パラダイス・ロスト Champion of the Earth 作:若奈
「え…?」
「フフッ」
「?」
「遅かったね?風香?」
落ち着いた雰囲気の喫茶店。
もっとも、普段見慣れた風景の一つだ。
木でできたアンティークの数々にニスの艶に電球が反射して、落ち着いた空間を作り出している。
モノトーン
辺り一面びっしりと灰色と化している。
食べかけの料理。
飲みかけのコーヒー。
まだ少し暖かさを感じる。
突然、一瞬のうちに人だけがその場から消えたように見える。
しかし、その上からは灰が覆いかぶさっている。
「どうしたの?風香?押し黙っちゃって?」
「千夏ねぇ?どうして?ち、違うよね?」
風香はそんなんことはない。
あってはならないし、あって欲しくない。
「そうよ?違うよ?私じゃないもの」
「そ、そうだよね…」
必死に否定したかった。
そうだよね。とは言ったものの、この景色や現状の答え合わせにはなっていない。
いろいろな思考が脳内を駆け巡る。
「ふふ。さて風香はどうなるかしら?」
「⁉」
「お姉ちゃんね、東京に帰ることにしたの」
「東京へ…?」
「そう。もうこの町は用済みってわけ。ね、早紀?」
そうだ。
早紀ねぇは?お父さんは?
店の奥から早紀ねぇが出てくる。
少しうつむき口元以外の表情は読み取れない。
「…」
「さ、早紀ねぇ?」
私がそう問いかけると、早紀ねぇの口元が緩む。
ゆっくりと顔をあげる。
早紀ねぇの顔は狂気に満ちたほどニヤッとしている。
「早紀、どう?」
「あぁ、最高だよ…これが本当の私だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
思わず耳を塞ぐほどの咆哮。
早紀ねぇの周りの空気が一変する。
嫌な空気が早紀ねぇを包み込む。
それと同時に目が白濁する。
肌という肌に奇怪な模様が浮かび上がってくる。
早紀ねぇの身体が鈍色に発光する。
水音のような形容し難い音を発しながら、早紀ねぇは灰色の異形―――オルフェノクへと変化を完了させた。
顔の両側には垂れ下がった大きな耳が特徴だ。
まるでウサギのように…
垂れ下がった耳は両胸を隠すほど大きい。
「そ、そんな…」
思わず両手で口を覆う。
昨日の友子に続いて、早紀ねぇまでオルフェノクだったなんて。
照明がオルフェノクの影を作り出している。
それが少し縮み、青白く早紀の裸体を映し出す。
『私はこの町が嫌いだ。周りの人間は落ち着いているからこれくらいがいいとぬかしやがる。どこがだよ?田舎くせぇし、何にもねぇ。私はこんな町で終わるつもりはさらさらねぇ!それにお前の芋臭さは前から腹が立ってんだ。この町みたいで大っ嫌いなんだよおおお!』
早紀ねぇが変化したラビットオルフェノクは再び咆哮のような叫びを放つ。
カランコロン
入り口のドアに設置した鐘が来訪者を告げる…
to be continued…
早紀ねぇ!
すごいことになっちゃいました…
もうちょっと続きます。