やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第五問 何故か、男達は闘いに身を投じる。 (3)

 片方は覚えている。以前テニスコートで写真を撮りまくってた奴だ。そういえば抜き打ち荷物検査の時はよくカメラ没収されなかったな。部活で使用するものとかで逃げたのだろうか。そして俺が気になっていたのは、もう片方の人物。

 

「お、おい、吉井」

「ん? なに、八幡」

 

 俺は吉井のそばに近寄り、耳元でささやかな抗議をする。

 

「女子がいるなんて聞いてねぇんだが……」

「おい! 聞こえておるぞ! そしてワシは男じゃぞ!」

 

 どうやら俺の耳打ちは聞こえていたようだ。

 ていうか、今聞き捨てならない言葉が聞こえてきた気がする。

 え、男? 

 

「何言ってるのさ秀吉! 秀吉は秀吉じゃないか!」

「お主こそ何を言っておるのじゃ! ワシは男じゃと何度も言っておる!!」

「…………坂本、本当か?」

 

 恐らくこの中ではまだ常識人枠としてカウントしてもいいだろう坂本に尋ねる。

 両手をわざとらしく広げて溜息をつきつつ、

 

「あぁ。木下は間違いなく男だ」

「雄二まで!?」

 

 変に抗議している吉井は置いておくとして。

 ……マジでか。世の中何があるか分かったものじゃない。ってか、もしかして前に吉井が言ってた天使のうちの一人って、まさかこいつのことか? ……悔しいが、確かに可愛い。だが男だ。この調子で行くと、吉井が言ってたもう一人の天使というのも実は男子だったりしないか? 

 

「にしても、まさか比企谷まで来るとはな。こりゃなかなかに今日は楽しくなりそうだ」

「そ、そうか」

 

 どうにも坂本はあまり得意になれそうにない。別に苦手かと言われればそんなことはないのだが、坂本は何を考えているのかがあまり見えてこない。

 

「ところで、あいつは一体何をやってるんだ……?」

 

 あまり会話に参加してなかったみたいなので少し気になったが、一人……確か土屋、だったか……が、カメラを構えてコソコソとしている。あいつは街を駆け回るカメラマンか何かなのか? 

 

「ムッツリーニは多分いつも通り、女の子を撮ろうとしてるんだと思うよ。学年一のムッツリの名に相応しい行動だね!」

「……っ!! (ブンブン)」

 

 吉井の言葉に対して、土屋は必死に首を振る。

 いや、もう手遅れだと思うんだが。むしろそこまで全力で否定する方が怪しく見えてくるまである。

 

「そろそろ明久のうちに行かぬか? このままじゃとムッツリーニが通報されてしまうかもしれぬ」

「確かになぁ。昼間の公園でカメラ持った怪しい男だもんな……」

「……綺麗なものを撮影しているだけ」

「言い訳にしては少し苦しいぞ……」

 

 とてもじゃないが、それで言い逃れできるとは思えなかった。

 

 

 集合場所の公園から歩くこと数分。吉井が住んでいるアパートまで到着した。中に通されると、そこに広がっていたのは意外にもきっちり整えられている部屋だった。男の一人暮らしにしては掃除が行き届いていて、物も全然散らかっていない。そう表現するときちんとしているように聞こえるが、言葉を選ばないのなら、生活感が感じられない。こいつ本当に家で食事を取っているのだろうか。その割にはゲーム類や漫画類は充実している。

 

「明久お前、随分と金あるなぁ。こんだけ揃えるってことは結構金かかったろうに」

「そうなんだよね……だから僕、今月既に水と塩生活だよ」

 

 坂本の問いに対して、平然とニコニコしながら答える吉井。

 ……ちょっと待て。

 

「今、水と塩生活って言わなかったか?」

「へ? 言ったよ?」

「……マジでか?」

「うん。マジだけど」

 

 コイツ、もしかしてマジ物のバカでは? 

