なお、ゲームの設定に矛盾する部分やおかしな部分は気付いたらその都度直していきます。
「行け、アシマリ」
いつも通りアシマリを出すことにした。
ニャビーはほのおタイプだから有利を取れるアシマリが良いだろう。
「行け! ピチュー!」
「ピッチュ!」
ピチュー!? ちょっとこれはまずい!
「アシマリ戻れ! ヤングース行け!」
「ピチュー! でんきショック!」
「キシャア!?」
咄嗟にヤングースに入れ替えたがアゴジムシにするべきだっただろうか。
いきなりでんきショックを食らってしまったヤングースは驚きからか動きが鈍い。
もう一度でんきショックを浴びせられてダウンしてしまった。
「ヤングースすまん! アゴジムシ行け!」
「ギギギ」
やる気十分だ。
「ピチュー、しっぼをふる!」
「アゴジムシ、いとをはく!」
お互いへんかわざを出した。
しっぽをふられたアゴジムシはそれに気を取られて集中力が若干散漫になっている。
ピチューは糸が巻きついて動きが鈍っている。
「もう一度いとをはく!」
「ピチュー! でんきショック!」
糸が巻きついたピチューはそれでもアゴジムシよりでんきショックを浴びせてきた。
もう一度いとを吐かせ、さらに動きを鈍らせる。
ここからはガンガン行くぜ!
「アゴジムシ! ひたすらはさめ!」
「ギギギガァ!!」
シャカシャカと足を動かしてピチューに挟み付くアゴジムシ。
ピチューもハウからの指示で攻撃を加える。
途中、でんきショックの影響かアゴジムシの動きが止まる場面もあったがしぶとく挟み続ける。
しかし最後にでんきショックを食らってダウン。
「よくやったアゴジムシ! 行け、アシマリ!」
「あしゃま!」
アシマリはピチューに不利なポケモンだが、ヤングース、アゴジムシが頑張ってくれた。
そのおかげでピチューはかなり弱っている。
一気に攻める!
「アシマリ! チャームボイスで仕留めろ!」
「シャマシャマシャマシャマシャマ……」
「ピチュー! でんきショック!」
「ピ、ピチュ、ピィィ……」
動きの鈍ったピチューより先に放ったチャームボイスが決まり、ピチューを倒した。
「こっからだよ! いけニャビー!」
「ニャアー!」
ついにお互いの珠玉が揃った。
ハウと目が合う。
「ニャビー! ひのこ!」
「これで終わりだ! 水鉄砲!」
お互いの渾身の技はすれ違い、お互いにぶつかる。
ひのこはアシマリに当たり、弾けたが大きなダメージは無い。
一方弱点タイプの水鉄砲をまともに正面から食らったニャビーは一撃で倒れてしまった。
ハウとのポケモンバトルに勝利した!
「あーやられちゃった……でも楽しかったねにーちゃん!」
「あぁ、良い勝負だった! そして良くやったアシマリ!」
テンションが上がって握手をする。パチパチと周りから拍手が聞こえる。なんか久しぶりに人前でバトルをしたから恥ずかしいな。
「カプゥーコッコー!!」
「おお! カプ・コケコのさえずり! 満足していただけたようですな!」
本当にカプ・コケコも見ているのか、辺りを見回しても見つけることはできないがこれは驚いた。
「ヨシダくん、これをお返しします」
ハラさんが腕輪を渡してきた。
腕輪には昨日ハラさんに渡したのと同じ紋様の石が嵌っている。
「これは?」
「Zパワーリングと言って、かがやくいしを加工した物です」
「パワーに関係あるんですか?」
「そうです! そのリングをつけたトレーナーはポケモンの力を引き出すことが出来るのです!」
なんというか神様からの露骨な贔屓だ。
「勿論、持っていれば引き出せるわけではありません。しまめぐりをしてZクリスタルを集めなければ真の力を引き出すことはできません」
「つまり、最後までやりきった者だけがZパワーリングの真の力を引き出せるんですね?」
「そうですぞ! だからハウ、ヨシダくん、チャンピオン目指して頑張るんですぞ!」
「頑張ります」
「おれは楽しければ良いやー」
バトルが終わった後、ハウはリーリエと遊びに行ってしまった。仲が良くて宜しい。
ボーッと祭りを眺めている俺の所に、後ろから足音が近付いてきた。
「ヨシダくん……だったかな」
