと思いますので、何卒よろしくお願いします!

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