やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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第十四問 バカと買い物と姉の襲来 (3)

 小町ちゃんにとりあえずの事情を説明して、フードコートにて少し休むことにした僕達。由比ヶ浜さんへのプレゼントを買いに来た筈なのに、何故か凄く疲れた気がするよ。まだプレゼント買っていないんだけどね……。

 

「御免なさいね。姉さんが場を掻き乱すようなことをして」

「大丈夫だよ。それにしてもパワフルなお姉さんだったね」

 

 話していてこれだけ体力を持って行かれる人もそういないと思う。例えば僕の姉さんとかかな……。

 

「そんなに凄い人が居たんですか? 小町お話してみたかったです」

「止めとけ小町。お前のすべてが持っていかれるぞ」

「そんなに?」

「そんなに」

 

 流石は兄妹と言った所か。

 これだけの会話でちゃんと成立しているんだから凄い。

 

「他人から見て、あれだけ完璧な存在はいないでしょうね。誰もが姉を褒め称えるのよ」

 

 溜め息を吐きながら雪ノ下さんは言う。

 しかし、

 

「はぁ?」

 

 八幡はそれを否定した。

 

「そんなのはお前もそう変わらんだろ。お前の姉ちゃんのすげぇ所は、強化外骨格みてぇなところだよ」

「きょうか……がいこくかく?」

「明久さん。それじゃあ外国人っぽくなっちゃってますよ」

 

 八幡が難しい言葉を使うものだから、僕はよくわからなくなっちゃったよ?

 そんな僕を見て、八幡と雪ノ下さんは溜め息を吐く。

 何かさっきからよく気が合いますねぇ!

 

「外面のこと。端的に言えばすげぇ外面がいいってことだよ。人当たりが良くて、ニコニコしてて、気さくに話しかけてくれる。まさに男の理想をこれでもかと詰め込んだような人だ」

「確かにね……ちょっと、演技っぽかったかも?」

 

 そっか。陽乃さんに感じた違和感っていうのはそれだったんだ。いくら妹の友達だからと言っても、一応は僕達は男の子なわけだし、最初は少しでも疑ってかかるものなのかもしれない。異性っていうだけで女子は疑いの目を向けてくることだってあるわけだし……。

 

「……驚いたわ。姉のことをここまで的確に見抜けるだなんて。腐った目だからこそ見抜けることもあるというわけね」

「お前それ褒めてんの?」

「褒めてるわよ?」

 

 いまいち褒めているように聞こえないのは僕だけなのだろうか。

 と、そんな感じで眺めていると。

 

 ポンポン ← 小町ちゃんが僕の肩を叩いた音。

 

「ん? どしたの?」

 

 僕は小町ちゃんの方を見る。

 すると小町ちゃんは、何やらニヤニヤしながら八幡と雪ノ下さんのことを見て、それから僕の耳元でこう言った。

 

「お兄ちゃん達、なんだかいい感じだと思いませんか?」

「確かに。二人とも凄く仲いいよね」

「そこでなんですけど……この後、お兄ちゃんと雪ノ下さんを二人きりで行動させてみようかなぁ、なんて思っちゃったりしているんですけど、明久さんも協力してくれません?」

 

 ほほう。

 それは確かにいいことかもしれない。

 ちょっと鈍感な八幡にはいい薬になるかもしれない……雪ノ下さん程の美人と二人きりで買い物デートという状況が誕生するのは実に羨ましい所だけど……というかその光景を写真に撮って須川君に送りつければ……いや、辞めておこう。そもそも小町ちゃんと二人きりに僕がなる段階で八幡はもちろんのこと、FFF団からの奇襲は免れないかもしれないからここは穏便に済ませるとしよう。

 だけど、小町ちゃんの案はいいことかもしれない。僕もちょうど、八幡のこととか小町ちゃんと話せるし。

 

「オッケーだよ。小町ちゃんの案に乗らせてもらうよ。その代わり、小町ちゃんも由比ヶ浜さんへのプレゼント買うの手伝ってね」

「もちですよ♪」

 

 小町ちゃんやっぱ可愛いなぁ。

 目をパチッてさせて舌をペロッと出す仕草とか見ると、八幡がシスコンになる理由も分かる気がする。

 

「と言う訳でお兄ちゃんに雪ノ下さん。この後のペア分けなんですけど……」

「俺と小町がペアで、雪ノ下と吉井がペアになるんだろ?」

「……は?」

 

 あ、そう言えば小町ちゃんがトイレに行っている間に、八幡がそんなことを言っていたのを忘れてた。

 というか小町ちゃん。一瞬にして不機嫌な顔になったよ? 八幡と同じような目をしてるよ? あれ、比企谷家では目が腐るの?