アルゴー教授だった。まぁ、用事はなんとなく分かる。
「何か用でしょうかアルゴー教授」
「ふぅむ、察してはいるようだ。では聞きたい、君が昨日の騒動に関わった、あるいは巻き込まれた人物だね?」
頷く。
「ふぅむ、石を渡されたと……見せてもらっても?」
腕に付けているZパワーリングを見せる。
「ふぅむ確かに本物のようだ。あぁ、ありがとうもう大丈夫だよ」
アルゴー教授は何事かブツブツと呟いている。思考が独り言として出るタイプなのだろうか。
「君は島外から来たばかりだそうだね?」
「はい、そうです」
「差し支えなければ、君がどんな理由でそのいしを与えられたのか教えて欲しい」
昨日巻き込まれたことについて話す。
「ふぅむ、なんとも災難だったな」
「俺も聞きたいことがあるんですけど」
「なんだね?」
「俺がカプ・コケコに選ばれた理由ってなんですか?」
まさか専門家と会う機会があるとは思わなかったが是非聞きたい。
「それは君があの少女のポケモンを助けたからでは無いかね?」
「それはそうなんですけど」
「ふぅむ…………勇気、かね」
「勇気、ですか?」
「そうだ、危険に飛び込んだ君の勇気を認めたとでも思っておきなさい」
そう言われてしまったらそう納得するしかない。
「ふぅむ……ただ、そうだな、今はがむしゃらに進みなさい」
それはなぜ?
「若者はそうするのが一番だからだ。例え間違えたとしても恐れるな。しまめぐりは迷いを携えたままこなせるものでは無い」
今の口ぶりからするとアルゴーさんも過去に?
「ふぅむ、どうだったかな」
不敵な笑みを浮かべている。
勿体ぶらなくても……
と、そこへククイ博士が笑いながら来た。
片手には酒瓶を持っている。
「良い〜バロルだったよヨジダぐん!」
酔っ払いがやってきた!
「ぼくぁーうれしい! 若者があんなに楽しそうにバロルしているのを見れて!」
「ありがとうございます」
素直に嬉しい。
「アルゴー教授! お久しぶりです!」
「ふぅむ……これはめんどくさい……」
アルゴー教授はほおを掻いて顔をしかめている。
「なんで祭りにいらっしゃったんですかぁ!?」
大音量で質問をしている。
アルゴー教授はククイ博士の研究所からリーリエを連れて来たと言っていた。会っていなかったのだろうか。
「あくび」
アルゴー教授がそう言うとククイ博士がグラリとよろめいたので慌てて受け止める。
寝ているようだ。
「アルゴー教授、今のは?」
「大人とはいえ、人間が丸腰でポケモンに対抗できるわけはないからな。護身用だ」
そういってモンスターボールの色違いみたいなやつを見せてきた。
「ンゴゴゴゴ……」
寝息がうるさい。
「ククイ博士とは研究所で会わなかったんですか?」
「ふぅむ……」
曖昧に頷く。
「昨日の事について事情を知ってそうだから聞きに来たんだが、いなかったものでな」
「リーリエと面識はあったんですか?」
「いいや、無かった。驚いたさ、ククイくんの娘かと勘違いしたよ」
そういう驚きもあるのか。
それにしてもククイ博士が邪魔だ。
研究所に置いてきたい。
「ふぅむ、ククイくんを置いてくるならポケモンを伴って行きなさい。夜は危ないからね」
「はい、頼んだぞ! アシマリ!」
「あしゃま」
ビシィと警察のように手を額に当てる。どこで覚えたんだ。
ククイ博士をおぶさって村の出口の方に歩いて行くと遊びに行ったハウとリーリエがいた。
「あれー? ククイ博士体調でも悪いのー?」
ハウが勘違いしている。
リーリエも心配そうに見ている。
「いや、酔って寝ているだけだ」
「ヨシダさん……重くないですか?」
俺の思ってるのとは違う心配だった。
「そりゃあ重いけどそんな事心配しなくていいぞ」
「おれもついてくよー。なんか心配だし!」
頼もしいけど、心配なのはこっちもだ。
「危ないから子供はここで遊んでなさい」
リーリエがそれに反論する。
「あの……わたしは研究所に寝泊まりしているので……お役には立てませんが付いて行っても良いですか?」
「にーちゃんはククイ博士で手一杯だしさー。リーリエはおれがまもるよー」
アルゴー教授に頼みたい……!
