覚悟の幽波紋   作:魔女っ子アルト姫

39 / 55
体育祭直前

「そんな事が、あったんだ……」

「ああっそれがこの眼帯の下の真実ってやつだ」

 

屋内演習場へと到着した進志、百、出久。百は簡単な手続きとコスチュームの着替えのために少し時間がかかっているらしいのでその間に自分がなぜ眼帯をしているのかを出久へと話す。なぜ眼帯をしているのかという源流を聞いた出久は信じられないような表情を作りながら、確かな事実としてそれを受け止めていた。誰かを守る為に受けた傷を進志は誇り高いものとして受け入れているのを感じながら。

 

「それでもやっぱり凄いよ進志君は」

「そうか?相澤先生が聞いたらお前バカだろって言われそうな気もするけどな」

「ま、まあ相澤先生なら言いそうだね」

「だけど俺は馬鹿でいい」

 

帽子を脱ぎながら進志は言う。自分は馬鹿でいい。

 

「俺は愚直に自分が選んだ道を進むだけ、それだけでいい。それが俺らしくていい」

「それでいい……」

「人には人の歩く道がある。人に言われて変えるのは歩くペースと歩き方だけでいいと思うぜ」

「進志さんお待たせしました」

 

そんな言葉の直後に百がコスチュームを纏ってやって来た、彼女を出迎えるように歩いていく進志を見つめる出久には彼が遥か先に立っているように見えた。いやきっと本当に先にいるんだ、ヴィランと戦闘した経験やそれによって決めた覚悟が彼を遥か先に連れて行った。そしてそんな彼だからこそ普通科の生徒の挑発にあれほどまでに真剣に怒ってくれた。自分達の事を思って、やっぱり優しくて大きな人だと思いながら出久は立ち上がった。

 

「ねえ進志君、僕の個性についてなんだけどこれからどうするべきだと思う?」

「そ~だなぁ~……全身のリミッターを少しずつ解除するようになるべきじゃないか?やっぱり全身と腕だけじゃ差が大きいし。それが無理なら地面を蹴る時だけリミッター解除するとか」

「全身を解除……あっそっか!!僕は今まで無個性だと思っててまだまだ個性の使用自体に慣れていなかった、だからみんなみたいに体の一部だと思う意識が欠けていて……」

「進志さん、また緑谷さんを導いたみたいですよ」

「えっマジで?」

 

図らずに言った一言が再び出久に新しい道を見つける手助けをしたらしく、この後出久は進志と百と特訓をしながらそれを磨いていく。

 

「そうだ、まだ全身は無理だけど地面を蹴る瞬間に一歩一歩でっ!!」

「うわっ百あれ見てみろよ」

「えっ?ええっみ、緑谷さん速すぎじゃないですか!?」

 

槍を構えながら進志と模擬戦のような形式で戦闘中の創造の判断力や戦闘への組み込みを目的とした訓練をしている際に思わず出久の訓練に目が行った。進志の言葉であった全身、それをヒントにして全身に力を籠めるイメージを作り出し制御しようとするのだがそれはまだ困難。故に出久が取ったのは地面を蹴る瞬間にリミッターを解除して思いっきり地面を蹴って加速するという走法を生み出していた。

 

「もっと、もっとタイミングを細やかに素早くっ!!!」

 

元々頭の中で何かを考えるという事が得意だった出久、そんな彼に自分の身体で実践する考え方はベストマッチ。しかも感覚的に個性の制御が出来始めているからかそれが更に加速度的になっている。身体がまだ出来上がり切っていない出久、そんな彼が出力の低さをカバーするために取った手段が速度を確保する事。

 

「SMASH!!!」

 

一歩を踏み出すとともに力を込めて地面を蹴る瞬間に力を開放する。それを走る動作と共に繰り返していき速度を確保してそのスピードのままで肉体許容上限を込めた一撃を放つ。速度の乗る一撃は彼の一撃を遥かに凌駕する、模擬標的でもある人形を大きく揺るがすほどの威力を実現した。

 

「おいおいおいおい緑谷お前すげぇな!?」

「本当に素晴らしいスピードですわ!今ならきっと飯田さんにも引けを取りませんわ!!」

「そ、そうかな。でもまだまだ解放のタイミングが難しいんだ、足が地面を離れるのと一緒にやるから結構大変で……」

 

この後、出久は二人に相談に乗って貰いながら力の開放のタイミングの練習や共に組手などをしたりと非常に充実した時間を過ごす事が出来た。その結果、力を調節することで超ハイスピードでターンを決めて相手の虚をつく技を会得したりもするのであった。

 

「(スティッキィ・フィンガーズ!!)アリィッ!!」

 

自らの拳をスティッキィ・フィンガーズと共に放つ。一撃は想像よりも深かったのか模擬標的となっている人形を完全に貫通してしまっている。それに思わず進志は目を白黒させてしまった、今までこんな力は明らかになかった。スティッキィ・フィンガーズが成長しているという事なのだろうか、それはすなわち自分の成長でもある。そう思うと頬が緩み嬉しくなってくる。

 

「百、体育祭だと確かトーナメントあったよな」

「はいっ例年でもトーナメントは確実にありましたし、一緒に見たりもしました」

「……そうか、負けないぞ」

「私だって、負けませんわ」

 

複数の思いが交錯していく雄英体育祭。そこで行われる祭典では何が起きるというのか、どのような熱が巻き起こるのか。それとも予想外の出来事が起きて熱が奪われるのか定かではない。だがそこに向けられる感情は大きい。そして―――

 

 

雄英体育祭、開幕。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。