でもポケモンの世界に生まれたらスマートフォンはきっと無かったに違いない。
やっぱり転生者っていう立ち位置は最高なんだなって。
アシマリを受けとった俺にハラさんが話しかけてくる。
「ヨシダくん、石をちょいと預からせてもらいます!」
特に異論はないので頷く。
「カプ・コケコに認められたと言う自負をしっかりと持つんですぞ!」
それにも異論はない。
ハラさんの後ろから顔を出したハウが話しかけてきた。
「しまめぐりするってことはにーちゃん11歳なのー?」
俺が11歳に見えるだろうか。
「ハウ、11歳がなにか関係あるのかい?」
しゃがんで尋ねる。
「11歳になったらみんなしまめぐりするんだってさ!」
ニコニコしながらハウが答える。
それは……いまさら俺がやって良いのか不安になってきたな。
ハラさんに顔を向けると
「昔は11歳になるとポニ島でジャラランガと戦うというのが風習でした。それの名残で今でも11歳になるとしまめぐりをするというわけですな!」
そういうことか。
「じゃあ別に11歳でなければいけない、ということは無いんですね?」
「その通りです!」
ハウの頭に手を載せてわしゃわしゃする。
「うわー」
不安にさせやがってという気持ちを込める。
「ククイ博士、そういえば俺の家ってどこにあるんですか」
「そうだ、すっかり忘れていたよ!」
大仰に反応したククイ博士はすぐ様白衣を翻し、リリィタウンの出口の方を向く。
「さぁ、こっちだ!」
「わたしはやる事がありますのでここで失礼しますぞ!」
ハラさんは石を持った方の手を掲げてこちらに振る。
「じーちゃん後でねー」
ハウが手を振り返すので俺も倣って手を振る。
というかハウとリーリエも付いてくるのか。
「にーちゃんの家見てみたいじゃん!」
「わたしは……ククイ博士の助手ですので」
こんな小さい子を助手として働かせる研究所って人手不足過ぎやしないだろうか。
「彼女はとても優秀なんだ」
そういう問題では無いと思う。
まぁでも当人が納得しているなら良いや。
♢♢♢
草が茂っているところに来た。
ククイ博士が立ち止まる。
太陽の位置を確かめるように空を見上げている。
「うーん……流石にそろそろ暗くなってきたかな?」
「何かやるつもりなんですか?」
「やる、というよりやらせる、と言った方が正しいね」
「野生のポケモンとバトルですか?」
「おしい!」
違ったようだ。
「ハウとヨシダくんにはポケモンを捕まえる方法を見せようと思ってね!」
「俺はもう捕まえ方分かってるよー」
俺もそれぐらいは知っている。アローラでの捕まえ方が特殊でなければの話だが。
「見たり聞いたりするのと実際にやるのでは違うということさ!」
そう言ってモンスターボールを取り出すククイ博士。
「行け、イワンコ!」
飛び出てきたイワンコはクンクンと匂いを嗅ぐ動作をすると、ある一点に向かって吠えた。
草が揺れる音の直後に現れたのはこれまた見た事ないポケモンだ。
「ふむ、アゴジムシだね! じゃあぼくが今からあのアゴジムシを捕まえるからそれをちゃんと覚えておくんだぞ!」
と言ってイワンコに攻撃の指示を出した。
攻撃を食らってアゴジムシが弱ったところにボールを投げつける。
しばらく揺れていたが、カチッという音ともにボールの揺れは収まった。
「さぁ、君たちもやってみるんだ! ……と言いたいところだがもう日暮れだね、今日はやめとこう。夜に子供を連れ回すのは良くない!」
それは俺が言うべきセリフだろう。
言いたくなるのをグッとこらえて家の場所を聞く。
「俺の家の場所はどうなったんですかね」
「ハッ、そうだった。こっちだよ!」
そして着いた俺の家はかなりの大きさだ。一人暮らしをするにしては大き過ぎる気もする。
「めっちゃでけー! こんなところに一人で住むの寂しくない?」
ハウも同様の感想を抱いたようだ。
