やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第一問 こうして、高校生活が始まる。(3)

「……何か用か?」

 

 突然やってきた吉井と坂本の二人に尋ねる。わざわざ自己紹介する為だけにここに来たとはあまり思わない。多分何かしら目的があってここにいるのではないだろうか。少なくとも坂本についてはそう考える。吉井はそこまで考えられるようには見えない。

 

「何って、見かけたから声かけただけだ。これからクラスメイトになるんだろう?」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、坂本は俺の横に座ってくる。吉井もまた反対側に座り、自然と二人に挟まれる形になった。せっかくのベストプレイスが台無しじゃねえか……。

 

「お前らここで食べるの? 二人でごゆっくり……」

「あ、ありがとー……って何ナチュラルに帰ろうとしてるのさ!?」

 

 ちっ、駄目だったか。何となく吉井は流されそうになってたからいけると思ったのだが。

 

「そう固ぇこと言うなって。クラスメイトが一緒に飯食って会話することなんてザラだろ?」

「……」

 

 坂本の言葉には特に答えず、仕方なくその場に座り直した。

 と、ここで俺はさっきの吉井の言葉が気になって、尋ねてみることにした。

 

「……そういや、ムッツリーニって何だ?」

「あぁ、土屋康太って奴のあだ名みたいなもんだ。寡黙なる性識者(ムッツリーニ)はクラスメイトだぞ?」

「そうなの?」

 

 正直、今のクラスで印象に残ってるのは四人だけなんだが。担任の西村先生、今目の前にいる二人、そして隣の島田。初日でクラスメイトの顔を全員把握することなんて無理な話だろう。時間をかけたところで殆ど覚えられる気がしない。

 

「そして、あれはムッツリーニのいつもの光景だよ。カメラで撮りまくってるんだよ」

「いや、あれどう見ても許可取ってないだろ……」

 

 多分写真部というわけでもないだろうし、まして撮られてる側はまったく気付いていないのだから、どう見ても盗撮にしか見えない。

 

「にしても、朝は面白かったな……くく……っ」

 

 坂本は笑いを堪えようともせず、今朝の失敗をネタとして持ってくる。人が気にしている所をこのやろう。

 

「安心しな。明久なんざ自己紹介の時に『ダーリンって呼んでください』って言って、男共から『ダァアアアアアリィイイイイン』って呼ばれてるからな」

「そのことを蒸し返さないでよ!?」

 

 やっぱり吉井はバカだった。何自己紹介の場でダーリン呼びを浸透させようとしてるの? つか野太い声のダーリン合唱とか誰得なんだよ。少なくとも俺は絶対そんなの聞きたいなんて思えない。

 

「ところでさ、八幡」

「は?」

 

 いきなり下の名前で呼ばれたことに対して、驚きしかなかった。何コイツ、コミュ力お化けなの? あ、いや違うわ、ただのバカだった。

 俺の声が思ったより響いたのか、吉井は目に見えて固まっている。

 

「僕何か悪いこと言った?」

 

 尋ねてくる吉井。きっとコイツは人が良いのだろう。だが、そうだとすればコイツがやっていることは、馴染めない奴を相手に同情しているだけだ。そんな優しさなんて必要ないし、何より虫唾が走る。

 

「いや、いきなり下の名前で呼ばれたものだからびっくりしただけだ」

 

 この言葉に嘘偽りはない。だが、すべてを言ったわけではない。俺はまだ、吉井明久がどんな人間なのか分からない。情報が足りなさすぎる。ただ、少なくとも偽善で行なっている事なのだとしたら、俺にとって不快でしかないことは確かだ。

 

「……何考えてるのか大体想像つくが、コイツがそこまで深いこと考えられるように見えるか?」

 

 ため息交じりに坂本が言った。

 ……一理ある。吉井がそこまで考えて何か行動するようなタイプにはとても見えない。

 

「ねぇ、それなんのフォローもしてないよね?」

「は? そんなこともわかんねぇのか?」

「やっぱバカにしてるだろ!!」

 

 俺を挟んで、吉井が坂本に抗議していた。そんなにやりたきゃ他の所でやってくれ。俺を挟んでまでやることではないだろう。

 

「って、そんなことはどうでもいいんだよ! 八幡に聞きたい事があるんだ!」

 

 気を取り直したらしい吉井が、俺の方を見てくる。どうやら聞きたい事があるというのは本当のことらしい。にしても、初日の俺に対して聞きたいことなんてほとんどない気がするのだが、一体何をそこまで気にしているというのか。

 

「八幡の隣の席に、島田さんっているよね?」

「あ? あぁ、そうだな」

 

 いきなりドイツ語で自己紹介始めてきたあいつか。一体何事かと思ったが、やっぱり他の奴らも違和感には気付いていたわけね。

 

「あの……よければなんだけどさ、八幡にも協力して欲しいんだ。島田さんと仲良くなりたいなって思ってて」

「……………………は?」

 

 きっと、この時の俺は、その日一番低い声を出したと思う。

 




バカテス7.5巻および9.5巻での美波や明久達のエピソードを元に作成しております。
ただし、9.5巻であった雄二や明久達の話につきましては、八幡が入院しているときにある程度解決しているという形を取ろうかと思います。
一応大前提としまして、奉仕部はまだメンバー揃ってません。双方の原作エピソードを盛り込みつつ、オリジナルエピソードとなります。なので、もしかしたら中学生の一色いろはが出るかもしれませんし、初期の方では全然絡んでくることのなかったバカテスキャラが突然出てくるかもしれません。
また、一部カップリングにも修正が入りますので悪しからず……でないとクロスオーバーにしている意味があまりなくなってしまいますので……(白目
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