Determination Decade   作:黒田雄一

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第四話 旅の始まり

「はぁあ!」

 

 仮面ライダーディケイドに変身した士は、CIRCLEを荒らしている三体のワームの中へ飛び込むように、一体のワームを殴る。

 背中を殴られたワームは前に怯んだ後、士の方を向く。他の二体も士に気づき、三体は攻撃対象を士に移す。士は迫ってくる三体を一体ずつ蹴り飛ばした後、カードが収納されている電子辞書のようなものを取り出し、収納されていた刃を伸ばし、『ソードモード』に切り替える。

 

 士が取り出したものの名は『ライドブッカー』。

 カードを収納できるだけでなく、武器としても扱うことができる。

 『ソードモード』の他に『ガンモード』も存在する。

 

 士はライドブッカーで、ワーム達を素早く斬っていく。

 

『グァア!!』

 

 すると、三体のワームが同時に姿を変える。

 蛹が羽化するように、クモのような姿へと成長を遂げた。

 その束の間、ワーム達は目に捕らえられない速度で動き回り始める。

 

「!?」

「えっ、速っ!? どうなってるの!?」

 

 それを見ていた紗夜と日菜が驚く。

 日菜は何故か楽しそうに見ていた。

 

「これを使うしかないな」

 

 士はベルトのハンドルを引き、一枚のカードを取り出してバックルに入れる。

 

『カメンライドォ!』

 

 士はハンドルを戻し、新たな姿へと変身する。

 

『カブト!』

 

 ライダースーツが機械音を立てながら変形し、

 

CHANGE(チェンジ) BEETLE(ビートル)

 

 という音声が聞こえると同時に、カブトムシのような赤が基調のライダー、『仮面ライダーカブト』へと変身を遂げる。

 士は空かさず新たなカードを取り出し、バックルに差し込む。

 

『アタックライドォ!』

 

 ハンドルを戻し、カブトの特殊能力を引き出す。

 

『クロックアップ!』

 

 バックルにカードが認識されると、士もワームと同様の素早さで動き出す。

 

「はぁ!!」

 

 士はワーム達の速さに追いつき、ライドブッカーで斬り倒していく。

 

『ガァア!!!』

 

 倒されたワームは、緑色の爆発を上げて消滅した。

 士はバックルからカードを取り出し、ディケイドの姿に戻る。

 

「すごーい! 本物のヒーローみたい!」

 

 日菜が目を光らせながら、士を見ている。

 

「…………」

 

 紗夜は士の戦いを見て違和感を覚える。

 

(あの戦い方……どこかで――)

 

「おねーちゃん! 危ない!!」

「え――?」

『バァア!!』

 

 紗夜の背後から、新たな怪物が彼女に襲いかかる。

 日菜が紗夜を抱えるようにして横に転がり、攻撃をかわす。

 紗夜を襲おうとした、モグラのような姿をした怪物。それが五体もいた。

 

「今度はイマジンか!」

 

 怪物――イマジンを見た士は、新たなカードをバックルに入れる。

 

『カメンライドォ!』

 

 ハンドルを戻し、士は新たな姿へ――。

 

『電王!』

 

 電車のホームで流れるような音楽が流れた後、黒いスーツを身に纏い、電車のレーンに流されるように装着される。桃のような複眼を持つ、『仮面ライダー電王』へと変身を遂げた。

 その後、新たなカードを入れる。

 

『ファイナルアタックライドォ!』

 

 ハンドルを戻し、必殺技を発動する。

 

『デデデ電王!』

 

 ライドブッカーの刃が七色に光り始める。

 

「はぁ!!」

 

 士は走り出し、イマジン五体全てを一度で斬り倒す。

 

「俺の必殺技、パート1」

 

 格好良く(?)決めた後、イマジンが爆発して消滅する。

 

「ふぅ……」

 

 士は手を払い、変身を解く。

 

「どうなっているんだ?」

「それは私たちの台詞です!」

 

 紗夜が立ち上がり、士に寄り詰める。

 

「?」

 

 私たちの台詞――という意味を捉えられなかった日菜が頭に疑問符を浮かべながら立ち上がる。

 

「あの怪物たちは何なんですか!? あの怪物たちを知っているんですか?」

「……わからない」

「何を言ってるんですか!?」

「知っている理由がわからないんだ。どうして戦い方を知っているのか……なぜ怪物の名前が出てくるのか……」

 

 士が変身ベルト――『ディケイドライバー』に目を向けながら話した。

 

「ねぇ! ちょっとヤバいよ!」

 