 

「これだからごみいちゃんは駄目なんだよ。どうして小町とごみいちゃんが一緒に行くのさ。今は結衣さんへのプレゼントを買いに行くんでしょ? 兄妹水入らずの買い物の場じゃないんだよ? いつもと一緒のペアで行ってどうすんのさ。それじゃあ新しい刺激も何も入らないよ? バカ、ボケナス、八幡」

「小町ちゃん? 八幡は悪口じゃないよ?」

「と言う訳で、雪ノ下さんがごみいちゃんのエスコートをお願いします。私は明久さんと一緒に回ることにしますので♪」

「「は?」」

 

 小町ちゃんが笑顔で言った途端、今度は二人分の声が重なった。

 一人は雪ノ下さん。あ、でもこれは満更でもなさそうな雰囲気?

 だけど、八幡の目は……なんというか、親の仇でも見ているような目だ。

 うん、目で語っている。

 

 ――何かしたらぶっ殺す、って。

 

「小町、それは――」

 

 八幡が何か抗議しようとした、その時だった。

 

「あれ? せんぱーい! こんな所で会うなんて奇遇ですね~」

 

 あざとさ全開の声が僕達の所に響き渡った。

 うん、この声は物凄く聞き覚えがある。

 

「……おい、吉井。呼ばれてるみたいだぞ」

「違うよ八幡。認めたくないのは分かるけど、現実を見よう?」

「お前、現実を見るなんて言葉分かるんだな」

「流石にそこまでバカじゃないよ!?」

 

 何故この流れでバカにされるのか分からないよ!?

 

「もうせんぱい! 無視するなんてひどいじゃないですか~。せっかく可愛い後輩がこうして話しかけてあげているっていうのに!」

 

 八幡が反応しないからなのか、八幡の後ろから両肩をポンっと叩いて、それからあざとい笑顔でにっこにこしながら声をかけてきたのは。

 

「先輩なんてここにはいっぱいいるだろうから、俺のことだと思わなかっただけだ……で、何の用だよ、一色」

 

 一色いろはちゃん。

 喫茶店での一件から、僕達の知り合いとなった女の子である。

 

「……ロリ谷君。これは一体どういうことか説明してもらえるかしら?」

「おい待て雪ノ下。俺はロリコンじゃない。変な名前に改造すんな」

「お兄ちゃん? いつの間にこんな可愛い子と知り合いになってたの!? というかもしかして明久さんもこの人を知っているんですか!?」

 

 ん? 何故か小町ちゃんは僕にも尋ねている?

 八幡に聞くのならともかく、僕にも確認しようとしているのはどうしてだろう?

 

「吉井先輩もこんにちはです~。いつもメールありがとうございま~す」

「ううん。僕もいろはちゃんとメールするの楽しいからちょうどいいって感じだよ」

「楽しい……?」

 

 うん?

 なんだかちょっぴり小町ちゃんの機嫌が悪くなった気がするぞ?

 

「……ロリ井君にロリ谷君と、何処まで自分の地位を落とせば気が済むのかしら」

「待って? 僕まで八幡と一緒になるの!? というかいろはちゃんはあざといけどロリじゃないよ!?」

「吉井先輩まで私のことあざといって言うんですか!? これもせんぱいのせいですね!? 責任取ってくださいね!」

「待て待て待て待て。ややこしくすんな一色。第一お前に対する責任なんて微塵もないだろ」

「……比企谷君。遺言はないかしら?」

「だから待て雪ノ下。携帯電話を使って何処へ連絡しようとしてんだお前」

「明久さん。後でちょーっとお話聞かせてくださいね?」

「あーもう! みんな一旦落ち着いてよ!!」

 

 結局、僕達五人が落ち着くまでに多少の時間がかかってしまったのは言うまでもないだろう。

 




たまにはラブコメっぽく、こんなことをしたかったわけなんですよ……っ
一色さんが既に登場しているというアドバンテージを活かす最大の方法だなって思いましたので……っ!
ちなみに次回も登場します。
そして何故かさりげなく小町ちゃんが明久に対する接し方が若干変わっている感じです。
八幡よりも明久の方がたちの悪い女殺しな気がしています……。

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