やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第十問 バカと合宿とグループ学習 (2)

 そうしてバスの中で揺られること数時間が経って、僕達を乗せたバスは目的地に到着した。結構大きな所なんだねぇ……なんだか楽しみになってきちゃったよ!

 ちなみに、八幡は既に疲れ切った表情を見せている。

 

「八幡。これから授業だけど大丈夫……?」

 

 彩加が八幡の顔を不安そうな表情で見つめている。

 それに対して八幡は、希望と絶望が入り混じったような表情を浮かべつつ、

 

「あ、あぁ……なんとか、頑張る……」

 

 それ、果たして頑張れる人の台詞なのかな……。

 

「雄二……」

「おわっ! な、なんだ翔子か……背後からいきなり声かけてくんなって!」

 

 僕達の所までやってきたのは霧島さんだった。その隣には雪ノ下さんもいる。雪ノ下さんを見つけた瞬間に、

 

「あっ! ゆきのん~!」

「ちょ、ゆ、由比ヶ浜さん……っ」

 

 何という素晴らしき景色。

 百合の華が咲き乱れるとはこういうことを指すんだね!

 ちなみに、ムッツリーニは既に写真を撮り始めている! 流石だよ! その速度見習いたい!

 

「今回の合宿は違うクラスも混じるらしいからね……全クラス関係なく、混合でやるみたいよ。だから秀吉、覚悟しておきなさいよね?」

「あ、姉上!?」

 

 そこに現れたのは、なんと秀吉のお姉さんだった!

 秀吉はかなり驚いているみたいで、身体全体が震えている。え、これ驚いているっていうか怖がっている?

 普段お家で一体どんな生活を送っているの……?

 

「あはは。なんだか賑やかになってきたね」

 

 次に僕等に声をかけてきたのは、葉山君だった。

 葉山君は相変わらずの笑顔を見せながら話しかけてくる。なんだろう……だけど葉山君の視線、あまり僕に対してよく思ってないような眼差しなんだけど……流石に、林間学校の時に色々言いすぎちゃったかな?

 

「やぁ、ヒキタニ君。今日から始まる合宿、楽しみだね」

「……俺は今すぐにでも帰りてぇよ」

「あはは。君らしい言葉だ。だけど、きっとみんなで思い出作れると思うんだ」

「ここ、勉強合宿だろ……? 思い出も何もねぇだろ……?」

「でも、こうして環境が変わって、たくさんの人と交流が出来る機会ってなかなかないと思うんだ。だからさ、自習の時とか近くの席になったとしたらよろしくね。雪ノ下さんも……」

「……私なら自分で勉強出来るから。貴方に教えられることも、教えることもないわ」

「そ、そっか……」

 

 雪ノ下さんが露骨に嫌がって、葉山君は少し残念そうにしている。相変わらず雪ノ下さんは葉山君に対しては心から嫌っていますオーラを出している気がする。うーん……本当に二人には何かあったのかもしれないなぁ。

 

「ほら、お前達何をやっている?」

「平塚先生!」

 

 旅館の入口で話していた僕達に声をかけてきたのは平塚先生だった。先生は僕達を一瞥すると、

 

「もう他の者達は入り始めている。君達も一度部屋に行って荷物を置いてくるといい。これからオリエンテーションがあった後、交流の意味を込めてクラス混合で課題に取り組んでもらうこととなっている。長旅で疲れただろうし、君達は一度部屋に入って休むといい」

「う、うっす」

 

 八幡が代表して答えてくれた。

 確かに、長時間バスに揺られたから少し休みたいかもしれない。平塚先生の言葉はありがたいなぁ。そんなわけで僕達は、一度部屋まで荷物を置きに行くことにした。

 

 

「ふぅ……生き返るぜ」

「なんだか爺臭いのぅ、雄二」

 

 本当に生きた心地がしなかったのか、部屋に着くなり雄二は心から安心したかのような表情を見せていた。

 

「なんでそんなに疲れてるの?」

「……バスの中での出来事を翔子に逐一報告させられていた」

「……浮気でも疑われたのか?」

「……」

「……マジかよ」

 

 八幡の言葉に対して、雄二は何も答えなかった。沈黙を肯定とみなした八幡は、『マジか』って言う表情を見せている。うん、何というか……。

 

「霧島さんと雄二ってやっぱり仲いいよね!」

「何処をどう見たらそんなおめでたい解釈に繋がるんだこのバカ」

 

 雄二の目が本気だった。本気で僕の命を取りに来ている目をしていた。

 

「ま、まぁまぁ二人とも……来たばかりで喧嘩するものじゃないって」

 

 僕と雄二の間に入ってきたのは彩加だった。彩加は苦笑いを浮かべながら、両手を前に少しだけ突き出して僕達を宥めようとしている。くっ……ここに秀吉がいなければプロポーズしていたかもしれない……っ!