あの人はどこに、と思って見回してもいない。
しょうがないか。
「分かった。でもいきなり走ってどっか行ったりするなよ?」
「わかってるよー。ニャビー! ごー!」
暗闇の中でニャビーが火を灯して周りを明るくする。
ニャビー、ハウ、リーリエ、俺、アシマリの順で歩いて行く。
「わたし……こうして夜に歩き回った事……無かったです。なんだか楽しいですね!」
「おれはニャビーをもらう前に、こっそり家から抜け出してポケモンを見に行った事あるよー。かーちゃんにめっちゃ怒られたけどね!」
「ウフフ、そうなんですか……いいお母さんですね……」
「えーそうかなー?」
アータノシソーダナー。
俺はこの酔っ払いを背負ってるせいで暑いし辛い。
「にーちゃん大丈夫ー?」
「あぁ……大丈夫……じゃないから早く……行くぞ……」
最後にはヒィヒィ言いながら研究所に着き、ソファに横たわらせる。
「zzz……こい…………たいあた……」
「疲れたぁ……」
地面にぶっ倒れる。
二人が寄ってくる。
「だいじょーぶー?」
ハウが扇いでくれる。
「これ……お水です……」
「ふぅ……よいしょっと、二人ともありがとう」
座り直し、二人の頭を撫でる。
目を閉じて撫でられてるのを見ると犬の様だ。
「さて、そろそろ寝る時間だな?」
「じゃあおれは家に帰ろーっと!」
「わたしはここでさよならですね」
ハウと一緒に研究所を出る。
リーリエと別れの挨拶をして、ハウとリリィタウンに向かう。
「ハウはリーリエとはいつ知り合ったんだ?」
「んー、少し前」
いつだよ。
「にーちゃんはなんで引っ越してきたのー?」
「んー、一人暮らしがしたかったとか南国に憧れてたとか色々あるけど……ククイ博士が俺の引越しの手配を素早くやってくれたからかな。勘違いもあったけど」
「どうゆうこと?」
「ククイ博士のおかげで俺はここに引っ越して来たってこと」
どうでも良さそうな顔でへーと相槌を打つハウ。
少し歩けばリリィタウンに着く。
アクセスの良さは小島ゆえのメリットだ。
「しまめぐりかー」
「ん?」
「たのしくバトルできるかなー」
不安になっているのだろうか。
「お前ならできるさ」
「んー……」
「まぁ、バトルが楽しく無くなったらリーリエと遊んでこい」
「あははは、なんだよそれー」
バトルじゃなくて、人生を楽しく生きて欲しいものだ。
しばらく無言が続く。
そのままハウの家に着いた。
「おやすみ、ハウ」
「うんおやすみ」
ハウと別れて帰路に就き、先程のハウの様子について考える。
楽しくバトルねぇ……
そう言っている本人はそうは思っていなさそうだった。
今日のゼンリョク祭りで負けたのが尾を引いているのは間違いない。
俺は慰めてはいけなかったかもしれない。
あそこまで楽しいことにこだわるということは、負けることに対してなにかしらのコンプレックスがあるのだろうか。
俺は何かで負けたら「ぐやじい!!」とはなるがそれ以上は無い。単純なだけかもしれないが。
色眼鏡で見ないように今日のことは寝て忘れよう。
♢♢♢
うーん今日も朝から良い天気だ!