 日菜が焦った声を出す。

 その声を聞いた紗夜と士が周囲を見渡すと、いつの間にか大量の怪物たちに囲まれていた。

 

「ちっ! キリがないな!」

 

 士は再びカードを取り出し、変身しようとする。

 

「変――」

 

 その瞬間、周辺に強い光が差し掛かる。

 士、紗夜、日菜の三人は思わず目を伏せる。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 数秒後に光が消え、三人が目を開ける。

 

「!?」

「!?」

「!?」

 

 三人は驚く。

 なぜか周囲の時間が止まっているのだ。

 風になびかれた木の枝が変な方向に曲がった状態で固まり、机から落ちかけたコーヒーが空中で静止していた。

 更に、大量にいた怪物が最初から存在していなかったかのように消えていた。

 

「え!? なんでなんで!? すごーい!!」

 

 不思議な現象に、日菜のテンションが上がり、くるくると回り出す。

 

「一体何が――」

 

 紗夜は原因を探ろうと周囲を見渡す。

 

「っ!?」

 

 思いがけないものが目に入った紗夜は、言葉を失う。

 前方遠くに、二眼レフカメラを首からぶら下げた少年の姿が。

 その少年が誰なのか、紗夜が見間違えることは決してなかった。

 

 

 

 

「司!!!」

 

 

 

 

 紗夜が全速力で走り、司の元へ行こうとする。

 

「おねーちゃん!?」

 

 突然の行動に日菜は動揺しつつも、その後を追いかける。

 

「おい待て!」

 

 士も後を追いかける。

 

「…………」

 

 なぜか司は紗夜に背を向け、歩き出す。

 

「待って!!」

 

 紗夜は追いかけ続ける。走っているのにも関わらず、司との距離が全く縮まらない。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 紗夜は無我夢中で追いかける。

 もう二度と見失いたくない、ずっとそばにいたい。

 その想いだけで、彼を追いかけていた。

 

「!?」

 

 彼を追いかけ、辿り着いた先は司の家だった。

 司の家は古びた写真館なのだが、幼い頃に両親が亡くなったため、とっくの昔に閉業している。

 

「…………」

「はぁ……はぁ……やっと追いついた……!」

 

 紗夜の後を追いかけていた日菜が追いつき、息を整える。

 士も追いつき、家を見る。

 

「ここ、俺の家のはずなんだが……」

「えっ!?」

 

 士の発言に、紗夜は耳を疑う。

 

「そ、そんなことは――」

「事実はどうであれ、ここにもう一人の俺が入ったのなら、行くだけだ」

 

 士は遠慮なく司の家に入る。

 

「待ちなさい!」

 

 紗夜も続いて入り――

 

「お邪魔しまーす!」

 

 日菜も入る。

 二人は士の後を追い、廊下を歩いて行くと、一つの広い部屋に辿り着く。

 

「ここは…………?」

 

 本当に何もない部屋で、不思議に思った紗夜が周囲を見渡す。

 

「? 日菜?」

 

 近くにいたはずの日菜がいないことに気づく。思えば、先に入っていたはずの士の姿もない。

 

「日菜! 門矢さん!」

 

 紗夜は二人の名を呼びながら、部屋を出ようと扉に手をかける。

 

「――紗夜」

「!?」

 

 心地良い、聞き慣れた優しい声に反応した紗夜は後ろを向く。

 部屋の中央に、司が立っていた。

 

「司!? 司なの!?」

「…………」

 

 司は黙って頷く。

 

「良かった……あなたが無事で……!」

 

 安心した紗夜は、涙を浮かべながら司に近づき、彼に触れようとする。

 

「え…………?」

 

 しかし、触れることができず、実体がないように空回りする。

 

「司……?」

「……ごめん、紗夜。俺はこの世界にいないんだ」

「そ、それってどういう……?」

 

 衝撃の真実に、紗夜は思わず後ろに下がる。

 

「俺は――――」

 

 何かを言おうとした司。だが、自分の体が薄れていくのを確認し、別の話を持ち出す。

 

「ごめん、時間がないから、これから言うことをよく聞いてほしい」

 

 真剣な眼差しを向けてくる司に対し、紗夜は息を呑んで頷く。

 

「この世界にいる、もう一人の俺と旅をしてほしい」

「旅?」

「他の世界――九つの世界を。そして世界を繋ぐんだ。さもなくば、全ての世界が消滅してしまう」

「世界を……繋ぐ……?」

 

 紗夜はその言葉の意味を理解できなかったが、急いでいた司は意味を答えぬまま話を進める。

 旅の中で意味がわかると思ったから。そして、次に話すことがそれ以上に重要なことであるから。

 

