覚悟の幽波紋   作:魔女っ子アルト姫

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衝撃と注目

進志と百、上鳴と耳郎。この二つの組の対決が引き金となったのかその後の戦闘訓練は特に白熱していた。自分らも負けてられるかと皆張り切っていた。その中でも飛びぬけていたのは二つの対決であった。一つは百と同じ特待生である轟 焦凍と障子 目蔵のBチームである。この二チームの攻略は進志と百のものと似ている部分もあった。

 

まず自身の身体の一部を複製する事が出来る個性"複製腕"を持つ障子がビル内の音などを調査した後に、焦凍が決めた。此処までは似ているが問題はその手段である。

 

「おいおいマジか……」

「桁違い、ですわね」

 

障子が一人ビルの外へと出た直後に異変は起き始めていた、徐々に空気が冷たくなりそして一気にそれがビルを侵食していく。病魔が肉体を食い貪るかの如く瞬く間に氷はビルを包み込み凍結させていく。氷が自らの意思をもって自己を増やしビルを貪ったとも見える光景に皆唖然とさせられた。規格外とも言える個性の強さと規模、確かにあれならば特待生など容易いのかもしれない。そして焦凍はあっさりと核兵器を回収した後、自ら生み出した氷を自分の力で溶かしていった。

 

「二つの、個性を……しかもビルの氷をあっという間に……」

「冷気と熱の二つの個性……」

「進志さんと、同じ……」

 

進志のスタンドも言うならば両親の個性が融合して出来上がったものなのでそうとも言えなくもないが、彼の場合は受け継いだ親の個性を両方とも自分の個性として使えると言った方が正しいのだろう。一つになるのではなく、二つが一つとして収まっている。

 

「相当に強い力を感じるが―――繊細さをまるで感じないな」

「進志さん……?」

 

そんな焦凍を見つめる進志の瞳に百は苛立ちに近い何かを見た、何かを不快に思っている。何かという訳ではない、だが何かが不思議と気に入らない。自分でもそれが分からない、だが確かに感じる焦凍から感じるそれが自分が気に入らない。

 

「進志さん……?」

「……気に入らないな」

 

そう吐き捨てると進志はモニターに背を向けながら帽子を目深に被る。同時に壁に強い衝撃音が響く、そこには何かの拳の跡のようなものが残されているが誰も拳を振るっていないはずなのに付いた跡を不思議に思う中で百は少し、彼の事が不安になった。

 

そんな轟 焦凍の後にも衝撃は続いた。それは最後に近い戦闘訓練となったAチームとDチーム、出久と麗日のチームと爆豪と飯田のチームの対戦。この組み合わせが発表された時に最も興奮しているかのようにしていたのが爆豪であった、個性把握テストでは爆破という調整が難しい個性を見事に扱いきり好成績を残していた。そして進志を異様に敵視していたのだがその標的は出久へと向けられていた。

 

「緑谷、あの爆豪はお前を妙に見ているぞ。気を付けろよ」

「……うん分かってる。でも大丈夫」

「気を付けてな」

「うんありがと」

 

そう言って二人は握手をし、進志は彼を送り出した。そして間もなく、出久と爆豪の戦闘が開始された。奇襲をかける爆豪を地面を強く蹴って避けつつも通路を全力で駆けていく。それを爆破の勢いで飛行する事で追走する爆豪、出久は必死に逃げつつもある程度距離を稼ぐと一気に反転した。

 

「クソがぁァァアアデクゥゥゥウウ!!!」

「(拳に力を、いや腕全体に力を籠めるイメージだっ!!)」

 

覚悟を目に宿しながら爆豪と対峙する彼の瞳に輝くのはダイヤにも負けぬ意思、それを力に変えながら右腕に力を込めながら個性を発動させる。スパークのような光が腕を覆っていく中で大きく振り上げた足で地面を強く踏みしめながら出久は顔を上げた。迫りくる爆豪が右腕で大きな一撃を繰り出さんとしてくる、知っていた(・・・・・)。自分は彼を知っている、子供の時から、尊敬しているから。

 

無意識だった、身体を沈ませながら更に一歩踏み出した。大きなカーブを描きながら彼の腕は虚空を爆破する、そして叫んだ。自分が最も尊敬するヒーローが一撃を放つ際に放つ言葉を一撃と共に。

 

SMAAAAAASH!!!

「デッ―――」

 

驚きと怒りが渦巻くよりも先に出久の一撃が爆豪を捉えていた。渾身の力を込めた拳ではなく腕で捉えているがそんなことどうでもよかった、とにかく出久はそのまま全力で地面を踏みしめながら更に体重を乗せるように腕を振り切った。その一撃は爆豪を吹き飛ばした、いや周囲のビルの壁を粉砕ほどの爆風を巻き起こしながら彼を吹き飛ばしていた。爆豪はその一撃を受けてビルの壁を突き抜けて外へと飛ばされながら道路へと転がっていた。

 

「がぁっ……なっ……ぁっ……?」

 

一体何が起きたのか理解出来なかった、自分の一撃を回避しながらカウンターを決められた?そんな事実があったのだが彼にはそれを理解する余裕がなかった。身体へと突き刺さった一撃によるダメージは彼のダメージ許容上限をあっさりと上回っていたのだ。彼が自分の痛みに苛立ちと怒りを感じながら意識を手放してしまった。

 

「はぁっはぁっ……いづっ……!!」

 

攻撃があったのかという疑念の中にあった出久を腕の痛みが引き戻した。自分の身体許容上限を超えていたのだろうか、腕がかなり痛む。それでも100%の全力に比べたら十分に耐えられるし腕もまだまだ動く。まだ行けるっ!!!と自分でも驚きつつも状況を冷静に分析するとそのまま麗日の援護に向かう為に走り出した。

 

「進志さん良かったですわね、緑谷さんの事心配なさっていたんでしょ?」

「どちらかというと爆豪の事で心配だったんだ。確執があったっぽいからな」

「でもそのような顔では説得力ありませんわ。だって凄い嬉しそうですもの」

「……あまり虐めないでくれ、百」

 

そう言いながら帽子で顔を隠す進志だが、その時に百が見ていたのはまるで成長した弟の姿に喜びを感じている兄のような笑みを浮かべている姿だった。




今回の出久のSMASHの際の個性出力は18%。それでもカウンターによって爆豪を十分に気絶させられる威力となっていた。
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