朝飯を食べよう! と下に降りたらピンポーンと聞こえた。
「ほーい」
「おはようございます、ヨシダさん」
「おぉ、おはようリーリエ。朝からどうしたんだ?」
「ククイ博士から……研究所に連れてきて欲しいと……言われました」
「おぉそうなのか、わざわざありがとう。リーリエはもう朝飯は食べたのか?」
「はい、頂いてきました」
一々教養の良さがにじみ出るな。
「まぁそうだな、俺はまだ朝飯食ってないからソファーにでも座って待っててくれないか? 飲みたいものがあれば出すぞ?」
「じゃあその……モーモーミルクが……」
「あーすまん。今切らしてるからちょっと待ってて」
「いえそこまでして頂かなくても……」
「子供は我儘なぐらいが好きだ」
「えっ……じゃ、じゃあ……お願いします……えへへ」
となりのポケモンセンターに突撃する。
「おっさーん! モーモーミルクくれ!」
「あいよ。ほら、今日のオマケはミアレガレットだ、あとこれも」
ポケモンセンターは、隣にあったので試しに入ってみたのだ。そしたらおっさんがカフェをやっていたから、そこのメニューを覚えていたのだ。
礼を言って家に戻る。
「はい、モーモーミルク。あとミアレガレット」
「ありがとうございます」
いま買ってきたものとオマケで貰ったものを客に出すという非常識な男を許してくれ……
♢♢♢
朝飯を食べ終えた。
「ごめん、ちょっと待たせちゃったな」
「あ、いえ……大丈夫……ですよ?」
どうやらソファに座ってのんびりしていたようだ。
寛いでいたリーリエを連れて研究所に行く。
「おはようございまーす」
「ククイ博士、ヨシダさんを連れてきました」
「来たか。リーリエご苦労様」
それで、何の用で呼んだのだろうか。
「ポケモン図鑑に用があってね。調子はどうだい?」
ポケモン図鑑に話しかけ始めた。
これが研究者の末路か……
「何を勘違いしているのか知らないけど、その目で見るのはやめてくれ。君に渡したポケモン図鑑にはポケモンが入っているのさ!」
え、それはまさかゴーストみたいな?
「まぁそうだね、ゴーストじゃなくてロトムだけど。ほらロトム、出てきてくれ」
「ケテ」
リーリエが目を丸くして見ている。なぜ助手に教えてないんだ……
「今日は機能の更新をしようと思ってね!」
なにやら機械を弄るとこちらに返す。
「はいできた! さぁ、使ってみてくれ!」
恐る恐る画面に触ると
「よロトしくお願いするロト……」
キェァァァァシャベッタァァァ
「機能の更新で喋れるようにしたのさ!」
ポケモン図鑑ってすごい。こんな物を使ってみんな冒険してるのか。
「ロトム図鑑は数が少なくて貴重だからね! 大事に扱ってくれよ!」
だからなんでそんな物を俺に渡すんだ……
「ヨシダくんはまだアローラに来たばかりで慣れていないだろう? ロトムにナビも頼みたいと思ってね!」
……
「ハウは、この島から別の島に行ったことはあるんですか?」
「え? どうだったかな……なんで?」
「俺はナビが無くても何とかなります。そこまで子供ではないので。でも、ハウが別の島に行ったことが無いならそれは……分かるでしょう?」
「そうかなぁ……勝手知ったるアローラって感じなんじゃないかな」
それならそれでも構わない。
「年齢の差はその時点で不公平をもたらします。その上、手厚いサポートまで受けては俺も心苦しいんです」
「……驚いたよ。まさか君がそこまで潔癖な人間だったとは。でも君も僕からすれば若者に違いないよ!」
「若者と子供はまた違うと思うんですが」
ククイ博士はうーんと悩む。
そして一つ頷くとこちらに向き直る。
「じゃあこうしよう。ハウが他の島の事で不安そうならロトム図鑑をハウに渡す。そうでないなら君が使う。ハウに渡した時は君にこっちの普通の図鑑を渡す」
それで良い、と思う。余計なお世話かもしれないが。
「ハウに聞くのは君がやってくれよ?」
「もちろんです」
リーリエが俺とククイ博士の間で目を行ったり来たりさせている。
席を外してもらっておくべきだったか。
すると唐突に、後ろで扉が開く音がした。
「アローラー!」
「ハウさん、おはようございます」
「違うよリーリエ、アローラ、だよー」
「ア、アローラ〜……」
ハウが来た。
リーリエにアローラの強要をしている。
「博士、にーちゃん、アローラ!」
「アローラ!」
「アローラ」
ククイ博士が尋ねる。
「今日はどんな用だい?」
「潮風が心地いいから遊びにきたんだー!」
「ははは、そうだね。今日はいい風が吹いてるね!」
ククイ博士がチラチラこっちを見てくる。
やったらぁ!