とはいえ寂しいなんて口に出したところで何も変わらない。
「この島の住民はみんな明るいし馴染めばすぐに寂しさなんて無くなるさ」
「へー」
ククイ博士もウンウンと頷いている。
「ちなみにぼくの研究所はすぐそこさ!」
と言って指差した方向には確かに何らかの建物と思しき屋根が見える
「ハウの家はリリィタウンにあるのか?」
「そうだよー」
「リーリエは?」
「わたしはポケモン研究所で三ヶ月前からお世話になっています」
ククイ博士が手を叩いて注目を集める。
「さて、夜になったし今日はこれで解散しよう。ヨシダくん、生活に必要な最低限のものは家にある。好きに使ってくれ!」
なんと至れり尽くせりなのか。
「じゃあねーにーちゃん!」
「ではまた」
ハウは元気よく手を振り、リーリエはペコリと軽く頭を下げて別れの挨拶をしてきたので俺も手を振って挨拶を返す。
三人とも見えなくなったところで家の中に入る。
リュックを放り投げ、そうになってとどまる。
中にはさっき貰ったモンスターボールが入っているのだった。
アシマリをボールから出す。
「あしゃま!」
家の中をはしゃぎ回っている。
「コラコラ、あんまり散らかすんじゃないぞ」
注意するとソッポを向いたが、はしゃぎ回るのはやめたようだ。
頑固だが理知的な性格なんだな。
棚を探してみるとポケモンフードの他に色の違うマメのようなものも見つけた。
いくつか手に取って顔に近付け、興味を示したものを与える。
マメについては今度博士に聞いてみよう。
皿があったのでアシマリ用のものを決めてそこにフードを入れる。
「ちょっと待っててな」
「あしゃま?」
冷蔵庫から食材を取り出して適当に調理し、自分の皿に盛り付ける。
「ごめんごめん待たせたな、腹減ったろ。早速食べよう」
いただきますをしてから食べ始める。
テレビもあるのでつけてみるとカプ・コケコについてやっている。
「本日、戦の遺跡付近でカプ・コケコが目撃されたそうです。目撃者の証言によりますと、空から地表付近に降り、またすぐに飛び去っていったそうです。専門家のアルゴー教授に伺いたいと思います。何故カプ・コケコが現れたのでしょうか?」
「ふぅむ、カプ神の意思を推し量ることはできません。しかし、あらゆる行動には意味があります。神もそれは例外ではありません。ですから、我々が知るカプ神の行動をまず思い出し、比較すれば自ずと答えは出るでしょう」
「なるほど、その答えというのは?」
「ふぅむ、神というのは災害と豊穣の両側面を担っています。災害というのは例えば怒りに触れた町を滅ぼしたりといったことですね。対して豊穣、これはみなさんの中にも身に覚えがある方がいるでしょう」
「……しまめぐり、ですか?」
「ふぅむ、それもまた一つの答えですな。しかしカプ・コケコは守り神とも呼ばれていることをお忘れなく」
「では誰かを守るために降り立ったのですか?」
「ふぅむ、先ほども申しました通り神の意思を推し量ることは我々にはできません。憶測でものを決めつけるのは全くもって良くない事です。件の場所では掛かっていた橋が壊されていたそうですな?」
「は、はい、その通りです。こちらがその画像です」
「この画像から分かることは?」
「えぇと……すいません、わたしには何も分かりません」
「ふぅむ、カプ・コケコというのは雷を扱います。仮にカプ・コケコが橋を壊したのだとしたら、壊された橋桁には焦げ跡が付いているはずでしょう。それは調べれば分かるはずです」
「な、なるほど」
「ふぅむ……いえ、これ以上は妄想の領域に入ってしまいますので差し控えさせていただきます」
「アルゴーさん、ありがとうございました。次のニュースに移ります」
カプ・コケコ、か……
俺を助け、俺に石を授けたこの島の守り神。
だいたいこいつのせいで俺はポケモントレーナーになった。
俺のポケモン……
「あしゃま?」
ま、いっか!
