やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第二問 バカとクラスメイトと悩み事(5)

 放課後になった。

 僕は帰って家でゲームをしようとして、

 

「吉井、ちょっといいか?」

 

 白衣を身に纏った教師――平塚先生に呼び止められた。

 

「どうかしましたか? 平塚先生」

 

 噂によると、最近また婚活パーティーに参加していたりとか聞いたことあるけど……。

 

「おい吉井。今何か失礼なこと考えてなかったか?」

「い、いえ、なんでもありませんよ!」

 

 え、ちょっと待って。

 この人心が読めちゃうの?

 怖すぎるんだけど!?

 

「まぁいい……ちょっと話したいことがあるから、職員室まで来てくれないか?」

「分かりました」

 

 しかし、今日は僕まだ何もしてない気がするんだけど……。

 とにかく呼び出されたからには仕方ない。平塚先生の後をついて、僕は職員室まで向かうこととなった。

 途中、今にも帰ろうとしている八幡に出会う。

 

「お、比企谷か。丁度いい」

「……どうかしましたか?」

 

 平塚先生に呼び止められた八幡は、少し不機嫌そうな表情を見せる。

 これから帰ろうっていう時に呼び止められたら誰だって同じような反応を見せるのかもしれないけど、八幡は本当に何も隠さないなぁ。

 

「吉井と比企谷に、ここ最近の学校での様子を聞こうと思ってな。ちょっと職員室まで来たまえ」

「なんで俺まで行かなきゃいけないんすか……」

「ほほう? この前の作文を余程この場で音読されたいようだな」

「いかせていただきます」

「よろしい」

 

 この前の作文って一体何のことだろう。

 なんだかよくわからないけど、僕と八幡は平塚先生に引き連れられて再び職員室まで向かうことに。

 

「ねぇ、八幡。作文って?」

「……前の授業で中学時代を振り返って、って作文があっただろ」

「あぁ、そういえば現代国語の時間でそんなことやった気がする。その時の作文がどうしたの?」

「……何も聞くな」

 

 それ以上は教えてくれなかった。

 そういえば僕、あの作文で書いた内容あまり覚えてないなぁ……何書いたんだっけ。

 と、そんなことを考えている内に気付けば職員室まで辿り着いていた。

 平塚先生は扉を開けると、そのまま職員室の奥にあるスペースまで歩みを進めた。

 面談スペースみたいになっているそこは、ガラスのテーブルを挟んで、長いテーブルが一つ、向かい側には一人用のソファが二つ並んでいた。

 僕と八幡はソファの方に通される。

 

「ん?」

 

 そのスペースに入った時に、僅かながらタバコの匂いが鼻から入ってくる。

 

「ここ、喫煙スペースですか?」

「あぁ。すまない、いいか?」

 

 どうやら八幡の言葉は正しかったみたいだ。

 平塚先生はポケットからタバコを取り出すと、それを見せて僕達に確認を取ってくる。僕も八幡も頷いた。

 平塚先生はタバコに火をつけて、それを口に咥える。

 何というか、美人さんがタバコを吸う姿って様になるなぁ。

 

「ところで、話したいことってなんでしょう?」

 

 僕は話を切り出した。

 すると平塚先生は、

 

「まずは吉井の方だが……最近色々とやらかしてるみたいだな。西村先生から私の所まで依頼が来るとは正直予想外だった」

「えぇ!? てつじ……西村先生から?」

 

 あっぶない。思わず鉄人って言いそうになっちゃったよ。

 ていうか八幡。何で軽蔑の眼差しでこっち見てきてるのさ。気付いてるからね?

 

「……まぁいい。今の言葉は聞かなかったことにしておこう」

 

 どうやら平塚先生にも気付かれてたみたいだ。

 

「で、吉井は近々、この学校での奉仕活動が命じられることになっている……西村先生直々のお言葉だ」

「ほうしかつどう?」

「……要はボランティアみたいなものだ」

「なるほどぉ!」

 

 八幡からのアシストで言葉の意味を理解した僕だったけど、それってつまり、雑用として先生に使われることを意味するのでは?

 

「そして比企谷。この前の授業での舐め腐った作文はどういうことだ?」

 

 矛先が八幡に向かった。

 ていうか、一体どんな作文を書いたら平塚先生に目をつけられるのだろうか。

 

「あれは中学時代を振り返った作文ですが?」

「それがどうしてリア充爆発しろに繋がるんだ……」

 

 いや本当に八幡はどんな作文書いたの?

 僕凄い気になるよ?

 僕ですらそんな犯行声明みたいな作文書かないよ?

 リア充爆発しろとは思うけど!

 

「ところで君達は同じクラスだったな……友人同士なのか?」

「そうです」

「違います」

 

 僕と八幡はほぼ同じタイミングで答えた筈なのに、まったく違う答えが返ってきた。

 おかしいな。八幡とは仲良くしてるっていう自信があったのに。

 

「……意見が対立しているようだが」

「俺はバカと友達になった覚えはありません」

「待って。バカって僕のこと?」

「他に誰が居るんだよ……」

「……悲しいが、西村先生から聞いている話と、授業でのお前の様子を見る限り否定しきれないぞ」

 

 そんな!

 平塚先生までそんなことを言うなんて!

 

「ともかくだ……このままでは吉井も比企谷も、社会に出た時に大変なのは目に見えている。そこで、明日もう一度、放課後に職員室に来たまえ。案内したい場所がある」

「案内したい場所ですか?」

 

 気になった僕は思わず尋ねる。

 平塚先生はタバコの火を消しながら、

 

「あぁ。その前に一つ確認したい……君達は部活動はやっているか?」

 

 放課後時間があるかどうかの確認かな?

 

「やってません」

「俺も特には……」

 

 八幡も部活には入っていないみたいだ。

 

「そうすると、放課後は二人とも時間があるな。暇だな?」

「なんかすごい念を押しますね……」

「そうでもしないと、吉井はともかく、君は逃げる可能性があるからな。今の内にその可能性を潰しておかないといけないと思ってな」

「部活動以外にも用事がある可能性を考慮してはもらえませんかね……」

「先に君の家に連絡して確認を取ることも出来るが?」

「そこまでしつこいからけっこ……」

 

 瞬間。

 八幡と僕の間に、平塚先生の拳が飛んできた。

 一瞬、何が起きているのか理解出来なかった程、平塚先生の動きは素早かった。

 

「何か言ったか?」

「……いえ、何も」

 

 諦めた八幡は、溜め息を吐きながらそう言った。

 いや、ちょっと待って、今のマジで怖かったよ?

 

「そしたら二人とも。明日再び放課後、職員室で待っているぞ」

「はい」

「うす」

 

 こうして、僕と八幡は明日もまた平塚先生の指示の元呼び出されることとなったのだった。

 

 

 そしてこれが、僕と八幡にとって、高校生活を変えるだろう転機になった出来事だった。

 

 

 

 

 

 




次回は八幡目線でのお話が始まります!
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