パラダイス・ロスト Champion of the Earth 作:若奈
次の日。友子は学校に来ていなかった。
連絡を取ろうとしても電話には出ないし、既読もつかない。
他の友達に友子と喧嘩でもしたのか?
と投げかけられるが、正直「友子」というワードを聞くとビクッとする。
なんとか、それを一日乗り切って放課後を迎える。
他のクラスメートは意気揚々と部活動へ行ったり、家に帰ろうとしたりといつもの光景が広がっている。
「おい、冴島」
「う、うん」
タクヤに促され、後をついていく。
昨日とは打って変わって、お互い無言。
気まずく、重い空気が流れている。
しばらく歩くと、あの三叉路に差し掛かる。
まだ日があり、街灯には光は灯っていない。
斜めに傾いた街灯。
昨日、友子が変化した怪物。
それが、直撃したところから斜めに傾いている。
分かっていたことだけど、昨日あったことは夢じゃない。
本当にあったことなんだ。
でも、あの怪物が友子だったとしても来ていた服も全く痕跡を残さずに灰と化して消え去った。
怪物だったその灰も今は全くない。
恐らく風で流されたのか人が通るたびに灰が踏まれ、地面の土と同化してしまったのだろうか。
三叉路をいつもとは違う方に進む。
通り過ぎても一言も交わさない。
それどころか、心臓の動悸が激しくなる。
「着いたぞ」
「ここが…」
学校以来の会話だ。
2階建てのいたって普通の家だ。
タクヤが入れと言わんばかりに入り口を開けて待っている。
「お邪魔します…」
控えめに小さくそういうと、玄関で靴をそろえ上がる。
「おい、帰ったぞ」
タクヤがそう言うと、家の奥から女性が一人出てくる。
雰囲気はタクヤに似ている。
金髪に黒のメッシュがかった髪。
容姿だけでも不良っぽさを醸し出している。
風香と目が合うと少し「あっ」という表情を見せた。
「そうか、この子が…」
「あの、冴島風香です…えっと、タクヤくんとはクラスメートで…」
「聞いてるよ。さっ上がりな」
女性に促され、応接間のようなところへ案内される。
「どうぞ。ジュースでよかった?」
「は、はい」
目の前にジュースを置かれ、それを一口飲む。
「それじゃ、ごゆっくり」
一言そういうと女性はパタリとドアを閉める。
「ね、今のお母さん…じゃないよね?」
「ああ、俺に両親はいないからな。あいつは親戚の従姉だ」
風香は納得がいく。
母親にしては若かったが従姉ということで、割と合点行くが何か色々複雑な事情があるのだろう。
「それで、そんなことを聞きに来たんじゃんないんだろ?」
「そう…そうよ!友子は!あの怪物は!なんなの!」
「おい、あんまり大声を出すな」
「ご、ごめん」
「順番に話していくから安心しろ」
「うん…」
「そうだな…冴島はゾンビって知ってるか?」
「え、死んだ人間が甦るっていうか、噛まれたりすると自分も感染してゾンビになるっていうやつだよね」
アメリカのB級映画でよく見る奴だ。
それと何か関係があるのだろうか?
「あいつらはオルフェノクっていうんだ」
「オルフェノク…?聞いたことない…」
「だろうな。知っているとすれば、お前も奴ら側だからな」
「で、そのオルフェノクってのとゾンビがどう関係あるの?」
「ゾンビと同じだ。死んだ人間がオルフェノクとして甦る」
死んだ人間が甦る…
「奴らは人類の進化系と自称しているが、実際は人間を襲う怪物だ」
「でもなんで人間を襲おうとするの?」
「さあな。オルフェノクになったに人間は力に溺れるのさ」
「力に…」
「それと、奴らに襲われて死んだ人間もオルフェノクとして甦る。灰となって死ぬ奴の方が多いがな」
あれはオルフェノクという存在らしい。
死んだ人間が怪物となって甦った結果。
ゾンビとは違い、人間と同等の知能を持っているのが厄介だそうだ。
奴らは仲間を増やすために人間を襲っているらしい。
人間を襲って、殺害するとオルフェノクになるが、なれない人間もいる。
なれなかったらどうなるか。
灰となってこの世から消え去ってしまう。
あの灰色の怪物に襲われてしまえば最後。
自分も灰色の怪物になるか灰になるかだ。
「じゃあ、あの怪物は友子自身だったってこと?」
「ああ、気の毒だが、事実そうだ」
「そんな…」
思わず涙が零れる。
一縷の望みをかけていたが、あの怪物は友子自身で、私たちを襲ってきた。
「あの様子だと覚醒したばかりだな」
「じゃあ、最近友子の身に何かあったってこと?」
「あぁ、大方そうだろうな」
「一昨日まで今まで通りだったのに…」
「そういうことだ。オルフェノクとなっても元の人間の姿で紛れ込んでいる」
「学校にもいるの…?」
「それはわからねぇ。ただオルフェノクになったやつがいる限り、警戒しておかないとマズイ」
「怖いよ…いやだよ…」
「安心しろ。俺がいる限り守ってやる。さっきも言ったが、オルフェノクとなった人間の大半は力に溺れ、人間に対して牙を向く」
「友子も?」
「例に漏れずといった感じだ。しかし、あいつは『ベルトをよこせ』と言っていた。恐らくあいつをオルフェノクに覚醒させた奴がけし掛けたり、命令したんだろう」
「夢じゃないんだよね…」
「ああ、現実だ。もう遅い、送っていくから帰れ」
「まだ聞きたいことがあるけど、また今度いい?」
「ああ」
風香はすっと立ち上がり、玄関へ向かう。
「話はもう大丈夫なのか?」
「はい…お邪魔しました」
ペコリと頭を下げる。
「そう…また何かあった来なよ」
「ありがとうございます」
タクヤの従姉に再び頭を下げると、玄関を出る。
茜色の空が広がっている。
もうすぐ日が完全に沈む。
「奴らは日が落ちると活発になる」
「うん、わかった…」
あの三叉路まで差し掛かる。
「もう、ここまでくれば大丈夫だよ。ありがとう」
「いいのか?送ってくぜ?」
「大丈夫大丈夫!それじゃあね」
脱兎のごとく駆け出す風香。
「おう、気をつけてな」
聞こえたかはわからないが、昨日とは反対にタクヤは風香の姿が小さく見えなくなるまで見送った。
to be continued…
お待たせです。
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ありがとうございます!!!!!
さて風香とタクヤ、この二人は今後どうなっていくのでしょうか。
次回もよろしくお願いします。