アシマリの頭を撫でる。
こいつと一緒にしまめぐりをする。
なんだかやる気が湧いてきた。
だが今日は寝る。明日は今日よりも平穏な一日でありますように。
♢♢♢
「知らない天井だ」
そして、窓からは美しい海が見える。
そうだ、俺はアローラに引っ越したんだ。
足元でアシマリが寝ている。
「あしゃしゃしゃしゃ……」
寝言を言っているようだ。
「ふー……よしっ」
息を吐いて吸って清涼な空気を肺に取り込む。
目が覚めたのでベッドから足を下ろして立ち上がる。
「ん──っ!」
のびをする。南国の朝サイコー!
寝室のある二階から降りて洗面所に向かう。
顔を洗ってスッキリしたところで鏡にアシマリが写った。
「あしゃま!」
「おはようアシマロ」
名前を間違えてしまった。鏡越しに頬を膨らませているのが見える。
謝ろうと振り返ってアシマリの方を向いた瞬間。
「ごめんアシマゴボボボボ」
水鉄砲を俺の顔面めがけて撃ち放った。ご丁寧なことに威力は痛くない程度に調節されている。
「あしゃま!」
水鉄砲を撃ち終わったアシマリはどうだ! と言わんばかりに腕を腰に当てている。
「ごめんアシマリ」
「あしゃま!」
♢♢♢
朝飯を食べていると家のチャイムが鳴った。
「はーい!」
歩いて行くと後ろからヒョコヒョコとアシマリもくっついてくる。
玄関の扉を開ける。
「やぁおはようヨシダくん! いい朝だね!」
「おはようございます。こんな朝からどうしたんですか?」
「どうしたかって? じゃあ教えてあげよう!」
教えてくれるらしい。それにしてもこの人は朝からこんなにテンションが高いのか。
「今日はそう! 祭りの日なのさ!」
「祭りですか、それはめでたいですね」
「そうだろうそうだろう!」
嬉しそうに同調するククイ博士、それだけのために来たのなら相当な変人だぞ。
「それを教えに来てくれたんですか?」
「それもある。だけどもっと大事なことがある。いや、この場合は物だね」
昨日の石の事だろうか。
ゴソゴソと懐を探り始めた。
何かを取り出して俺に見せる。
「これとこれを渡しに来たのさ!」
これは……おそらくポケモン図鑑となんらかの台紙?
「なんですこれ?」
「ポケモン図鑑とトレーナーパスさ!」
「トレーナーパスってのはポケモントレーナーとしての身分証明書みたいなものですか?」
「概ねその通りだ! 昨日二つとも渡し忘れてしまってね。これがないとトレーナーとしてやっていけないから急遽渡しに来たってわけさ!」
「わざわざありがとうございます」
「いやいや礼には及ばないよ。僕のミスだからね」
さて、朝飯の続きでも食べるか。
「あぁヨシダくん、ご飯を食べ終わったら是非とも祭りに参加してくれよ!」
「必ず」
笑顔で握手をするとククイ博士は帰って行った。
♢♢♢
約束通り朝飯を食べ終えた後は身支度を整える。捕獲用にもらったモンスターボールと追加でなぜかもらったきずぐすりも忘れない。
どうせならポケモンを捕まえてハウにも見せてやろう。
そう思って草むらをウロウロしていると、音かそれとも匂いに引き寄せられたのかガサガサと何かがこちらに近付いてくる。
草むらの外に出て誘き寄せる。
アシマリを出して構える。
ポケモンが草むらから飛び出してきた。
あれは昨日ククイ博士が捕まえたポケモン。名前は確か……そう、アゴジムシだ。
