覚悟の幽波紋   作:魔女っ子アルト姫

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進志の日常

「進志、この前また百ちゃんにお昼作ってもらったんだってぇ?このこのモテ男め!」

「黙れクソ親父。この前会社に弁当届けに行った時の事バラすぞ」

「おいバカマジでやめろ」

……ねぇ貴方、この後お話ししましょう?

「ひぃっ母さん違うんだ!!?」

 

朝食を取っている時に思わず父がそんなことを振ってきたので絶対に言うなよと言われたことを、意図的だがうっかり口を滑らせてしまった。そのことで母の表情は笑顔でありながらも影が生まれ、凄まじい威圧感があった。笑顔とは元々攻撃的な物だと聞いた事があるが、事実だったらしい。

 

「違うんだ母さん!!?俺は悪くないんだそれに全部しっかりと断ったし!!?」

「の割にはデレデレしてたよな」

「マイサァアアアアアンッッ!!!?」

へぇっそうなんだ……あなた、ちょっとこっちに来てね……?

「か、母さん首、首しまってる……!?し、進志お前覚えてろぉ……!?」

「んじゃその前に父さん秘蔵のエロ作品全部壊しとくわ。ちなみに母さん、それ全部大学生物だったぞ」

「……」

「い、いやぁぁぁああああ!!!??」

 

もはや無言となった母にただただ家の奥にある夫婦の寝室へと引っ張られていく父を手を合わせて見送る。寝室の扉が閉められる。その直後に僅かにある隙間から聞こえて来るのは父の悲鳴のような嬌声であった、記憶を取り戻す前から自分の両親はこんな感じだったらしいが、よくもまあ歪む事なく自分は育ったものだと感心してしまう。取り敢えず食事がまずくなるので寝室の扉を閉めなおして食事を再開する事にした。

 

「まあ、なんだかんだで確り愛し合ってるからすげぇよなうちの両親……。そしてこの後はまた暫くは新婚さながらのラブラブが広がるのか……はぁっ……ごっそさん」

 

食べ終わったので食器類などをスティッキィ・フィンガーズと共にキッチンへと運んでいく。こういう地味な所でも個性が役に立つといいなぁと何気なく思うのである進志であった。そしてその直後、寝室から妙に肌がつやつやした母がやってきた。

 

「ふぅっ……あらっ進ちゃんごめんなさいね片付けまでさせちゃって」

「構わないけど今日はずいぶん早いな」

「ううんまだまだこれからラウンド重ねていく予定よ、ちょっと活力剤取りに来ただけだから」

「……あっそう」

 

そういうと母は冷蔵庫からドリンクを出してそれを一気飲みする、それを自分に向けて軽く投げるとそれをスタンドで受け取りつつもごみ箱に捨てる。

 

「ナイスキャッチ進ちゃん♪それにしても本当に便利ねぇ進ちゃんのフィンガーズちゃん」

「まあね」

 

何気なく自分のスタンドについて言葉を漏らす母だが、京兆との戦い以降にスタンドが誰の目にも見えるように出来るようになっていた。自分の中で何かが変わったのか分からないが、これで両親に自分の不思議な個性の説明が出来たことに対しては安心している。スティッキィ・フィンガーズは両親の個性の遺伝で生まれ、二つの個性が混ざった事による変質で出来たというのが個性学者の見解であった。

 

「さてとっ……あの人が逃げないうちに行くわね。今日は気絶するまでやるわよ……進ちゃん、弟か妹は何人がいい?」

「ノーコメント、あとちゃんと扉は閉めてくれ。あれの声煩すぎ」

「あらっごめんなさいね。それと進ちゃんこの後は出掛けるんでしょ?ちゃんと百ちゃんも誘うのよ」

「百の場合は誘わなくても理解してそうだけど……」

「それでも、よっ」

 

ウィンクをしながら寝室へと戻っていく母を見送り、扉がしっかりと閉まっているのを確認すると進志はもう両親の事は放っておくことにした。そして自室に戻るとケータイで百に向けてこれから走りに行くけど、一緒に行く?という趣旨のメールを送ると30秒もしないうちに返信が帰ってきた。

 

『もちろんご一緒させていただきますわ!!直ぐにご用意いたしますので少しお待ちください!』

「お待ちくださいって……待ち合わせ場所とか決めてないのに」

 

後で待ち合わせをどうするか電話で聞いてみる事に決めつつ、ランニングスーツに着替えていく。ウエストポーチに財布やらを詰めて準備を終えて、一応出掛けてくるという書置きを残して玄関を開けるのだが……そこには同じくランニングスーツを着用している百が笑顔で自分を待っていた。

 

「お待ちしておりましたわ進志さんっ♪」

「……百の個性って予知とかだったっけ?」

「いやですわ進志さんったら♪私の個性は創造ですわ、これは私が進志さんとの時間を創造したのです♪」

「お、おう……」

 

恥ずかしがる事もなく堂々とこんな事を言える彼女を尊敬するべきなのだろうか、それとも反面教師として捉えて自分もこうならないようにすべきなのだろうか……。

 

「兎に角、行くか……」

「はい。今日は何キロ走りますか?」

「そうだな……手始めに5キロだな、その後に小休止と簡単なストレッチ挟んでから5キロだな」

「承知致しました。では参りましょう」

 

進志と百はそのまま走り出した、雄英の受験を決めたからにはヒーローになるという事を進路に組み込んでいる。スタンドは確かに強力な個性だが本体である自分が何も出来ないのでは話にならない。自分が強くなることも必要なのである。

 

「そうだ百、聞いてみたかったんだけどさ……。俺が男子校にしてたらどうしてたんだ?」

「いえ、進志さんなら共学に行かれると信じておりましたのでそんな心配はしておりませんでした」

「そっか」

「でも万が一そんなことが起きたならば、お父様とお母様に頼んで学校に圧力をかけて進路変更をさせるように致します」

「何考えてんだよお前!!?」

この作品のヒロインの行方は?

  • 八百万 百 (ヒロイン一人固定)
  • もう一人もいる

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