パラダイス・ロスト Champion of the Earth 作:若奈
「あら、そう。友子ちゃんファイズにやられたのね。あなたもこちらに戻ってきていいわよ。ああ、それとあれは回収しといてね」
携帯電話を切る。
「ファイズはやはりこの町に?」
「そうみたい。私を追ってきたのかしら?」
「後始末は楽そうね。ご家族はすでに友子ちゃんに処分してもらっているし」
「ベルトはどうするのですか?」
「うーん。この町はもう用済みかなー?東京に戻ろうかしら」
「ファイズを野放しにするのですか?」
「まっ、無駄に戦って、せっかく手に入れた戦力を減らすのもね」
「確かにそうですね」
町はずれにある教会の一室。
露出のある女性とシスターが会話をしている。
ぱっと見れば、露出のある女性が懺悔しに来たのだろうかとも思える一面だが、なにやらそうではなさそうだ。
「この数週間で行方不明者は50人以上か…」
「そろそろ隠し切れませんね」
「この女も用済みかな?」
椅子に縛られたエージェントの女性。
「あんたたちになんか屈しない!」
「ふぅーん。ふふ。これはまだ序章の序章よ。これからもっと面白いことになるよ」
「そんなことはさせない!」
「ファイズの秘密を教えてもらいたかったけど、もういいや」
パチンと指を鳴らす。
バン
ドアが開く。
部屋に入ってきたものはおおよそ人間の形をしていない。
灰色の大きな鎧を身に纏ったような存在。
「くっ」
エージェントの女は苦虫を潰したような顔を見せる。
「最後に聞きますが、こちら側へ来ませんか?」
「行くわけないでしょ!」
「そうですか…では、おやりなさい」
シスターの一言が合図となり怪物は椅子に縛られている女性に襲い掛かる。
突進を喰らう。
弾みで木製でできた背もたれが破壊される。
エージェントの女は瞬時に両腕を拘束されている縄から脱する。
駆け出し、教会の本堂へ向かう。
クルっと振り返り、銃を構える。
「ふん。そんなの効かないのわかってるでしょ?」
「戦いたければ同じ姿で戦いなさい」
「嫌だ!!私は人間だ!」
「ふふ。お馬鹿さん」
叫ぶ女に一瞬奇怪な模様が浮かび上がるが、すぐに消える。
そして、
パン!
乾いた音が鳴る。
怪物に向けて銃弾を発砲したのだ。
パン!パン!パン!
全弾とも怪物に命中するも、鎧のような表皮が全て弾く。
「くっ…」
分かっていたことだが、いざ目の当たりにすると現状を理解するのにも十分すぎるほどだ。
『ぐぉおおおおお』
「シスター帰ったよー?」
雄たけびを上げる怪物をよそに後ろから声がする。
そこにはシスターと呼ばれる女と同じように修道服を身に纏った少女がいた。
「なになに?おもしろそうじゃん!」
修道服の少女は嫌な空気を纏うと、異形の鎧を身に纏った。
『これ、もういいの?』
「ええ」
『それじゃあ、おやすみっ』
異形の怪物は女にのしかかると、烈火のごとくパンチを繰り出す。
『いぇーい、ふぉーお、てぇーい』
奇声を発しながら全力でパンチを繰り返す。
『ふぅ…』
事を済ませたように怪物が天を仰ぐような仕草を見せると、嫌な空気が振り払われる。
灰色の異形がいた場所には元の修道女がいるだけだった。
そして、エージェントの女は人間の形を成していない、肉塊へと変わり果ていた。
やがて、肉塊は青く淡い炎をあげ、灰と化し、女の痕跡を全く消し去った。
to be continued…
エージェントの女は何オルフェノクだったんでしょうね?
こういった、正体不明ってのが割と出てくるかもです…
何とか今月も4話投稿完了です。
ギリギリだけど(;'∀')
多分いつか、加筆修正すると思います(;'∀')
この章ももう少し続く予定なので、よろしくお願いします。
基本的に章が変わると、時代や場面が変わるといった感じです。
では、次回にまたお会いしましょう。