ポケモン図鑑でスキャンをする。どうやら合っていたようだ。
初のポケモンバトルだ、うまくやりたい。
「アシマリ、にらみつける!」
にらみつけるは相手を萎縮させて動きのキレを悪くさせる技だ、確か。
「ンギュアア!」
ビクッと震えたがその後走ってきてアゴでアシマリを挟んだ。
「抜け出せアシマリ!」
「あしゃま!」
指示通り顎の間から抜け出てくれた。多少の傷はあるが問題無いようだ。
「もう一度にらみつける!」
「あしゃーま!」
ビクビクゥと震えるアゴジムシ。
直後口をモゴモゴと動かし、糸をアシマリに飛ばす。
直撃したアシマリは糸が絡んで少し動きづらそうだ。
追加でアゴジムシは糸を吐き出した。
余計に動きを鈍らせるアシマリ。
これ以上遅くなると面倒だ。
「アシマリ、水鉄砲!」
ブシャアアアと一直線にアゴジムシに向かった水流はアゴジムシを吹き飛ばした。
「ンギュゥ!」
若干よろめいて立ち上がると目を怒らせて走り込み、再びその大顎でアシマリを挟む。
「アシマリ、はたけ!」
その指示に従って自身を挟んでいるアゴジムシの頭部に腕を叩き付ける。
「ギュッ、ギュギュッ」
何度も立ち上がろうとするがダメージでなかなか起き上がれないアゴジムシ。
これはチャンスだ。
モンスターボールを取り出して投げ付ける。
電子音が鳴り、ボールが揺れる。
中でポケモンが抵抗している証だと博士は言っていた。
揺れが止まり、カチッと音がした。
近付いてボールを手に取る。
どうやらゲットに成功したようだ。
初めてだから緊張もしたが、やってみると中々興奮するようだ。ニヤニヤが止まらない。
「やったなアシマリ!」
「あしゃま!」
早速アゴジムシを出してみる。
「ギュギュ……」
観念したような顔をしている。
元気も無いようだ。バトルをしたばかりだから当然のことだろう。
きずぐすりをかける。
アゴジムシは不思議そうに自身の身体をくねらせている。
傷が塞がる感覚が気になるのだろうか。
完全に治ったアゴジムシはトコトコと歩いたりピョンピョンと跳ねたりしている。
「ギュギュギュ!?」
すごいビックリしている。
俺が持っている空のきずぐすりのボトルを凝視した。
恐る恐る近付いてきて、きずぐすりのボトルに顔を寄せる。
「気になるのか?」
「ギュア」
ボトルを差し出すとアゴで挟んで地面に置く。
観察して気に入ったのか、ボトルをアゴで挟んでボールのスイッチを自分で押して中に戻った。
「待て待て」
もう一度ボールからアゴジムシを出す。
「ギュ」
出したアゴジムシはボトルを持っていなかった。内部空間に置いてきたのだろう。
アゴジムシには言っておくことがあったのだ。というかこれから捕まえるポケモンには伝えるべきことだ。
「アゴジムシ、俺はしまめぐりというものをする」
不思議そうな顔をしているが構わず続ける。
「簡単に言えば最強を目指すということだ」
アゴジムシは目を輝かせる。
「きっと楽な道では無いだろう。俺は素人だしお前らはまだ弱い」
ムッとした顔をする。
「一つ守って欲しいことがある。それは、俺の指示に従うということだ」
「ギュギュギュ」
また不思議そうな顔をする。
「ポケモンは技を使う。そして、相性を見極めて使う技を決めるのは俺の仕事だ。だからこそ、出した指示に素早く反応してくれれば最強への道が近くなるということを理解してくれ」
