入れてくださりまして、本当ありがとうございます!
由比ヶ浜さん──結衣から教えてもらったのは、小学生の林間学校ボランティアだった。一緒に行ってみないかと言われた時、ウチは素直に嬉しいと思った。アキやハチのおかげでクラスの人達と徐々に話せるようになって、こういった事も増えてきたことが素直に嬉しかった。何より、そのボランティアに……ハチがいる。そのことを知った時、ウチはすごく嬉しくなっちゃって、思わず電話しちゃった。
だけど、ウチは同時に結衣が羨ましいとも思っていた。同じ部活に入って一緒に行動する時間が増えて、ハチが段々と遠くなっていくような感覚に襲われた。多分、嫉妬してたんだと思う。それは結衣も同じなんだろうなって思った。
ハチは基本教室ではあまり会話をしてくれない。挨拶して少し話したら、直ぐに机に突っ伏そうとする。昼も一人でそそくさと教室を出て行ってしまい、いざ追いついてみるともう食べ終わっててその場にいない。距離を縮めたいと思うのに、ハチが段々と遠のいていく。
だからウチは、比企谷という呼び方をやめて『ハチ』って呼ぶことにした。吉井にも感謝の気持ちがあったし、仲良くなったから『アキ』と呼ぶことにした。
この気持ちはきっと恋なんだと思う。ウチはハチのことが気になってるんだ……ふとした瞬間にハチのことを考えてしまう位には。
正直、GW中にハチに会えないと思ってたから、一日目に会えたのは本当に奇跡で、連絡先も手に入れられたのも本当に嬉しくて、そして今度はお泊まりで行事に参加出来る。こんなに幸せなことはないんじゃないかって位、ウチは舞い上がっていた。
だけど、やっぱり奉仕部とウチの間には、何処か距離があるように感じられた。
※
一日目。
小学生達がチェックポイントを通過しながら散策をしていくというもので、ウチは瑞希と一緒にチェックポイントでスタンプを押す係を担当していた。本当はハチと一緒にアシストをする係がやりたかったんだけど、ハチの周りには……既に結衣や雪ノ下さんがいた。もちろんそこには奉仕部であるアキも居たけど、なんというか……その四人の中に入り込めない気がした。もちろん、一人一人とは話せる。雪ノ下さんはクラスが違うから接点がないけど、結衣とはオシャレについてとかも話せるし、アキにはくだらない冗談を言えるし、ハチとはどうでもいい会話すら楽しいと思っていた。
だけど、この四人で固まっている空間は、何処か完成しつつある空間のように見えてしまった。
「美波ちゃん?」
そんなウチの様子を見てたのか、隣では瑞希が心配そうな表情で見つめて来ていた。いけない、今はちゃんと役割を果たさないと。
「ううん、何でもない。ゴメンね? ボーッとしちゃって」
「いえ……でも、なんとなく美波ちゃんの気持ちもわかるなぁって思いましたから」
「え?」
瑞希は少し寂しそうな表情を浮かべながら、アキやハチの方を見ている。あの様子から見るに、もしかしたら瑞希はアキに対して何かしらの感情を抱いているのかもしれない。
そうなると、瑞希は――ウチと同じだ。
「奉仕部の方々ってなんとなく、四人で完成しているような気がしているんです……その、中に入りたくても、どうしても入れないなぁって思ってしまいまして……正直、羨ましいなぁって」
「瑞希……」
やっぱり、瑞希も同じことを考えていたんだ。
ただ、ウチと瑞希の間で違うのは、想っている相手が誰なのかということ。正直アキの優しさは一度触れたウチもよく分かっている。恐らく、もしかしたらウチもアキに対して好意を抱いたのではないかと思う瞬間も何度かあった。だけど、やっぱりウチはハチのことが気になっている。間違いなくハチに恋をしている。
だからこそ、ウチは――。
「ですから、私は……雪ノ下さんと由比ヶ浜さんに、嫉妬しちゃってるんだと思います」
「っ!?」
そう。
多分ウチと瑞希は――ハチとアキに対して距離を詰めることが出来る二人に対して、嫉妬しているんだと思う。その気持ちに嘘を吐くつもりはないし、何よりそれは、相手のことをどれだけ想っているのかを示す証拠にもなると思うから。
「でも、だからこそ思うんです。このまま何もしないのはよくないって……私は今日、吉井君ともっと仲良くなりたいって思ってここに来たんですから。もしかして、美波ちゃんもそうなんじゃないかなって」
「……うん。その通りよ。ウチも、ハチと仲良くなりたいと思ってここに来た」
そうだ。
何もしないまま指をくわえてみているだけなんて御免よ。このまま何もしないなんてウチらしくもない。いざという時に行動を起こさなきゃ。
それに、瑞希だってきっと普段はここまで言わないのかもしれないと思った。アキのことが本気で好きだからこそ、瑞希はウチにもここまで言ってくれているんだ。
――恋はきっと戦争。何かしら手を出さないと、負けてしまう。
だからウチは第一歩を踏み出そうと思った。
その為にはまず、ハチに話しかけるところから始めよう。そして、学校で話せない分たくさんのことをハチと話そう。
覚悟してよね、ハチ。
ウチは――貴方のことが好きなんだから。
短めになってしまいました……金曜夜から土日にかけて何かと予定が詰まっておりまして、なかなか話を作る機会に恵まれなかったということと、予想以上に美波については本編で触れていたこともあり、なかなか番外編としてエピソードを作るのが難しかったというのが本音です……。
ですが、恋心を自覚した彼女はこれから本編でもぐいぐい来てくれると信じています。
第七問ではハチに全員と連絡先を交換する手伝いをしている位には、今の所ハチの近くにいる人物ではありますからね!
さて、次回からは本編に戻ります。
バイトの話ですよ!
ディア! マイ! ドウタァアアアアアアアアア!
ネタバレ(迫真)ですね(白目