ハウオリシティ到着早々追いかけっこをしてハウとリーリエに追いつく。
「お、お前ら……もうちょっと落ち着いて……」
いや、よく考えたら11歳の子供に落ち着きを求めてどうするんだ。
看板に手をついて休憩すると、丁度ハウオリシティの入り口の看板だった。
ここは ハウオリシティ 喜び あふれる 穏やかな 街
俺がこの島にやって来た時、最初に地面に足をつけた街だ。
「俺たち先行ってるよー!」
リーリエもペコリと一礼して二人で歩いて行く。
手を上げてそれに答える。
息を整えてから、また道を進む。
リリィタウンとは違い、様々な業種の店がある。
キョロキョロと周りを見ながら歩く。
初日は着いて、寝て、ククイ博士と話しながら移動だったから周りは気にしていなかった。
前方でハウが手を振っているので近づいて行く。
「リーリエはどうしたんだ?」
「ブティックで服が見たいんだってさ!」
「着いてってやれよ」
「おれ服のことよくわかんない!」
それで良いのか男の子。
「……それでハウは何でここにいるんだ?」
「そーそー面白いところに案内してあげようと思って!」
と言ってまさに今自分の目の前にある建物に入る。
表札には案内所と書いてある。
案内所を案内してくれるらしい、中々ジョークセンスがあるようだ。
中に入るとハウが受付の前でこちらを見ている。
受付に立つお姉さんもこちらをみているようだ。
「ほら、あのにーちゃんがロト図鑑を持ってるんだよー!」
「あらそうなの……彼が島巡りをしてるのかしら?」
「そーだよー!」
挨拶をして受付のカウンターに近付く。
「あなたは……11歳……じゃないわよね?」
「カプ・コケコ関係で色々ありまして」
「あらそう、じゃあしょうがないわね……」
そう、これはしょうがないことなんだ。
「それでロト図鑑がどうしたんですか?」
「はい! ただ今ロト図鑑をお持ち頂いた方には拡張パーツをお渡ししています!」
と言ってカウンターの下に消えてゴソゴソする。
「ハウ、拡張パーツってどんな機能なんだ?」
「しらない!」
「あっ、そう……」
「楽しいやつだと良いね!」
「──あぁ、そうだな!」
底抜けに明るいなぁ。
お姉さんが立ち上がってよく分からない物を渡してきた。
するとロトムがニョキッと出てきて拡張パーツを図鑑に装着する。
「ありがとうロトム」
「ロ、ロト……」
何故か気まずそう、というか消沈している。
後でお手入れした方が良いか。
機能について聞いてみる。
「それはポケファインダーと言って、ロトムにお願いすると写真が撮れるようになる拡張パーツなんです!」
「へー、島巡りには必須みたいな機能ですね」
「その通り! 島巡りをしている最中に記憶に残したいと思ったらバンバン撮っちゃってください!」
と、カメラで写真を撮るジェスチャーをするお姉さん。
「ありがとうございました」
「いえいえー、島巡り頑張ってくださいね! 弟さんも!」
ハウは弟では無いのだが。
受付のもう一人のお姉さんがソワソワしているので近寄って話しかける。
「こんにちは」
「こんにちは! 是非ともクジを引いてください! ひいたクジのナンバーとあなたのポケモンの登録IDが一致すれば景品がもらえます!」
勢いがすごい。
「えーと、じゃあお願いします」
「はい! …………おめでとうございます! アゴジムシの下二桁が一致しました! 景品のポイントアップです!」
「ありがとうございます」
「またのご利用をお待ちしています!」
案内所を出る。
ハウとリーリエが話していた。
「あ、ヨシダさん! ロトムさんってすごいんですね!」
「まぁいろんな機能を付けられるしな」
するとロトムが出てきてパシャリとフラッシュが光る。
「ロトムさん……?」
今のは例のポケファインダーの機能に違いない。
「案内所の次は美味しいもの紹介してあげるよー!」
「あー、お前ら二人で行っててくれ。俺はちょっと用がある」
「そっかーわかったー! いこーリーリエー!」
