粗が多いかもしれませんが、温かい目で読んでもらえると助かります。
また、作中に出てくる門矢『司』は、本家の門矢『士』とは大幅に性格が異なります。
ご了承の上、お読みください。
第一話 心の支え
「…………」
ギターを背負った、青緑の長髪をした少女が歩いている。
彼女の名は
ガールズバンド『
彼女は今、バンド練習のためライブハウス『
「!」
その道中、紗夜はある人物を目撃し、進む道を外れてその人の元へ。
生真面目でストイックな性格をしている彼女が、寄り道をすることは滅多にない。友達やバンド仲間と一緒にいない限り、自ら寄り道する人ではなかった。
そんな彼女を寄り道させてしまうほど、その人物は彼女にとって大切な存在だった。
「…………」
茶髪の男が、赤紫色が基調の二眼レフカメラで街の風景を撮っていた。
彼の名は
紗夜の幼馴染み。今は別の高校に通っている。写真を撮るのが趣味である。
「司、調子はどう?」
「うぉあ!?」
司の後ろから紗夜が話しかける。それに驚いた司が振り向きながら尻もちを着く。
「……ふふっ、驚きすぎよ」
「ご、ごめん……」
紗夜が微笑みながら、司に手を差し伸べる。彼はその手を取り、立ち上がる。
「まぁまぁかな。現像するまでわからないから。それが面白いからいいんだけど」
司は紗夜を撮りながら答える。
「私は、あなたになら撮られても平気ですが、くれぐれも無闇に他人を撮らないように。訴えられても擁護できないわ」
「大体わかってる。昔から何回も言われればね」
「『大体』って付けるのも、昔から変わらないわね」
「紗夜の調子はどう?」
「今のところ順調よ。これから練習があるわ」
「あっ、そうだったんだ! ごめん、時間を取らせて」
「何言ってるの? 話しかけてきたのは私の方じゃない。それに、集合時刻まで三十分あるから大丈夫よ」
「そ、それなら良かった……」
司がホッとして肩を落とす。
それと同時に、近くの花にミツバチが止まる。司はそれを見逃さず、素早くカメラを取り出して慎重に撮る。
「……あなた、写真家にはならないの?」
「えっ!?」
「司の写真、昔と違って今は綺麗に撮れてる。私としては、その道に進むのも悪くないと思うわ」
「そう言われると嬉しいけど……」
司は自信なさげに下を向く。
紗夜はそんな彼の前に立ち、彼の両肩を掴んで上を向かせる。
「もう少し、自分に自信を持って。私は、あなたを信じてるから」
「っ!?」
紗夜の言葉に、司は顔を赤くする。
「そろそろ行かないと、練習に遅れるので。また今度」
司の様子を気にすることなく、CIRCLEへ向かう。
紗夜は時間を確認するため、ポケットからスマホを取り出す。
スマホの待ち受けが、司が写った写真になっていた。
※
紗夜には、双子の妹――
日菜は何でもすぐに熟せる天才。紗夜が努力を積み重ねたことでさえ、あっさりと超えてしまうほどだ。
これに関して、紗夜は幼い頃こそ気にしてなかったものの、心体の成長とともに劣等感をい抱き始め、次第に距離を置いていくようになった。
「………………」
中学時代――
紗夜は学校の屋上で黙々とギターを弾いていた。
その時の表情は真剣そのもので、演奏以外のことは一切考えていなかった。
――カシャ!
「!?」
カメラのシャッター音を耳にした紗夜は、ギターを弾くのを止め、音がした方を向く。
一人の少年――門矢司がカメラで紗夜を撮っていたのだ。
「司! 勝手に私を撮らないでと何度も言ってるじゃない!」
紗夜は強い口調で司を叱り、カメラを奪い取ろうとする。
「ご、ごめん! つい!」
司は怯えつつも、紗夜の手を的確にかわしていく。
「つい――じゃありません! 盗撮は立派な犯罪、私でなければ訴えているわ!」
「どうしても!」
司は思いきって紗夜の手首を掴む。
「!?」
強気になった司に、紗夜は驚いて思わず右足を引く。
「どうしても! ギターを弾いている時の紗夜を、紗夜自身に見せたいんだ! その時の紗夜が、一番輝いているから! 真剣な表情で弾く姿を! 本気で取り組んでいる姿を!」
「っ!!」
司の想いがこもった言葉に、紗夜の冷えた心が溶け始める。
「ご、ごめん! 偉そうなことを言って……」
我に返った司は、紗夜の手首を離す。
「…………」
紗夜は無言のまま、ギターを弾き始める。
「おぉ……」
司が紗夜のギターテクニックに見惚れ、聞き惚れていると彼女は指を止める。
「……撮りなさい」
「えっ……?」
「……あなたの気が済むまで、撮りなさい」
そう言って、紗夜は演奏を再開する。
司は慌てつつも紗夜を撮り始める――
後日、紗夜は現像された自分の写真を見た。
その写真は歪んでおり、お世辞にもいい写真と呼べるものではなかった。
しかし、この写真を機に紗夜は、自分にとってギターは特別なものであることに気づき始める。
それは皮肉にも、ギターへの固執へと繋がってしまった。
だが一人の少年――門矢司の存在もまた、彼女に影響を与えていた。
ロゼリアを抜けかけた時――
自分の音を見つけられなかった時――
お菓子作りに苦戦してた時――
NFOで行き詰まった時――
日菜とハンバーグにチーズを乗せるか論争してた時――
彼が助言をくれたのだ。
彼の言葉があったから、紗夜は歩み続けることができた。
次第に、彼を特別な存在として認識し始めていた。
しかし、紗夜はそれが恋であることを知らなかった――
「おはようございます」
CIRCLEのスタジオに入った紗夜。
些細なトラブルが起きつつも、平和な日常が続くと紗夜は思っていた。
「変身!」
司が一人、戦っていることを知らずに――