「と言う訳で一回戦!」
器の中に紙を入れて、中身が見えないようにしっかりと折りたたんだ上で、更に皿を少し揺らす。こうすることで中身が何なのかを分からなくするということだ。一体どんな王様ゲームになるんだろう。楽しみで仕方ない。このゲームで秀吉にあんなことやこんなことが出来るんだからね!
「なんだかさっきから明久が妙にワシを見てくるのじゃが……」
「……明久。早く引け」
秀吉はポツリとそう呟き、ムッツリーニが早く引くように促す。
言い返したいところだけど、今は紙を引く時だ。とにかく王様になればいいんだからそれを狙うしかない!
運も実力の内さ!
「それじゃあ行くよ……せーのっ!」
「王様だーれだっ!?」
十二人分の声が合わさる(たぶん雪ノ下さんや八幡の声が聞こえなかったけど、きっと言っていると信じている。言っているよね?)。そして最初に王様になった人物は……。
「あ、どうやら僕が王様、かな?」
笑顔でそう言ってきたのは彩加だった。
最初の王様としては優しい王様でよかった……彩加は王様というよりはお姫様の方が似合うけどね。あ、そうなったら結婚する王子様を僕が処刑しなくてはならない……! くっ、悩みどころだ……っ!
「えーとね、それじゃあ最初だし簡単なことからがいいよね?」
「彩加ちゃんの好きにしちゃっていいんだよー?」
工藤さんがにこにこしながら言うけど、彩加は相変わらず苦笑いを浮かべている。
そうしてしばらく『うーん』って考えた後に彩加が言ったのは、
「それじゃあ、三番が五番の肩を揉む、というのはどうかな?」
なるほどー。
最初としては申し分なさそうだね。
僕の番号は一番だったから外れだ……となると、三番と五番って一体誰だろ?
「五番はウチね。三番って一体……?」
「……………………」
紙を広げながら自分の番号を言う美波と、何故か口を頑なに開こうとしない八幡。
まさか……!
「……比企谷? その紙、見せてみろよ?」
ニヤニヤしながら雄二が言う。
多分雄二は気付いているよね?
「…………三番、だ」
「!?」
悔しそうに紙を開いた八幡。
いきなり当たったことがそんなに悔しいのだろうか?
って、ちょっと待って? 八幡が美波の肩を揉むの? それってつまり――。
「駄目ですよ、比企谷君。王様の命令は絶対なんですから、美波ちゃんの肩をしっかり揉んであげなくちゃいけないんですからね?」
「瑞希!?」
意外にも、姫路さんが八幡に対してしっかりと命令を実行する様に指摘していた。
こういうことに関しては基本的に消極的だと思っていただけに、少しびっくりしている。心なしか、姫路さんが美波に対して笑顔を見せた気がした。そんな姫路さんの表情を見て何かに気付いたのか、美波は顔を一気に赤くしている。一体どうしたというのだろうか?
「ひ、ヒッキー? ミナミナの肩を揉むの!?」
「……悔しいけれど、王様の命令は絶対、なのよね?」
雪ノ下さんが、携帯電話を強く握りしめながら皆に確認を取る。
そんなに通報したかったの!?
「そうじゃのう。王様の命令は絶対じゃ。守らなければならぬ」
「つーわけだ。大人しく観念して、肩揉み初めてやれ」
凄くいい笑顔を浮かべながら雄二が催促している。うん、相変わらずこういう時には囃し立てるのが上手だ。悔しいけど、僕も同じ気持ちだから代弁してもらえてありがたいとすら思っている!