「ちょ、ちょっと……あんまり手を引っ張らないで……」
二人が行ったところでロトム図鑑からロトムを出す。
「ロトム、出てきてくれ」
「ケテ……」
「なんで元気が無いんだ?」
そう聞くと図鑑の中に戻り、画面で喋り始める。
「ヨ、ヨシダくんは……僕のこといらないロト?」
「いや、いるけど」
「じゃ、じゃあなんで研究所で僕をハウくんに押し付けようとしたロト?」
そういうことか、それで暗かったのか……
「あれはだなぁ……単純にハウの心配をしてたってだけで、お前を邪険に扱ったわけでは無いというか……」
「じゃあ、僕の事をこれからも使ってくれるロト?」
「あぁ、そうなるな」
「ケテ!」
どうやら誤解があったようだが、誤解は今解けた。
良かった良かった。
「ふぅむ……バトルパートナーでは無く道具として特化するポケモン……これも発展か」
「アルゴー教授じゃないですか」
いつの間にか現れていたアルゴー教授。
「一体こんなところでどうしたんですか?」
「ふぅむ、散策していたら偶々君を見つけた、といったところだ。君こそ何を?」
「俺は……まぁ、お手入れ? をしていました」
「ふぅむ、感心なことだ。ポケモンとの絆は大事だからな。その絆に時として命すらも助けられる」
「教授はそういった経験がおありで?」
「あぁ、忘れもしない。まぁ、私の場合は野生のポケモンだったがね」
するとロトムが教授に質問をする。
「アルゴー教授はポケモントレーナーなのロト?」
「ふぅむ……まぁ、ポケモントレーナーだった、というのが正しいな。私はもう現役を引退している」
「そうロトか……そういえばヨシダくん。そこの壁の崩れたところ、ポケファインダーの撮影スポットとして良いと思うロト」
壁の崩れたところが撮影スポットとして良いって何だよ。半信半疑で崩れた部分から向こうを覗くとピカチュウがいた。
……何で?
「ほら、ポケファインダーを起動したロト。撮ってみるロト」
「ヨシダ君、ロトム君、私は失礼するよ」
「じゃあねロトー」
アルゴー教授は歩いて行ってしまった。
図鑑を手に持って壁に近づく。
起動したポケファインダーの画面を見ながらピカチュウを中心に合わせて何度か写真を撮る。
「写真は保存できるのか?」
「出来るロト、それに、世界中にアップロードしてみんなに見せることも出来るロト!」
「へー、じゃあ試しにアップロードしてみようか」
「どの写真にするロト?」
撮った写真の中から一つ適当に選ぶ。
「これをアップロードするロト……ケテ……ケテ……ケテ……出来たロト!」
「それってなんの意味があるんだ?」
「世界中のみんなから反応が得られるロト!」
なにそれ恥ずかしい。
「早速反応が来てるロト!」
「なになに……」
コメントを読んでみる。
「ヤシの木が生えてるしアローラかな?」
「アローラにピカチュウっていたんだ」
「写真の撮り方ヘッタクソwww」
「やっぱピカチュウが最高ピカ」
「海の写真が見たい」
色々な反応が来てる。
というかこんな普通の写真に反応するなんてみんな優しいな。
「これからも色々なスポットを見つけたら声をかけるロト」
「ありがとう、頼むよ」
「そ、それで……ポケファインダーは面白かったロト?」
「あぁ、カメラ要らずだな!」
「ケテ……」
ロトムは図鑑に戻った。
そういえばスクールであのイリマとかいうキャプテンが去り際に、ハウオリシティの草むらでポケモン集めでもしろ、みたいなことを言っていた。
せっかくだし集めてみるか。
草むらはフェンスで仕切られているようだ。
ゲートを開けて中に入る。
どんなポケモンがいるのだろうか。
♢♢♢
結果としてかなりの収穫だった。
マネネとトリミアンを見つけることができたし、ポケモンに経験を積ませることもできた。
飛び出してきたニャースがなんか見たことない体色だったけど地域性だろう、図鑑ではニャースと出ていたから違うポケモンという可能性もないし。
なんとなく海岸に降りてみる。
水着姿の人も疎らにいる。