 

「……救いようがない」

「全くじゃ……もしや、仕送りをほぼ全額ゲームにつぎ込んだのではあるまい?」

「へ? そうだけど?」

「お主は一体何を考えておるのじゃ!」

 

 流石の木下も看過出来なかったみたいだ。良かった、俺の感性は間違っていなかったようだ。というより、吉井はこんな生活をしていて大丈夫なのだろうか。

 

「明久のバカは今に始まったことじゃねえからな……本人が痛い目見た方が自覚するだろ」

「流石にこの十連休のうちに僕も何日かはアルバイト入れようかと思うよ……うち、確か別にアルバイト自体は禁止されてなかった筈だし」

「確か奉仕部の活動で一日は削られるよな……?」

「そうなんだよねぇ。なんとなくあそこなら受け入れてもらえそうだなって所は目星つけてるんだけどね」

 

 意外と行動力はある方なんだな、吉井。

 それにしても、せっかくの連休なのに、中日に奉仕部としての活動が邪魔してくるとは……出来ることならサボりたいのだが。自宅最高だよ。

 

「ていうか、あれ確か泊まりの行事だったよね?」

「…………えっ」

 

 マジ? 

 正直あの時は奉仕部に入部する気なんてさらさら無かったから話全く聞いてなかったんだが。

 

「うん。合宿だって話だよ?」

「…………マジ?」

「うん、マジ」

 

 やばい、正直何の準備もしてない。そうだ、それを口実にして今からサボる算段をつければいいんだな。よし、行動指針は固まった。

 

「比企谷よ、今お主すごく間抜けな顔をしておるぞ……?」

 

 何故か木下に心配されて。

 解せぬ。だけど可愛い。だが男だ。

 世の中だいぶ理不尽ではないか? こんなに可愛いのに男であるとか。いや、男だからこそなのか? 

 

「な、何事じゃ? そんなにジロジロと見つめて……」

 

 何故か照れている木下がいた。

 いやこいつ本当に男の反応してないぞ? 実は本当は女なんじゃないか? 

 

「…………っ!! (鼻血だらり)」

「うわぁ!? ムッツリーニが鼻血出した!?」

 

 突然土屋が鼻血を出した。

 吉井が慌ててティッシュを持ち出して、土屋が慣れた手つきで自分の鼻の穴の中にティッシュを詰め込んでいく。

 ……こんなこと慣れてどうすんの? 

 

「合宿っつったら、六月には勉強合宿もあるよな」

 

 坂本が話を振ってきたのは、六月にある勉強合宿のことだ。この学校は、一年と二年に宿泊行事があるらしい。二年は当然修学旅行。一年は勉強合宿なのだそうだ。わざわざ環境を変えてまで勉強しなきゃならないのは、はっきり言って地獄では? 

 しかし、中には吉井のように、本気で勉強しなきゃならない奴もいるわけだから、仕方ないことなのかもしれないな……。

 

「……カメラの準備もばっちり」

「ムッツリーニ、君は一体何の準備をしてるの?」

 

 本当ブレないなコイツ。

 

「合宿といえば、やっぱりみんなで遊びたいよね……せっかくだから彩加も一緒の部屋になりたいね!」

「うむ。彩加がいてくれれば、ワシも何だか安心するのじゃ」

 

 それってつまり、二大天使が同じ部屋にいるということになるな? 

 というか、今の吉井の発言によって、二大天使が男子ということが確定したんだが。どうなってんのこの学校。性別逆転現象でも起こってしまってるのん? 

 

「…………天国」

「昇天するにはまだ早いぞムッツリーニ」

 

 親指を立ててサムズアップしながら倒れこむ土屋と、そんな土屋に対して冷静にツッコミを入れる坂本。

 誰かこの場を何とかしてくれ。

 

「とりあえず、今はゲームしようよ! せっかく五人いるんだし、大乱闘しよう!」

 

 吉井がゲーム機を取り出しながら提案してきた。どうやらコントローラーについても人数分揃えているらしい。用意周到過ぎやしないか? 

 そんなこんなで、俺達は当初の目的であるゲームをし始めたのだった。

 

「せっかくだし、ただやるだけじゃつまらないから、最下位の人が一位の人の言う事を聞くって言うのは……」

「却下」

「はやいよ!?」

 

 吉井がとんでもない提案をしてきそうだったので、すかさず俺は止めた。

 




次回以降に行われるエピソードの伏線話みたいなものですー。
多分お察しの方も多いと思うのでお伝えしますと、この先俺ガイルからはキャンプのエピソードを、バカテスからは勉強合宿ネタを入れるつもりです。ちなみに、バカテス3.5巻ネタも何処かで入れるつもりですのでお楽しみに!
両作品が関わり合っている以上、原作通りに進まないことは確かでしょう。キャンプも勉強合宿も、果たしてどうなってしまうのでしょうか……。
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