Determination Decade   作:黒田雄一

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第一章スタートです!

ここから先、キャラクター及び原作設定が大きく崩壊していきます。

ご了承の上、お読みください。


第一章 クウガの世界 ~戦う理由、守る理由~
第五話 変わった世界、変わった人たち


「なんだこれ?」

 

 士は、法被を身に纏った自分の姿を見て戸惑ったが……

 

「――何を着ても俺は似合ってるな」

「…………」

 

 謎の自信を見せる士に、紗夜は呆れて何も言えなかった。

 

「確かに似合ってる! そういう顔してるもん!」

 

 日菜は士に同調した。一応同調しているつもりである。

 皮肉を言っているようにしか聞こえないが。

 

「フッ、だろ?」

 

 士は謎のドヤ顔を決める。

 

 ――ピンポーン!

 

「?」

 

 すると、家のチャイムが鳴る。

 士は部屋を出て、廊下を歩いて何の躊躇いもなく玄関の扉を開ける。

 

「悪いが、この家の主は今――」

 

 

 

「「「「おはようございます!! 隊長!!」」」」

 

 

 

「!?」

 

 今の士と似たような格好をしている男四人が訪れた。

 気迫のある挨拶に驚いた士は思わず身を引く。

 

「今日は待ちに待った『クインティプル』のライブッす!」

「お、おい! 何言ってんだお前ら!?」

「寝ぼけてるんですか隊長? この日を一番楽しみにしていたのは隊長ですよ!」

「行きましょう! 早く行かないと席が取られるッす!」

 

 男四人は、困惑している士を持ち上げるようにして無理矢理運んでいく。

 

「……一体何がどうなっているの?」

 

 後ろで様子を見ていた紗夜は、状況を理解できなかった。

 

「あれ?」

 

 彼女の隣にいた日菜が玄関を抜け、外を眺める。

 

「街の風景変わってない?」

「何を言ってるの?」

 

 紗夜も外に出て確認する。

 

「!?」

 

 紗夜は、日菜の言っていることを一瞬で理解した。

 本来住宅街の中にあるはずだった司の家が、大通りの一角に立っていた。

更に、街を歩く人の殆どが、士が着ていたような法被を身に纏っていた。

 

「……何がどうなっているの? まるで別世界に――」

 

言葉の途中、紗夜は司に言われたことを思い出す。

 

 

――この世界にいる、もう一人の俺と旅をしてほしい――

――他の世界――九つの世界を。そして世界を繋ぐんだ。さもなくば、全ての世界が消滅してしまう――

 

 

(……本当に、別世界へ来てしまったの? でもどうやって? 部屋にあったあの絵と関係があるの?)

 

 紗夜が考えていると、日菜は自分のポケットに何か入っていることに気づき、取り出す。

 

「クインティプル……一周年記念ライブ……?」

 

 出てきたものは、二枚のチケットであった。

 

「おねーちゃん! ひとまずこれ行ってみない?」

 

 日菜は考えている紗夜の目前にチケットをかざす。

 紗夜はチケットを一枚手に取り、詳細を確認する。

 

「これは、先程の男達が言っていた……しかもS席。日菜、これはいつ手に入れたの?」

「わかんない。買った覚えもないし、気が付いたらポケットに入ってた」

「……怪しいわね。今すぐ――」

 

 捨てようと、紗夜はチケットを破ろうとする。

 

「待って!」

 

 日菜は紗夜の両手首を掴んで阻止する。

 

「行ってみようよ! 何か手がかりが掴めるかもしれないし!」

 

 日菜が真剣な表情を見せてくる。

 

「…………」

 

 日菜は普段から脳天気で突拍子もないことを言い出すのだが、何も考えていないわけではない。純粋無垢なため、本人からすれば全て真剣に考えて動いているのだ。

 そんな彼女が、アイドルのライブへ興味本位で行くのではなく、変わったこの世界についての情報を集めるために行こうと言っているのだ。

 

「……わかったわ」

「やったぁ! おねーちゃんありがとう!」

 