「ハウ」
「なにー?」
「ハウは別の島に行ったことあるか?」
「無いけどなんでー?」
「いや、ほら、しまめぐりって別の島行くだろ? なんか不安とか無いかなーって」
なんか緊張して、しどろもどろになってきた。
ハウはリーリエをチラッと見ると
「大丈夫だよー! 楽しいバトルが待ってるしねー!」
あっ……
ククイ博士が噴き出した。
「そ、そうだよなー、いやー俺も楽しみだなー!」
「んー? にーちゃん変なのー」
ククイ博士は地面にうずくまって震えている。
「ククイ博士どうしたのー? お腹痛いのー?」
「い、いや、大丈夫大丈夫。全然問題ないよ」
顔が笑いを抑えて引き攣っているのが見て取れる。
「さて、次の話に進もうか!」
引き攣った顔のまま話を進めるククイ博士。
俺の顔も情けなさやら恥ずかしさやらで引き攣ってるのでひどい絵面だ。
カッコつかねえなあ……
「いよいよしまめぐりを本格的に始めたいところだけど、まずはトレーナーズスクールに行こう!」
スクールかー、この歳で行くのはなんか恥ずかしいな。
「おれー、たのしく遊んでるよー!」
「じゃ、じゃあ俺も……」
便乗するしかない!
「ダメに決まってるだろ! 二人とも行くんだ!」
「待ってください! 俺はスクールには昔通ってたので今更通う必要はありません!」
「だとしてもスクールの生徒より弱かったら意味ないだろ!」
グゥの音も出ない!
すごすごとククイ博士の後ろにつく。
「リーリエはどうするのー?」
「わたしは博士の助手ですので……着いていきます……」
「じゃーおれもいこー!」
結局二人とも行くことになった。
ククイ博士がボソッと囁く。
「子供でも男ってことだな!」
「うっす……」
研究所から出ると、一瞬で夜みたいに暗くなった。
空を見上げると、日輪が微かに見える。
日蝕か?
「ぴゅう……」
「大丈夫ですよホシグモちゃん……これは日蝕と言って……太陽が月で隠されただけですから……」
ホシグモちゃんってそんな鳴き声だったっけか。
「日蝕の予報なんてやってたか?」
ククイ博士が首を傾げている。
ニュースを見落としただけではないだろうか。
「まぁ吉兆だしいっか!」
「吉兆……ですか?」
「ああ! その昔、アローラが闇に覆われた時、アローラのポケモンと人々が光で闇を打ち消したという!」
伝承……光と闇……輝きさまというワードが引っかかる。妄想の類が頭の中を駆け巡る。いや、今は忘れておこう。
「さぁ、トレーナーズスクールに行こう!」
♢♢♢
そしてやってまいりましたトレーナーズスクール。なぜか敷地前の道の奥にはケンタロス。
気にせずスクールの敷地に入ると、建物の正面玄関の前にはメガネの美人さん。
「あーククイ博士! そちらのおふたりさんですね! レッスンしちゃうの!」
「ん? リーリエは違うぞ、こっちのヨシダくんがもう一人の方さ! 二人に厳しいの頼むぞ!」
「お願いしまーす!」
「まぁ俺は昔通ってた事もあるので多分大丈夫ですよ」
「え? あなたみたいな生徒見たこと無いけど……」
メガネさんが頭に? を浮かべている。
「別の地方のスクールです。俺は最近引っ越してきたばかりなんですよ」
「あーなるほど!」
そこにククイ博士がビシッと指を四本立てる。
「四人だ! 君たちはここで四人のトレーナーに勝つんだ! これを渡しておく!」
学習装置をもらった。
メガネさんがえいえいおーと腕を掲げて言う。
「さー始めちゃってねー!」
そう言うと、歩いて校舎の中に入って行った。
「たのしくバトル〜」
