やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第十問 バカと合宿とグループ学習 (3)

 そんなわけで一日目の学習がスタートしたわけなんだけど……。

 

「なんでいきなり翔子がここに来ているんだ!」

「同じグループ……一緒に勉強出来て、嬉しい」

 

 雄二は霧島さんと一緒に勉強出来て嬉しそうだ。うんうん、仲いいのはいいことだよね!

 

「皆さん楽しそうで羨ましいです……私も、吉井君達と同じクラスになりたかったです……」

 

 僕の隣では姫路さんが勉強していた。思えば林間学校からのお付き合いだけど、姫路さんってなんだか初めて会ったような気がしないんだよねぇ……もっと前から一緒に居たような気がして……。

 

「大丈夫だよ姫路さん。きっと来年は同じクラスになれるって」

「……はいっ!」

 

 僕がそう言うと、姫路さんは笑顔で返してくれた。うん、笑顔はとってもいいことだよ。

 

「しかし、結局このメンバーで勉強することになるとはのぅ」

 

 すぐ近くで勉強していた秀吉がそう言った。

 そう! なんとここには秀吉も居るんだ! なんて幸せな状況なんだ!!

 

「おい明久! 見てないで助けてくれ!!」

「え? いや、助けるって……貴様ぁ! 霧島さんと何イチャイチャしているんだ!!」

 

 気付けば雄二のすぐ近くに霧島さんがいた。

 何平然と見せつけているんだコイツ! 彼女がいない奴への当てつけか!!

 

「これのどこがイチャイチャしてるように見えるんだ!!」

「……そうとしか見えないんだが」

 

 八幡もそう言っている!

 

「貴方達。今は勉強中なのよ。くだらないことで騒ぐのは止めて欲しいわね……勉強の邪魔になるわ。特に比企谷君。貴方さっきから数学全然進んでないじゃない」

「俺は将来文系志望だから国語の成績を伸ばすのに集中している」

「ヒッキー、テストって確か全科目だよね……?」

 

 こっちはこっちで、いつもの三人が勢ぞろい。八幡の隣に由比ヶ浜さんが、そしてその隣に雪ノ下さんが居るという感じだ。ちなみに、

 

「ハチ、数学ならウチでも教えられるから教えてあげるわ。その代わり……現代国語見て欲しいんだけど……」

「……互いの穴を埋めるのに都合いいからな。別に構わない」

「でた、ヒッキーの捻デレ……」

「おい止めろ由比ヶ浜。何それ流行ってんの?」

 

 どうやら八幡と島田さんは二人で互いの苦手科目を教えあっているようだ。所で、さっきから八幡のことを見る島田さんも顔が心なしか赤いような気がするんだけど……そういえばバスの中からずっとそうだった気がする。ちなみにそんな二人を見て由比ヶ浜さんは少し頬を膨らませていたけど、雪ノ下さんの怒涛の補習授業に捕まっている。

 ところで、さっきからムッツリーニの姿がないような気がするんだけど……。

 そう思って辺りを見渡してみると、

 

「……何してんのムッツリーニ」

 

 地面に顔を擦りつけて、必死に色んなアングルから写真を撮っているムッツリーニの姿があった。ていうかここ畳だから、顔に畳の痕が無茶苦茶ついてるよ?

 

「……邪魔するな明久。男の戦いだ」

「それ、どう見ても狙って撮ってるよね? 明らかに……」

「一枚百円」

「よし続けてくれ」

「お主ら早く勉強せんか……」

 

 秀吉に呆れられてしまった!

 くっ……ここは少しでもフォロー出来るようにした方がいいのか……!

 

「でも、こうしてみんなで机囲んで勉強出来るのって、なんだか楽しいよね」

 

 彩加がポヤポヤした笑顔を浮かべながら言ってきた。

 確かに普段こうしてみんなで机を囲んで勉強するようなことってないから、結構楽しいかもしれない。学校の授業が毎回こんな形式だったらいいのになぁ……。

 

「なんだかここは楽しそうだね。ボクも楽しく勉強出来そうだよ……姫路さんが言ってた通りだね」

 

 そこに、後から追いついてきたのか、緑色の髪をしたボーイッシュな女の子がやってきた。

 

「あ、工藤さん!」

「初めまして。途中から編入してきたから知らない人も多いと思うけど、工藤愛子です。よろしくね~」

 

 にっこりと笑顔を振りまきながら、工藤さんは手を振って挨拶をしてきた。

 可愛い女の子だなぁ……。

 

「雄二、浮気は駄目」

「挨拶するのも駄目なのか!?」

 

 この二人は本当に仲好さそうだなぁ。

 

「ん? 姫路さんと同じクラスなの?」

 

 そう言えば今工藤さんは『姫路さんが言ってた通り』って言ってたから、もしかして……。

 

「うん。どうやらそのクラスで一人引越した子がいたみたいでね。代わりにボクが入れたってことだよ」

「そんな偶然もあるんだねぇ……」

「吉井君達の話は聞いてるよ。面白い人達なんだってね」

 

 姫路さんってば、林間学校の話でもしたのかな?

