Determination Decade   作:黒田雄一

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 早くも更新しました!
 思っていた以上にお気に入りやUAが多かったので驚きました! 本当にありがとうございます!

 これからもよろしくお願いします!


第二話 消えたもの

「はぁ……はぁ……!」

 

 荒れ果てた街を、紗夜は走っていた。

 街には謎の怪物が溢れだし、人を無差別に襲っている。辺りを見渡せば血糊のない場所などなかった。

 

『ガァアアアアアアアアア!!』

「!?」

 

 紗夜の目の前にこの世のものとは思えない肉だるまのような怪物が現れる。

 紗夜は恐怖に体が支配され、体がうまく動かなかった。

 

『ガァ!!』

「きゃあ!!」

 

 怪物が紗夜に襲いかかる。彼女は思わず目を閉じる。

 

「はぁ!!」

 

 一人の少年が怪物を蹴り飛ばし、紗夜を守った。

 

「……?」

 

 紗夜が目を開け、何が起きたのか確認する。

 

「司!?」

「紗夜! こっちだ!」

 

 少年――司は紗夜の腕を引っ張り、この場から離れる。

 

「!?」

 

 しかし、逃げた先には大量の怪物がいた。

 気が付くと、無数の怪物が司と紗夜を囲んでいた。

 

「…………」

 

 絶対絶命のピンチ。司は覚悟を決め、紗夜に告げる。

 

「……紗夜、俺が道を作る。そしたら逃げてくれ」

「司はどうするの!?」

「俺はこいつら全員倒してから紗夜を追う」

「そんなの駄目よ! あなたも――」

「逃げ続けたら終わらない。この悪夢は永遠に……」

 

 司が緑色のカメラのようなものを取り出し、それを腰に当てる。

 するとベルトが放出され、腰に巻き付いて固定される。

 変身ベルト――司が付けたものが何なのか、何故か紗夜はわかっていた。

 

「俺はこの世界最後のライダーだ! 俺が戦わなければ、紗夜を守れない!」

 

 司はベルトのハンドルを引き、バックルを回転させる。

 ベルトに付いていた本のようなものから一枚のカードを取り出す。

 

「変身!」

 

 カードの裏面を外に向け、バックルに挿入する。

 

『カメンライドォ!』

 

 バックルから謎の音声が聞こえた後、司はハンドルを戻して変身する――

 

 

 

 

 

『ディケイド!』

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

「…………?」

 

 ベッドの中で目を覚ました紗夜。

 

「夢…………?」

 

 先程の出来事は紗夜が見ていた夢であった。

 

(変な夢ね……司はあそこまで勇ましくないわ。私がいないと……)

 

 そう思いながら、スマホの画面で時間を確認する。

 

「?」

 

 紗夜は頭に疑問符を浮かべる。

 スマホの待ち受けが、ギターの写真に変わっているのだ。

 

(寝ぼけて変えたのかしら……?)

 

 そういえば昨日の練習を終えてからの記憶が曖昧のような。

 紗夜はこのことを些細なことだと思い、待ち受けを変えようとギャラリーを開く。

 

「え…………?」

 

 しかし、決して些細なことではなかった。

 ギャラリーの中に、司の写真が一枚もなかったのだ。

 司の写真が一枚だけなら、誤って消した可能性がある。しかし、紗夜は彼の写真を何十枚も撮っているのだ(なお、本人は撮られた仕返し程度にしか思っていないため、深い意味はない)。

 

「なにが……どうなって…………!」

 

 不安になった彼女は、彼と連絡を撮ろうとSNSアプリ『コネクト』を開く。

 

「え……え……?」

 

 司の連絡先が見当たらなかった。何十回、何百回も連絡を取ったのにも関わらずその履歴さえ残っていなかった。

 

「どうして……!」

 

 紗夜の体が震え出す。

 これまで接してきた司は、自分に希望を与えてくれた男は、存在しなかったのか。

 

「そんなはずないわ! そんなはずは――」

「おねーちゃん?」

 

 部屋に短髪の、紗夜と顔立ちの似た少女が入ってくる。

 彼女こそ、双子の妹――日菜である。

 

