戦闘訓練が終了しヒーローチームとヴィランチームはそれぞれ集合場所となっているモニタールームへとやってきた。そこでは皆がこちらを向きながらもモニターでは改めて二チームの戦いがリプレイされている。
「さてと少年少女諸君、講評と行こう!!皆、この戦いでのMVPが誰だかわかるかな?」
「う~ん……やっぱりテープ巻いた傍立?」
「でもヤオモモじゃない、ドローンとか作って情報集めてたし」
「上鳴も結構いい線行ってたと思うけどなぁ……不意を突いたあの放電は相当な威力だったし」
と各自から意見が漏れていくのをオールマイトは微笑ましく見つめる、彼らの意見は中々に鋭く突けていて核心に近いものばかりだ。そしてそれらを含めて先生である自分の意見を述べてみるのもいいだろうと思い一つ咳払いをする。
「ウォッホン、ではここで私の講評を述べよう。個人的なMVP、それは傍立少年と耳郎少女だ」
「えっウ、ウチ!!?」
その言葉に一番驚いていたのは指名された響香であった。彼女は最後は呆気なく戦闘で確保されて良い所がなかったと思っていたのになぜと思っている。それを見てオールマイトは頷きながらこの意見を聞いてなぜMVPに選んだのかわかる人と聞いてみると出久が手を上げた。
「よし緑谷少年言ってみよう」
「はっはい!!え、えっとまず耳郎さんですけど個性で音を探知してその情報を上鳴君にも共有して待ち伏せの成功率を上げていました。加えて常に音で相手の位置の把握に努めて高い警戒態勢をしていた、それは核を守る者、ヒーローとしては確実に最後の壁になるからだと思います」
「あっそっか、ウチ最後まで
そう、それが耳郎がMVPとして挙げられた大きな要因。あの場で最も強く守るべき存在を強く意識しつつ最優先で防衛しようとしていた防衛意識、ヒーローにとってそれを持ったヴィランは酷く厄介な物。たとえ自分を犠牲にしてでもそれを死守しようとするという事から生まれるのは時間、応援や他のヴィランからの援護などが見込める。
「そうだから私は耳郎少女をあげたんだ。私の経験としても相手を倒そうとするよりも時間稼ぎに徹するヴィランの方が何倍も手強い。倒そうとしてくるならばかなり楽だ、だが戦うのではなく防御や回避に徹する。これが厄介なんだ」
「えっとそれじゃあ次は進志君ですね」
「そう言えば俺ってどうやってテープ巻かれたんだ……?」
手を上げて問う上鳴にオールマイトはモニターを指し示す。丁度その場面が映っている、そこには大きく槍を振るっている百の姿があったのだが、その背後にいる進志に注目するように言われる。すると彼の腕が解けるように地面へと落ちながらも器用に地面を這い、持っていたテープを自分へと巻き付けていた。これが自分の敗北の正体。
「上鳴君は個性による攻撃が防がれた動揺と電気が効かない進志君、目の前で派手に振るわれる槍で完全に注意力を削がれてたんだ。そんな状態だと目の前で振るわれてる槍に目が行く。その隙を進志君が上手く突いたんだよ」
「な、成程そう言う事だったのか……あの時、俺はその後の事も含めてギリギリの出力放電したんだけど、それも仇になってたのか」
彼の言う限界、放電しすぎると脳に負担がかかってショートしてしまい著しく知能が下がってしまう。長期戦も考えてそのギリギリのラインを突き詰めて行った放電、しかしそれが仇になった。意識と理性が確りとしているせいでより大きなショックを受けてしまっていた。
「かぁっ~世界って広いな&本当に強いな進志とヤオモモ!!次やる時があったら絶対負けないからな!!」
「たとえ何度挑まれても私と進志さんが負ける事など万が一、いえ億、京でもありませんわ」
「……完敗だぁっ」
と思わず上鳴は床に座りながら両手を上げた、どうやら自分が完全な自滅覚悟で放電をしていたとしても無駄だろう。同時に見上げる進志の背中は酷く大きなものに見えた、まるでこれから登る山を見上げた時のような感覚に似ている。同時に、彼の背中から並々ならぬ力と意思を感じる。既にプロヒーローのような風格だ。
「なあっ進志、教えて貰ってもいいか?」
「なんだ」
「進志だったらあの時、思いきって自滅覚悟の大放電してたかな。俺って、甘いのかな」
上鳴の言葉にオールマイトも少々考え込む。確かにそうかもしれない、訓練だとしても実践だと思ってやってくれと言った筈。それから外れた彼のミスともいえる。進志は少々黙り込み、言葉を作ってから返事をする。
「そうだな……俺だったらそうしてたかも。俺が落ちても一人は残る、それで一人を落としてもう一人にダメージを負わせられれば十分だな」
「そっか……」
「だけどお前はそれをしなかったんだ、それはお前が俺たちの身体を思っての事だ。有難う」
思わず間抜けな声を出しながら進志を見た、彼はありがとうと言った。上鳴は自分たちがヴィランだと思いながらもクラスメイトが放電で大きな怪我をするのではと心配していた。実践だと思ってやる訓練だとしてもクラスメイトに大放電は出来なかった。それが甘さだと思っていた。
「甘くていいだろ、苦すぎても誰も受け入れてはくれないからな」
「おおっ~進志君カッコいい~!!」
そんな風に周囲から声が溢れる中で上鳴は口角を上げながら思った。自分が目標とすべきは進志なのかもしれないと。
ヤオモモは戦闘訓練の概要を聞いたときに既に創造準備を始めてました。だからドローンをあれほど早く創造出来ました。