Determination Decade   作:黒田雄一

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第九話 意外な訪問者

「あれ? ここって喫茶店じゃなかった?」

「おかしいわね……道を間違えたかしら?」

 

 司の自宅である写真館に訪れたのは、小野寺ユウスケと月島まりなの二人だ。

 

「いや、道も場所も、この場所から見える風景も同じだし……もしかして、知らない内に潰れたのかな?」

 

 ユウスケが周囲を見渡しながら言った。

 

「ここ写真館っぽそうだし、ひとまず別の場所に行きましょ」

「そうだね」

 

 二人は別の喫茶店に行こうと扉を閉めようとした瞬間――

 

 

「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 家の中から少女の叫び声が聞こえてくる。

 

「!?」

「!?」

 

 それを耳にしたユウスケとまりなは扉を閉める手を止め、家の中を見る。

 すると、眉を寄せた日菜がチェーンソーを持って玄関の方にやってきた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ユウスケとまりなは恐怖のあまり腰を抜かす。

 突然チェーンソーを持った少女が現れれば、恐れを抱くのも無理はない。

 

「止まらないと、ギュイーンするよ――って、なーんだ」

 

 日菜が安心した顔でチェーンソーを床に落とす。

 

「ユウスケさんとまりなさんかー。でもどうしてここに?」

「な、何なんだよ! お前!?」

「あたし? 日菜だよ。氷川日菜。自己紹介してなかったっけ?」

「日菜!!」

 

 上から紗夜の怒号が聞こえてきた後、彼女が玄関まで降りてくる。

 

「何をして――って、ユウスケさんとまりなさん!?」

 

 

 

 

 

「本当にすみません。うちの妹が大変迷惑をおかけしました」

 

 紗夜は、ユウスケとまりなをリビングに招き入れ、頭を下げて謝った。

 日菜はリビングの床に正座させられていた。

 

「や、やんちゃな妹だね……」

 

 ユウスケはまだ恐怖に震えながらも、紗夜が入れるコーヒーを飲む。

 彼はクウガとしてグロンギという怪人と戦ってきてるのだが、日菜にはグロンギとは別の異質さを感じ、それが恐怖と化している。

 

「ふ、二人はここに住んでいるの?」

 

 まりなが部屋を見渡しながら尋ねる。

 

「はい、一時的ではありますが、今はここが拠点ですね」

「一時的?」

「ここは、私たちの家じゃないんです。もとい、家主は現在行方不明ですけれども……」

「行方不明!? 一体何が――」

 

 驚くユウスケの隣に、いつの間にか姿を見せた士がカメラで彼を撮る。

 士はまりなの方に回り込み、今度は彼女を撮ろうとする。

 まりなはノリノリでセクシーポーズを決める。

 

「門矢さん! 勝手に人を撮るなと何回も言っているでしょう!」

「うるさいなぁ……あと、言われたのはこれで二回目のはずだが」

 

 士は紗夜の注意を無視して撮り続ける。

 

「駅前のグロンギは倒せたのか?」

 

 士はユウスケに馴れ馴れしい感じで聞く。

 

「当たり前だ! 俺はクウガだからな!」

「……なら安心だ。そっちは任せられるな」

「『そっちは』って……あなた――門矢くんは戦えるの?」

「!?」

 

 何かを察知した日菜がバッタのように士に飛び込み、彼の口を塞ごうとする。

 だがその動きを読んでいた士は彼女の腕を抑えながら、まりなに話す。

 

「当然だ。俺も仮面ライダーだからな」

「仮面ライダー? それって、ベルトを使って変身する人のことだったりする?」

「あぁ、その通りだ」

 

 まりなは喜びを顔に出し、立ち上がる。

 

「あなた、ユウスケとコンビを組まない?」

「コンビ?」

「ユウスケは今まで一人でグロンギと戦ってきたわ。私はか弱い乙女だから、ただそれを見守る事しかできないけれど、あなたが一緒に戦ってくれれば、少しでもユウスケの負担が――」

 

 

 

「――――断る」

 

 

 

 そう言ったのは士――――ではなく、ユウスケだった。

 

「えっ…………?」

 

 予想外の言葉に、まりなはユウスケの方を向き唖然とする。

 