「…………」

 

 紗夜は入って来た日菜を黙って見つめる。

 普段であればノックしなかったことに怒るのだが、そんなことしている場合ではなかった。

 

「おねーちゃん大丈夫? すんごい汗かいてるけど」

「日菜……門矢司という名前に聞き覚えはある?」

「うーん……門矢『ツカサ』……あっ!」

「あるの!?」

 

 紗夜が驚愕の眼差しを日菜に向けた。日菜は目をキラキラ光らせながら答える。

 

「うん! 昨日街中で私の写真撮ってくれたよ! 今日その写真ができるらしいから、学校終わったら会おうかなって」

「今はどこにいるの!?」

 

 紗夜が焦った様子で日菜の両肩を掴み問いかける。日菜はその様子を不思議に思うも答える。

 

「うーん……ごめん、わからないや。今日会うの約束した時も『そこら辺歩いてればいずれ現れる』とか言ってたし、変な人だったよ」

「その『そこら辺』っていうのは!?」

「CIRCLEの近くにある公園だよ」

「!?」

 

 日菜が言った場所は、司の行きつけの場所だ。

 紗夜は日菜から離れ、素早く着替えた後、公園へ向かう。

 

「おねーちゃん!? 学校は!?」

 

 日菜は紗夜を呼び止めるも、紗夜は立ち止まることなく公園へと向かう。

 

 

   ※

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 紗夜は息を切らしながら走る。

 ただ走る。

 大切な人がいるはずの公園へ――

 

「!?」

 

 『ツカサ』はいた。確かにいた。

 しかし、紗夜が知っている『司』よりも体格が一回り大きかった。

 

「おいてめぇ! どういうつもりだぁ!」

 

 さらに、ヤクザのような男達四人に囲まれていた。

 しかし、『ツカサ』は平気そうな顔で二眼レフカメラをいじっている。

 

(あのカメラは!? 間違いない、あの人が司で――)

 

 合っている――そう思ったが……

 

「ぎゃーぎゃーうるさいな、要件を言え」

 

 『ツカサ』は男達に対して冷たくあしらおうとする。

 

(司があんな言い方を……おかしいわ…………!)

 

 『ツカサ』のことがよく掴めない紗夜は、公園の木に隠れて様子を伺うことに。

 

「てめぇが昨日撮った写真、ブレッブレじゃねぇか! 最高の写真にするとか言ったから撮らせてやったのに、この有り様は何だ!!」

「何を言っている、最高じゃないか。その写真の良さがわからないのか?」

「てめぇ舐めてんだろ!」

 

 男の一人が『ツカサ』に殴りかかる。『ツカサ』はカメラの方に視線を向けたまま、男の拳を難なくかわした。

 

「こいつッ!!」

 

 他の男達も『ツカサ』に攻撃し出す。だが攻撃が彼に命中することなく、滑らかにかわされていく。

 

「……この世界も違うのか」

「この世界……?」

 

 紗夜は『ツカサ』が呟いたその言葉の意味が理解できなかった。

 

「何言ってんだてめぇ!」

 

 言葉の意味がわからなかったのは男達も同様。

 男の一人が再び殴り始める。

 

「ぐはッ!」

 

 男の拳を受けたのは『ツカサ』ではなく、男の仲間だった。

 

「何スンだ貴様ァ!!」

 

 拳を受けた男が、攻撃してきた男に殴る。

 

「何しやがる!!」

 

 男同士が殴り合いを始める。

 その隙に『ツカサ』はその場を去ろうとする。

 

「逃げんじゃねぇ!!」

 

 他の男二人が『ツカサ』を挟み撃ちで拳を振る。『ツカサ』は前に身を屈めて攻撃をかわすと、男二人の拳がそれぞれの顔面に当たる。

 

「ぅ…………」

「ぁ…………」

 

 男二人は気絶し、仰向けに倒れる。

 

「…………」

 

 『ツカサ』は黙ってカメラをいじったまま、公園を去って行く。

 

(……あれは、本当に司なの?)

 

 まだ確信を持てなかった紗夜は、彼の後を追っていく。

 

 

 

 


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