覚悟の幽波紋   作:魔女っ子アルト姫

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出会いと思慮

「おっ?おっおっおっ!?」

 

雄英へと到着した進志と百は早めに来た事もあってまだ生徒がいない事を確認しながら、校内を散歩がてら見て回ることにしていた。流石天下の雄英だけであって何処の施設も超一級品を通り越しているほどの質を誇っている、お嬢様である百、彼女も認める超高品質な物ばかりが揃えられていた。こんな場所でヒーローを目指して勉強していくのかと思うと少し興奮を覚えると言った時、背後から何やら驚きと確認をするかのような声が響いてきた。振り向いてみるとそこにいたのは自分の顔を見て笑顔を作りながらVサインを向けている一佳がいた。

 

「進志はっけ~ん!やっぱり早めに来てたんだね、流石アタシの勘。ドンピシャだったね」

 

笑顔を浮かべながら手を振ってやってくる一佳、そんな彼女に対して百の全センサーが働いていた。進志に話しかけただけではない、ほかの事も知っているという事が彼女の危険信号を誘発した。一体この女は何者なのか、何故こんなにも馴れ馴れしく進志に話しかけられるのかという疑問と共に敵意がむき出しになろうとしたのを止めたのは他でもない進志の言葉であった。

 

「Chao 一佳。いやぁ本当にお前も合格してて良かったぁ良かったぁ」

「何疑われたのアタシ」

「いや疑っちゃいないさ。信じてなかっただけ、進志なだけに」

「それ殆ど同じじゃない!?というかアンタ酷くない!?何、幼馴染のアタシの言葉を全く信用してなかったって事なの!!?」

 

百には目の前で起きていた事に思わず呆然としてしまった。彼女が進志の幼馴染、即ち大切な友人であったという事。それを自覚すると途端に自分が登校途中でやっていた事が何とも愚かしく思えた、推薦枠の特待生が聞いて呆れる。自分の勝手な想像で行おうとしていた行為で進志を悲しませ、失望させる所であった事を理解した。自分が彼の目になるという事は彼と同じ思いや感性を持つことが大切。

 

「ジョークだよジョーク、イッツオールマイティニアジョーク」

「面白くないよ全然!!若干傷ついたよ、あぁっ痛い私の胸が痛い……」

「なんだ飲みすぎか?いかんなぁ未成年なのに」

「そうそう昨日は雄英に通えるって思うと嬉しくてついついお父さんと一緒に深酒を……ってちゃうわ!!」

「アッハッハッ流石一佳、俺よりジョークの才能がある」

「全く何させんのよ……」

 

そして思いを直して改めて目の前の光景を見た、二人は非常に仲が良い上にジョークまで言い合える関係。そんな相手を自分は傷つけようとしたり敵視しようとしていた、そう思うだけで本当に心が痛む……。

 

進志を守りたいというのは彼が命懸けで自分を救ってくれただけではない、進志の傍にいないと何処かに行ってしまうような不安もあったから。誰がに連れていかれないように、何処かに自分を置いていってほしくない、様々な不安があったからこそ彼を守りたいと思っていたのである。確かに進志を守るという意味で警戒するのは必要かもしれないがそれでも程度と彼を思った上での考えをもって行う必要があると百は学習をした。

 

「んで進志、そっちの人は?」

「ああっそういえばお前は知らなかったんだっけ。こちらは八百万 百、俺の両親経由で知り合った人でな。色々世話になってるんだ」

「初めまして、私は八百万 百と申します。進志さんにはとてもお世話になっております、どうか宜しくお願い致します」

「ああいやっこちらこそ。えっと拳藤 一佳です、進志とは昔家が隣だった幼馴染……かな、途中から引っ越しちゃったけど」

 

お互いに挨拶をしながら握手を交わす、互いに進志の友人という事もあるのか相手を見定めるかのように少々相手を見ているのが傍から見ても分かる。

 

「(綺麗な人だなぁ……しかも言葉遣いも丁寧だし良い所のお嬢様なのかな。やっぱり進志にはアタシなんかよりもこういう感じの人がお似合い……というかあれ、八百万ってなんかどこかで聞いた事あるような……あれ何処でだっけ……)」

「(明るい笑顔に親しみやすい性格と柔らかな口調、そして接しやすい態度……進志さんはこのような方が好みなのでしょうか……私もこんな感じになった方がいいのでしょうか)」

 

と相手の優れている部分を思い、自分もそうなった方がいいのかと思ったりする乙女心があったりするのだが進志には流石に分からなかった。乙女心は見えにくい上に感じにくいのだ。

 

「あっそういえばさ、進志と八百万さんって何組?アタシはBだったよ」

「俺は確か……あれなんだっけ」

「進志さん忘れてしまったのですか?私も進志さんもA組ですわ」

「あっじゃあ隣同士か、良かったぁ近くて」

 

その最中に携帯の番号などを3人で改めて交換したりしながらそんな話をしながら共に教室へと向かっていく。隣同士のクラスだという事が分かって何処かホッと一息つく。

 

「これで何時勉強に躓いても進志に助けて貰えるね、うん」

「おい自分で頑張る気皆無か」

「出来る限りはやるけど分からなかったら素直に聞くのが一番だと思わない?」

「それは確かにそうですわね、私もお力になりますのでいつでもお声がけくださいね拳藤さん」

「全く……分かった分かったよ俺もいつでも教えてやるよ」

「やったねっ♪」

 

そんなこんなで到着したB組の教室に一佳は手を振りながらも何かあったら宜しく~と言って向かっていった。進志は一佳とまた学校に通えることに喜びを感じつつも、百が彼女と仲良く出来そうなので思わず安心してしまった。

 

「さてと、俺たちも行くか」

「はいっ進志さん!」

 

これから自分たちのクラスメイトが待っている、これから一緒に学びヒーローへと目指していく者達が。どんな人たちがいるのだろうと思いながら開けるとそこにあったのは―――

 

「コラ君!!机に足をかけるんじゃない君には高校の品格を守っている先輩方や苦労して机を製造して下さっている制作者方に感謝の気持ちが無いのか!!」

「思う訳ね~に決まってんだろ。どこ中だよ端役が!!」

 

―――酷く荒々しい口調と表情で自分に詰め寄ってくる真面目そうな眼鏡をかけた男子生徒に怒鳴り散らしている不良の姿だった。

 

「……あ、あの進志さん……雄英は超名門校ですよね……?私のイメージとしてはそのような学校にはあのような方は普通いないという考えが……」

「うん、俺も同じこと思ってたわ」

 

なんだか前途多難そうな雄英生活、スタートである。

この作品のヒロインの行方は?

  • 八百万 百 (ヒロイン一人固定)
  • もう一人もいる

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