「そいつには少し恩がある。だが、それは別の機会に返す。グロンギと戦うのは俺一人で十分だ」

「ユウスケ、何言ってるの!? 敵が強くなってきている今、あなた一人じゃ不安なのよ!」

「それって、俺が弱いって言ってるのか?」

「違うわ! ユウスケが強くなかったらクウガなんてやってられないじゃない! でも、あとどのくらいいるかもわからない敵を、今後も一人だけで戦っていくのは無理があるわ! だから――」

「ッ!!」

 

 まりなの言い分が気にくわなかったユウスケは、逃げるようにこの場から走り去る。

 

「ユウスケ!!」

 

 まりなはユウスケを追いかける。部屋を出る時、紗夜達に向かって一礼してからユウスケの後を追い始めた。

 

「あーあ。行っちゃったね……」

 

 日菜が悲しげな顔を浮かべ、紗夜の隣に座る。

 

「おい日菜、どうして俺の発言を妨害しようとしたんだ?」

「うーん……なんか、ユウスケさんから昔のおねーちゃんと似た感じがあったんだよね」

「私と?」

 

 紗夜が疑問を顔に浮かべる

 

「うん。なんかこぉ……『一人で抱え込んでる』ってよりは『一人で抱えたい』って感じがしてー……うーん、なんて言えば……」

「――大体わかった」

 

 日菜が何を言おうとしていたのか、士は理解できた。

 

「要するに、誰かに褒められたい、承認欲求の高い奴ってことか。だが日菜、それを最初に言ってほしかったな」

「ごめんごめん! 動いた方が早いかなーって!」

「…………」

 

 紗夜が一人思い詰める。

 

(日菜、昔の私を見破っていたのね……けれど、その私は日菜の知っている『私』。司を知らない『私』。けれど……実際、司を知ってる私も、同じだったわ。

 日菜は私と同じことをやっては、軽々と私を超えていく。私の努力を踏みにじるかのように軽々と。皆が日菜の方に目を向けて、私のことなんて――。

 でも、司だけはちゃんと私を見てくれた。私を撮ってくれた。だから私もそれに応えようとした。努力する理由がそれだけでもいいと思った。それも、間違いだったけれど……)

 

「さて、探索を再開するか」

「追いかけないの?」

「俺らが口を出したところで悪化するだけだ。解決するなら二人で話し合うのがベストだな」

 

 士は部屋を抜け、二階へと上がっていく。

 

「行こ、おねーちゃん!」

「えぇ」

 

 二人もその後を追う。

 

 

 

 

 

 

「さて、問題の部屋二つに入るとするか」

 

 二階に上がった三人は、『男』と書かれた紙が貼られている扉の前に立っていた。

 

「客用の部屋かな?」

「入って確かめるか」

 

 士が扉を開け、中に入る。

 中は散らかっており、特に丸山彩のグッズが多かった。

 

「彩ちゃんのファンが使ってたのかな?」

「汚らわしい部屋ですね。日菜もこういうファンには気をつけないさい」

「はーい!」

 日菜は元気よく返事をするが、士は首をかしげる。

 

(もう一人の俺も大概だろ……)

 

「……もう一人の俺に関する物はなさそうだな」

 

 部屋を漁り終えた士が言う。

 

「ねぇー、これなんだろー?」

 

 だが、日菜はある物を見つけ、紗夜と士に見せる。

 

「それは……ゼリー飲料? それにしても小さいように見えるけど」

「うーん……どこにも賞味期限書いてないし、回しても引っ張っても蓋が取れないよぉ!」

「変な物は開封するな。そこら辺に投げておけ」

「はーい!」

 

 士に言われた通り、日菜はゼリー飲料らしきものを投げ落とした。

 

「次行くぞ」

 

 士たちは部屋を出て、『女』と書かれた部屋へ入ろうと――。

 

「……俺はここで待つ」

 

 紗夜に怒られることを察した士は、部屋に入らず外で待つことを選んだ。

 

「よろしい」

 

 紗夜は微笑みを浮かべながら、日菜とともに部屋の中へ入る。

 部屋の中は綺麗――と思いきや、先程の部屋以上に散らかっていた。

 

「ここの住民はだらしない人ばかりなのかしら?」

「あっ!!」

 

 何かを見つけた日菜が、それに飛び込むように走る。

 

「私のギター!! どうしてここに!?」

 