 日菜は喜びのあまり紗夜に抱きつく。

 

「一々抱きつかない!」

「えっと場所は……」

 

 紗夜の注意も聞かず、日菜はチケットを見て場所を確認する。

 

「CIRCLEだって! 行こ!」

「えっ、CIRCLE!?」

 

 

   ※

 

 

「なるほど、大体わかった」

 

 CIRCLE内――会場ギャラリーにて。

 最前列にいた門矢士は、謎のアイドル親衛隊からこの世界の情報を得ていた。

 

「俺は『クインティプル』親衛隊の隊長で、推しメンは『丸山彩』っと――」

「『ちゃん』をつけてください『ちゃん』を! そういつも隊長が言ってるじゃないですか!?」

「隊長、今日調子悪いんですか!?」

 

 親衛隊の男二人から心配される士。

 

(この世界の俺はドルオタなのか……にしても、肝心の『この世界の俺』はどこにいるんだ? 俺が来たことで上書きされたのか? そもそもどうやって世界移動を――)

 

『間もなく、『クインティプル』の登場です』

 

 会場内に流れるアナウンスとともに、ギャラリーから一斉に野太い歓喜の声が上がる。

 

「……すごい熱気ね」

 

 ギャラリーの後ろの方にいる紗夜と日菜。

 紗夜は腕を組んで、日菜はウキウキと体を揺らしながらコンサートが始まるのを待っていた。

 

「「「「「みんなー!! お待たせー!!!」」」」」

 

 ステージにアイドル五人組『クインティプル』が入場してくる。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ギャラリーから更に歓声が上がる。

 士はそれを鬱陶しそうにしつつアイドル達の方を見る。

 

「みんなー! キラキラドキドキしてる~? 戸山香澄(とやまかすみ)だよー!!」

「カスミィィィィィィィィィィィィィィン!!」

 

 猫耳――ではなく、星の形を模した髪型をしている少女――戸山香澄。

 元の世界では、『Poppin(ポッピン)Party(パーティー)』、通称ポピパのボーカルを務めている。

 この世界では『クインティプル』のリーダーを務め、『カスミン』という愛称で呼ばれている。

 

(戸山さんは変わらなさそうね)

 

 紗夜が安堵するのも束の間――

 

「みんにゃ元気にしてたかにゃ~? みんなの子猫! 湊(みなと)友希那(ゆきな)だにゃん!」

「ゆきにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 透明感のある紫色の髪をした、頭に猫耳をはめ、両手で猫の手を作って観客にウインクを放つ少女――湊友希那。

 

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 彼女の姿を見た瞬間、紗夜は目を疑うように見開かせ、開いた口が塞がらなかった。

 

 それもそのはず、友希那はRoseliaのボーカル。

 本来クールなはずの彼女が、猫のコスプレをしてアイドルらしい立ち振る舞いをしている。元の世界の彼女が見たら気絶してしまいそうだ。

 

「あははははは!! おもしろーい! 元の世界に帰ったら送ろっと」

 

 日菜が笑いながらスマホのカメラで友希那を撮る。

 

「皆ぁ!! いつも通り盛り上がってるかぁ!!」

「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 前髪に赤のメッシュが入っている少女――美竹蘭(みたけらん)がロックバンドの演奏前のMCっぽいことを言ったが、服装はアイドルらしいフリフリドレスであるため、言動とのギャップが強く表れていた。

 元の世界では『Afterglow(アフターグロウ)』のボーカルを担当している。

 

「……いつもよりテンションが高めですね。どちらかと巴さんっぽいですね」

 

 我に返った紗夜が感想を呟く。

 

「ハロー! 今日も皆いい笑顔してるわ!」

「こころぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

 

 身軽に前転、横転しながらステージに出てきた金髪の少女――弦巻(つるまき)こころ。

 元の世界では『ハロー! ハッピーワールド!』のボーカルを務めている。

 

「こころーん!」

 

 日菜が歓声に合わせて声を出し、両手を大きく振る。

 

「まんまるお山に彩りを! 丸山彩(まるやまあや)でーす!」

 