なんとなく近くにいる青年に話しかける。
「ちょっと聞いてもいいですか?」
「ん? えぇ、構いませんよ」
「この海岸って一年中泳げるんですか?」
「そうですね、みんな好きな時に来てますよ。もしかして観光客の方ですか?」
「いや、観光客では無くて島巡りをしているんですよ」
島巡りをしていると伝えると、わずかに目を見開いて、こちらの背格好を確認するように目を上下に動かす。
「島巡り? ……観光の方のですか?」
「いや、試練の方です」
「えぇ? でもあれって普通11歳にやり始めるものじゃ……」
「カプ・コケコがらみで色々あって……もちろん俺は11歳じゃないです」
と、苦笑しながらZパワーリングを見せる。
青年は得心がいったように何度も頷く。
「カプ神じゃあしょうがないですね」
カプ神への厚い信頼が読み取れる。この島の人はそういうとこあるよな。
礼を言ってその場を去ると、後ろから今の青年の声が聞こえてきた。
「飛んでゆくキャモメ……落とされるキャモメのふん……ああ大自然!」
俺はヤバい奴に声をかけてしまっていたのかもしれない。
海岸に沿って少し歩くと、ヤドンが中々海に入らなくて困っている少女がいた。
「ほら、ヤドン! 海行こ! ね? 今ならポケマメも付いてくるよー」
「やぁん」
「鳴いたんだから動くよね? ほら、歩け! あっ右足動かした! 左足も動かして! ……なんでよー!」
憐れだ……
「手伝おうか?」
「うわぁ! ……誰?」
「暇してるからヤドン運んであげようかと思って」
「ほんと!? じゃあお願い!」
「はいよ、よいしょっと」
えっちらおっちらヤドンを運んで海際に降ろす。
「やぁん」
水をパシャ……パシャ……と腕でゆっくり薙いで遊んでいるヤドン。
「お兄さんありがとー!」
「どういたしまして、良い事をすると気持ちが良いな!」
アシマリ達も出して遊んでいるとなんか変なのがきた。
「そこのにいちゃん! そのアシマリ俺にくれよ!」
「おれはそのヤドンが欲しいでスカら!」
なんだこのガキども。
何を言っているのかよく理解できないでいると
「そこのにいちゃん島巡りの証持ってんじゃん!」
「本当だ! 俺たちにくれないッスカ?」
ヤドンの持ち主である女の子に聞く。
「なぁ、こいつら誰?」
「島に来たばかりなんだっけ? コイツらはスカル団って言って……悪さばかりしてる奴らだよ!」
「へぇ〜」
なんとなく分かった。
「なにコソコソ話してんスカ!」
「さっさと渡さないなら……」
さすがにガキとはいえ見逃せないので立ち上がって構える。
「渡さないならなんだ。ガキとはいえ乱暴するってんなら相応の態度でいかせてもらうぞ」
そう言うとウッと怯んで
「ガキじゃねースカら! ポケモンバトルで勝負でスカら!」
と、スカスカ言ってる方がボールを出したので俺もボールを取り出す。
「けちょんけちょんにしてやりまスカら!」
スカ野郎はズバットを出した。
俺もアシマリを出す。これまでは比較的知らないポケモンと戦ってきたが、既知のポケモンとの戦い、それもまた経験になるだろう。
「アシマリ、まずは様子見だ、足で稼げ」
「ズバット、すいとる!」
すいとるを選択したズバットは飛行型のポケモンらしく素早い動きでアシマリに近付き、体力を吸収した。
「今ので速さは大体覚えた。アシマリ、突っ込んできたタイミングでみずでっぽうだ!」
「ズバット、おどろかす!」
おどろかされたアシマリは、みずでっぽうを放つことができなかった。
「なかなか技巧派だな、はたく!」
「ズバット、おどろかす!」
「同じ手が2度も易々と通用するかよ!」
おどろかすために後ろから近付いてこようとしたズバットに対して、アシマリは振り向きざまにはたきつけ、地面に落とした。
「なっ!?そんな簡単に落とされるわけ!」
「とても短い時間だったが、かなり経験を積めた。勘を取り戻しつつあるんだ」
「何の話っスカ!ズバット! おどろかす!」
「アシマリ、みずでっぽう!」
