覚悟の幽波紋   作:魔女っ子アルト姫

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進学志望

漸く退院をする事が出来た進志、何度かリカバリーガールが訪れ治癒を施してくれたおかげでもあって予定もずっと早く退院する事が可能となっていた。リカバリーガールには感謝しなければならない。そんな進志は片目に眼帯をしながら生活することになり、最初こそ違和感が強く身体をぶつけてばかりだったのだが一週間もすると問題もなくなっていた。

 

「進志さん、新しい眼帯をお持ちしました!!」

「おいおい百……別に毎日持ってこなくてもいいんだぞ。この銀縁と黒の眼帯だけでいいんだけど」

「いえっこれも進志さんの目の為なのです!!もしも不衛生なもので目にばい菌が入りそこから……ああっ考えただけでも恐ろしい!!し、進志さん念のために今から消毒しましょう!!今消毒液を作りますので!!」

「お、おいおい流石にそれはやり過ぎ……って今ここで作ろうとするなって馬鹿服を着ろ!?」

 

進志が部屋でスタンドの精密操作性の訓練をしていると百がやって来て新しい眼帯を持ってきた、これも最近よくある日常の一ページになりつつある。百は何処か進志の目の光を奪ってしまったのは自分だと自責の念があるのか、進志に何処か奉仕するようになっている。いや、依存していると言ってもいいのかもしれない。

 

「で、でも進志さんの為……」

「もう十分すぎるぐらい報われてるっつうの俺は!!何か作ろうとするなら、折角だから昼飯でも作ってくれよ」

「は、はいお任せください!!実は以前のリンゴの失敗から、屋敷のコックとお母様にお願いして料理の猛特訓をしておるのです!!」

「そりゃ楽しみだな」

「では早速お母様たちに連絡して最高級の素材調達をっ……!!」

「わ~待て待て待て!!?家の中にある食材で良いから、そんな手間掛けなくていいから!!?」

 

命を救ってくれたというだけではなく、自分の為に大けがをしたというのにそのことに対して何も言わない処か一緒にいるだけで満足と言ってくれた。彼女からすればそれが堪らなく嬉しく光栄だった、そして何より彼女は彼の目になるという誓いを立てている。それもあって彼と出来る限り一緒に居たいと思っている。それがやや行き過ぎてしまっているだけなのである。

 

「やれやれ……そういえば百、来年はもう受験だけど何処を志望するんだ?」

「進志さんが行く所ならばどこまでも」

「おいおい……こういう時は普通自分が行きたいところに行くもんだぜ」

「進志さんが行く場所、そこが私の行きたい所なのです」

 

真剣にそう述べながら味噌を溶かしていく百にため息が漏れる。自分の責任かもしれないがあの一件以来、百は本当に自分にべったりになっている。百自身の意思で自分と同じ所に行く、遊びに行く時も自分が行きたい場所ならば自分もそこに行きたいというようになっている。これで自分が男子校に行こうと思っていたらどう思っているのだろうか……これで自分が変な事を言ったら百の両親から凄い目で見られそうだから慎重に言葉を選ばなければ……。

 

「そうだな……俺は入院した時のリカバリーガールの縁もあるし雄英にしようと思ってるんだ」

「っ―――!!雄英、ですか!!?実は私も雄英には進志さんと共に行けたらなんて幸せなんだろうと思っていたのです!!」

「前に言ってたもんな、ヒーローになる為に雄英に行くって」

「覚えていてくださったのですかぁっ!!?」

「だぁぁっ包丁を持ったままキッチンを離れない!?」

「はっすいませんでしたぁ!?私としたことがぁ……」

 

彼女を諫めつつもパーティの前に話していた事を思い出しながら、同時にリカバリーガールに雄英に来たら歓迎すると言われた事を思い出したので雄英(そこ)を推した。実際生臭い話をすると、最難関校を卒業すれば就職難化にも困らないだろうという魂胆が主なのであるが……京兆との戦いで、自分も弱いと再認識で来たのでそこで自分を鍛えたいという思いもあった。

 

「なぁ百、お前が俺の目になってくれるっていう約束は本当に嬉しい。だけど君には君の道がある筈だろ、俺なんかの為に君の人生を不意にしないでほしい。片目だけなのもだいぶ慣れた。だから俺もう一人で―――」

 

そう言おうとした時、彼女が抱き着いてきた。服の上から来たエプロン越しに伝わってくる百の歳不相応な程に魅力的かつ魅惑的に成長している柔らかな体の感触にドキドキしてしまう。そして強く、腕に力を込めて抱き着いてくる。どうしたのかと聞く前に彼女の表情を見て言葉が出なくなった。涙を―――流していたからだ。

 

「一人で、なんて言わないでください……。もう一人にならないでください……私はあの日、ジッパーの中で自分を呪いました……聞こえてくる音や声に恐怖しながら、そして……進志さんが私の為に苦しんでる事を……」

 

孤独なジッパーの中、見つからなければ安全な場所であったが百はその中で震えていた。聞こえてくる情報はどれも自分に恐怖を与えてくるものばかりだった。その中でも一番恐ろしかったのが進志の苦痛に満ちた声だった……。

 

「すべてが怖かったのです、ジッパーから出て血まみれだった進志さんを見たときは息が止まるかと思いました……。それなのに貴方は私の事を心配なさって……あの時、飛び出したかった……でも、進志さんの言葉と覚悟を無碍に出来ず、私は何もしなかった……」

「百……」

「もう、いやなんです……進志さんが一人で戦っているのに何もしないなんて……だからせめて私もその隣にいたいのです。一緒に居たいのです、貴方を……守りたいのです、だからお願いです……私を傍においてください……」

 

涙を流しながら心中を語る彼女に進志は何も言えなくなっていた。彼女を守る為に行動していた時分だが自分の行動自体が彼女を恐怖に駆り立ててなんて思いもしなかった。あの時の後悔をもう繰り返したくないから、という事もあったのだ。ならば自分がすべきなのは……

 

「―――悪い、そんな風に思ってたなんて考えもしなかった。百、これからもその、よろしくな……」

「はい、よろしくお願いします……」

 

しばらく、二人はそのまま抱き合っていたがみそ汁が沸騰しているのを目撃して慌ててキッチンへと一緒に駆け出していくのであった。

この作品のヒロインの行方は?

  • 八百万 百 (ヒロイン一人固定)
  • もう一人もいる
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