やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

89 / 130
第十六問 バカと期末試験と姉さん (2)

 次の日。

 僕は奉仕部の部室で勉強を見てもらっていた。

 

「どうやら貴方は、まだ世界史ならば点数がとれる可能性があるみたいね……よって、世界史を重点的に抑えていくつもりでいくわよ。他の科目については…………諦めなさい」

「あれぇ!? ゆきのんが諦めちゃった!?」

 

 僕の学力は雪ノ下さんが思わず手放してしまう程なのかな!?

 

「……長い目で見て、今はそれが大事と思っただけよ。今回は仕方ないにせよ、次回以降は他の科目も重点的に教えていくわ。それに、私は由比ヶ浜さんにも勉強を教えないといけないから……」

「うぅ……ゆきのん本当にありがとうっ!」

「ちょ、ちょっと由比ヶ浜さん。部屋の中で抱き着かれると、暑苦しいから、その……」

 

 相変わらず由比ヶ浜さんと雪ノ下さんによる百合百合空間が広がっている。あ、八幡が興味深そうに見つめている。主に由比ヶ浜さんの胸を。いや、でもあの胸はつい見入っちゃうよね。姫路さんも同じくらい大きいと思うけど、本当おっぱいが大きいのって偉大なことだと思うんだ。

 

「あの、ヒッキーもヨッシーも、胸、見過ぎ……」

 

 いつの間にか雪ノ下さんから離れて、胸を隠している由比ヶ浜さん。

 そんなに見ちゃってたかな……?

 

「……まったく。比企谷君も吉井君も、下衆の眼差しで眺めないで頂戴。そ、それに、女性の魅力は胸だけで決まる物ではないと思うの」

 

 ……うん。雪ノ下さん。君の悲しみが少し伝わってくるような気がするよ。

 

「吉井君。後で課題を出してあげるから覚悟なさい」

「どうして!?」

 

 やっぱ雪ノ下さんは時々心読んでいるよね!?

 

「けどさー、こうして勉強会っぽいことしていると、ちょっと前の学力強化合宿のこと思い出すよねー」

「あの時もこうして何人かで集まって勉強したわね。結局吉井君は赤点回避出来なかったみたいだけれど」

 

 雪ノ下さんも痛い所ついてくるなぁ。

 正直僕としても、今回は赤点回避だけではなく、中間試験よりもいい点を取って姉さんにアピールしないといけないんだ。

 

「今回は僕も本気で点数を取りにいかないといけないんだ……一人暮らしを確保するという意味でも、姉さんをぎゃふんと言わせる意味でも」

「……何かあったの?」

 

 由比ヶ浜さんが心配するように尋ねてきた。

 やっぱり由比ヶ浜さんはこういう時察する力があるなぁ。

 

「今朝ね、姉さんとちょっと喧嘩しちゃってね……料理を作ろうと思ったら、姉さんにその必要はないし、それを理由に点数下がったと言われたら困るって……結局姉さんは、過程とかはどうでもよくて、結果だけを気にしてるんだって。僕じゃなくて、僕の試験結果を気にしているんだって」

「……」

 

 雪ノ下さんや八幡は、ただ黙って僕の話を聞いている。

 由比ヶ浜さんは『そっかぁ……』と相槌を打ちながら聞いてくれていた。

 

「だから今回は、僕も本気で点数を取りに行こうと思ってるんだ」

「……なるほどな」

 

 ここで八幡が、読んでいた本を閉じて僕の方を向く。

 そして。

 

「確かに、過程は結果を生み出すもの。過程が伴わなければ結果も生まれない。何もしなければ、何もしなかっただけの結果しか得られない。そう言った意味では過程は大事だな。だが、過程だけを見せつけた所で何になる? 特に定期試験なんてものはその象徴だ。そう言った意味では、お前の姉貴が言ったことは正しいと俺は思う」

 

 分かっている。

 そんなことは分かっているんだ。

 だけど、僕は……。

 