急所に入ったのか、ズバットは今の一撃で倒れてしまった。
「えっ、終わりっスカ!?」
アシマリを労ってボールに戻す。
「さて、そっちのはどうする? まだまだ俺のポケモンはいっぱいいるぜ?」
数の暴力はこういう時便利だ。
「ぬぐぐ……や、やーめた! そろそろ飯の時間だしな!」
「ちょっと待ってください! まだズバット戻してないっスカら!」
チンピラは去って行った。
少しずつだが、成長を感じ取れたバトルだった。
「ちょっとおにーさん大丈夫? 考え込んでるけど」
「ん? あぁいやちょっとな。さて、俺はそろそろ行こうかな」
「そっか! 一緒に遊んでくれてありがとう!」
「あぁ、また今度遊ぼうな」
再会を約束してから別れる。
砂浜から道路に戻り、ハウオリのポケモンセンターを目指す。
途中にあるブティックでリーリエが中を覗き込んでいたが、今はポケモンの回復が優先なので先に向かう。
ポケモンセンターの前にはなぜかイリマがいた。
「アローラ! キャプテンのイリマですよ!」
「あぁ、知ってるからちょっとどいてくれないか? ポケモンを回復させたいんだ」
「それは失礼しました。では中で話をしましょうか」
中に入ってポケモンを預ける。
「話って何のだ?」
「そうそう、これについてです!」
と言って懐から取り出したのは絵が描いてある紙。ラミネート加工してあるようだ。
「なんだそれ」
「これはヌシールです! 僕がこの島の試練の目印として貼っているもので、これを辿っていけば順調に試練をこなせますよ!」
「マメなんだな」
「はい、見つけたら剥がして取っておいてください。良いことがあるかもしれないですよ?」
先程もくさむらの囲いのゲートに「ペンキ塗りたて イリマ&ドーブル」とあったしアーティストなのだろうか。
「それでは僕は、スカル団が暴れていると聞いたのでちょっと行ってきます」
俺はお手入れをしてみよう。
カフェでロズレイティーを頼んでポケモンたちをボールから出す。
椅子に腰掛けてポケモンを撫でる。
ハラさんは、ポケマメを食べさせるといい、みたいなことを言っていた。
バッグからポケマメを取り出し、手に乗せて口元に近付ける。
ポケモンによってポケマメの好みが違うようなので、好きな色のものを食べさせる。
そうやって少しのんびりしているとポケモンセンターの入り口からハウがやってきた。
リーリエも一緒だ。
手を挙げて俺がいることを知らせる。
向こうも気付いて、手を挙げて近づいて来た。
「なにしてるのー?」
「お手入れってのをやってる。中々楽しくてな」
「ふーん……おれはスカル団をやっつけてきたよー! そのあとキャプテンとも戦ったんだ!」
「ほぉ」
どうやらハウも絡まれたらしい。
俺と違うのはイリマと戦ったってとこか。
「イリマさんはハウさんと戦って、試練に挑む資格があるとおっしゃっていました。ヨシダさんもそうなんですか?」
「いや、俺はまだイリマとは戦ってないな」
するとハウが俺を指差して
「じゃあおれは先に試練に行ってるねー! にーちゃんも後から来いよな!」
「あぁ、頑張れよ」
ハウはポケモンを回復させるとポケモンセンターから出て行った。
「リーリエは着いていかないのか?」
「流石に試練には……わたしはポケモントレーナーじゃないですし……」
「まぁそれもそうだな」
危ないからな。
すると何やらリーリエはモジモジし始めた。何か話したいことでもあるのかと待っていると
「あの……」
「ん?」
「ヨシダさんは……最近ポケモントレーナーになったんですよね?」
「それこそ昨日一昨日の話だな、それがどうしたんだ?」
「なんでこれまで……ポケモントレーナーに……ならなかったんですか?」
「あー…………」
「わたしは……ポケモンが傷付いていくのを見るのが辛くて……でもトレーナーじゃ無かったから危ない目にあって……ほしぐもちゃんに助けられて……トレーナーになったら良いのかなとか……」
お、重い……昔、チョットはやっていたとは言いづらい雰囲気だ……