 って、何故か八幡が胸元に拳を作って震えている!?

 

「……戸塚。今の動きは、卑怯だろ……」

「え、何のこと?」

 

 きょとんという表情を浮かべながら、彩加は首を傾げている。

 ぐっ……駄目だ……このままでは……っ!

 

「何をしておるのじゃお主らは……八幡までここ最近おかしくなってきている気がするぞ」

「え、木下……今お前、なんて……?」

「じゃから、お主まで明久達と同じように……」

「……………………俺、生まれ変わってくるわ」

「なんで僕達と同じようになるのがそこまで嫌なの!?」

 

 割と本気のトーンで八幡が落ち込んでいるので、思わずツッコミを入れざるを得ないよ!

 

「しっかし、確かにこの面子で居るのもそろそろ慣れてきた頃だな」

「……確かに」

 

 雄二の言葉に同意するように、ムッツリーニが返してきた。

 最初の頃はあまり考えられなかったけど、改めてこうして六月まで過ごしてみると、意外と楽しい時間も多いよね! これからもこのメンバーとは仲良くやっていけそうな気がするよ!

 

「ね、八幡?」

「……え、これ、俺入ってたの?」

「逆に入ってないと思ってたの!?」

「お、おう……」

 

 なんだか八幡が『え、マジで?』って表情を浮かべていた。確かに最初の頃は八幡は何かと理由をつけて僕達から遠ざかろうとしていたけど、最近はそうでもないような気がするんだよなぁ……。

 

「小町ちゃんも言ってたよ? 最近の八幡は少しずつ変わってるみたいだって」

「……ちょっと待て吉井。お前、小町と連絡取り合ってんの?」

「え? うん。ちょくちょく八幡のこと聞いたりとかしてるけど……」

「……お前には渡さん」

「一体何のこと言ってるのさ!?」

 

 八幡のシスコンっぷりを垣間見た気がしたよ!?

 今のトーンは分かる。これはガチな奴だ!

 

「比企谷は妹のこととなると本当人変わるよな……後は戸塚のこととか」

「へ? 僕のこと?」

 

 雄二から突然自分の名前を呼ばれた彩加が、不思議そうな表情を浮かべていた。

 うん、分かるよその気持ち……僕も秀吉のこととなると平静を保っていられるか……。

 

「と、とりあえずそろそろ時間だろ?」

 

 わざとらしく八幡が話題を逸らしていた。

 うん、まぁ確かに時間なんだけどさ……彩加のこととなると本気だよね、八幡。

 

「そうだな。集合時間に遅刻して、鉄人や平塚女史に怒られるのも癪だからな……行くか」

「そうだね」

 

 雄二の言葉通り、遅刻して怒られるのだけは何としても避けたい。

 そんなわけで僕達は、勉強道具を持って部屋から出たのだった。

 




先日コメントにて、心理テストについての解説を! というお言葉をいただきましたので、簡単な解説を載せたいと思います!
ちなみに、数字についてはそれぞれ照らし合わせて頂ければなんとなく分かると思いますので、色の心理テストについてを……。
と言っても、基本こちらについてもバカテス原作を参照にしたものなのですが、

緑 → 友達
オレンジ → 元気の源
青 → ???(原作でもアニメでもあきらかになっていない

こんな感じです。
ただ、当作品での青は……何となく各キャラが上げていた人物を参照していたければ想像つくのではないでしょうか……?
きっとこの心理テスト、雄二ならば青を翔子と答えると思います。
ちなみに、最初の段階では戸塚もこの心理テストに答えさせようかと思ったのですが……戸塚にとっての青って誰だろうって所でやむなくカットしました……。

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