 ピンク髪のツインテールをした少女――丸山彩が両手に指鉄砲を作る変なポーズを決めている。

 元の世界で『Pastel(パステル)*Palette(パレット)』、通称パスパレのボーカルを務めている。

 

「丸山ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

「彩ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 ギャラリーから二つの歓声が聞こえてくる。

 

「おい! 彩ちゃんに対して『丸山』なんて言い方は失礼だろ!」

「本人が公認してくれているんだからいいだろ! これも愛称の一種だ!」

 

 『丸山』と呼んだファンと、『彩ちゃん』と呼んだファンに亀裂が走る。

 こちらの世界の彩は、変なポーズを取ったり、言葉を噛みすぎることからネット上でネタにされていた。

 変なコラ画像を作られたりしていたが、健気に努力する彩の姿に、次第にファンは本気で彼女を応援するようになり、気が付けば『クインティプル』の中で一番人気となっていた。

 しかし、ネタにしていた時の呼称が『丸山』だったため、ファンになった今でもその呼び方をしている人がいる。一応彩本人は呼び方に関して気にしていないということをSNSで呟いたのだが、その呼び方は『彩ちゃん』を馬鹿にしているというファンの怒りを買い、度々対立しているのだ。

 

「なんで俺はこんな面倒くさいファンの一人なんだ…………」

 

 その様子を見ていた士が呆れたように上を向く。

 

「ここは隊長の出番です! お願いします!」

 

 隊員の一人から頭を下げられる。

 ファン同士の揉め合いに戸惑っている彩を見て、士は内心面倒だと思いつつも動く。

 

「おいお前ら、同じ推しメン同士なに争ってんだ?」

 

 士は両手をズボンのポケットに突っ込みながら、揉めている男二人に近づく。

 

「あ、あなたは!? クインティプル親衛隊隊長、門矢士!?」

「丁度良かった。隊長さん、彩ちゃんを『丸山』呼ばわりするこいつらにガツンと――」

「言う必要はないだろ。どっちも『丸山彩』を――ごほん、『丸山彩ちゃん』が好きであることに変わりはないんだからな」

「!?」

 

 士の言葉に、『丸山』派の男が驚愕する。『彩ちゃん』派の男が不満そうな表情をする。

 

「こいつらを許すんですか!? 散々彩ちゃんを馬鹿にしてきたこいつらを!?」

「何があったのか俺にはわからんが、たった今彼女を愛している、という事実の方が大切なんじゃないのか?」

「…………!」

 

 『彩ちゃん』派の男は、何も言い返すことができなかった。

 

「この話はここで終わりだ。引きずってたらせっかくのライブが台無しだからな。お前ら、盛り上げるぞ」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 士が仲裁に入ったことで、場の雰囲気が元に戻った。

 

(……自分勝手な人だと思ってたけど、案外周りのことを見ているのね。そういうところは司と同じね)

 

 紗夜は司を思い出し、微笑んでいた。

 

 Roseliaは過去に二度、解散の危機に陥っていた。

 その都度、司が阻止しようと動いた。

 Roseliaのメンバーでない彼の動きは、何の意味も成さなかったが、それでも止めようとした彼の優しさを、紗夜はちゃんと理解していた。

 

(きっと司は今、何かを一人で抱え込んでいるはず。今度は私が助けないと――!)

 

 

   ※

 

 

 CIRCLEの外――。

『ボボビギスボバ?』

『ガンゾグン ギグボドグダザギベセダバ』

 

 謎の言語を話す怪人が二体いた。

 一体はクモ、もう一体はコウモリのような姿をしていた。

 

『ガンゴンバダヂゾ ボソゲダ、ゾンドグビ『ベゴ』ビバセスボバ?』

『パバサバギ。ゲゲルゼ ギンバゼビスド ビギダボドパ――』

 

 話している途中、二体の前に一人の仮面ライダーが。

 怪人は驚きつつも、仮面ライダーの名を口にする。

 

 

 

『クウガ!!!』

 

 

 

 

 

 


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