「いい、のか? 島田は俺が肩を揉んでも」
「へ、平気よ。それに、王様の命令は、その、絶対なんだから……」
八幡が尋ねると、美波は顔を合わせずにそっぽを向き、前髪を弄りつつそう告げる。
その後で美波は、八幡の前に座り、
「ほら、はやく始めてよ……ハチ」
そう告げたのだった。
「えっと、時間は三十秒位でいいかな? 八幡が始めたらカウントダウンだからね?」
「……分かった」
覚悟を決めたらしい八幡が、美波の肩にソッと手を置いた。
「ひゃっ!」
ビクン、と身体が跳ねた美波。
「わ、悪い。変な所触ったか?」
「だ、大丈夫……続けて」
美波は、顔を少し赤くしつつ、続けるよう促す。
それ以上の抵抗を止めた八幡は、ゆっくりと美波の肩に手を置いて、そして、
「……んっ」
ゆっくりと、揉み始めた。
肩を揉まれている美波は、時々『んっ……』とか、『ぁ……』とか、所々悶絶しそうな程可愛い声を出している。その証拠に、ムッツリーニが興奮のあまり鼻血が垂れそうになっている位だ。
「い、痛くないか?」
「うん……大丈夫。ハチ、気持ちいい、よ?」
「お、おう……」
何か、凄くえっちな言葉を発しているようにしか聞こえないけど大丈夫かな?
多分八幡も同じようなことを考えているのか、美波のことを見ないように必死に顔を別の方向に向けている。何だろう、僕もちょっと変な感じになってきそう……。
「さ、三十秒だしっ! ヒッキーもミナミナもそこまでっ!」
由比ヶ浜さんが二人の間に割って入り、引き離す。
頬をハムスターのようにぷくーっと膨らませながらだから、なんとなく可愛い。
「二人とも。なかなかによかったよ?」
工藤さんがにこっと笑いながら言う。絶対確信犯だよね?
「……雄二。浮気は許さない」
「まだ何も言ってねぇだろ!?」
そして雄二は何故か威嚇されていた。
霧島さんも本当ブレないなぁ。
「その、ハチ……気持ち、よかったよ?」
「っ!? お、おう……」
まったくもー、美波ってばもーっ!
普段は見せない魅力を存分に出しちゃってもーっ!
八幡も勘違いしそうなのを必死に振りほどいている感じだ。
「……比企谷君。女の子の肩を揉んで興奮しているなんて、とんだ変態ね。やはり然るべき処置を施した方がよろしいのかしら。不審谷君」
「おい人の名前を勝手に不審者っぽくすんな」
雪ノ下さんの罵倒が今日も冴え渡っていた。
「とにかく、次の回にいってみるのじゃ」
仕切り直すかのように秀吉が言う。
そうだね、次こそ王様になるぞ!
「んじゃ、紙を戻してくれ」
調子を取り戻した雄二が、器を持って全員の前に差し出す。僕達はもう一度紙を折りたたんで、その中に入れた。少し揺らしてどれが何番か分からなくなったところで、もう一度僕達は紙を引く。
そして――。
「王様だーれだ!?」
次の王様は――。
「俺だな」
次は雄二か……なんか嫌な予感がするぞ……。
「んじゃ……四番と、八番が……」
四番……僕じゃないか!
すると八番は一体……?
だが、それ以上に雄二は地獄のような命令を告げた。
「平塚先生に『好きです付き合ってください』と告白して来い」
「「鬼だコイツ!!」」
とんでもない命令をしてきやがったぞコイツ!!
そして今の反応で分かったけど、八番はムッツリーニだったんだね……まさかコイツ!
「雄二貴様ぁ! 四番と八番が僕とムッツリーニだと分かった段階で命令を考えやがったな!」
「何のことだ? 俺は別にお前らがその番号だってことは知らなかったぞ?」
くっ……雄二め……。
貴様後で覚えておけよ……っ!
「王様の命令は、絶対……」
「……屈辱だが」
「「やるしか、ない……っ!」」
僕とムッツリーニは、思い切り扉を開け放ち、地獄へと向かっていくのであった――。
凄い……二回戦分までこの話で進みましたけど、温度差が激しいです。
あまりの落差にインフルエンザでも患ってしまうんじゃないかと思われる程に……。
八幡と美波が絡むと、なんかこう、ラブコメの波動しか感じない……。
ちなみに、明久とムッツリーニが教師に告白するネタ自体は、バカテスOVAでありました(あの時は鉄人相手でしたが)。
ご安心ください、次回も王様ゲームします。
ただ、明久とムッツリーニはズタボロになって帰ってくるのでしょう……色んな意味で。