以下の問いに答えなさい。
「ドップラー効果について説明しなさい」
葉山隼人の答え
「音波や光波や電波などの発生源と観測者との相対的な速度によって、波の周波数が異なって観測される現象のこと。救急車のサイレンなどがその例」
教師のコメント
具体例まで書いてくれるとは、おみごとです。意外にも知られていないことなのですが、ドップラー効果というのは音だけでなく光にもあるのですが、そこも抑えるとは……。
土屋康太の答え
「女性の下着が大量に出現すること」
教師のコメント
ブラジャーは出現しません。
吉井明久の答え
「自分と瓜二つの顔の人と出くわすと……」
教師のコメント
ドッペルゲンガーとは関係ありません。
八幡との帰り途中、ぬいぐるみ屋に居る女の子が少し気になった僕は、八幡と一緒に店の中に入ることにした。そこには、小学生くらいの女の子が、店員さんに涙目で懇願している姿があった。
八幡は僕の後ろを少しばかり離れながら歩いている。
「あのー、どうかしたんですか?」
僕は店員さんに尋ねた。
すると、店員さんは頭を掻きながら答えてくれた。
「いやぁ、この女の子がね? あそこにあるぬいぐるみがどうしても欲しいって言うんだけど……お金が足りなくてね……」
そう言いながら、ある一つのぬいぐるみを指差した。
そこにあったのは大きな狐の形をしたぬいぐるみ。
女の子はそのぬいぐるみを見ながら、ずっと涙を堪えている。
なんだか力になってあげたい。
「ねぇ、どうしてそんなにぬいぐるみが欲しいの?」
僕は女の子に尋ねる。
すると女の子は、
「最近、葉月のお姉ちゃん元気がないです……」
「お姉ちゃん?」
「はいです……前、お姉ちゃんがあのぬいぐるみを欲しがってて……だから……」
その目からは、もう涙がこぼれてしまっていた。
この子はきっと、プレゼントをすることでお姉ちゃんを元気づけたかったのだろう。とても優しい女の子なんだなってことが分かった。
「きっと、引っ越してきたばかりで学校が大変なんです……なのにお姉ちゃん……おそうじとか……お洗濯とかも……葉月とも遊んでくれて……っ」
うわぁ!
凄い勢いで泣き出しちゃった!
ど、どうしよう!?
「……ふぇ?」
その時、僕の後ろに居た八幡が、女の子の頭の上に手を置いて、優しく撫でたのだ。
「泣くなって……ほら、これで涙拭け……」
「はい、です……っ」
ポケットから取り出したハンカチを、女の子に渡した八幡。
何だろう、八幡が言っていたことは本当だったんだなぁって実感した。
今のはまさしく、兄が妹に対して行うそれだったからだ。
「八幡って、本当にお兄さんなんだね」
「た、たまたまだ……」
照れているのか分からないけど、八幡は目線を合わせようとはしなかった。
「八幡の言う通りだよ。泣かないで。お兄ちゃん達が何とかするから」
「本当ですか!?」
そう言うと、女の子――葉月ちゃんは、満面の笑みを見せてくれた。
うん、やっぱり可愛い女の子は笑っていた方がいいよね!
「吉井、お前本当にあのぬいぐるみ買うのか……?」
「へ?」
八幡がぬいぐるみの方に近づき、僕に改めて確認を取ってくる。
どうしてそんなに念を押して聞いてくるのだろう。
気になった僕は、店員さんにも確認を取ってみた。
「あの、あのぬいぐるみっていくらするんですか?」
「二万五千円です」
うん、無理ぃ。
「御免、お兄ちゃん頑張ったけど無理だったよ……」
「何を頑張ったんだよ……」
八幡が呆れた感じで言ってきた。
いや、だって、二万五千円だよ?
どう頑張ったって今の僕には無理な金額なんだよ?
