やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第五問 何故か、男達は闘いに身を投じる。 (4)

 俺達がやっているのは大乱闘系のゲームだった。元々は据え置き型のゲームも大抵四人でしかやれないことが多かったが、最近のゲームというのは最大八人対戦が可能な物も出てきた為、こうして奇数人で多めの人数でやる機会があっても問題なくなったという。つい数日前まで一緒に家でゲームをやるような知り合いがいなかったから、その有り難さを享受することになるとは微塵も思っていなかったわけだが。対戦ゲームをやるにしても、妹の小町が居たからそれで十分だったし。

 だからだろうか。今日こうして顔を突き合わせて誰かとゲームをする経験というのは、俺にとっては貴重なものなのだろうと思った。実際、数か月前の俺に対して、この光景を録画した物を見せたとしても、『何だろうこの出来の悪いイメージ動画は』と一蹴したに違いない。

 それだけ、今の自分からしてみても何処か現実的じゃないような気さえしていた。

 だが、不思議と悪い気はしない。むしろ、なんていうか。

 

「どうしたのじゃ? 八幡。何か考え事でもしておるのか?」

 

 俺が何か考え込んでいることに気付いたのか、木下が顔を覗き込んでくる。

 近い近い! ……って、コイツは男だ。こうしてみると、本当に男なのか何度も疑いたくなってくる。下手したら女子よりも可愛いと評判になるのではないだろうか。

 ラブコメの神様は時として悪戯を仕掛けてくるものだ。

 

「い、いや、何でもない」

 

 だから、俺がどもって返事しても決しておかしいことは何もない筈……何もないよね?

 

「……分かりやすい」

 

 お前にだけは絶対に言われたくない。

 

「にしても、まさかこうしてこの五人でゲームやるような日が来るとはなぁ。何が起きるか分からないものだぜ」

 

 ゴリラのキャラを使って明久が使用している緑色の帽子を被ったキャラを投げで地面まで運びながら、坂本がそんなことを言っていた。何気にこいつエグイ戦法使ってきやがるな。

 

「ちょっ、ゆ、雄二! 今のは反則でしょ! しかも自分はサラッとステージに戻ってるし!」

「注意してなかった明久が悪い。戦いは常に戦場で起きているんだから、油断しちゃ駄目だからな」

「おのれ……雄二め……」

 

 いや、今のはある意味戦術の一つなんだから卑怯も何もないでしょ。

 かくいう俺は、女神様のキャラを使って攻撃を逐一反射しながら地道に攻めていく戦法をとっていた。

 

「八幡もまた、すべての攻撃を反射してくるとはなかなかにねちっこい戦法を使うのぅ……」

 

 天使の男の子キャラを使用しながら、木下は呟く。

 戦術と呼んでほしい。

 

「……くっ、見えない……っ」

 

 悔しそうにしているのは、衛兵キャラを使っている土屋。

 こんな時にゲームキャラの貴重なワンシーンを覗き込もうとしているとは、流石にむっつりの名を欲しいがままにしているだけはあるな。流石に俺もそこまで上級者ではない。

 

「ところでさ、八幡」

「なんだよ?」

 

 そんな時、ふと吉井に話しかけられる。

 ゲームしながらこうして雑談を交わすというのもなかなか不思議な感覚だ。

 

「八幡って妹居たよね?」

「え、なんでいきなりその話?」

 

 あまりにも雑過ぎる会話の話題提供に、思わず溜め息すらつきそうになる。

 ちなみに、真っ先に反応したのは土屋だった。小町に手を出したらどうなるか分かっているな?

 

「なんだ、お主は兄じゃったのか……ワシには姉がいてのぅ……」

「秀吉って妹だったの!?」

「ワシは男じゃから弟じゃ!?」

「……末っ子属性!(ブシャアアアアア)」

 

 吉井がかなりズレた反応を見せた後で、何を想像したのか分からない土屋より鼻血が出た。

 一体コイツ、何を想像したのだろうか。それにしてもあまりにも想像力豊かすぎないか?

 大丈夫? 授業中とかその内出血多量でショック死とかしちゃわない?

