やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第二問 バカとクラスメイトと悩み事(2)

「よぅ、明久」

 

 教室に入った時に最初に話しかけてきたのは雄二だった。

 相変わらず何か企んでいそうな笑顔を見せてくる。入学した時には何処かやさぐれてた印象があるけど、話してみたら案外普通に面白い人だった。以降は僕の中では悪友として通じている。

 

「……おはよう」

 

 次に話しかけてきたのは土屋康太(ムッツリーニ)。あだ名に恥じないムッツリさなんだけど、本人はいつも否定している。彼の得意技はとうs……写真撮影だ。その写真には僕もお世話になっている。

 

「相変わらず騒がしいのぅ」

「秀吉!」

 

 そして僕の心のオアシスこと、木下秀吉!

 本人は男だと思い込んでいるけれど、秀吉は秀吉だ。いつも凄く可愛い。

 ちなみに、僕達のクラスにはツートップとして秀吉と戸塚彩加がいる。さいかわいい。

 

「何やらバカなことを考えておるのではないか?」

「そんなことないよ。ただ秀吉が可愛いなぁって思ってね」

「ワシは男じゃぞ?」

「秀吉は秀吉なんだよ!? 可愛いんだよ!?」

「なんでそんなに必死にワシのことを可愛いって言いまくっておるのじゃ!?」

 

 まったく!

 秀吉はどうして自分の可愛さを自覚してないのかな!?

 

「おはよー、坂本君、土屋君、木下君、吉井君!」

 

 そんな時、僕達に声をかけてきてくれた天使が現れた。

 名前は先程出てきたツートップうちのもう一人、戸塚彩加。ついこの前ムッツリーニが写真を撮りまくってたのも彩加だった気がする。

 

「おう、戸塚。今日も朝からテニスの練習してきたのか?」

「うん。入部したはいいけど、なかなか追いつけなくて……」

「……テニスウェア」

 

 早速ムッツリーニが少し鼻血流してる。

 テニスの朝練という言葉から一体何を連想したのだろうか。

 

「相変わらず頑張っておるのぅ、戸塚は」

「木下君だって、演劇部のホープだって言われてるよ?」

「ワシは演劇が好きでやっておるからのぅ。戸塚だってそうじゃろ?」

「うん。僕もテニスが好きだからやってるんだよ」

 

 何だろう、この二人の会話を聞いているだけで物凄く癒される。汚い心が浄化されていく気分になる。流石はツートップ。可愛い。結婚したい。

 

「……尊い!」

 

 目を見開きながら鼻血を流しているムッツリーニが居た。

 と、思いきや。

 

「とつ×ひで……新ジャンルが開けそう……っ!」

「姫菜、擬態しろし……」

 

 どこかからそんな会話が聞こえてきた。

 今のって女の子だと思うんだけど、『とつひで』って一体何のことだろう?

 

「あ、そう言えば」

 

 ここで僕は、今朝のことを思い出した。

 

「どした? 明久。またバカなことでも思いついたのか?」

「違うよ! ちょっと思い出したことがあっただけだよ!」

 

 相変わらず失礼な奴だな雄二は!

 

「どうかしたの?」

 

 首を傾げながら尋ねてくる彩加。そうやって思わせぶりな態度をとられたら勘違いしちゃうでしょ! 着ている制服間違ってるよ! スカートが恥ずかしいからズボンにしてるんだよね!? 秀吉と同じなんだね!!

 

「なんでワシと戸塚を見比べておるのじゃ」

「気にするな、秀吉……いつものことだ」

 

 雄二が溜め息をついていた。

 

「って、そうじゃなくて……今朝由比ヶ浜さんから言われたんだけどさ……」

 

 と、僕が話を切り出そうとしたその時だった。

 

「……吉井明久。今、なんて言った?」

「へ?」

 

 いつの間にやら僕のすぐ近くには、覆面を被った須川君がやってきていた。

 彼はFFF団の団長だ。秘密裏に活動している団体で、主な活動内容は……リア充撲滅運動。

 

「我らがF組の由比ヶ浜結衣と、一緒に登校した、と……?」

「う、うん……そうだけ……っ!?」

 

 しまった!

 これじゃあFFF団に追い掛け回される運命を辿ることに!

 

「え? 由比ヶ浜さんと一緒に? よかったね吉井君!」

 

 しかしそこは流石彩加。

 天使の癒しパワーのおかげで、須川君はそのまま何も言えずに立ち去るしかなかったようだ。

 

「ありがとう彩加! 結婚しよう!」

「えぇ!? 僕男の子だよ!?」

 

 何を言ってるんだ! 彩加は彩加じゃないか!

 

「明久……続きを早く話せ」

「……話題ずれ過ぎ」

 

 雄二とムッツリーニの二人によって軌道修正させられる。

 確かにさっきから話題がずれまくってたね。

 

「えっとね、そこで由比ヶ浜さんからちょっとした相談? みたいなことを聞いたんだよ」

「それはどんな相談じゃ?」

 

 秀吉が尋ねてくる。

 僕は今朝の話を思い出しながら、

 

「由比ヶ浜さん、どうやらヒッキーと仲良くなりたいらしいんだよ」

「は?」

 

 あ、しまった。

 ついつられてヒッキーって言っちゃった!

 

「……ヒッキーとは誰だ?」

 

 当然ムッツリーニが尋ねてくる。

 そりゃそうだよね……だって僕だって言われた時には何のことかさっぱり分からなかったんだから。

 

「ヒッキーはニックネームだよ」

「いや、だから誰のだよ」

「八幡の」

「いつの間にニックネームをつけ合う仲になったのじゃ?」

「ううん、僕がつけたんじゃなくて、由比ヶ浜さんがつけたニックネームみたいだよ」

「……いや、なんつーか、その。センスねぇな」

 

 何やら雄二が僕のことを可哀想な目で見てくる。

 だから僕じゃないんだって!

 

「えっと、由比ヶ浜さんが、比企谷君と仲良くなりたいって話でいいのかな?」

「みたいだな、戸塚。しっかし比企谷とねぇ……アイツもなかなか面白い奴だからな」

 

 ニヤっと笑いながら雄二は言う。

 確かに八幡は面白い。何というか、捻くれてるけどデレがある? 捻デレ?

 

「僕も確かに比企谷君とは仲良くなりたいかなぁ……」

 

 ポツリと、彩加はそんなことを言っていた。

 ま、まさか……八幡のことが好きなの!?

 

「何ショックを受けておるのじゃ」

「ひ、秀吉は僕のこと好きだよね!?」

「突然何の告白をしておるのじゃ!?」

 

 驚いたような表情を見せる秀吉。

 

「ぶっはーっ!! 教室で濃密なあき×ひで!! もうだめっ! 抑えきれないっ!!」

「姫菜!? 鼻血鼻血!!」

 

 何か先程から鼻血出している女の子がいそうな気がするけど、気のせいだよね、うん。

 

「ところで、その問題の比企谷は今何処にいるんだ?」

 

 雄二が教室を見渡しながら尋ねる。

 あれ? そういえば鞄はあるのに八幡がいない……まさかいつの間にかいなくなった?

 

 




いつの間にやら……。

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本当ありがとうございます……。
これからも頑張ります……っ

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