「けど、お前の姉貴がそう言った時の気持ち……俺は分からなくもない」

「へ?」

 

 八幡の言葉に、僕は思わず驚きの声をあげてしまった。

 構わず、八幡は言葉を続ける。

 

「坂本も言っていただろ? お前の姉は、世界で誰よりもお前のことを愛しているってな。だからそう言ってわざわざ勉強に専念しろよって言いたかったんじゃねえか? 俺も、時々小町に同じことを思って、つい言っちまう時があったからな……けど小町は決まって、『小町がやりたいことなんだから、お兄ちゃんは口出ししないで』って言って来るんだ。だから、吉井の気持ちも、その、分からなくもない」

 

 そっぽを向いて頬を掻きながら、八幡は言った。

 姉さんが、僕のことを心配してくれている……?

 

「……そうかもしれないわね。少なからず、何かをする暇があるならばその時間を勉強に費やしてほしいと願うのは当然の気持ちね。それが身内であるならば尚の事……」

「ゆきのん……」

 

 そっか……姉さんは何も、僕の点数のみを気にしているわけじゃなかったんだ。

 ただ僕に、勉強をして欲しいからあんなことを……。

 

「……ありがとう、八幡。雪ノ下さん、由比ヶ浜さん。おかげでちょっとやる気出たよ」

「え? 私何も……」

「由比ヶ浜さんも僕の話を聞いてくれたでしょ? 雪ノ下さんは勉強見てくれているお礼。八幡は、気付かせてくれたお礼ってところかな」

 

 本当、この三人には感謝しっ放しだなぁ。

 もし、八幡がそう言ってくれなかったならば、僕はきっと勘違いしてもやもやを抱えたまま、期末試験を迎えていたかもしれない。そうしたら、変なミスをしてしまっていたかも……例えば、名前の所に問一の答えを書き込んで、その次からは一つずつズレてしまう、みたいな……やけに具体的なのは気のせいかな。

 

「意気込んでいる所申し訳ないのだけれど、いずれにせよ貴方が勉強を頑張らなければならないことに変わりはないわ。元々の点数が悲惨なのだから、せめて人間並みには点数を取れるようにならないと……比企谷君の数学レベルが全教科に適用されているなんて前代未聞だわ」

「おい待て。俺の数学が吉井と同レベルって」

「ごめん、八幡。それは否定出来ない」

「なん……だと……」

 

 若干八幡が打ちひしがれているけれど、今はそれどころじゃない。

 期末試験の成績を上げるにはどうしたらいいのか考えなければいけない。

 

「期末試験までは後一週間……先生達によって範囲の公表もされているから、対策についてはある程度打ち出せるわね……それならば一つ提案があるのだけれど」

 

 雪ノ下さんは凛とした表情のまま、僕達に言葉を投げかける。

 一体どんな提案が待ち受けているのだろうか。

 僕達は気になって、雪ノ下さんの言葉の続きを待った。

 

「次の土日に、泊まり込みで勉強会をしましょう」

「いいね! 勉強会よさそうー!」

 

 真っ先に反応したのは由比ヶ浜さんだ。

 確かに、泊まり込みで勉強すればある程度勉強時間は取れるし、姉さんも勉強目的で友人宅に泊まることは認めてくれる筈……。

 

「だけど、勉強会って言ったってどこでやるんだよ」

 

 確かに。

 肝心な場所がまだよく分かっていない。

 そんな八幡の疑問に答えるように、さも当たり前のようにこう言った。

 

「私の家でやればいいでしょう」

 




第一次勉強会を、ゆきのんの部屋でやることとなった四人!
書いていて思ったのですが、土日の休みを利用して泊まりで勉強会をやるって、随分と雪ノ下さんも大胆な手に出たなぁって……多分ドキドキイベントとかそう言った考えなんて最初からなく、一番手っ取り早く、かつ、効率的な方法を選んだ結果なのだろうなって……由比ヶ浜さんはお泊りの方に目がいっちゃっていますけどね!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。