覚悟の幽波紋   作:魔女っ子アルト姫

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進「親父、如何して母さんと結婚したんだ?あれ見てるとどう見ても結婚する関係の二人じゃない気がするんだけど……惚れた弱みって奴?」

父「簡単に教えてやろう。俺が母さんに一目惚れされる→友達から入る→既成事実作られる→交際&婚約。こんな感じ」

進「……マジ?」

父「うん」

進「……聞くんじゃなかった……」



友人からの

「スティッキィ・フィンガーズ!!!」

 

珍しく一人でいる進志は周囲に誰もいない場所で個性であるスタンドの訓練を行っていた。京兆との戦い以降、スタンドが誰の目にも見えるようになって以降も訓練を続けてきている進志、そんな訓練が実を結んできているのか、それとも記憶が完全に精神と馴染むと共に覚悟が精神を更に成熟させたことによるものなのかは分からないが彼のスタンドであるスティッキィ・フィンガーズは更に成長を遂げていた。

 

誰にもいないと分かっているが、それでも念には念を入れて自分にしか見えない状態でスタンドを展開し目の前にある巨大な岩へと拳を突き立てる。振るった一撃は深々と突き刺さっていた。肘辺りまで腕が岩へと沈み込むかのようにめり込んでいる。様々な調査を行った結果として、ステータスはかなり向上していると言える。

 

『スティッキィ・フィンガーズ:破壊力:B / スピード:AよりのB / 射程距離:D / 持続力:D / 精密動作性:B寄りのC / 成長性:B or C』

 

オリジナルであるスティッキィ・フィンガーズにかなり近づいている能力となって来てる自分の個性。精密動作性に至っては完全に上回っている事も分かっている、毎日パズルの組み立てに加えて百の発案で始めた訓練もかなりの効果を発揮しているらしい。それは自分とスタンドでバイオリンの二重奏をするという訓練方法、これが中々に効果があるのか精密動作性が大きく向上するきっかけにもなっている。

 

「よしならば……ラッシュっ!!!」

『アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!』

 

パワーを確認出来たところで次なる挑戦へと入ってみた、スピードとパワーの両立であるラッシュ。凄まじい速度で打ち込まれていく拳は岩に減り込む事も無く、表面を砕いていく程度の力で上手くセーブされている。そしてラッシュが続けられていく中で徐々に進志の身体は浮き上がっていく。ラッシュで身体を浮かせるという荒業を行いながらも岩の真上まで来た進志は強く息を吸いながら裂帛の叫びを上げながらスタンドを動かす。

 

『「アリィッ!!!」』

 

渾身の一撃は岩へと突き刺さり、そこから岩全体へと罅が広がっていく。三度深々と突き刺さった拳は先程は貫かなかった岩の中心部を砕いていた。中心部を砕かれた岩は呆気なく亀裂を走らせながら崩壊していく。そんな上から降りた進志はその結果に満足げに笑いながらも、誰にも見られていなかったことを確認するとそそくさとその場を後にするのであった。

 

「ただいま」

 

自宅へと帰ってきた進志、途中何も変な事件に遭遇する事も無く帰って来れたことに何処か幸せを感じている自分がいる。余程のあの一件が心に突き刺さっているのだなとこの度に思う。両親は仕事で家を空けているし、百も家にはいない。嫌自宅なのによく百がいる事が可笑しいような気もするのだが……母が以前合鍵を渡しているのを知っている身としては何とも言えない気がしてならない。部屋に戻ると壁に掛けてある二つのバイオリンを手に取って一つをスタンドに持たせ、自分はベットの上、スタンドは椅子に座らせて互いに弓をもって弦へと当てる。

 

「1 2、1 2 3」

 

精密操作性の訓練の為に最近ネットで見つけた難しめの曲を演奏し始める。自分とスタンドで二重奏を行うというのがかなり難しい。譜面を記憶しながらその通りに自分で演奏しつつ、スタンドを動かすためにイメージなどを固めていかなければいけない。複数の思考を同時に行うような物なので最初は慣れなかったが、今ではだいぶ様になってきている。

 

「~♪」

 

自らのスタンドが奏でる二重奏、美しい音色がシンクロする光景をイメージしつつ頭に浮かんでいる譜面をそれらを演奏する為の指使いをスタンドと自分が行う。気が抜けない演奏の中、それらを破るかのように自分の携帯が鳴り響いていた。丁度キリが良い所だった為に一旦そこまでにする事にしたのか、演奏をやめながらバイオリンを置きながら携帯をとった。

 

「はいっ傍立ですけど」

『もしもし、あのアタシだけど今大丈夫?』

「んっああっ久しぶりだな。珍しいなそっちから連絡なんて」

 

連絡をしてきたのは友人の一人だった、最近連絡といえば百ばかりだったので久しぶりの別の友人からの電話に軽く嬉しさを覚えてしまった。

 

『そのさっ……前に写メくれたじゃん。神社でお守り買って、雄英受験するって奴。それに写ってたアンタなんか眼帯してたじゃん、今までそんなの付けてなかったからなんか心配になっちゃって』

「あ~……気にするな、ダチから貰ったからつけてるだけだからさ。ほらっ眼帯ってカッコいいじゃん」

『……何か隠してない?』

 

本質を語らずに暈した内容を話すが、電話の向こう側の友人はあっさりと自分が何かを隠しているのではないかと見破っていた。相変わらず勘が鋭いものだ。

 

「……遅い中二病で悪いか」

『いや悪いとは言ってないけど……何かあったの?』

「……ちょっとな」

『……そう、深くは聞かないでおくけどさ何かあったなら相談ぐらいしてよね』

「ああっ悪いな心配かけて」

 

そんな風に自分を気遣ってくれる友人の言葉が何処か痛かった、騙しているような気がしてならなかった。でもいきなり自分の片目はもう見えないなんて言ったところでパニックを誘発するだけ、今はこうするしかないだろう。

 

「そう言えばお前も雄英志望だっけ」

『そうだよ。上手く行けば一緒の学校に通えるね』

「気が早いぞ、俺が落ちることだってあるんだからな」

『それはないでしょ、アンタ優等生だもん』

 

そんな友人の会話はしばらく続いていた、そして暫くすると流れで通話を切った。その後に吐き出した溜息は妙に重苦しかった。

 

 

 

「……あいつ、どうしたんだろう。今度会った時に聞いてみようかな……」

 

進志の友人である、拳藤 一佳は近々訪れるであろう再会に向けてそれを心に決めるのであった。

この作品のヒロインの行方は?

  • 八百万 百 (ヒロイン一人固定)
  • もう一人もいる

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