第一種目:障害物走も終了し、次なる競技が発表される。それは―――騎馬戦であった。3~4人でチームを組む、それぞれには障害物走の順位によってポイントが振り分けられ騎手はそれらの合計分のポイントが印されたハチマキを装着し、それらを15分の間に奪いあうという形式になる。ポイントの奪い合いである為騎馬が崩れたとしてもまた組み直して奪い合いに参加しなおすのもあり。そして個性の使用も自由、禁止なのはあくまで悪質な崩し目的の攻撃のみ。
そして、進志の保有ポイントは百と同着の2位である為に205、これは彼女も同じく。だが1位の出久は更なる受難を、下克上上等のこの騎馬戦の醍醐味とも言えるとして1000万が与えられていた。思わずそんなポイントを与えられた事に同情する。確実全員から狙われる事になるのだから……これはある意味抜かれて正解の結果だったのかもしれない。
「ねぇ進志、アタシと百さんで組まない?中々に良い三人だと思うけど」
「異論はないな。だけど一番上は誰がやるんだよ」
「進志さんでは?ジッパーで腕を延長出来ますから相当有利かと」
確かにズームパンチの応用で腕を飛ばして鉢巻を奪える進志が騎手になるのが最善のような気もするのだが……いくら幼馴染とはいえ女性二人の上に立つのは何処か気が引けるような気がしてならないのが素直な本音である。だがしかしそれがベストとも思える。百の創造は様々な物を生み出せるので優秀な防御、一佳の大拳もその手を振るって風圧で相手を妨害したり、簡単な攻撃程度なら受け止める事が出来る。その点を踏まえるとやっぱり自分が騎手になるのが一番なのだろう……。でも男一人なのは少々心苦しいと思っていた時の事だった。
「おぉ~い拳藤ぉ~お前相手決まってるかぁ!?」
「あっ鉄哲じゃん、アンタは?」
「組もうと思ってた骨抜がもう引き抜かれて今マジで絶賛ぼっちだ!!」
「いや絶賛出来ん」
凶悪な顔つきが特徴の男子がこちらへと走ってきてやや焦っている、如何やら組もうと思ってた相手が既に引き抜かれた上に他に入れなくなっているらしい。確かにこれは焦る。どうやら一佳と同じB組の生徒らしく、B組のクラス委員長である一佳を頼って来たらしい。
「あっ進志に百さん、紹介しとくね。アタシのクラスメイトの鉄哲 徹鐵」
「鉄のゲシュタルト崩壊みたいな名前だな……あ~傍立 進志だ」
「おうっよろしくな!!お前の個性ジッパーだったか、あれのお陰で楽に地雷原突破出来たぜ!!あんがとな!!」
とサムズアップをしながらキラリと歯を光らせながら挨拶を行う鉄哲、どこか切島に似ているものを感じる。
「所で鉄哲だったか、お前相手居ないって話だったな」
「ああそうなんだよ……こいつしかいねぇ!って思ってたやつが真っ先に他のチームに引き抜かれてた……」
「だったら俺達と行かないか、ちょうどそれで4人だし」
「マジか!!?」
マジマジと答える進志に鉄哲は素直に感謝を述べつつ軽く泣いていた、どうやらボッチだったことが地味にショックだったらしい。それに合わせて彼の個性を聞いてみる、鉄哲の個性は"スティール"肉体の一部や全身を金属化する事が出来る防御重視な個性だ、しかし一体いくつ鉄を重ねるつもりなのだろうかと思う中で進志はこのチーム自体が完全な防御特化型だなと軽く笑う。
「んじゃ鉄哲が前騎馬、百と一佳が後ろって事でいいな」
「おうっ折角チームに入れて貰ったんだから異論はねぇぜ!!全力でやる安心してくれ!!」
「頼もしいね流石、パッションスティール」
「なんだそれ、めっちゃイカす名前じゃねぇか!!」
余談だが、彼がヒーローネームを検討する際にこのパッションスティールが第一候補に入ったりするのはまた別の話。
「やぁっ鉄哲、チームは出来たかい?」
「あっ物間てめぇっ!!よくも俺の前に抜け抜けと顔出せたなゴラァ!!?」
「やだなぁスカウトを受けたのは骨抜の意思じゃないか、僕はただ仲介しただけさ」
「正論だから何も言えねぇぞぉおおおおお!!!」
後はスタートを待つだけの段階になった進志だったが、そんな彼の前に金髪の優男のような生徒がやってきた。彼は軽く鉄哲を煽りつつもこちらを見つめている。どうやら物間という名前らしいが余り気持ちのいい男という訳ではないらしい、確かに鉄哲とは相性は良くないかもしれない。
「やぁっ君が傍立 進志君だよね。会えて光栄だよ、ウチのクラス委員長と幼馴染なんだってね」
「まあな」
「兎に角お互いに頑張ろうじゃないか、健闘を願って握手をしようよ」
と手を差し出してくる物間、見た目は気持ちのよさそうな笑みを浮かべている進志は鉄哲のやり取りからあれが物間の本性だと思っている。握手はすべきではないと思っているときに一佳と鉄哲がそれを遮るかのように立って物間からの魔の手を妨害する。
「えっえっ?一佳さんに鉄哲さん、何を……?」
「百さん、こいつに触れられちゃだめだよ。物間、アンタそれをさせると思ってんの?」
「てめぇの魂胆なんざB組の奴なら理解出来んだよ!!」
「……あははははっ当たり前じゃないか僕の個性を有効利用するためなんだからね!!」
と二人に遮られると何かに抑圧されていた自分を開放するかのように笑い出した物間に進志は思わず素でうわっ気持ち悪っと呟いてしまい、百は不気味ですわ……と漏らす。それを聞いて軽く傷ついているのか、物間は一瞬笑いが止まったが即座に再開された。
「流石はA組だねぇ他人を貶める事を平気で言うんだねぇ!!」
「いやおまいうだぞ物間。お前だってこの前ウチに来た普通科の連中に色々言ってたじゃねぇか」
「アタシがその後に普通科の連中に謝罪した事を忘れた、なんて言わせないからね」
と軽く個性を発動させて手を大きくさせて骨を鳴らし一佳に物間の笑いは完全に引きつっていた、そしてもう時間が危ないからこれで!!っと逃げていくそれを見て進志と百は一体何だったんだよと思うのであった。
「悪いね進志。あいつの個性はコピーっていうんだけど体に触れた者の個性を五分間使い放題って個性なんだよ」
「コピー……相当厄介な個性ですわね」
「ああっしかもあいつは複数の個性をストック出来るんだ、まあコピーした個性を同時に二つ以上使う事は出来ねぇのが救いだな。にしても進志のジッパーをコピーされなくてよかったぜ」
とうんうんっと頷いて安心している鉄哲だが、進志はその話を聞いて個性をコピーされる心配をしなかった。何故ならば自分の個性は"
「まあいい、兎に角騎馬戦頑張ろうぜ」
「おうよっ!!」
「全力を尽くしますわ!」
「さぁて行きますか!!」
悩んだ結果このチームとなりました。
因みに言っておきますが、物間が進志に触れてもジッパーはコピー出来ませんしスタンドをコントロールも出来ません。
というよりもコピーして、まず物間の精神がスタンドを生み出すまで時間がかかるのでスタンドが出ません。出来たとしても銀チャリレクイエムにコントロール出来ません。