 

「へぇ、比企谷に妹か……どうなんだ? 妹はお前にそっくりなのか?」

「俺に似ず、可愛い自慢の妹だ」

「そこは嘘でも俺に似て、とか言わないのな……まったく比企谷らしい解答だな」

 

 俺らしい解答って一体何なんだ坂本。

 何か変にキャラ付けされているようでむずがゆい。

 と、そんな時だった。

 誰かの携帯から着信音が鳴るのだが、その時の効果音が――。

 

 チラリーン、チラリラチーラー……。

 

「……え?」

 

 まるで地獄に落ちるようなイベントでもあったのかと思わされる程、とんでもない効果音が流れてきた。

 誰のだろうかと尋ねようとする前に、

 

「どしたの? 雄二。物凄い勢いで携帯電話を掴んで」

 

 吉井が坂本に尋ねていた。

 坂本の表情からは、余裕がなくなっているというか、真顔になっているというか。何とも表現が難しい表情をしていた。そんなに今の着信相手にいい印象を抱いていないのだろうか。

 

「悪い。ちょっくら電話してくるから、少し待っていてくれ」

 

 坂本はポーズボタンを押して画面を止めると、そのまま部屋の外に出て、携帯の着信を取る。

 その様子を、俺達はただ茫然と眺めている他なかった。

 

「……あの反応速度。恐らく相手は女子」

「なんだと?!」

 

 土屋の推測に対して真っ先に反応したのは吉井だった。

 確かに、ただの相手だったらここまで過剰に反応する必要はないだろう。

 今のは何というか、まるで何かに恐れていると言っても過言ではない反応だった。

 普通ならば疑われたくない相手か、或いはどうしても対応しなくてはならない相手であることを疑うべきだろう。そう言った意味では、土屋の予測はいい線を言っているのかもしれない。

 だが、それで俺達に何の関係もない。

 無理に詮索する必要もないし、その件で坂本を責める必要もないだろう。

 

「悪い。ちょっと連絡が……」

「くたばれ雄二!!」

 

 だから、吉井が坂本に殴りかかった理由はまるで理解出来なかった。

 これじゃあまるで、モテない男がモテる男に嫉妬して殴りかかっているようにしか見えない。

 

「いきなり何すんだよ明久!」

 

 当然、坂本は抗議する。

 そんな坂本に対して、吉井は指差しながら、

 

「今の電話相手、女子だろ!」

 

 と、糾弾した。

 

「あぁ、女子だけど……それが一体どうしたんだ?」

「貴様ぁ! まさか既に付き合っている相手が……っ!」

「ばっか、ちげぇよ! ただの幼馴染だっての!」

 

 強ち、土屋の予測は間違っていなかった。

 予想よりもかなり凄い収穫だった。まさか坂本に女子の幼馴染が居たとは……。

 う、羨ましいとか思ってないんだからねっ!

 

「それにしては、随分と過剰な反応じゃったが……一体何があったのじゃ?」

 

 木下は心配そうな表情を浮かべながら坂本に尋ねる。

 

「いや、何でもない。ただ、翔子は――」

「翔子?」

 

 思わず俺は聞き返してしまった。

 そんな俺の反応を見てからか、坂本はしまったという表情を浮かべている。

 

「翔子って、もしかして雄二の幼馴染って――霧島さん!?」

 

 吉井の言う通り、真っ先に思い浮かんだのは霧島翔子だった。

 成績優秀、容姿端麗。一年J組、国際教養科に所属する、成績トップの生徒の一人。

 雪ノ下雪乃と並ぶ――或いはそれ以上の秀才と言われている生徒だった。

 

「……羨ましい」

 

 今だけは土屋に賛成したい。

 が、坂本の反応を見る限り、どうやらその認識は少し改めた方がいいのかもしれない。

 つい最近、俺も似たような経験をしたからな……。

 

「小学校から一緒だっただけだ。家が近所で、昔っから家同士付き合いがある。それだけだ」

「なる程……じゃから無碍にも出来ぬ、という感じか」

 

 恐らく木下の呟きはほぼ正解に近いのだろう。

 

「まぁ、そんなところだ」

 

 だが、坂本の返事は何処か引っかかるものを感じた。

 別に坂本自身が、霧島に対してどんな感情を抱いていようが俺達には関係ない。

 ただ、なんとなく一筋縄ではいかない事情があるのだろうということは推測出来た。

 

「ま、もう済んだ話だからな。ところで、この一戦終わったら休憩しようぜ。流石にゲームやりっぱなしで疲れてきた」

「確かに、もう結構な時間やっておるからのぅ……」

「……賛成」

「うん、そうしようか」

 

 俺も坂本の提案に賛成だった。

 こうして俺のGW一日目は、吉井の部屋でのゲームに使われたのだった。

 




UA数が50000を突破している……ですって……!?
これからも頑張っていきたいと思います!!!
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