やはりバカ達の青春ラブコメはまちがっている。   作:風並将吾

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【第十八問】 英語

以下の問いに答えなさい。
「次の単語の意味を答えなさい。
arrogance
humility」

雪ノ下雪乃の答え
「arrogance……横柄さ
 humility……謙遜」

教師のコメント
正解です。二つは対立する言葉ですので、対義語として覚えてしまうのもいいですね。

戸部翔の答え
「humility……人間」

教師のコメント
せめて感情を表す言葉を書きましょう。

由比ヶ浜結衣の答え
「arrogance……矢と銃」

教師のコメント
飛んでいるのは貴女の発想です。



第十八問 バカと夏祭りと浴衣コンテスト (1)

 僕らは今、旅館近くで開かれている夏祭り会場に来ていた。どうやら今日はたまたまそういった催し物をやっているみたいで、楽しそうだなあって思っている反面……少し、不気味なくらいに怖い思いも抱いていた。

 

「なぁ、明久……女性陣が妙に優しいのは気のせいか?」

「雄二もそう思う?」

 

 遡ること数時間前。僕と雄二の二人は、女性陣にナンパの件で煽られてムキになっていた。その上にムッツリーニは現地のお姉さん達にナンパされているのを目撃し、これってもしかしなくても僕達だけモテていないのではと考えて、必死こいてナンパしていたのだ。結果、霧島さんや姫路さんにバレてしまい、二人の機嫌を損なう結果に……雪ノ下さんに至ってはゴミを見るような目で僕達のことを見下していた位だ。やめて! そんな冷たい目で僕を見ないで! 

 ちなみに、八幡は美波や由比ヶ浜さんからの追求が終わらないらしい。どうやら海にいろはちゃんが来てたみたいで、しかも水着姿のいろはちゃんに腕を組まれたみたい。けしからん!! 八幡ってばまさかの後輩からの逆ナンに遭遇していたなんて……許すまじ! そして小町ちゃんはウキウキしているというカオスな状況。

 そういえば秀吉と彩加は二人で歩いていた時に男の人達にナンパされたみたい。やっぱり二人とも可愛いということが証明されたね……もちろんナンパしてきた男の人達は許せないけどね! 

 そんなわけで、僕達は怒られると思っていたのだけど、祭りに来てから女性陣は普通にニコニコしているのだ。

 

「ウチ、こういう祭ってあんまり行ったことないから……」

「美波ちゃんは海外での暮らしが長かったですからね」

 

 今は特に特定のグループで分かれることなく、全員で行動している。女の子達はみんな浴衣を着ている。正直みんなすっごく似合ってて言葉が出なかった位だ。あの八幡も見惚れていた位に。雪ノ下さんと霧島さんの浴衣姿は何となく似ている気がしないでもないというか、美人さんがさらに極まったというか……。工藤さんは浴衣の特性を使って生脚をちらりとムッツリーニに見せて遊んでいた。ちなみにその時のムッツリーニは、鼻血を出しながらも、

 

『こういうのも……悪くない……っ(鼻血ブシャアアアアアアアア)』

 

 と、死ぬ直前の遺言みたいなことを言っていたので、輸血することでどうにか事なきを得た。旅行先で鼻血で倒れて死ぬって、どれだけ君はカルマを背負おうとしたんだい? 

 

「ヒッキー、金魚すくいしようよ!」

「お、おう……」

 

 八幡としても、どうやら由比ヶ浜さんの態度の変化は不信に思っているみたい。返事が明らかにどもっていた……それはいつものことのような気がしてきた。

 

「どうかされたんですか? 吉井君」

 

 そんな僕に話しかけてくる姫路さん。その手にはたこ焼きが入った入れ物が抱えられている。いつの間にかたこ焼きを買ってたんだね姫路さん。

 

「何でもないよ。それより、姫路さんのそれって……」

「はい! 気になって買ってみちゃいました。お一つどうですか?」

 

 おぉ! 

 これはもしかして、女の子からの『はい、あーん♪』イベントなのでは!? しかも姫路さんからのなんて嬉しすぎて天にも昇る心地だよ! 

 ……あれ? でもこれがもし姉さんにバレたらどうなるんだろう? けど、今この場には姉さんはいない……他の人も今この場にはいない……やるなら今か……!? 