「ひどい指示をする時もあるだろう。何故なら俺は弱いからだ。だけど、精一杯頑張らせてもらう。それを分かってくれ」
「ギュギュ!!」
やってみろとでも言うかのように鳴くアゴジムシ。いや、俺の想像だがそういうことにしておく。
「これからよろしくアゴジムシ」
アシマリの時と同様に手を差し出せばアゴを乗せるアゴジムシ。
クールにボールの中に戻って行った。
♢♢♢
くさむらでヤングースも捕まえた俺はくさむらを抜けてリリィタウンの前にやってきた。
昨日とは違って子どもが多い。
どの子も俺を睨んでいるようだ。
これはあれか。目が合ったら〜というやつか。
一番近くにいる子に近付く。
「目と目が合ったらポケモンバトルだよね! 行け、ミミロル!」
辻ポケモンバトルが始まった。
「行け、アシマリ!」
初ポケモンバトルだ。しっかり決めていこう。
相手のミミロルは草じゃ無いし水鉄砲でいいだろ多分。
「アシマリ、水鉄砲だ!」
ビシッとミミロルを指差す。
アシマリが放った水鉄砲はミミロルを正確に捉え、弾き飛ばした。
「ミミロル、全然いけるわよね!」
「ミィ!」
「はたく!」
若干キツそうだ。
ミミロルは負けじとアシマリに接近してはたくをしてきた。
アシマリはどっしりとそれを受け止める。
連続で指示した水鉄砲はミミロルの腹部にジャストミート。吹っ飛んだミミロルは気絶したようだ。
次のポケモンはなんだと思って待つ。
「負けちゃったー。お兄さんのアシマリ嬉しそうにしちゃって悔しい!」
手持ちは一匹だったようだ。
初戦にあっさり勝った。
アシマリが何やら喉を鳴らしている。
「アシマリ大丈夫か?」
そう聞くと、アシマリは魅力的な鳴き声としか言い様の無い声を出した。魅力的だが、アシマリがこっちを向いて鳴いていると段々頭が痛くなってきたので止めさせる。
「それは新しい技か?」
「あしゃま!」
アシマリは頷く。一体なんて名前の技なんだ。
「お兄さん、それはチャームボイスよ!」
「そうなのか嬢ちゃん?」
「私の名前は嬢ちゃんじゃなくてユイよ!」
「そうか、ユイちゃん。今のはチャームボイスで良いんだね?」
「うん、だってトレーナーズスクールで習ったもの! それに、ポケモン図鑑でスキャンすれば確認できるはずよ!」
「ありがとう、これあげるよ」
「わーい! また今度バトルしましょうね!」
お礼に飴をあげた。
ユイちゃんに勝った後もリリィタウンへの道中にいるトレーナーをアシマリのみで倒し、入口の前に着いた。
何やら怪しい格好の二人組がいる。いや、怪しいどころではない。完全にクロな格好だ。
輝きさまとやらについて話している。
輝きさまは太古の存在らしい。この島には調査に来たそうだ。
少しして去ったがその際俺を見て、お前もアローラの人じゃ無いんだな的な事を言ってきた。
どう考えても輝く石とか関係してそうなんですが。
ヤベェ二人組がいなくなったのでリリィタウンに入る。
あのナッシーメチャクチャ大きいな……
「ヨシダくん! 待っていましたぞ!」
「うぉあビックリした。ハラさんこんにちは」
ナッシーを見ていたらハラさんが突然話しかけてきた。
「よくぞ来てくれましたな我らがゼンリョク祭りに!」
この祭りは全力祭りというらしい。
何が全力なのだろうか。ナッシーの大きさか?