ハウも早速近くの子供に近づいて行ってバトルを始めた。
俺も相手を探そう。
♢♢♢
校舎裏の焼却炉近くにいたスポーツ少女ヒロミ、教室の園児ユウコ、草むらの短パン小僧ゴロウ、スクール現最強のホープトレーナージュンヤを倒した俺は正面玄関前に向かう。そこにはリーリエ、ハウ、ククイ博士が待っていた。
「ハウ、随分早く終わったんだな」
「楽しかったよー!」
次はどうするのかククイ博士に聞こうとしたら、スピーカーからチャイムが鳴った。
「呼び出しのお知らせです。ヨシダくんとハウくんは二階に来てください!」
「君達何かやらかしたのかい?」
ククイ博士が聞いてくる。
「ハウさんはわたしと一緒にいましたけど何も悪いことは……」
とリーリエも不思議そうにしている。
三人の視線が俺に集中した。
「待て、なんだ。俺は何もやってないぞ!」
「いやぁ、誰も見てないからねぇ……」
ククイ博士がニヤニヤしながら言ってくる。
「わたしはハウさんと一緒にいたので……」
「にーちゃん本当はなんかやったんだろー?」
そんなわけないだろ、と言いたいが証拠が無い……そうだ!
「あのメガネさんに会いに行けば分かるだろ! 別に悪いことをしたなんてあの人は言ってないぞ!」
三人に先んじて校舎に飛び込む。
あのメガネを探し出して誤解を解かせる! と鼻息巻いて階段を走り上ると
「校舎内を走ってはいけません!」
「うっ、すみません……ハッ!」
この声は……!
「メガネさん!」
「誰がメガネさんよ!」
「あだっ」
チョップしなくても……
「全く……ハウ君はどこに行ったの?」
「にーちゃん速いよー」
ちょうど良くハウも下から来た。
「なんで俺たちを呼びつけたんですか?」
そこで居住まいを正すメガネさん。
「あなたたち! わたしの教え子達を倒すなんてすごいわ! だから……」
だから?
「私とも勝負しましょう! 生徒達の敵討ちよ!」
「ちょっ、唐突過ぎますって……」
「ククイ博士からあなた達が選んだポケモンのタイプは聞いているわ!」
「ズルイ!」
「これが大人よ!」
大人ってズルイ!
「にーちゃんもゼンリョク祭りで大人の力、見せてやるぜ! とか言ってたくせに……」
「ですよねぇ……」
えぇいうるさいうるさい!
そっちがその気なら俺も全力だ!
「覚悟しろ、メガネさん!」
「このバトル終わったら絶対名前覚えさせる! 行け、モクロー!」
「終わったらな! 行け、アゴジムシ!」
「アシマリじゃない!? いいえ関係ないわ! モクロー、たいあたり!」
「クルゥ〜!」
「アゴジムシ、いとをはいて動きを鈍らせるんだ!」
「ギュギィ!」
モクローのたいあたりがアゴジムシに当たるが構わず糸を吐く。
一心不乱に糸を吐き続けたアゴジムシは自らの体力と引き換えにモクローの素早さをかなり奪う事に成功した。
「良くやったアゴジムシ! 行け、アシマリ!」
ここで早速、エースポケモンのアシマリを出す。
「タイプ相性が悪いアシマリをなんでこの場面で? ……まさか!」
「アシマリ! 動き続けて撹乱しながらはたく!」
「モクロー このは!………やはり当たらないっ」
「いいぞアシマリ!」
絡みついた糸によって機動力を削がれたモクローの このは が当たることはなく、隙を見て近付いたアシマリの はたく が連続でヒットし、モクローはダウンした。
「モクロー!」
「これが大人の力だ!」
後ろでヒソヒソ声が聞こえる。
「これは大人の力なのでしょうか……」
「なかなかやるね、にーちゃん!」
勝てば良いんだ!