 

「うん。せっかくだから……」

「わかりました♪ はい、あーん♪」

 

 たこ焼きが刺さった爪楊枝。姫路さんはそれを僕の口元まで運んでくれた。僕はそのたこ焼きを食べて、

 

「美味しい!」

 

 外はサクサクで中はホクホク。中に入ったタコがいい味出しててとっても美味しい! 祭のたこ焼きってたまに食べたくなるんだよね……。

 

「うふふ。良かったです」

 

 姫路さんはニコニコ笑顔を見せてくれる。

 これってもしかして、僕達は許されたのだろうか。やっぱり祭という場所に来ていることもあって、みんな笑顔でいてくれているということなのかな?

 

「雄二、焼きそば買ってきたから一緒に食べよう?」

「お、おう……」

「お好み焼きもある」

「そ、そうか……」

「飲み物としてラムネもある」

「気がきくな、翔子……」

 

 霧島さんも笑顔で雄二と話している。やっぱり僕達は許されたんだ! 

 

「明久さーん! お祭り楽しんでますかー?」

 

 パタパタと足音を立てて近づいてきたのは小町ちゃんだった。美波と並んで歩いているその姿は、二人とも可愛いし美人さんなのもあって様になっている。その後ろからは八幡が歩いてくるわけだけど。

 

「あんまりはしゃいで転けたりするなよ、小町」

「もーお兄ちゃんってば心配性なんだからぁ。でも、それだけ小町はお兄ちゃんに愛されているわけですなぁ。お兄ちゃんからの愛がひしひしと伝わってくるよ。小町的にポイント高い♪」

「最後がなければ完璧だったんだがな……」

 

 相変わらず八幡と小町ちゃんは仲がいいなぁ。息のあった会話は聞いていてこっちまで楽しくなってきちゃいそうだよ。

 それにしても……。

 

「美波ってば随分と祭を楽しんでるみたいだね」

「べ、別に浮かれてるわけじゃないのよ?」

 

 いや、それは流石に無理があると思う……。

 今の美波の格好は、右手に綿あめ、左手に風船ヨーヨー、頭にはお面がつけられていて、何処からどう見ても祭を楽しんでいる人にしか見えない。

 

「美波さん可愛いから、お店の人にどんどんサービスしてもらっちゃってるんですよ〜。さっきなんてお兄ちゃんと二人で並んで焼きそば買ってる時とか、『カップルさんですか? お熱いですねひゅーひゅー♪』なんて言われてたり……」

「わーわー! そ、それはもういいから!!」

 

 小町ちゃんが随分と悪戯な笑顔を浮かべている。今、すごく君は楽しんでいるよね? 

 ちなみに、八幡もその時のことを思い出しているのか、少し顔を赤くしながらポリポリと頰を掻いている。

 

「そういえば雪ノ下さん達は?」

 

 キョロキョロと辺りを見回してみると……。

 

「ねぇねぇゆきのん、次は射的やってみようよ〜」

「ね、ねぇ由比ヶ浜さん。そんなにくっつかれると、その、歩きづらいのだけれど……」

「駄目、かな……?」

「…………別に、嫌じゃないわ。由比ヶ浜さんがよろしければ、その、このままでも、別に……」

「本当!? ゆきのん大好き!」

「ちょ、ちょっと……暑苦しいのだけれど……」

「えへへ♪」

 

 なにこれすごく可愛い。

 背景に百合の花とか咲かせたい。いやもう咲いてる気すらしてる。

 そしてムッツリーニ、君はこんな場所でもカメラを離さず撮り続けるとは漢だ……! 後で良い値で買うからよろしくね! 

 

「なんだかんだで堪能しているようじゃのう」

「本当だね。僕達も楽しもうよ!」

「そうじゃな!」

 

 可愛いコンビが二人で歩いている姿はマイナスイオンでも発せられているんじゃないかと思う程癒し効果あるよ。あぁ、いいなぁ……。

 

 だからこそ、この時の僕らは油断していたんだ。この後訪れる、地獄のような時間など知らず……。




やってきました夏祭り!
ということはあのコンテストが開催されるというわけで……もはやカオスな予感しかしませんねぇ!
祭のシーンも書くの楽しかったです!
果たしてこの後どうなってしまうのでしょうか……。

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