「で、でも! 葉月一万円なら持ってるです!」
そう言って、葉月ちゃんは首からぶら下げている財布の中から一万円札を取り出す。
と言うことはつまり、僕が今持っている全財産が千円だから、合計して一万千円……。
「店員さん、ここに一万千円ありますから、二万五千円の大体半分ですよね? つまり、その人形の大体半分だけ買うというのは……」
「おい、ちょっと、何言ってんの。計算おかしいだろ?」
八幡に止められてしまった。
「……とりあえず、一旦予約という形を取ってもいいですか? 買うか買わないか、それからでも遅くないと思うので」
「そういうことであれば構いませんが……」
いつの間にか八幡が店員さんにそう約束を交わしていた。
そっか、予約しておけば何とかなるかもしれないし!
「GW中であれば構いませんよ。けど、それを過ぎたら他にも買いたいって人が出てくるかもしれないので……」
「はい、です……」
確かに、流石にいつまでも商品を置いておくわけにもいかない。
他にも買いたい人はいる筈だから、それまでに何とかしないと。
葉月ちゃんの為にも、何とかしてこのぬいぐるみを買わせてあげたい。
「……ほれ、行くぞ」
八幡の言う通り、とりあえず今はこの場を後にする他なかった。
※
少し離れた公園で、僕と八幡、そして葉月ちゃんの三人は話をしていた。
期限はGWまで。それまでに何とか出来なかったら……。
ん、ちょっと待って?
「八幡。これって依頼ってことにならないかな?」
「依頼……? それって、まさか……」
八幡はあからさまに嫌そうな表情を浮かべているけど、僕は今だからこそあの場所を活用するべきなんじゃないかなって思う。
「奉仕部だよ! こういう時こそ、雪ノ下さんに相談してみるのがいいんじゃないかなって!」
「……マジか」
「マジだよ! だから八幡、明日も奉仕部に行こうね!」
「なんで俺まで……」
八幡も一緒に居てくれた方がいいアイデアが浮かぶかもしれないし、何より部活見学中であるのなら行く理由になると思う。何もしないよりも、何かした方が絶対にいい筈なんだ!
「葉月ちゃん、お兄ちゃん達が何とかしてみるからさ、明日もまたここで待ち合わせしよっか?」
「はいですっ!」
もしかしたら、きっと何とかなるかもしれない。
葉月ちゃんは笑顔で僕達に答えたのだった。
「ところで、葉月ちゃんのお家ってここから近いの?」
「はい! 少し歩いた所にあるです!」
「そっか。それじゃあ安心だね」
もしもう少し遠い所にあるのだとしたら、遅い時間になっちゃったし送った方がいいかなって思ったけど、近いのなら安心出来る。
僕は葉月ちゃんに大体の時間を伝えると、
「また明日ね!」
「はいです! バカなお兄ちゃん、優しいお兄ちゃん!」
ニコニコと笑顔を振りまきながら、手を振ってくれた。
そうして葉月ちゃんが帰る所を見送っていると、
「お前……本当色んな意味で凄いな」
と、八幡が妙に感心したように言ってきた。
「八幡こそ、バカなお兄ちゃんって言われてたよ?」
「それ絶対お前のことだからな……いや、でも優しいお兄ちゃんってのもおかしいな……」
なんとなく僕が『バカなお兄ちゃん』って言われているような気はしたけど、八幡のことを『優しいお兄ちゃん』って言うのは間違ってないと思う。
きっと八幡は、自分が思っているよりもよっぽど優しいんだろうなぁって僕は思っている。
だって、葉月ちゃんにやった通りのことを妹さんにもやっているのだとしたら、それって絶対嬉しいことだと思うから。
「それにしても、何かいいアイデアないかな……」
「……とりあえず、明日雪ノ下にも相談するんだろ? それで何とか見つければいいんじゃねえの?」
「それもそうだね。だから八幡、明日もよろしくね?」
「……」
八幡は何も言わなかったけど、きっと来てくれると僕は信じている。
結局その日は、何も出来ないと悟った僕達は大人しく家へ帰ることとなったのだった。
取り上げられたゲーム類を取り戻して、かつ、鉄人の持っていた本を売りさばくことによってノインちゃんを購入した原作ですが……今回は一体どんな解決方法を持ちだしてくるのでしょうか……書きながら私自身も楽しみにしている所があります。
そしてさり気なくお兄ちゃんスキルを発動してしまった八幡。