「スティッキィ・フィンガーズ!!」
たった一人きりの家の中、ようやく生まれた自分だけの時間を自室で過ごしている少年は自分に芽生えた力を試そうと様々な実験を始めようとしていた。自らの個性である"
「スタンドの出し方は大丈夫だな。さてと次は……」
進志は中身が入っていないペットボトルを数メートル間隔で置き、スタンドが何処までの距離のペットボトルを掴めるかを確かめる。スタンドはゆっくりと部屋の中を進んでいくが僅か2メートル足らずの所で動きを止めてしまい、そこにあったペットボトルを持って戻ってきた。
「射程距離は約2メートル……よし次だ」
一旦ペットボトルを片付け、母から買って貰ったトップヒーローのジグソーパズルを広げてみる。そしてそれを自分の器用さと比較する為にスタンドと共に並べてみる。
「ムッ……中々こういうのやらなかったけど、結構むずいな……」
『……』
既にそのようにすると決めているからか、スタンドは進志が大してこうやって操作しようと思う必要もなく自らもパズルを摘まんで並べていく。そして15分が経過した頃にどれ程の差が生まれているかを比較してみる。すると自分とほぼ全く同じ数のパズルを並べているのが分かった。
「成程な……よし、それじゃあ最後はっと……」
パズルの結果に満足すると部屋を抜け出して父親が使っている自主練の器具がそろっている部屋へと向かう。そこにはベンチプレスやジョギングマシン、アブドミナルやエアロマシンなどが並んでいる中にあるサンドバッグへと向かっていく。父が使っているバンテージを丁寧に手に巻くと勢いよくパンチの連打を放っていく。
「オオォォッッ!!」
未だ小さい子供ながらに腰を入れて体重を乗せたラッシュでサンドバックは大きく揺れている。それをしばらく続けたのち、満足したように一歩後ろに引きながら『スティッキィ・フィンガーズ』を出現させる。そして荒れている息を整えるように息を深く吸い、叫んだ。
「行けぇっスティッキィ・フィンガーズ!!」
『アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリィ!!!』
言葉と共にスタンドは凄まじい速度でパンチのラッシュをサンドバッグへとぶつけていく。それと共に自分が行ったのとは桁違いに大きくサンドバッグがのけぞりながらも更に拳が撃ち込まれていく光景が広がる。そして最後に渾身の一撃の一振りをサンドバッグへとぶつけた。揺れるサンドバッグを見つめながらそれによって進志が知りたかった事を把握する事が出来た。いったん部屋へと戻った進志はノートにペンを走らせていき、書いたことを確認するように頷いた。
「こんな、所か」
『スティッキィ・フィンガーズ:破壊力:D / スピード:B寄りのC / 射程距離:E / 持続力:E / 精密動作性:D寄りのC / 成長性:B or A』
進志が行っていたのは自らのスタンドのパラメータの調査。スタンドの基本的な能力はスタンドの性質によっては例外も存在するが
「こうしてみると……やっぱり、ブチャラティより相当低いな……」
本来の『スティッキィ・フィンガーズ』と比べるとやはり自身のスタンド能力は酷く弱い。
【破壊力:A / スピード:A / 射程距離:C / 持続力:D / 精密動作性:C / 成長性:D】
本来はこれだけの能力を発揮するスタンドだが、使い手である自分が未熟であるがゆえにその能力をフルに発揮出来ない。本来は近距離パワー型として凄まじいほどのパワーとスピードを発揮し、相手をそのラッシュでぼこぼこにする事が出来るスタンド。だがしかし、自分はまだまだ発展していくだろう事から今後伸びていく事も期待できる。それに賭けて自分も努力を重ねていくしかないと、何故かスタンドが肩を優しく叩いて自分を励ます。
「アハハッ……まあうん頑張るしかないか……。にしても俺の成長性ってBとかAで良いのかな……康一君の『エコーズ ACT1』とか承太郎の『スタープラチナ』も確かAだった気がするけど……俺を彼らと一緒にしていいのか?というか、俺を承太郎さんと同列にしちゃいけねぇだろ。流石に無茶だ」
スタンドを出現させたばかりの例を挙げて自分のこれからを考えてみると恐らく期待は出来る事だろうが何処か不安もある。一部の例外はあるだろうが最初は誰だって成長性は高い筈、最初から強いスタンドは存在するがそれだって戦いを重ねてどんどん強くなるのだ。きっとそうなのだと言い聞かせる。そんな事をしていると家のチャイムが鳴り響いた。
「あれ、誰だろ」
首を傾げつつも玄関へと向かうが、能力の練習の為に扉を開けずにスタンドで扉に触れる。すると扉にジッパーが出現しゆっくりと扉の向こう側の廊下が見えてきた。これがスタンドである『スティッキィ・フィンガーズ』の能力である"ジッパー"。あらゆるものにジッパーを取り付ける事が出来るという能力、様々な事に応用が利くこのジッパー。今のうちに色々と考えておこうと進志は思考を巡らせながら扉にあけたジッパーをくぐり、それを閉めて玄関へと駆けだして行った。
「は~いどちら様で~?」
「私ですわ。お身体の方はもう大丈夫でしょうか進志さん?」
「あっ百だったのか」
扉を開けた先にいたのは自分が高熱を出した際に救急車を呼んでくれた恩人でもあり、両親が友人である夫婦の子である八百万 百が笑顔で立っていた。元々友人同士ではあったが、あの一件以来彼女は妙に自分を気に掛けるようになっている。目の前で倒れてしまったからだろうか。
「ああ身体は別に問題ないさ」
「それは何よりですわ♪実はおば様から進志さんの様子を見てほしいとお願いされましたの」
「ったく母さんってば心配症なんだから……なんか悪いな百、取り敢えず上がってくれよ。何かゲームとかして遊ぼう」
「はいっ♪」