「……や、やだー! こんなバトルしたく無いー!」
えぇ……駄々をこね始めたぞこの教師……
「もっと楽しくて身になって後味のスッキリしたバトルが良いー!」
モクローが困っている。
「自分から仕掛けてきたんだからもっといいセリフあるだろ!」
教師を叱るなんて初めてだ。
「う、うぅぅ……モクロー! ううーーーー!」
なにが気に入らなかったのか、回復させたモクローのお腹に顔を埋め、唸るだけの機械になってしまった。
エリコさん(メガネさんの本名)はバトルが終わった後もメソメソしていた。
だがハウと気持ちのいいバトルが出来たのか、最後には笑っていた。
「はい、ハウ君! 勝利の記念のスーパーボール!」
「ありがとー! にーちゃんにはあげないのー?」
「んー? 良いのよ、あっちの意地悪なお兄ちゃんは自分で買うから」
えぇ……と世の理不尽さを嘆いているとククイ博士が来た。誰かと一緒だ。
「ポケモンを知り、技を知る。トレーナーの基本だね! ……と、言いたいところだけどヨシダ君、基本の領域では無いね。流石はエリートトレーナーとして来ただけはある」
「ええっ!?エリートトレーナーですって!?ちょっとアンタ、何でそんなこと黙ってたのよ!」
エリコさんが騒ぎ出した。
「いや誤解だから……ククリ博士、やめてくださいよマジで」
そこに後ろのピンク髪が口を挟む。
「あなた達のバトルっぷり、見てましたよ」
「君は?」
「僕はキャプテンのイリマです!」
キャプテンか、初めて見たな。
「ハウ君、君はとても楽しそうにバトルをするね! とてもウェルカムだよ!」
「そしてヨシダさん……あなたはとても慣れている、そして冷静にバトルをしますね」
「二人とバトルをする日が楽しみです! 茂みの洞窟で待っていますよ」
そう言って去ってしまった。
意識高い系に通ずる何かを感じたな……
♢♢♢
トレーナーズスクールを出ると、ケンタロスのそばにハラさんがいる。
「ヨシダ君! トレーナーズスクールはどうでしたかな?」
「懐かしい、と言ったところですかね。生徒の質も高かったと思います」
「ポケモントレーナーになったばかりの君が言うと皮肉っぽいですな! ハッハッハ!」
自分でもそう思う。昔通っていた時は親に言われて行っていただけで、覚える気とか無かったからな。
「それにしてもあんなに荒々しいケンタロスを鎮めるなんて凄いですねハラさん」
「なぁに、年の功というやつです!」
年の功ってなんだ。俺も年取ればケンタロスを素手で鎮められるようになるのか? 逆に怖いなそれ。
トレーナーズスクールの方からリーリエとハウが何やら話しながら来た。
ハラさんに気付く。
「じーちゃん! 何してんのー?」
「ケンタロスを大人しくさせてたんだってさ」
ハラさんの代わりに答える。
ハウがケンタロスの顔を撫でる。ケンタロスは喜んでいるようだ。
「時にヨシダ君、ポケモンのお手入れはしていますかな?」
「いや、してないですね」
「それはいかん! 是非ともポケモンのお手入れはして下さい! モチベーションにも関わりますからな!」
「気をつけます」
ハラさんはケンタロスを連れてポケモンセンターの方に向かった。
「しまキング、憧れるよねー! 戦わずにポケモン鎮めてさー」
「あぁ、本当にすごいと思う」
本当にどうなってんだよ。
「でしょ? へへー! ところでこの後どうすんの?」
「俺はハウオリシティに向かう。しまめぐりも始めたいしな」
「そーだね! 俺も行こーっと! ほらリーリエ行くぞー!」
リーリエの手を引っ張って行ってしまった。
慌てて走って追い掛ける。
ハウオリシティに到着した!
次回、ハウオリシティ!
港町ハウオリシティに着いた三人。いや、二人と一人?
街での出会い?意識高い試練?作者は何も知らねぇ!
みんな楽しくポケモンバトル!