 疑問に思いつつも、日菜はギターを手に取って弾き始める。

 アンプなど繋げていないため、音に迫力はなかったが、紗夜に負けない弦さばきを見せる。

 

「ほう……紗夜より上手いじゃないか」

「っ!!」

 

 士の発言に、紗夜は鬼のような凶相を浮かべ、強く拳を握る。

 

「……なんでこんなやつが『カドヤツカサ』なの…………!!」

「なんか言ったか?」

「いえ、何も!!」

「? そうか」

「おねーちゃん、大丈夫?」

「問題ないわ、手がかりを探すわよ――」

 

 

 

 

 

 

「……結局、何もなかったな」

 

 全ての部屋を探し終えた三人はリビングにいた。

 三人はあの後、念のため一階のトイレ、風呂場、洗面所なども探したが、どこにも彼の居場所を特定できるものはなかった。

 

「俺と性格が真逆なら、日記をつけてそうだったんだが、それらしき物もなかったな」

 

 士は偉そうな態度でソファーの上で横になっていた。

 

 

「はぁ……疲れたー……」

 

 日菜はテーブルに突っ伏している。

 

「…………」

 

 落ち着かないのか、紗夜はテーブルの近くで突っ立っている。

 

「あと、少し話は変わるが――」

 

 士は横になった状態で、複数の写真を手裏剣のように日菜が突っ伏している後ろのテーブルへ投げる。写真は曲線を描きながらテーブルの上に落ち、綺麗に並ぶ。

 

「…………」

「…………」

 

 写真には、主にユウスケとまりなの二人が写っていた。写真はどれも歪んでいたが、紗夜と日菜は特に驚くことはなかった。

 

「さっき現像してきたが、このザマだ。どうやら、この世界も俺を拒絶しているみたいだ……さて、そろそろ晩飯にするか」

 

 士は立ち上がり、キッチンの方へ足を運ぶ。

 

「あなた、料理を作れるのですか?」

「当然。俺にできないことはない」

 

 自信満々に言った士。しかし、冷蔵庫の中身を見て、険しい顔をする。

 

「おいおい、何もないじゃないか! 仕方ねぇ、買いに行くか」

 

 不満そうな顔をしながら、士は家を出る。

 

「行ってらっしゃーい!」

 

 日菜は元気よく手を振る。

 

「…………」

 

 紗夜もどこかへ行こうと、部屋を出ようとする。

 

「おねーちゃん、どこ行くの?」

「少し、部屋で休んでくるわ……」

 

 そう伝えて、紗夜は二階に上がる。

 

「…………」

 

 二階に上がった紗夜は、自分の名前が書かれている部屋に入ろうとしたが、無性に司の部屋が気になっていた。

 紗夜は誰も見てないことを確認し、司の部屋へ入る。

 

「お邪魔します……」

 

 紗夜は部屋を見渡した後、自分の写真が収納されているアルバムを取り出し、中を見る。

 

「……私、こんなに笑ってたのね」

 

 殆どの写真に写る紗夜は、カメラに向かって微笑みを浮かべていた。

 

「……これが全て私の写真と考えると、確かに考え物ね。撮る対象のバリエーションを増やしてもらわないと」

 

 紗夜は的外れなことを言いながらアルバムを本棚に戻す。

 

 

 ――ガチャ! ガチャ!

 

 

 本棚の上から、何かが二つ落ちてくる。

 

(そんなところから物が? そういえば、私と司の部屋は詳しく調べないまま中断されていたわね)

 

 紗夜は下を向いてそれを確認する。

 

「えっ……どうして…………!?」

 

 信じられない物を見た紗夜は目を見開かせ、体を震わせる。

 落ちてきたのは、真っ二つになった緑色のディケイドライバー。

 

 

 

 

 ――夢に出てきた、司の変身ベルトだった。

 

 

 

 

 




ご愛読ありがとうございます。

展開が遅くてすみません!
第一章は他の章よりもやや長くなる予定ですので、ご了承してくださると助かります。

また、少し前に外伝の話をしましたが、その物語の長さ上、第一話を書き終え次第連載を開始したいと考えを改めました。
外伝といいながら、下手すると本編のこちらよりも長くなるかもしれません……(人によっては、外伝の方が本編っぽいと捉える人もいるかもしれない内容です)

今後ともご愛読の方、よろしくお願いします!!
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