覚悟の幽波紋   作:魔女っ子アルト姫

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少女らの奮戦

激戦の名に相応しい初戦。それらは観客だけではなく生徒たちのボルテージを上げる要因になり皆が燃え上がっていた、自分だって全力を出し切ってやるという強い思いを胸にしながら次の試合が始まっていた。二回戦は一佳と尾白の対決。どちらも肉体系の個性、結果として二人の戦いは―――。

 

「せぇぇええい!!」

「せっはっ!!」

 

シンプルな肉弾戦。腕のように自在に動かす事が出来る尾を利用した格闘術を駆使する尾白と両手を巨大化させる個性の一佳、互いに個性が通用する相手とだけあって二人の攻撃は激しくぶつかり合っている。

 

「せぇい!!」

「くっあんな巨大なのになんてスピードっ……だぁぁっ!!」

 

薙ぎ払うかのような巨大な手刀を咄嗟に身を地面に投げ出すように回避する、普通ならば隙をさらすだけの行動になるかもしれないが尾白だけの長所である尾をバネのようにして空中へと舞いながらも迫ってくる手を尻尾ではじきながらうまく着地する。

 

「やるね、まさかここまで尻尾が厄介な個性だなんて思わなかったよ」

「僕もだよ。巨大な手なのにここまで細やかで早いなんて……」

「そりゃ訓練したからねぇ」

 

尾白は騎馬戦にて一佳の個性を目にしている、故に巨大な手という物に対する対抗策を練っていたのだがそれをあっさりと上へと行くのが一佳の技術であった。巨大さ故に動きの鈍さは当然存在するがそれらを一佳は巧みに抑えている。手の角度や瞬間的に手を巨大化させることでカバーしている。特に瞬間的な巨大化が尾白が苦戦している理由だった。

 

「さぁっいくよっ!!」

「(来るっ今度はどんなタイミングで来るっ!!?)」

 

地面を強く蹴って迫ってくる一佳、フェイントを交えたラッシュを繰り出すがそれらを上手く捌いてくる尾白。尾も加わって防御は完璧といえるのに尾白の顔色が悪いのはどのタイミングで巨大化するのか全く予測出来ないことにある。瞬間的に巨大化できる、それはこのラッシュの間隙にも可能という事でどのタイミングで致命的な一撃が飛んでくるのか分からないという事にある。

 

「貰ったぁっ!!」

「来るっ……!!」

 

両腕のガードが解けた瞬間、一佳が伸ばしてくる腕。この瞬間しかない!!と思った尾白は尻尾で高々と跳躍する、が自分の尻尾ごと拘束するかのような圧迫感を覚える。下を見ると自分の下半身を覆っている巨大な手と笑っている一佳の姿があった。

 

「えへへへっ作戦成功。やっぱりこのタイミングしかないって思って飛び上がったでしょ、両腕が私に弾かれているなら尻尾で上に飛ぶと思ってたよ」

「読まれてた……って事か……こりゃ参ったなぁ……分かったよ、僕の負けだよ」

 

ため息をつきながらも笑みを浮かべた尾白は両腕を上げながら戦闘続行の意思がない事を伝える。勝利の判定が降りた事に歓声が上がり一佳に向けられた称賛が嵐のように降り注ぐ。だが見事な戦いをした降参した尾白にも同じだけの拍手が送られていた。特に同じく格闘系のヒーローからは応援しているという声が多く尾白は感動しながらもっと強くなることを誓った。

 

「拳藤さん、次は負けないよ!!」

「受けて立つよ。でも次もアタシが頂くよ」

 

第二回戦。一佳 VS 尾白 勝者:一佳

 

 

第三戦。百 VS 芦戸

 

 

続く三回戦トーナメント初となる女性同士の対決、百と芦戸。この組み合わせに興奮するのはA組のエロブドウだけだった。ちなみにその理由はと電気が尋ねると

 

「だって芦戸だぜ!!?あいつの酸で八百万の服が溶けるって考えたら……うひゃああああああ漲って来たぁぁああああああああ!!!」

「……」

「お、おい峰田後ろ後ろ……」

 

この後、進志の手によって峰田の頭はジッパーで分離させられた上で試合が見えないような位置で放置された。出血やらが無いとしても迷うことなくクラスメイトの頭を分離させる事が出来る進志を見て焦凍を除くA組の全員が思った事は進志だけは怒らせたら絶対にダメだっという事である。当の本人は暢気に食事を楽しみながら百に声援を送っている。

 

「ケロ、進志ちゃんって容赦ないのね」

「エロブドウに容赦なんて必要ない」

「今回は峰田ちゃんの完全な自業自得だから同意しておくわね」

 

一方ステージでは苦戦する芦戸と優位に戦いを進めている百の姿があった。酸という個性を持つ芦戸は酸を飛ばして百を攻撃したり、地面を溶かして機動力などを上げる戦法を取っているのだがそれらのほとんどは百に無効化されている。

 

「残念ですが芦戸さん。私には、貴女の酸は効きませんわ。王水並みの物ならば別ですが」

「流石にそこまでのは出せないよぉ~!!?」

 

百は身体の各部からチタン製の盾や防具などを創造してそれらで酸を防いでいた。腐食への耐性が高いうえに軽量なチタンで身を守りつつ槍で攻めてくる百ははっきり言って芦戸にとって辛すぎる相手となっている。

 

「そして……これでチェックメイトですわっ!!!」

「えってうわぁああああっ!!?」

 

一瞬気を取られた芦戸の足には鞭のようなものが巻き付いており、百はそれを振るって芦戸の身体をステージの外へと投げ捨ててしまった。これで百の勝利が確定し百が次の対戦へと駒を進めた。

 

『しかし両者とも良く戦った!!ナイスバトルだったぜ!!』

『芦戸は運が悪かったな、完全なメタを張れる八百万には個性が通じない。故に身体能力で攻めるしかないが創造で武器を作れるから最悪すぎる相性だな』

 

「あ~あ~……負けちゃったかぁ……まあいいや、ヤオモモ次頑張ってね!!」

「はいっ頑張りますわ!!」

 

第三回戦。百 VS 芦戸 勝者:百。




NEXT BATTLE 第四回戦

緑谷 VS 飯田

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