 けど、面白い人達って言われるのは悪くないことかもしれない。

 

「それじゃあ改めて自己紹介するね。ボクは工藤愛子。趣味は水泳と音楽鑑賞で、スリーサイズは上から78・56・79、特技はパンチラで好きな食べ物はシュークリームだよ」

「特技パンチラ!?」

 

 くっ……な、なんてことだ……っ!

 そんな特技があっただなんて……!

 

「……それ、ガチか?」

「あれ? 君は……」

「……比企谷八幡だ」

「そっか。君が比企谷君なんだね……ふふ、どう? 気になる?」

「お、俺は別に……」

「もし気になるって言ってくれたら、特別に見せちゃってもいいと思ったんだけどなぁ……」

「……っ!!(ブシャアアアアアア)」

「あぁムッツリーニ!!」

 

 八幡とは違う所で被害が出てしまった!

 工藤さんがスカートの裾をチラッとしてきたから、その様子を鼻息荒くしていたムッツリーニが見て、そして鼻血を噴水の如く出してしまっている!!

 

「……貴方達何してるのよ」

 

 雪ノ下さんがこめかみを抑えながら言ってくる。少なくとも今僕は何もしてないよね!?

 

「は、ハチ! ハチは見ちゃ駄目!」

「そ、そうだしっ! ヒッキーは見ちゃ駄目だしっ!」

「……いや、俺だけじゃなくて他の奴らも駄目だろ……」

 

 うん、確かに八幡の意見はもっともだった。

 誰かが見ていいってものじゃない……それにしても、工藤さん……なんていうか……すごくえっちだ。

 

「工藤さん、あまりそういうことしちゃ駄目だよ?」

 

 そんな中、彩加が工藤さんに対して『めっ』という効果音が出てきそうな感じでやんわりと指摘している。

 

「僕は戸塚彩加だよ。よろしくね?」

「うん、よろしくね彩加ちゃん」

「……僕、男の子なんだけど……」

「うん、分かってるよ?」

「へ?」

 

 なん……だと……?!

 

「違うよ彩加! 彩加は彩加だよ!!」

 

 秀吉が秀吉なのと同じように、彩加は彩加なんだ!

 そこだけは絶対に譲っちゃいけない気がする!!

 

「……工藤。お前分かってて『ちゃん』付けなのか……」

「なんとなくその方が呼びやすいなーって思っただけだよ?」

 

 八幡の質問に対して、工藤さんは笑顔で答えた。

 うーむ、工藤さんはなかなか一筋縄ではいかなそうな人だ。

 

「本当、みんな面白いね。これからは姫路さんと一緒にちょくちょく遊びに行ってもいいかな?」

「ふぇ? わ、私もですか?」

「もちろん! 一人より二人の方が行きやすいでしょ? それにボク、なんとなく彩加ちゃんや比企谷君のこと、気に入っちゃったかもしれないし♪」

「……」

 

 ウインクだ。

 凄いこう、可愛いのに……えっちだ。

 

「……ハチ。駄目だからね?」

「何のことだよ……」

 

 島田さんが八幡の手を握りながら、上目遣いでそう言っていた。

 

「ヒッキー、駄目だよ?」

「だから何の……っておい雪ノ下。何携帯出してんだ。そして何しようとしている」

「然るべき機関へ通報をするだけよ、犯罪谷君」

「うん、必要ないからね? 何もしてないからね? 俺無罪だからね?」

 

 由比ヶ浜さんはほっぺをハムスターみたいに膨らませていた。そして雪ノ下さんはいつも通りだった……。

 とにかく、そんな賑やかなメンバーで、僕達は勉強を続けたのだった

 




何気に工藤さん初登場回です!
バカテスの学力強化合宿エピソードを見ている時、彼女の存在は必要だなって判断しました。よって、編入してもらっちゃいました!
ちなみに、彼女の編入エピソードについてはいずれ番外編で補完するつもりです。
原作でもそもそも触れられていなかった感じしますけど……。
そんなわけで、ちょっぴりえっちな工藤さんは、八幡と、意外にも戸塚に興味を抱いている感じです。何せ戸塚には彼女の誘惑があまり効いていないですし……。
どんどん賑やかになってまいりました!!

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