覚悟の幽波紋   作:魔女っ子アルト姫

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実技入試

いよいよ実技試験へと駒が進もうとしている中、説明会場となっている場所へと辿り着いた進志は静かに集中しながらその時を待ち続けていた。全くと言っていいほどに緊張はない、一度本気で殺しに来ている相手と正面切って戦った経験があるからだろうか。

 

『今日は俺のライブへようこそぉぉぉお!!!!エヴィバディセイヘイ!!!』』

 

スピーカーから爆弾じみた声が放たれた、試験説明が始まると言った流れあったのにも拘らずその第一声がライブ開始の合図。と思うかもしれないがその声の主はボイスヒーローと名が知れ渡っている「プレゼント・マイク」の第一声、彼にとっては説明もライブに早変わりする……というものなのだろうか。が流石に受験者は誰も返事を返すことなどない……と思われていたのだが

 

「YEAH!!」

 

たった一人だけ声を上げると共に大きく腕を振りぬいて立ち上がっていた者がいた。そう、進志であった。プレゼント・マイクが行っている番組やラジオ放送などの大ファンである進志。思わず自室で腕を上げるようにやってしまった。ファンとしてはここは答えなければファンではない、と彼の魂が叫んだのかもしれない。周囲からはすさまじいほどの視線が向けられているが進志は全く気にしなかった。そんな返事(レスポンス)を受けてマイクは上機嫌に笑いながら続ける。

 

『OKOK!!ナイスなレスポンスサンキュー!!んじゃまぁちゃっちゃか、入試の説明を始めちまうぜ!!』

 

座りなおした進志を見てからYEAH!という言葉と共に巨大なモニターへと試験への概要が投影されていく。様々な情報が出されていく中で進志はそれらを総合しながらどう動くのがベストなのを考えつつも、スタンドはやはり見えないようにしながら動かすのが一番だなという結論に落ち着く。やはり見えないものから殴られるというのはかなり強力だし。

 

『さて、最後にリスナーに我が校の『校訓』をプレゼントしよう。かの英雄……「ナポレオン・ボナパルト」は言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と! Plus Ultra!! それでは皆、良い受難を!』

 

良い受難を、いい言葉だ。ヒーローを目指すならば進む道は受難しかないと言っても過言ではない。その受難が命に係わるやり取りになるかもしれない、そんな受難を乗り越えて成長していくものこそが英雄であると進志は思いながら胸ポケットへと手をやった。不思議とここに手を当てるだけで落ち着いていき、意識がクリアになっていく。

 

説明を受けた一同はそのまま各自が割り当てられた試験会場へと進んで行く。流石というべきか雄英の受験者数は何千にも及ぶ。それを全て同じ場所でテストするのは不可能、その為に複数個所の試験会場に別れて試験が行われる。人工的に作られたビルが複数並び立つフィールドが広がっている、このフィールド内に放たれる仮想敵を撃破しそのポイントを競うのが実技試験。間もなく開始される試験に脅える者、備える者、格上の他の受験生に圧倒される者と別れている中、進志も当然準備を完了させていた。

 

「……」

 

眼帯を強く締めながら意識を集中させる、足を一歩引くようにしながら待機する。そして最後に胸ポケットに入れている物を触れれば完璧に意識が出来上がる。彼の意識にもう雑念などない、すべては確実に仮想敵へと向けられる。そして遂にその時がやってくる。

 

 

「―――ハイ、スタートォォ!!!」

 

 

その言葉を聞いた瞬間に進志が身体が凄まじい速度で反応し、地面を強く蹴っていた。余りにも強く蹴ったのか、そこには深々とへこんでいる足の跡が出来ている。周囲はいきなりのスタート宣言とそれに反応した進志に圧倒されているのが少しの間動けずにいた。そんな他の受験者など知った事ではないと言わんばかりに走りだして行く進志、それらに建物の影から人工的な音声で粗暴な言葉を吐き散らかすロボット、仮想敵が現れてくる。

 

『ブッコロス!!』

『ブットバス!!』

「お前らには無理だ。何故なら――――」

 

瞬間、進志とスティッキィ・フィンガーズの腕が重なるように動き、それが仮想敵へと突き刺さった。腕を振るい刺さっている仮想敵を振り払う、数度のスパークの後に機能停止するそれを見下ろしながら言う。

 

「雄英に落ちたら、百が推薦を蹴るからな」

 

冗談っぽく言った後、空中に浮いている仮想敵を見つけるとスティッキィ・フィンガーズで自分の腕を軽く殴る。そして近くのビル目掛けてパンチを繰り出すと、そのまま腕がビルへと飛んでいきその壁を掴む。その腕にはジッパーが取り付けられており、彼は腕に螺旋状にジッパーを取り付ける事で腕を長くまで飛ばせるようにした。そしてそのジッパーを勢いよく閉じると、ビルへと自らの身体が飛んでいくかのように移動する。

 

「アリィッ!!」

 

空中へと躍り出た進志は空中の敵に対して蹴りをスタンドと共に放った。その一撃で頭部は完全に陥没し内部の回路が露出していた。そして再度、腕にジッパーを取り付けて遠くの建物の壁を掴み高速で移動していく。仮想敵を倒していく中、がれきなどで動けなくなっていた生徒を助けつつも進志は順調に仮想敵を倒してポイントを稼いでいた。

 

「アリィッ!!!」

 

ジッパーを応用して射程距離を伸ばして攻撃する技、便宜上進志がズームパンチと呼ぶ技で仮想敵をまた一体倒した時、遥か遠く凄まじい爆発音にも似た打撃音が響いてきた。別の会場から音だろうか、いったいどんな個性ならばこんな音を出せるのかと思いつつも、進志の雄英入試の実技試験は終わった。

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