「わたし、すぐ迷っちゃうんです……道にも、服を買うのにも……もっとしっかりしなきゃって思うんですけど……」
「……ポケモントレーナーにならなきゃいけない、なんてことは無いから安心しときな」
「でも、ほしぐもちゃんが……」
「それも一人でやる必要は無い」
「え?」
「リーリエ、不安に思っているんだろう。頑張って何かをなんとかしなきゃいけないんだろう。でも別にさ、一人でやらなくてもいいじゃん。道に迷ったら歩いてる人に聞けばいいし、服の選び方が分からないなら店員に聞けばいいし、ほしぐもと自分を守るのだってハウにやらせればいいじゃん」
「そんな、ハウさんに迷惑が!」
「良いじゃん迷惑かけても。ハウに頼んでみろよ、あいつ絶対喜んでやってくれるぞ」
「……なんでそんなこと分かるんですか?」
「そりゃ同じ男だから分かるさ。それに俺も素人だけど、リーリエの助けになれるように頑張るしな!」
「素晴らしい!」
「え?」
唐突にポケモンセンターに声が響き渡る。
「イリマじゃん、どうしたんだよ大声出して」
「あえてもう一度言わせて頂きます、素晴らしい! ぼくは感動しました! まさかヨシダさんがこんなにも素晴らしい方だったとは!」
ヨイショが止まらない、壺でも買わされるのだろうか。
「あなたの覚悟、是非ともポケモンバトルで確かめたい!」
あ、結局そこに行き着くのね。
ポケモンセンターから出て、お互いにボールを構える。
「人を守る為に貴方がどれほど全力を尽くせるのか、この身に味わわせてください、さぁ、ヤングース!」
ここで全力を尽くしてもリーリエを守ることには繋がらないだろう。だが、それはそれとして、素人トレーナーとして全力を尽くさせてもらおう!
「いけ、アゴジムシ!」
キャプテンの使うポケモンだ、きっと強いんだろう。油断なく勝ちに行きたい。
「アゴジムシ、いとをはく!」
相手の素早さを下げる技の一つだ、これが布石になれば良いのだが。
「ヤングース、たいあたり!」
「もう一回いとをはく!」
「変化技ばかりでは倒せませんよ!」
「分かってるよ! たいあたり!」
「こちらもたいあたり!」
「ギシッ!」
「デュフッ!」
野生のポケモンとのバトルでちゃんと鍛えられているはずだ。鍛え方が合っているのかは知らないけどな。
「ここからは根性比べといきましょうか!」
お互いにたいあたりを繰り出す。
いとをはくが効いたのかヤングースの速さは落ちており、アゴジムシは攻撃を何度か避けることに成功している。
決められるか?
「ふふふ、回復手段は常に持ち合わせておくものですね」
イリマがキズぐすりを使って回復させてしまった。
元気になるヤングースだが、アゴジムシもまだやれる。
ここは信じて待つしか無い。
お互いに傷ついていくポケモンだが、アゴジムシの動きが唐突に変わった。
ポケモン図鑑を構えるとロトムが教えてくれた。
「今のは、戦闘中に成長したロトね」
そのまま押し切るアゴジムシ。
ヤングースはひっくり返って気絶している。
「あなたの熱意がポケモンの強さを押し上げる! ぼくも滾ってきましたよ!」
最初から滾ってただろ。
「アゴジムシ、よくやった! ヤングースいけ!」
イリマはドーブルを選択した。
ドーブルとは戦ったことがない、慎重にやろう。
「ヤングース、動きを良く見てたいあたり!」
「果たしてそんな余裕がありますかね?」
イリマはたいあたりを指示。ヤングースは焦らず避け……ようとして弾き飛ばされた。
「キャプテンを甘く見ないでいただきたい! さぁ、ドーブル!」
このドーブル、速くてしかも力が強い! 連続のたいあたりでヤングースが沈んでしまった。
「行け! アシマリ!」
「ふふふ、ここからですね」
「そうさ、ここからだ。みずでっぽう!」
「ドーブル、たいあたり!」
先ほどとは違い、ドーブルのたいあたりを受けても吹き飛ばされることはなく、みずでっぽうを撃つアシマリ。
「たいあたり!」
「単調だな!わざとかは知らんが、付け込ませてもらう!」