「そして、その旅の中で『ディターミネイションドライバー』を見つけてほしい」

「ディターミネイション?」

「このカメラに似た変身ベルトだ」

 

 司は二眼レフカメラを手に取る。

 

「全てのライダーを、ディケイドをも超える力を得ることができるベルトだ。それを見つけたら誰にも渡すな。もう一人の俺にも……俺自身にもだ。可能ならば破壊してほしい」

「……わかったわ。でも最後に聞かせて。司は今、どこにいるの?」

「…………」

 

 司は答えなかった。答えたくないように見えた。

 そして、徐々に司の姿が消えていく。

 

「どうして答えないの!!」

 

 紗夜は涙を流す。

 それを見た司は苦しそうな表情を浮かべるが、最後まで紗夜の問いに答えることなく、一方的に話す。

 

「……最後に一つだけ。紗夜、俺は必ず取り戻すから。皆の居場所を。紗夜の居場所を――」

 

 司の体が消えると同時に、決意を告げる。

 

 

 

 

 

「たとえ、この命に代えても――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ちゃん!! おねーちゃん!!」

「!?」

 

 気が付くと紗夜は、ソファの上で横になっていた。

 日菜が心配した顔で紗夜を呼び続けていた。

 

「私は……?」

 

 紗夜は寝ぼけたように体を起こす。

 

「良かったぁ! おねーちゃん急に倒れるからぁ! 心配したよぉ!!」

 

 日菜は紗夜に抱きつき、彼女の胸に顔を押しつけて号泣する。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 自分の身に何が起きたのか。司とのやり取りは夢だったのか。

 紗夜は日菜に一言謝ることしかできなかった。

 ふと紗夜は部屋を見渡す。

 司と話した部屋と同じように感じるが、机や椅子があり、特に壁際にある背景ロールが目に入ってくる。

 その背景ロールには、九つの地球が一つの地球を囲んでいる絵が描かれている。

 

(九つの地球……『九つ』……もしかしてこの絵は……!?)

 

 紗夜は日菜が抱きついていることも忘れて立ち上がる。

 

「!?」

 

 その行動に驚いた日菜は彼女から離れる。

 

「おねーちゃん、どうしたの?」

 

 日菜は目を擦りながら尋ねるが、紗夜は黙ったまま背景ロールに近づく。

 

(九つの世界……もしかしたら、司はこの中のどこかに――!)

 

 紗夜は旅をする決意を――司を探す決意を固めながら、無意識の内に背景ロールに手を当てる。

 すると、別の背景ロールが上から降りてくる。

 

「きゃっ!?」

 

 驚いた紗夜は思わず一歩引いた。

 

「あっ、他にも絵があるんだ! ……あはは! 何これ!?」

 

 新たな背景ロールを目にした日菜が笑い出す。

 

「…………」

 

 紗夜は黙ってその絵を見ていたが、日菜が笑ったことに納得できていた。

 新たな背景ロールには、アイドルと思われる女性五人組が歌って踊っている様子が描かれていた。先程の神秘性を感じる地球の絵に対し、このアイドルの絵はコミカルに描かれており、そのギャップに笑ってしまうのも無理はないと、紗夜は納得していた。

 

「真ん中にいる人、彩ちゃんに似ている! 隣は友希那ちゃんかな? 猫耳付けててかわいい!」

 

 日菜は楽しそうに絵を眺めている。

 

「――おっ、やっと起きたか」

 

 部屋に士が入ってくる。

 

「門矢さん、心配をおかけしてすみま――せ、ん!?」

 

 紗夜は士の方を向いて謝ろうとしたが、突然彼女の顔が真っ青になる。

 

「おいおい大丈夫か? 顔色悪いぞ。もう少し休んだらどうだ」

「な……なんですか!? その格好は!?」

 

 紗夜は士の服装を見て、背筋を凍らせていた。

 

「は? 何を言って――って……なんだこれ?」

 

 自分の服を馬鹿にされたと思った士であったが、自分の服に目を向けると怒りが困惑に変わった。

 

 

 

 士は何故か――ドルオタがライブやコンサートで着てくるような法被を身に纏っていた。

 

 

 

 

 

                                       序章 完




 変な終わり方となってしまいましたが、序章はこれにて終わりです。
 次話から原作同様、様々な世界を旅していきます。
 物語全体の構成を見直すため、次話の投稿まで少し時間がかかってしまいますが、首を長くして待ってくださると助かります。

 これからも、よろしくお願いします!!!
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