「にーちゃん来てたんだ! おしえてくれればいいのにー」
ハウがやってきた。
「ハウ、こんにちは」
「違うよー挨拶はアローラ! だよー」
そうだったのか、昨日のことも得心がいった。
「なぁハウ、ゼンリョク祭りってどこらへんが全力なんだ?」
「ぜんりょく? えっとねー……えっとー」
あーでも無いこーでも無いとハウが悩んでいると、後ろから鈴の鳴るような声が聞こえた。
「ハウさん、何を悩んでいらっしゃるんですか?」
ハウが悩んでいる間にリーリエが来た。
ククイ博士はいないようだが。
「ククイ博士と一緒に来たのか?」
「いえ……ククイ博士は先に行ってしまったのですが……この方が送ってくださいました」
そこにいたのはどこか見覚えのある中年男性。
「アルゴーさん、ありがとうございました」
「ふぅむ、子供を一人で行かせるわけにはいかんからな。ククイくんには後で説教をしておかねば」
ハウがリーリエと話し始める。
「ゼンリョク祭りをにーちゃんに教えてあげようとしたんだけどねー。なんかよくわかんなくてさー」
「じゃあ……わたしがご説明します。ゼンリョク祭りというのはですね……アローラに存在する4つの島の……えぇと、その、島を守っている神様に……ありがとうって気持ちを伝える祭りなんです……!」
ちゃんと話せたことに安心したのか得意げだ。
思わずニコニコと見守ってしまう。
ハラさんとアルゴーさんも微笑ましげだ。
リーリエは得意げな顔のまま周りを見て、男三人の笑顔に気づきその可愛い顔を赤面させた。
もうおっさん二人なんかニッコニコだ。
ハウはいつもニコニコしてるから変わらない。
ハラさんがそこに説明を付け加える。
「まぁ島全体でやっているわけではなく、町のみんなが勝手に騒いでいるだけですがな!」
実に民俗的で良いと思う。
それにしても屋台は無いのだろうか。
祭りといえば屋台が定番だ。
聞いてみると
「適当な家に入れば適当にご馳走してくれると思いますぞ!」
適当だぁ……
ハラさんは豪快に笑っている。
「おっ、みなさんお集まりのようで……あれ、アルゴー教授がなぜここに!?」
「ふぅむ。ククイくん、君には少しお説教をしなければならないようだ」
ククイ博士が現れたかと思ったら驚愕に顔が染まり、続いて苦虫を噛み潰したような表情になった。
「ハラさん、あの人って一体……」
「ん、知らないのですかな? アルゴー教授と言って、アローラ総合学の研究者ですぞ」
そんな学問があるのか。
「昨日ニュースで、君達の巻き込まれた事件について有識者として招かれていたのは知っていますかな?」
!!
そうだ、どこかで見たことがあると思ったらテレビだったのか。
コクリと頷く。
「見ていたのに忘れていたのですかな? ハッハッハ!」
面目無い気分だ。
ククイ博士はリーリエを置いて行ったことについて説教されているようだ。
なるほど確かに人格者のように見える。
ハラさんが意図してか大きな声を上げる。
「さて、そろそろ恒例の行事を執り行いますかな!」
ハウと話しているリーリエも、ククイ博士に説教しているアルゴー教授もハラさんに注目する。
恒例の行事……祭りのメインイベントという事だろうか。
「ひとまずステージの方に移りましょう!」
ハラさんが先頭切って歩いていく。
「ククイくん、子供を預かってる重要性を忘れてはなりませんぞ」
「はい……」
ククイ博士……いつもあんなに元気なのに、凄い落ち込んでてちょっと笑える。
ステージの上にハラさんが立った。
「ハウ、ヨシダくん。ステージの上に来てください!」
一体なんだろう。
というか町民もワラワラと集まってきた。
「ハラさん、何をするんですかこれから」
「ポケモンバトルだよー」
ハウが答えてくれた。
「そう、これより行うはしまめぐりを行う二人によるポケモンバトル! このバトルをカプ神に捧げ、島に生きるもの、しまめぐりを行う全てのものの無事を祈ります! かたやしまキングの孫、ハウ!」
「よーし楽しむぞ! ニャビー!」
俺もなんか言ったほうがいいのか。
「こなた、カプ・コケコに出会いしヨシダ!」
「大人の力、見せてやるぜ!」
決まった!
なんか周りがいきなり静かになったが知らん!
「それではポケモンバトル開始!」
次回、ハウvsヨシダ
みずタイプに不利なほのおタイプのポケモンを使うハウに勝ち目はあるのか!?完全に舐めきっているヨシダにギャフンと言わせてやれ!