たいあたりを繰り出したドーブルの腹にふたたびみずでっぽうが命中。ドーブルを弾き飛ばした。
だがまだ気絶するには至っていない。
「フフフ、ここからですよ、ドーブル!」
「ブルゥ!」
「効いてるぞ、アシマリ」
「あしゃま!」
しかし、流石はキャプテン、ここに来て一段ギアを上げたのか、ドーブルの動きにキレが増す。小さくないダメージを負っているはずのドーブルに翻弄され、先に倒れたのは……
「よくやった、アシマリ」
アシマリだった。
「ドーブル! お疲れさまです!」
「難しいなぁポケモンバトルってのは」
ポケモントレーナーになって初の敗北だ。
「嫌いになりましたか?」
そこまで捻くれてはいない。
「そんなことはないけど、やっぱりキャプテンは強いな」
「ふふふ、あなたもまだ本気では無いでしょう?」
「いやいや、どこを見てそう感じたのかは知らないけど全力だったぞ?」
「ふふふ、そういうことにしておきます。ですが、私も楽しくバトルが出来ました」
つい最近復帰したばかりなんだからこれが全力に決まってるんだよなぁ……
まぁでも
「ハウを見習おうと思ってな。楽しくバトルした方が気持ち良いだろ? 俺もお前も」
「ふふふ、そうですね。ではボクはこれで失礼させてもらいます。ハウ君もそろそろ洞窟に辿り着いていてもおかしくないですしね」
そうか、ハウは先に行ってるんだったな。
「ではヨシダさんも是非試練の洞窟にいらしてください。道中にはたくさんのトレーナーやポケモンがいるでしょうからそこで経験を積みながら来ると良いと思います」
「おう、サンキュー」
別に勝たなくても良かったらしい。
そういえば……
「あの……わたしはどうすれば……」
「もうハウオリは十分巡ったって感じか?」
「はい、何度か来たこともありますし」
「それなら好きにしてれば良いんじゃないか?」
そもそも俺がリーリエの行動を決めるのもおかしい話だが。
「じゃあ……わたしもヨシダさんに着いて行くことにします。メレメレの花園には行ったことが無かったので」
「分かった」
そういうわけで一旦ポケモンを回復させてから二番道路を進む。
リーリエが緊張したように言ってきた。
「これからハウさんもヨシダさんも試練に挑まれるんですね…………古い本に、昔の試練はカプ神と戦う強さを身につけるためのものだったと書いてありました。きっと大変なんでしょうね……」
「なんかバトルジャンキーみたいだな」
「ジャン……なんですか?」
「ポケモンバトルが大好きってことさ」
「そう……なんでしょうね……」
「ピュイ!」
ほしぐもがバッグから飛び出てきた。
「ダメですよ、ほしぐもちゃん。誰が見ているか分からないんですから中に入っていないと」
するとほしぐもを影が覆い、大きな手がほしぐもを持ち上げる。
「そうですぞ、人の目というのはどこにでもあるものですからな」
「ハラさん……とケンタロスも一緒ですか」
ケンタロスは相棒なのだろうか。
「聞きましたぞヨシダくん、試練に挑むそうですな」
「はい、今から洞窟に向かうところです」
「順調なようで何よりですな!」
好々爺然とした笑顔になるハラさん。
「ブルルッ」
ケンタロスが前足で地面をかく。
「おっとっと、落ち着きなさいケンタロス」
ハラさんが宥める。
「ふぅ……どうもこのケンタロスは島巡りがしたいようでしてな」
「ブモォォォ!」
「あっこら! ……ハッハッハ、追いかけっこと行きますかな! ヨシダくん、試練を頑張るのですぞ! リーリエ、ほしぐもちゃんをよろしく頼みますぞ!」
猛烈な勢いで走って行ってしまった。
「さて、俺たちも行くか?」
「はい、お願いします」
「ピュイ!」
俺たちもハラさんの後を追うようにして試練の洞窟方面に向かうことにした。
成長しなければ。
カプ・コケコってニワトリっぽいから他の神様も鳥系列なのかしら(無知)
あとこの世界ってポケモンに関わらずに仕事って出来るよね?食品の会社とか電機メーカーとかあるだろうし